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水島精二監督☓野口光一プロデューサーが語る、アニメ監督になる方法

水島精二監督☓野口光一プロデューサーが語る、アニメ監督になる方法

2017.11.10

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さまざまなセッション、ハンズオン、インタラクティブな展示などを通じて、先端テクノロジーを実践できる「Autodesk University Japan 2017(AU Japan)」が、2017年9月21日(木)、9月22日(金)の二日間、ヒルトン東京お台場で行なわれました。

初日となる9月21日(木)に行われたトークセッション「アニメーショントラック」の2枠目は「3DCG の夜明け〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜」というタイトルで、大ヒット・アニメーション『鋼の錬金術師』や『楽園追放 -Expelled from Paradise-』を手掛けた水島精二監督と、監督とともに『楽園追放』を手掛けた東映アニメーション株式会社プロデューサー野口光一さんが登壇。多くの人が夢見る、アニメーション監督というのは具体的にどんな仕事をしているのか?どうやったらなれるのか?また『楽園追放』の制作の裏側などを語りました。

AUJ 2017の様子

野口さんから水島さんに投げかけた質問によって膨らんだ対話の一部をレポートします。数多くの経験から得た、アニメーション監督になるためのヒントが多数披露された希少なセッションになりました。

アニメ監督の仕事はどんなことをしている?

水島精二監督

水島:アニメ監督の役割は、作品のトータルの責任者です。プロデューサーが商売に関して担当するので、スポンサーが決まり次第、プロデューサーと二人三脚でのクオリティコントロールをします。制作面に関しては、アニメーション作家のチームを作って、最終的に作品を形にします。

野口:企画のスタートは、主にプロデューサーが作る場合と、監督が作る場合がありますよね。

水島:そうですね、企画を一緒に作る場合もあります。最初にプロデューサーと監督で、プロットを読んで作戦を練るんです。

「楽園追放」
「楽園追放」© 東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

野口:僕は『楽園追放』のプロデューサーをしましたが、プロデューサーには二種類あると言われています。企画を担当するプロデューサーと、制作という運営を担当するプロデューサーがいます。企画のプロデューサーは、脚本家と監督を選んだ後、プロットを作ります。そこから監督とシナリオとキャラクター作りを行い、それ以降は監督を中心に進行します。企画のプロデューサーは究極的にはだいたいそこで終わりです。宣伝や予算などは制作後のプロデューサーの方が担当します。楽園では自分が全部その辺を一人でやっていますね。

水島:大手メーカーは、企画部にプロデューサーが何人か在籍しています。サンライズの場合は、原作の出版社などに相談して、企画を立ち上げて、担当を人選して、という最初から最後までを担当しています。企画を担当するプロデューサーと制作を担当するプロデューサーがきっちり分かれてリレーをしています。

野口:東映アニメーションの場合はプロデューサーが企画を出してスタートします。大泉にある東映は中央線にあるアニメ会社とちょっと違うとも聞いています。

どうしたら監督になれますか? 

野口光一さん

野口:最近はCGクリエイターから監督になるパターンも出てきました。ただやはり全体では作画のアニメーターからか制作さんから監督になる場合が多いんです。

水島:3DCGクリエイター自体が監督として認識されていない。そのために自分の作業だけでなくさまざまな役職の人とコミュニケーションをとりながらきちんと自己主張をして、作品全体に関してもまとめていく役割になってほしいですね。

監督になるためには、自分がまわりから何を求められていて、どういう決定をどういうタイミングで出して、どう作品を作っていくかを自分を疑って冷静にみないといけない。あとは、作品の中で譲らない強い部分がないと、その人の作品にならないんです。

そのためにはチャンスが与えられた時にすぐにできるかできないかだけなので。僕はたまたまそれがうまくいって次々とできました。それを繰り返しているうちに、今のスタイルが確立している。次のチャンスが貰えるように「一緒に仕事をした人を幻滅させない」「作品を作るときに大事にする部分を考える」「作品自体がみんなが良かったと思えるようにする」などが重要ですね。

最初は自分がコミュニケーションを取りやすいように制作した方がいいと思います。流されてずっと続けるのではなく、「監督として何を作りたい」「どういう企画にしたい」ということを全員に説明して理解してもらえるようにしないと監督として作品が作れません。

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』劇場上映作品のCGメイキング

野口:監督は「こういうことをやりたい」「こういうものを作りたい」を伝えていかないといけない場面はありますね。

水島:他にないものを作りたい時にきちんとアピールしていかないと企画が通りません。やはり監督としてきちんと作品を作っていこうと思うなら、「自分は何を求められていて」「どういう作風が面白いのか」を日々考えていればチャンスがあったときに考えを出せます。ただ、誰でもなれるというわけでないんですが。

野口:国内では、2Dの作画チームは言葉でのコミュニケーション能力より、絵でコミュニケーションをするといった印象です。そういう意味では会って企画の話をした際にコミュニケーション能力がすごい人はいけると思ってしまいますね。

「3DCG の夜明け〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜」の様子

水島:コミュニケーション能力は高い方がいいです。作画の人で相手が理解できる絵を描けるのであれば、そんなにコミュニケーション能力自体はなくてもカリスマ性で行けてしまう場合もあります。また、監督の庵野さんも熱く説明するので先人たちの背中を見たときに、自分はそこまで絵が描けないので作品の内容をどう相手に伝えるかを重視しています。

野口:監督は最低でも50人には説明していかないと進められません。進めた上で答えられないと制作が止まってします。それができる水島さんは確かにすごいんです。

3DCGならではの表現について

「3DCG の夜明け〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜」の様子

野口:宮崎駿さんが「アニメでは食事シーンは重要」と言っていて。それもあって、CGアニメーションでも食事シーンを入れたいと思いました。それでうどんのシーンを入れて、アクションではない美味しく食べているシーンがうまく描ければ、CGアニメーションもみんながきちんと見てくれるようになると思って。宮崎さん映画ではよく豪快に食べていますが、このうどん食事のシーンはまったく食べていないですね。CGアニメーションで豪快に食べるシーンは意外と挑戦していないんじゃないかなと思っていて。

水島:あまりやろうと思ってないですね。結局、作画の2Dアニメーションと3Dのアニメーションは得意不得意が違うので、宮崎駿さんが作ったような食事シーンを3Dで再現することに対して意識が向いていないんですよね。でも、うどん屋にちゃんとお客さんがいて、それぞれがちゃんと何を言ってるかわかるシーンにしようと思って作りました。

野口:やっぱり僕らが映画を見ていると食事シーンがうまくできているか、特にCGアーティストとしての目で見てしまうのでうまくいってないのは単純に面白くないなと。

水島:食事をするのは人間の主題の一部だから。3Dのアニメーターにディレクションをしながら、絵の作りの面白い空間にどういう人が集まってどういうドラマがあるかから、生活感やそれぞれの人生が感じ取れると思います。

3DCGアニメ制作の課題

「3DCG の夜明け〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜」の様子
『正解するカド』©東映アニメーション/木下グループ/東映

野口:現在のアニメ制作の課題はいろいろあります。作品数が多いことにより人材不足で、今クールでは2、3作品穴が空いちゃって、間に合わなかったと聞いています。

水島:メーカーが作品の利益や締め切りを管理するあまり、正直キャパオーバーをしているのでクオリティを切り捨てる以外に方法がないんですよ。

野口:そこで僕はCGアニメーションのチャンスと思っています。CGスタジオならではの制作管理や、フローがあるので、これから増えてくるとは思うのです。

水島:2Dと3Dのハイブリッドのアニメーションでも、ワークフローをきちんと構築して主従関係にならずに横並びで共同作業をして良い作品が出てくる方法論を取らなければ作業が終わらないはずです。作画のアニメの場合は、3Dアニメに理解が少ないのと作画の会社も3Dを嫌っている部分があって、コントロールできない部分があるから当然なんです。僕らみたいにどっぷり浸かっても制作会社側がフローを明確に考えられていないので結局流されてしまう。

現実問題、最初に行ったことを3Dでやりきれない場合、どこを作画にするかを考えなければいけない時期になってるんだよね。本来だったら主人公が持ってるギミックも3Dの方が圧倒的にかっこいいのはわかってるんだけれど、作画のキャラクターと3Dのものを掛け合わせてひとつの絵にするのは大変ですよね。

野口:例えば作画のキャラクターからCGキャラクターへパスポートを渡すシーンがあった場合、パスポートをCGにするか作画にするか、どっちにするかで議論になります。そういう意味でまだまだ距離があるという。

アニメーターの未来について。

「3DCG の夜明け〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜」の様子

野口:海外のイベントに参加するとそれなりの反応があるので世界を意識していく必要性があると思っています。アメリカで公開されることやNetflixから海外に配信されるようになりました。アニメ作品は、日本の市場に向けて作っているのはわかってますが、海外にも意識を向けて作られていますか?

水島:まず日本の市場を意識して、日本でヒットするアニメを作っていきたいです。例えば『君の名は。』は、海外を意識して作っていません。日本人の琴線に触れるような内容の甘酸っぱい青春ものでも、海外で日本を好きな人たちが評価して見てくれています。一方、『この世界の片隅に』で言えば、映画としての強度が強いんです。サイエンス系や漫画にあったテイストがアニメーションとして活かされていて、すごく作り込まれています。そういった作品は作品の魅力が一度響けば、その評価を元に海外で見られて世界的に広がっていく。僕らが作っているのは基本的にオタク向けだから、全世界にいるいわゆるギークの人たちが喜んでくれるものになれば、海外に持って行ってもある程度商売になると思う。だから一番最初に見てもらえる人たちが楽しんでくれるものを作りたいですね。

最後に若者へメッセージ

アニメーション監督はどんな仕事をするのか?どうすればなれるのか?語り尽くしたお二人。若者にメッセージをと言われた水島さんは、

「監督は熱意があって間違いがなければチャンスは巡ってくると思うので主張することです。「やりたいです」と言いながら、自分が与えられた仕事をきちんとこなせばチャンスはあると思います。特に今ものすごくリリースされる作品数が多いので、僕らも作画の方も若手に声をかけてあげています。僕も徹夜ができなくなってきたので」

と答えました。
そのために必要なこととして、「自分で時間を作ってプライベートでも経験を積み重ねていくことでアイデアが蓄積されるので作品作りに重要」という水島監督の経験から得た言葉で締めくくられました。

若手の作家は数多くの経験を積み重ねることで、大きな仕事のチャンスが回ってきた時にクオリティの高い作品がつくれるはず。そう希望を持たせてくれるセッションでした。