チュートリアル / もしもMotionBuilderでプリビズをしたら
第3回:プリビズの歴史をお話しましょう

更新日 2011.09.01

前回はMotionBuilderを使ったプリビズシステムを紹介しました。その中で、米国ハリウッドのプリビズアーティストたちがシステムをつくってきたと記しました。
今回は、米国ハリウッドでどのようにプリビズが発展してきたかについてお話したいと思います。


最初のプリビズ

プリビズが最初に行なわれたのはいつでしょう。それは、1970年代に制作された「スターウォーズ」シリーズだったと言われています。ジョージ・ルーカス氏の指揮のもと、Industrial Light and Magic(ILM)のスタッフが宇宙戦闘機Xwingなどのドッグファイトをミニチュアでシミュレーションし、モーションコントロールカメラなどを使って素材を撮影、合成し、驚異的な映像をつくりあげました。しかも、当時はコンピュータ上でデジタル合成なんてできず、一つ一つの合成素材を丁寧に撮影し、撮ったフィルムとフィルムを重ねあわせて合成するオプチカル合成という手段が用いられていたので、撮影する際にも緻密な設計が必要でした。そんな中でプリビズが生まれたのです。

最も有名なのが、1983年に全米で公開された「スターウォーズ ジェダイの復讐」の1シーン。スピーダーバイクという高速飛行するバイクが森林の中を疾走するシーンがありますが、その映像をつくるためにプリビズが行なわれたのです。このシーンは、背景の森林の素材、人物の素材、バイクのミニチュア素材などが複合的に絡み合う非常に難しいシーンでした。ILMのスタッフは森林のミニチュアをつくり、そこの中で人形を乗せたバイクのミニチュアを手作業で動かし、小さなカメラを使って撮影することで、制作を始める前に完成形を確認できる映像をつくりました。これが世界で最初に行われたと言われているプリビズです。このプリビズを元に、背景の森林を撮影し、人物を撮影し、ミニチュアを撮影し、的確な合成素材を作り上げていきました。こうすることで、初めてあのスピーダーバイクのシーンを完成させることができたわけです。


CGを使ったプリビズへ

その後、CGが急速に普及し、ダニー・キャノン監督「ジャッジドレッド」やデビッド・フィンチャー監督「パニックルーム」、ブライアン・デ・パルマ監督「ミッション・インポッシブル」などでCGを使ったプリビズが使われます。CGを使うことで、ミニチュアよりも正確に企画の内容を反映させることができるようになったのです。セットの大きさや撮影機材のスペックをCG上で実現し、より具体的に作業内容の確認ができるようになりました。


「パニックルーム」

そして、ジョージ・ルーカス監督は90年代後半、「スターウォーズ」新シリーズを制作するため、自らの制作拠点であるスカイウォーカー・ランチの中にプリビズ専門会社JAKフィルムを設立、本格的にプリビズ作業を進めます。JAKフィルムにはゲームなどのCG制作を行っていた若いスタッフが集められ、そこでルーカス監督の指示の下、台本に沿ってほぼ全編にわたりプリビズが制作されました。その映像をエディターが必要なシーンとそうでないシーンを振り分け、選ばれたシーンからプロデューサーたちが必要な作業工程とコストを算出して行きました。その結果完成したのが「スターウォーズ」新三部作です。

この実績により、ハリウッドではプリビズ作業が必要不可欠なものと認知され、現在では10社近くのプリビズ専門会社がハリウッドの映像制作を支えています。


The Third Floor社ショーリール2011


日本では?

当然ながら日本でもプリビズは行われてきました。「三丁目の夕日」の山崎貴監督はVFXスーパーバイザーとしての経験を活かし、2000年公開の「ジュブナイル」ですでにプリビズを駆使されていますし、多くの監督やVFXスーパーバイザーの方々が20年近く前からプリビズを利用されています。

しかしながら、残念なことにプリビズの役割を完全に実行されている例は極めて少ないと言わざるを得ません。というのも、ほとんどがVFXを制作するための「確認用」であり、「企画で決まった内容を、画像や映像を使って目に見えるようにし、その後の全ての制作工程を円滑に行なえるようにする」という本来の目的のためには利用されていないのです。企画決定から撮影スタートまでの時間が極めて少ない日本の映像制作の現状では致し方のないことなのですが。。。

とはいえ、プリビズは日本でも徐々に広がりつつあります。それはMayaやMotionBuilderのようなCG制作ソフトウェアとPCなどのハード面の性能向上、またツールの発達などにより、短い時間でもプリビズが可能になってきたからです。日本の映像制作の未来に期待したいですね。このコラムがその一助にでもなれば嬉しい限りです。

さて次回は、最近活発な3D映像制作のためのプリビズについてお話したいと思います。 お楽しみに。

更新日 2011.09.01
著者プロフィール
山口 聡
山口 聡
プリビズスーパーバイザー
90年代、日立系企業にて業務用フライトシミュレータを開発しながら、CG技術のイロハを学ぶ。その後、97年に(株)IMAGICAに入社。モーションコントロールカメラシステムMILOを担当し、映画、CMなどの実写とCGとの合成に携わる。2000年にMILO用プリビズシステムMILOBOTを開発。2005年よりMILOBOTを汎用プリビズシステムに改良し、リアルタイムプリビズとして運用。映画やCMでプリビズ作業を担当する。2012年よりフリー。米国Previs Society会員。米国Visual Effect Society会員。座右の銘は「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」。

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