トレンド&テクノロジー / アニメーションの作り方
第2回:アニメーションの制作工程とプリプロダクション

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© 2026 内藤泰弘・少年画報社/「TRIGUN STARGAZE」製作委員会
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アニメーションの制作工程(ワークフロー)

どうやって作るのかは予算とスケジュールとの相談

アニメーションを制作するに当たって、限られた予算とスケジュールの中でどうやって作って行くのかを考えるのがとても大事になります。「作りながらやり方を考える」というスタイルだと、制作が大分進んだところで計算に入れていなかった工程ややり直しが発生し、予算オーバーになってしまったり、スケジュールが大幅に遅れてしまったりすることがあります。

目標としているものに届くためには、どういう段階を踏んで、どの技術を取り入れて、誰にやってもらうかなどを検討し、予算とスケジュールと照らし合わせながら決めていく必要があります。「スゴイものを作りたい!」と思っていてもその予算がなかったり、スケジュールがタイトな場合は現実的に完成は不可能なので、「どこを拘るか」と「どのポイントは妥協して良いか」を見極めて、技術的なハードルや目指すクオリティラインを下げていく必要があります。逆に、妥協ができない要素が多くあれば、予算を上げる努力やスケジュールを調節する等の必要も出てきたりします。

それでは、アニメーションの一般的な制作工程またはワークフロー(以下、ワークフロー)がどのような内容なのかを見て行きましょう。

アニメーションの制作は大きく3つのパートに分かれている

以下の表は、一般的なアニメーション制作の工程を簡略化したものです。作品やアニメーション制作スタジオによって、工程の数が違ったり、前後の関係も変わったりしますが、まずはおおむねの流れを理解していきましょう。

アニメーション制作のワークフロー①

ご覧の通り、大きな3つのパートがあります:

①プリプロダクション
一般的には「プリプロ」と略されます。
企画、シナリオ、デザイン等を含む、制作に入る前の事前準備の工程です。

②プロダクション
「本制作」という総称で呼ばれることが多い。
実際にアニメの絵を作る作業全般が含まれています。

③ポストプロダクション
一般的には「ポスプロ」と略されます。
本制作の撮影終了後、音響や編集など作業が含まれています。

それでは、それぞれの内容を詳しく見て行きましょう。

プリプロダクション(プリプロ)

作品の準備段階に当たります。企画書をもとに、脚本・絵コンテ・設定を整え、アニメーション制作に必要な材料を準備します。では、簡単に説明しますね。

アニメーション制作のワークフロー プリプロダクション(プリプロ)

企画

なにをどう作りたいのかを文書にまとめたもの。この作品を作ることによって、何を達成したいのか。作品のテーマは何なのか。どんなキャラクターを登場させて、どこで何をさせるという、簡単なストーリー展開の説明。ターゲットのお客さんは誰なのか、どういう形式とメディアでそのお客さんに見せるのか。公開後の展開を想定しているかどうか(例:グッズの販売などのキャラクタービジネスも視野に入れている)。等々。
簡単にいうと、「こんな作品を作りたい」を言葉や見本の絵を用いて説明するドキュメントです。

作品のテーマを決める

作品のテーマはコンセプトと共に一番最初に決めておくべきポイントですが、この作品のテーマは一体何なのか?
すごく簡単に言うとしたら、「何を作りたいのか」「この作品で何を描きたいのか」「どんなお話を語りたいのか」という根本的なを内容を示すものです。

主題であるテーマは、その作品のタイトルを通してお客さんに一番ダイレクトに伝わりやすいかも知れません。どんな内容を扱うかによって、どのような見せ方を選ぶのかを考えていくべきですが、本編の流れからも作品のテーマがお客さんにしっかりと伝わるように、まずはスタッフ全体で作品のテーマとコンセプトの理解を共有しておくことが最も大事です。

コンセプトを決める

コンセプトは、選んだ作品のテーマをどのような切り口で語るかが根底にあり、作品を作るに当たって基盤となる概念です。
作品を作るためには、まずは「何を作りたいのか」というものがベースにありますが、「何故それを作りたいのか」という『動機』もあるはずです。それを踏まえて、「何のためにその作品を作るのか」という『目的』を決めるのことが必要不可欠です。

例えば、テーマとして「少年ブリブリくんが色んなお仕事のお手伝いをしながら成長する物語」選んだとしましょう。そしてコンセプトとして「5~6歳のこどもをターゲットに、あまり世に知られていないお仕事も含めて様々なお仕事を紹介する」というターゲットを意識するものもあれば、「ある最新の技術を駆使してテレビシリーズの制作にチャレンジする」という「これを作って何を成し遂げたいのか」という考えがあります。

コンセプトの方向性は作品によっては様々ですが、[何を・何のために・どのように]作るのか、作品制作の道しるべとなります。この作品のコンセプトが明確であれば、チームのスタッフ全員がどこに向かっていくべきなのか、進むべき道を把握できるようになります。また、作品を見る側の視聴者を魅了するポイントと結びつくことができます。

コンセプトがこの作品を導いていくわけですから、最初のうちによく考えておきましょう。

コンセプトとテーマ

ストーリーを考える

まずは「あらすじ」を考える。誰が、どこで、何のために、何をしているのか、そうしてどうなるのか。「カッコイイ戦闘のシーンや派手なアクションをたくさん入れたい」とか「可愛いコスチュームを着たポップでラブリーな感じにしたい」という断片的なアイディアだけではなく、作品を通して「結局何を語るのか」ということが肝心で、この時点から「起承転結」のある展開を考えることが大事。

フォーマットを決める

アウトプットは何を想定しているのか。最終形態を決める。この作品は劇場で公開する予定なのか、TVシリーズなのか、オンデマンド配信なのか?どのメディアで作品をお届けするのかによって、作品の長さや製作本数が変わってきます。また、どんな形で見てもらえるのか?大型スクリーン、TV画面、タブレット端末、スマホの画面、など、お客さんが何を通して見てもらうのかによっても、作品の作り方や最終形態が異なります。

スケジュール表をつくる意味

ここでリアルな話ですが、作品を作るためには「予算」というものがあります。当然ながら、その予算内で作品を完成させるためには、どの部分にどうお金をかけるかを考えるわけですが、「いつまでに完成しなければいけない」ということも含めて考えねばなりません。それを実現できるためには、どの工程をいつまでに終わらせれば良いのかを定める「スケジュール」を作る必要あります。ものごとがスケジュール通りに進行できるかどうかは、プロデューサーや制作陣の腕の見せどころですね。

誰が企画書を書くの?
プロデューサーが企画を考えることが多いですが、監督自身が企画の案を出す場合もありますし、企画部というグループで作る場合もあります。作品ごとに異なりますが、基本的には「こんな作品を作りたい!」と思った人が書きます。

監督とプロデューサーの違いは何?
この二つがごっちゃになりやすい理由のひとつは、「誰々監督の作品」とか「誰々プロデュース作品」という風に宣伝されることが多いからだと思いますが、この作品は誰が作ったの?という単純な質問に対して、時には監督だったり、時にはプロデューサーだったり、答えのレベルでは同じ位置づけが与えられているからです。言ってみれば、監督もプロデューサーも両方、一緒に、この作品を作っています。しかし、それぞれがケアしている部分が全く違うのです。

監督は、「この作品はこういうイメージで作りたいので、こういうやり方で行きたいと思うんだけど、みなさん協力してね。」と言って、それぞれの役職の方々に的確な指示を出して、作品全体のクオリティをコントロールする人です。工事現場の現場監督に例える人がいますが、私に言わせてみれば、指揮者の様ですね。
多くのスタッフを束ねて作品を作らなければいけないわけですが、良い監督になり得るための条件は、作品の完成のビジョン(仕上がりのイメージ)をしっかり持っていることと、それをスタッフにきちんと伝えられることです。即ち、コミュニケーションが最も大事な武器だと思います。また、物事がスムーズに動いている時だけ饒舌トークをするのではなく、荒波が立つ時にこそ舵をしっかり取り、スタッフと一丸となって船を最終目的までたどり着かせるのが、監督として最も力を発揮する時ではないでしょうか。

プロデューサーは、「企画を立てる人」「お金を出す人」とだけ思われがちですが、スケジュール内に目標のクオリティのものが出来上がるために、現場の制作の進行を調節することが最も大事な役割です。締め切りに間に合わせることも含め、出来上がった作品が良作なのか駄作なのかは、最終的にプロデューサーの責任になります。
目標とする作品を作るためには的確なスタッフを集める必要がありますが、そのスタッフのモチベーション維持にも一役買っています。お金さえ出せば何とかやってくれる、または、安い賃金でこき使って倒れたら代役とすり替える、という気持ちで自分の都合の良いように人を働かせてばかりいると、優秀なスタッフも離れ、良い作品制作にはつながりませんね。
プロデューサーとして金銭面での管理能力は必要ですが、スタッフをどれだけ大事に扱い、目的を果すように上手く仕向けるか、ということの方が一層大事に思えます。
また、出来上がった作品の配給や、製作にかかった資金の回収(リクープ)も考えるのがプロデューサーの役割です。

余談ですが、プロデューサーと監督の双方が同じ目標と熱意があるのがとても大事で、そのすり合わせが出来ていないと作品制作がとても苦しいものになります。同じところを目指して二人三脚で進められるように、プリプロの段階で入念な話し合いをしておくのが最も大事かも知れません。

プロット

プロットは、どんな世界でどのようなキャラクターが登場し、どういう流れで物事が起きるのかを大まかにまとめたものです。シリーズの場合は、各話数で何が起きるのかが記されているシリーズ構成というものがあります。

シナリオ

脚本のこと。誰がどの場面で何をするのか、何を言うのかが具体的に記されている。映像の構成に必要な要素が書かれたもので、作品の設計図になるものと言えます。シリーズの場合は、シリーズ構成を元に各話数のシナリオが書かれる。

シナリオライターとは
シナリオを書く担当の人。脚本家とも呼ぶ。アニメーション作品の場合は、アニメに特化したシナリオライターにシナリオを書いて貰うのが一般的。作品によって、監督自身がシナリオをも手がけることがある。

絵コンテ

これからどんな映像を作るのかが記された設計図となるもの。シナリオを元に作成されますが、どんな絵にするのか、どんな演出意図があるのか、どんなカット割りで、どんなカメラワーク使うのか、台詞や音響効果の入り方などの指示も含め、制作スタッフ全員と共有したい内容が書かれています。

絵コンテは誰が描くの?
基本的には演出家が描きます。作品によって、監督が演出を兼ねており、自ら絵コンテを描くことがある。
TVシリーズなど話数が多いものは、各話で絵コンテの担当が変わることがあります。ただし、皆が好き勝手に自分なりの絵コンテを描いているわけではなく、TVシリーズ構成の枠組みを考慮して、作品全体の流れと世界観を守って、各話の見所を最大限に引き出すための演出を盛り込んで描いています。

監督と演出の違いは何?
いい質問ですね。これらの役職を英語に訳すと、どちらもDirector ですからね。監督と演出を同じ人物が担う場合もあります。しかし、アニメーション制作においては、それぞれの役割がやはり違います。

監督は、作品全体の内容と品質の最高責任者で、「こんなイメージの作品にしたい」という目標をスタッフに共有し、それぞれの制作工程で思い描いたものが上がってくるように、それぞれの役職に適切な指示を出します。特に、デザインや設定周りが作品のイメージ通りに仕上がるようにコントロールをします。

演出は、監督の思い描いているイメージを、実際の映像の中でどんな絵にするのかを決める人です。各場面の見せ方や、その中での登場人物の演技などを決め、アニメーターなどに指示を出します。シリーズの場合は、各話それぞれに別の演出家が立ち、その話数の出来上がりの責任者とも言えます。監督はその話数の制作の指揮を演出に任せて、シリーズ全体を見渡して総括するという形を取ることが多い。

「この作品はどんなイメージの絵にしたい」を考える担当と「そのイメージを格好良く見せるためにはどうすれば良いのか」を考える担当という風にすみ分けがハッキリしている場合が多いけれど、作品によっては監督と演出の役割配分が異なる場合もあるし、同じ人物が監督と演出を兼ねることもあります。

映画『海獣の子供』の絵コンテ<br>(c)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
映画『海獣の子供』の絵コンテ<br>(c)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
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設定資料

作品全体のデザインを統一するため、設定資料を作成します。その中には、キャラクターの設定やデザイン画、乗り物やロボットのデザイン(メカ設定)、場面などのデザイン(美術設定)があります。
ひとつのアニメーション作品の制作には大勢の人が携わるため、イメージ教諭がとても大事ですが、そのためにも設定資料が必要となります。

美術設定
作品に登場する場面のデザイン画です。
画面に映る背景の部分だけではなく、キャラクター達がどんな場所で過ごしているのか、どういう家なのか、どんな街なのか、どんな地理的環境なのか、など、作品の世界観や雰囲気を決める基盤となります。

キャラクターデザイン
作品に登場するキャラクターのデザイン画です。
全身のプロポーション、顔のアップ、表情、服装のディティール等を含みます。作品によく登場するキャラクターの場合は、正面・後・斜めなどの複数アングルの全身の絵と共に、何種類もの表情パターンが描かれている設定が起こされます。また、登場人物の身長や体格の比較が分かるように、主要キャラが並んでいる対比表というものが作成されます。

メカデザイン
作品に登場するメカのデザイン画です。
作品の世界観にもよりますが、乗り物、ロボット、兵器など、ギミックがあるものの構造や動き方の説明も含めています。

プロップデザイン
作品に登場するキャラクターが手に持ったり操作したりする小物全般のデザイン。
例としては、手に取る食器、鞄、スポーツ用品、武器など。

キャラクター設定画例<br>(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
キャラクター設定画例<br>(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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