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第30回:カメラの構造と特徴を学ぶ カメラの設定が変わると、見る人の気持ちが変わる

更新日 2012.01.10

こんにちは、パーチ長尾です。

これまで数回にわたって「カラーマネジメント」についてお話ししてきましたが、今回はまったく視点を変えて、撮影でも3DCGでも最も重要な【カメラ】について話をしていこうと思います。

3DCGでは【カメラ】の勉強をすることがあまりありませんが、これは3DCGが映像表現としては写真や映画と比べて後発なことと、物理的に存在しないので構造的なことを学ぶ必要がないからだと思います。

しかし、写真や映画ではカメラの構造はもちろんですが、その映像が与える心理効果も学んでいきます。
そのため写真や映画の制作では、そのシーンのイメージに合わせて【レンズ】を選択して、それからアングルとライティングを決めるという順序で作られていきます。

もし、思ったようなイメージが作れない、心に響く物が作れない、映像に違和感がある、と悩んでいる方がいたら、この先を読み進めてみてください、解決のヒントになるかもしれません。


日常の変化が、心の平安を乱す

私たち人間は光を目でとらえ、その信号を脳に送り、情報を処理します、というのが脳科学や生理学の訴えていることですが、ではどうして電気信号が【感情】を生み出すんでしょう? 【心】はどこにあるんでしょう?
脳科学や生理学は科学的に人間の構造を解明しているようでいて、最も重要な部分、最後の部分については解明することができていません。人間は解明できることを科学や物理と呼び、わからない部分を忌み嫌う性質があります。 この部分を担当するのは哲学や宗教だといわれていますが、科学よりも昔から人間と自然の解明に力を注いだ人たちの成果ですので、大事にしていきたいですね。

私たちビジュアルクリエイターには、解明されている科学ではなく、不明な人間構造を理解して、【感情】を沸き立たせる映像表現が期待されています。
そして、それができたクリエイターが高く評価される世界に生きています。

今回のコラムは、この不明な部分をいくつか解明することに挑戦してみます。


図1「水平線がまっすぐ」


図2「水平線が傾いている」

図1を見てください、冬に桜の木を剪定した枝を積み上げた景色を見ると不安な気持ちになったので、シャッターを切った写真です。
レンズは【広角】で、露出は【アンダー】にして撮影しました。

次に図2を見てください。
水平線を傾けてみたら、心にざわざわとする【不安】がよぎりはじめました。

これは私たち人間の心理特性を利用した【感情表現技術】です。
「人間は見慣れないものを見ると感情が沸き立つ」と覚えてください。

この写真の場合は、写っている被写体や色合いが気味の悪いものだったため、想起される感情が【不安】という種類のものになったわけです。

全く不思議な現象ですが、これが人間の【感情】部分の構造です。
映像作品ではこのような感情構造を理解し、コントロールすることで仕事や作品の質を高めることができます。

【人間の心理】をコントロールする【カメラ技術】に興味がわいてきましたか?


日常の変化が、感情を沸き立たせる

写真の世界では「モノクロ」がはやっていますし、魚眼レンズを使うのもはやりつつあるみたいですね。なぜでしょうか?
モノクロについては「エコ」がはやっているから、というのが理由になりますが、魚眼レンズの理由にはなりませんね。

でもこう考えたらどうでしょうか?
「人間は見慣れたものには感動しない、見慣れないものを見るとドキッとする」 これなら納得です。
カラー写真を見慣れたからモノクロが新鮮。日常の視野と大きく違うから魚眼レンズが新鮮。

人間は日常の変化で感情を沸き立たせる生き物なんです。有名なアーティストが言ったそうです、
「アートは新奇なるものでなくてなならない」 これも日常ではないもの、見慣れてないものでなくてはならない、ことを表していると思います。


図3「標準レンズで撮影した写真」


図4「魚眼レンズで撮影した写真」

図3は、標準レンズ(画角46度)で撮影した人物写真です。日常生活の中で見せる子供の笑顔、ほっこりとした気持ち、幸せが伝わってきます。

図4は、対角魚眼レンズ(画角180度)で撮影した人物写真です。非日常的な映像は非常に力強い印象を与えますが、図3と比べると安心感や幸せより、不安感に近いものを感じます。

比較してみると、レンズの画角が与える心理効果の大きさがわかってきます。
そしてこの効果は、人間が生活している状態と密接に結びついていることを意識するとコントロールすることができます。

レンズと画角

なぜ写真や映画では一番初めに【レンズ】を決めるか? それは、レンズが映像表現において最も大きな影響を与えるからです。
たとえば日常生活を描くには【画角50度】程度のレンズが最適です。理由は私たち人間がぼんやりしているときの視野が約50度だからです。つまりこのレンズの視野は日常生活(心の動揺もなくゆったりと流れる普通の時間)を過ごすときの私たちの視野なので、それで撮影された映像が「日常生活のように感じられる」というわけです。

「画角のちょっとした違いを私たちは認識して、そこから感じる映像に普段の生活や、感情が高ぶったときの印象をつなぎ合わせて見ている」

このようにレンズ選びは重要な技術ですので、3DCGソフトでカメラ設定を行う際の【焦点距離】について、実際のレンズ構造を理解しながら覚えていきましょう。

【レンズ選び】で重要なのは【画角】です。人間の視野は画角で表しますので、レンズもそのときの人間の視野にあわせて利用するというわけです。

しかし、一般的なレンズ選びで使われるのは【焦点距離】です。 図5を見てください。焦点距離とは、レンズの交点からフィルムやCCDまでの距離を表しています。そのため同じ焦点距離でもフィルムやCCDのサイズが変わると画角が変わります。


図5「レンズの焦点距離」 焦点距離はフィルムやCCDの大きさによって画角が変化する。

そのためカメラマンは自分が使っているフィルムやCCDのサイズごとに、どの焦点距離のレンズがどれくらいの画角になるのかを覚えています。

最近の一眼レフカメラにもいくつかのCCDサイズがありますが、レンズの表記に【35mm換算】というのを見かけます。これは昔から写真を撮ってきた方には一番なじみのある【35mmフィルム】のときの焦点距離を表すことで、画角を想像しやすくするための工夫です。

3DCGソフトでは、フィルムサイズ・焦点距離・画角のいずれも設定が可能です。フィルムサイズを固定しておけば、焦点距離でも画角でも覚えやすいほうで【画角】をイメージできるようになります。

今回はビジュアルクリエイターにとって最も評価を左右する【感情を想起させる映像作り】に関してでしたがいかがでしたか。仕事と作品作りの役に立ててもらえたらうれしいです。
次回も引き続き、カメラの構造と、映像が与える心理についてお伝えします。 普段から疑問に思っていることなどがあったら、facebook で教えてください。
facebook  https://www.facebook.com/kensaku.nagao

では、次回もお楽しみに。


更新日 2012.01.10
著者プロフィール
長尾 健作
長尾 健作
株式会社パーチ
大手制作会社での、デジタル化の推進、ビジュアライゼーション事業の起ち上げを担当。ビジュアライゼーション事業の起ち上げでは、営業戦略立案、人材戦略立案/組織作り/人材教育、サービス開発、技術開発、設備計画の立案など事業起ち上げに必要な全て行程の責任者として参画。独立後はビジュアライゼーション事業を起ち上げる、または拡大をされる企業様のサポートを行うコンサルティングサービスを提供。また、これまで経験から問題が起りやすい点や必要となる教育内容を解決するセミナーや、ツールを開発しています。
HP:www.perch-up.jp/

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