Top Creator's Eye

Top Creator's Eye は TBS Digicon6 とオートデスクのコラボレーション企画で2012年夏に3ヵ月にわたり連載。業界の著名人から若いクリエイターに向けて熱いメッセージをいただきました。限定公開でしたが、この度一般公開となりました。見逃した方は、ぜひご一読ください。

これまで『キングコング』といった数々の大作を手掛けてきた佐藤 篤司 氏。最近では新作『AMAZING SPIDERMAN』にもコアメンバーとして携わった。
1991年に渡米し、ディズニー、WETAなど第一線の現場を経て、アニメーション・スーパーバイザーの地位にまで登りつめた後も、1人のクリエイターとして更に高みを目指し続ける佐藤氏に話を聞いた。

スペシャルインタビュー CGアニメーター 佐藤 篤司 氏 前編

――佐藤さんは1991年に渡米されていますが、その前は日本で活動されていたのでしょうか。

はい。展示映像機器を制作する会社のCGチームで3年ほど、主に地方遊園地のライド向けにフル CG映像を作っていました。他にも外部参加としてプレステの開発チームに加わり、最初のデモ作品 "フォルテッツァ "の制作にも携わりました。
また個人の活動では、CGアーティスト集団 "デジタルイメージ "に設立メンバーとして参加して作品を発表していました。

――渡米する上で、将来に対してどのような目標を設定されていましたか?

渡米する時点では具体的なものはありませんでした。5年ほどアメリカで修行して、日本に帰ったらそれを糧に稼ごうなどと考えていました。当時はまだバブルの余韻がありましたのでアメリカは修行。日本で稼ぐ。という図式が成り立っていたわけです。ただ、子供の頃から映画好きだった事もあり、ゆくゆくはILMあたりでハリウッド映画を作りたいと漠然と考えていました。
具体的な目標が定まったのは渡米後、最初に働いた日系プロダクションにいた頃です。ある雑誌のインタビューで「ハリウッド映画の主役を作りたい」と答えています。

――最初の日系プロダクションには、いつ、どのような経緯で入社されたのでしょうか?

日本にいた頃、PIXELという雑誌社が主催するCGのコンペで受賞する事ができまして、その審査員に伊藤博文さんがいたのです。伊藤さんは NHK番組『驚異の小宇宙 人体』のプロデューサーで、当時 CG業界では時の人でした。後日その伊藤さんがニューヨークで HD専門のCGプロダクションを立ち上げた事を知り、彼の講演会に出向き、出待ちしてデモリールとレジュメを渡し、自分もそこで働きたいと伝えました。すると「今度ロスに新たに立ち上げるプロダクション(マジックボックス)を立ち上げるから、そちらでなら雇えるはず。少し待っていて」と返事をいただきました。

コンペを通じて名前と作品が伊藤さんに知られていたので、そこまでは話が早かったのです。それを真に受けた僕は勤めていた会社を辞めて待っていたのですが、4カ月経ってもお呼びがかからなくて。そのうち電話をかけても"いない"事が多くなり、業を煮やした僕は単身ロスに向かい、会社の前から電話して「僕はもう来ている」的な感じで直談判したところ、次の日から雇ってもらえました。

まずはテスト採用期間ということで3カ月かけて「バビロンの空中庭園」という作品を作りました。それがシーグラフのエレクトリックシアターに入選し、会社の本採用が決まりました。自分自身の押し売りをしたようなものなので、今考えるとかなり暑苦しい行為ですよね。しかし人生に何度かは勝負所があると思っていて、あの押し売りは間違いなくその一つだったのだろうと思っています。

――その後ディズニーに移られるまでは、どのようなお仕事をされていたのですか?

3年間ほどマジックボックスにいて、主に日本のコミックキャラクターをCG化してハリウッドに売り込んでいました。永井豪先生のマジンサーガや手塚治虫先生の鉄腕アトム、水木しげる先生の目玉おやじなどのパイロット映像を作りましたが、どれもビジネスとしては成功しませんでした。

それ以外では、フランシス・コッポラ監督のピノッキオのデベロップメントチームに派遣され、彼のワイナリーにあるプロダクションで、3カ月ほど唯一の CG担当として仕事しました。尊敬する監督やハリウッドの一流スタッフと働くのは夢のような体験で、それだけでもアメリカに来たかいがあると思ったものです。その後に値上がりした「ルビコン」というワインを社員価格で買えたので、ザブザブ呑めたという点でも美味しい仕事でした。ちなみにこのピノッキオの企画も、訳あってお蔵入りとなりました。

当時はジェネラリストだったので、CGの一から十まで自分で作っていました。しかし結果として、どうしてもアニメーションの部分で妥協してしまう事が多かったのです。アニメーションをもっと極めてみたいという思いが強くなり、ディズニーに移籍しました。アニメーションに特化したのはそれからです。

――ディズニーを退社された後、ニュージーランドの WETA DIGITALへ移籍されていますね。何かきっかけがあったのでしょうか?

ディズニーで仕事をしていたある日、WETAのプロデューサーから「『Two Towers』の追い込みに入るんだけど、来ないか?」と電話がありまして。よくよく話を聞いてみると、ディズニーにいたVFXスーパーバイザーがWETAに行っていて、彼から推薦があったようです。ちょうどディズニーからの転職を考えていたので、電話をもらってから2週間ほどで行くことに決まりました。とりあえずは3カ月の契約でしたが、その後再契約を重ね、最終的には3年半の長居になりました。

佐藤 篤司 氏

――その後『キングコング』でアニメーション・スーパーバイザーを務められています。部門のトップに立つプレッシャーはありましたか?

実はキングコングの前にアイロボットのスーパーバイズもしていたのですが、やはりキングコングはプロダクション規模が大きかったので、すぐには決断できませんでした。結局、外部から旧知のアニメーションディレクターを呼び寄せ、僕はナンバー2として参加することで了承しました。

ちなみに、アイロボットのキャラクターアニメーターが15名だったのに対し、キングコングは60名以上でした。クリエイティブ面のプレッシャーよりも、マネージメント上層部とのやり取りやスケジュール調整、その他政治的なゴタゴタの中で感じるプレッシャーが大きかったです。納期が迫って来た時期には、かなりのストレスを抱えていました。アーティストとマネージャーの間で板挟み状態でしたから。


――アニメーション・スーパーバイザーまで登り詰めてしまうと、1つの大きな目標を達成されたように思えるのですが、この先の目標は何ですか?

先ほどお話しした「ハリウッドの主役キャラクターをやりたい」という目標は達してしまったので、それにより目標を失いました。というより初心に戻ったといいますか。キングコングを終えた時点で、スーパーバイザーのお誘いを数社からいただいたのですが全部断りました。また昔のように1人のシニアアニメーターとして、やらせてもらっています。

断った理由はいくつかありました。まず、当時自分がクリーチャー系アニメーターとして偏っていまして、実際に話をいただいたスーパーバイザーの仕事も、恐竜、ドラゴン、マンモス、といった似たり寄ったりの内容でした。自分としてはもっと色々なタイプのアニメーションを経験して、アニメーターとして総合的なスキルを向上させたかったのです。
それに、やはりスーパーバイザーをするには英語でのコミュニケーション能力に難があったので、そのスキルも磨く必要がありました。また、小さなものでいいから自分の作品を創りたいという気持ちが強まったことなどが理由です。

現在は友人と短編映画の企画を練ったり、知人のプロデューサーのシリーズ作にエピソード企画を売り込んだりしています。もちろん長編映画のアイデアも練っていますよ。先の目標は、どういう規模であれ自分の作品と言える物を創ることです。

――佐藤さんは初心に戻られたとのことですが、ハリウッド自体も限りなく本物に近いCG表現を実現している中で、ハリウッドが次に目指す方向あるいは欲求は、どこに向いているでしょうか。

CGで本物に近い映像を作るという点は、おおむね到達していると思います。残る課題は、やはりリアルな人間を作ることでしょうが、これに関しては近づくことはできても並ぶことはできないので、永遠のテーマだと思います。

制作現場ではここ数年、映像表現を高めると同時に、作業の効率化に重点を置いていると思います。以前はCGキャラクターが2~3体で、ショット数が300あれば大作扱いでしたが、現在はキャラクター20数種、ショットは1000以上という作品がザラですので、限られた予算でクオリティを維持するためには効率化が鍵になります。

あとは競争力を高めるという狙いで、こちらの大手プロダクションの多くは、環境の良い場所にサテライトスタジオを作っています。税制的に有利な場所ならランニングコストを抑えられますし、そちらで作業の何割かをこなしています。現在はバンクーバーが人気ですね。ソニーも数年前からスタジオを構えていて、スパイダーマンではアニメーターの2/3はバンクーバーのスタッフでした。

3Dも開発の余地があります。自分としては歳のせいもあり視ていて疲れるので、あまり好きではないのですが、劇場に足を運んでもらう方法として効果的です。2012年8月上旬の時点で、ボックスオフィスのトップ20位以内で200ミリオンを越える作品が6つもあって、そのほとんどが3D作品なのです。しばらく勢いが続くのではないでしょうか。ただ、3Dのクオリティ自体はまちまちなので、システム的にも映像的にも今後研究されていくでしょう。

聞き手: TBS Digicon6  川鍋 昌彦(かわなべ まさひこ)
執筆:フリーライター 蓬莱 早苗(ほうらい さなえ)

CGアニメーター 佐藤 篤司 氏へのインタビュー前編、如何でしたでしょうか。氏の経歴とこれまでの歴史を語っていただきました。後編は、氏のアニメーション・スーパーバイザーとしての体験談と、若手クリエータへの想いなど、必読の内容満載です。

CGアニメーター 佐藤 篤司 氏 インタビュー 後編

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