トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第19回:制作ネットワークを構築する

更新日 2011.12.07

前回まで長々と制作費用について考えてきましたが、今回はネットワークのお話しです。ネットワークと言ってもサーバーやインターネット、昨今はやりのクラウドのお話しではありません。これまでのコラムでもちょこちょこ登場している人的ネットワークの事です。このコラムを読んで下さっている方の中には個人又は数人の事務所の方も少なくないと思いますが、今回はそういう小規模事務所又は個人事務所の方がメインととなるお話しです。勿論大規模事務所や社内レンダラーを要する会社組織の方にも有用だと思っていますので最後までお付き合い下さい。

人材とコストの狭間での悩み

小規模事務所(又は個人事務所)で仕事の波の振幅が大きくて、忙しい時は依頼を断らなければならないけれど、暇な時は結構暇という人はいませんか。または、アニメーションなどを含む大きなプロジェクトの話の相談が来たんだけれど、自分の事務所のキャパを超えていて仕事を受けることが出来ないと諦めてしまった人、更には事務所に無いスキルの仕事(VRやFlashコンテンツなど)に関しては、仕事の話が目の前を横切ろうとしているのに、自分には出来ない類の仕事と思って指を加えて見送っている人はいませんか。

そういう時に人を雇おうかと考えた事がある人は少なくないと思いますが(かく言う私もその一人なんですが)、しかし冷静に考えると、常に仕事が複数重なるほど慢性的な人材不足に陥っている訳ではないし、大規模プロジェクトもそうそうある訳では無い、また自社に無い技術の仕事に投資する(技術を持った人を雇うか、自分で自分の仕事量を減らして勉強するなど)ほど余力が無いなど、自社の業務状況を考えるとコスト的に厳しくなるので、雇うに雇えない....。自分に現実を突きつけられたような気がする頭の痛い本当に悩ましい問題です。

事にあたるに際して以下のような事が単純に考えられると思います。

1)このまま現状維持でなんとかやっていく。
2)幸運に恵まれ長期の忙しい仕事が舞い込み、それに合わせてスタッフを新規に雇う事が出来る環境を構築出来た。
3)これからの自社の成長に賭けて、投資をする(スタッフを雇ってみる)。

さてここからが経営者としての運命の分岐点です。
1が現状という方が多いのではと思います。しかし良く考えて見て下さい。現状でも収入が潤沢であればこの選択肢も有りかと思いますが、そうでない場合はこの先ずっと今の寂しい稼ぎが続くことを意味します。個人事業主として、又は会社経営者としてこれで良いのでしょうか(ん~、身につまされる....)。街で見かける高級外車に乗っている人たちを見て自分も乗りたいな~と考え、自分の収入を顧みて夢として処理してしまったことはありませんか。サラリーマンであれば、自分の将来的な稼ぎは年齢を重ねると大体見えてきますので、夢として諦めることもあるでしょうが、会社経営者として考えれば、夢を諦める必要はありませんし、そういった夢を現実にするために日々の徹夜しなければいけないような業務に取り組んでいるのではありませんか。ここでは高級外車を例に出しましたが、都心の億ションや、長期休暇(勿論スタッフに仕事は任せて)での海外旅行など何でもいいんです。もっと現実的な問題として自分の老後や家族、とりわけ子供に苦労をさせたくないなど考えたりはしませんか。もし考えたことがあるようなら、経済事情等に恵まれない限りこの選択はあまりお勧めできません。

2の様に流れに現在乗っている人もいるかも知れませんし、今そうでない人も今後幸せが訪れるかもしれません。しかし、現在の経済を考えると今上手くいっている人はかなりの幸運と言えるかもしれません。というか、運任せで会社経営は出来ません。中には今の良い状況にいるのは自分の力だという人がいるでしょう。そう言える人はまさにその通りなのだと思います。良い仕事をすることで継続的な仕事が発生し、更には仕事が発展していくような仕事を出来る人は確かにいます。この様な優れた経営者・技術者の方にはこの話はあまり必要の無いことかも知れませんので、流す程度に最後までお付き合い頂ければと思います。ここでは上手くいっていても不安な方、これまでの人生経験においてそんなに幸運と巡り会った記憶の少ない方など、運に頼らず自力で何とかしようと考えている人にはこの選択肢も頂けません。

3はこれまで会社を発展させてきた人が辿った道でしょう。2と絡みながら発展した人もいるでしょう。先を見越した有効な投資をこうじる。勿論そのためには綿密な計画・計算があり、それを実行に移す行動力と勝機を掴み取る実力があっての事だとは思いますが、凡人の私などにはなかなか出来ない事です。

八方塞がりになってきましたが、ここで一計。無い知恵を絞ってみます。様々な業務に対応できる様にするため、更には会社を発展させるためには人材が必要です。「じゃあ雇えば?」といわれてもコストの問題に直面します。資本(お金)があれば投入する事で解決しますが、資本があればそもそもこの問題には直面しないでしょう。コストの問題をどうするか。アルバイトの様な形で人を雇っても月に15~20万位の経費がかかります。社員にすればその倍以上です。とてもそんなお金は無い。繁忙時期や大型プロジェクトの際はペイできるが、暇な時はとても支払う自信がない。仕事を平均化する事は受け手側にコントロールできる話ではないので、逆に考えれば都合が良い時だけに使える人材がいないだろうかと考えが及びます。そうすれば平均して月数万程度のコストに抑えられるのに。数万くらいなら何とか出来るのに...。自分の持っていない技術や新しい技術の仕事の際に、その業務内容にぴったりはまる人材を調達できないだろうか。そうすれば自分がこれからわざわざ新たに勉強しなくても良いし、現業にも影響は無いのだが....。

これまで私のコラムを読み続けて頂けてる方には答えが見えて来ていると思います。この答えには考えを同じにする協力者が必要なので、ここでは私なりの答えという事になりますが答えはあります。それはバーチャルカンパニーという考え方です。

バーチャルカンパニーとは

以前のコラムでも大まかにではありますがバーチャルカンパニーの話を書きました。実際にこれからお話しするような内容をどう呼ぶのか知りませんし、当たり前すぎて名前すら無いかも知れませんが、ここでは便宜上バーチャルカンパニーと呼ばせて頂きます。

バーチャルカンパニーの内容を簡単にお話しすると、各小規模(又は個人)事務所を人的ネットワークで繋いで、あたかも1つの組織のように運営することです。バーチャルネットワークに参加している事務所は各々ある領域の専門家という位置づけで、プロジェクトによってある時はプロジェクトリーダー、またある時は営業、レンダラーと、プロジェクトによって役割を変え、分担して事にあたります。

分かり易いように例を挙げて説明します。とあるA事務所にCG制作の依頼がありましたが、丁度仕事が重なって受けられない状況にあるとします。普通は仕事を断ることになるのでしょうが、ひいきにして貰っているクライアントの案件だと申し訳ないし、新規クライアントの依頼であれば尚更断りたくないのが心情でしょう。その様な時にバーチャルカンパニーを利用します。A事務所はクライアントの依頼を普段通りに請け負います。そしてバーチャルカンパニーに参加している事務所に制作の打診をかけ、受けて貰えるB事務所に制作を依頼します。依頼内容はA事務所が全く手を付けられないほど忙しい場合は、窓口や打合せだけを自社で対応して、打合せ情報から先の制作全てをB事務所に丸投げします。もしA事務所がモデリングならとか、レタッチなら出来る状況であれば、状況に合わせた内容の制作をB事務所に依頼します。最悪A事務所が打合せにすら時間が取れないようであれば、B事務所が全てを請け負うことになりますが、その際の注意点としてB事務所の人間はA事務所の所員として打合せに参加する必要があります。要はバーチャルカンパニーに参加している事務所を、自社のスタッフと考えて協業するということです。ですのでフィーに関しても下請けや孫請けに出す時のように、売り上げの30~50%がA事務所の取り分で残りがB事務所というようなやり方ではなく、純粋に制作内容次第でフィーを決めます。もしA事務所のCG制作に関する経費配分が、モデリング30%、レンダリング50%、レタッチ20%としているなら、モデリング、レンダリングを依頼したら80%のフィーが発生します。丸投げの場合は売り上げの全額がB事務所のフィーになります。勿論、A事務所があったからこそ依頼があった業務なので、最初に受注額から営業費(5~10%くらいでしょうか)を引いた90%超の金額がB事務所のフィー計算のスタートになります。


ここまで読んでバーチャルカンパニーにメリットはあるのかと疑問符がついている方が大半かもしれませんが、今回はここまでにさせて下さい。本当は今回1回で纏めるつもりでしたが、間違いのないようにきちんと伝えるために言葉足らずにならないよう文書量を多くしてしまった結果、今回は序章で終わってしまいました。次回は本章としてバーチャルカンパニーを運営していく上でのメリットや、バーチャルカンパニーを機能させるためのルール(決め毎)に関して例を挙げてきちんと説明しますので興味を持たれた方は次回を期待していて下さい。

最後に

マンション広告用パース
マンション広告用パース 制作:Next Picture
毎度、次回に続く構成になって申し訳ありませんが、次回を待たずして行動を起こしたいと思います。普段付き合いのあるCGプロダクションのATA企画さんの協力のもと、ATA企画さんの事務所で建築 Visualization 関係者の集まりを12月27日(火曜)に開催します(スタートは19:30)。バーチャルカンパニーのスタートというような大それた考えではなく、今の建築Visualization関係者の間で交流が持てればというのが発端です。堅苦しい会ではなく同業者の飲み会程度に考えて貰えればと思います(何せ飲み会の席での発案なので...)。隣の事務所はどんなことをやっているのかとか、ATA企画さんや参加事務所の方と交流が持てればなど軽い気持ちで参加頂ければと思います。詳細は今週末から来週初めまでにはATA企画さん又は私のHP等で告知しますので宜しくお願いいたします。因みに現在決まっていることは、林田さんと私のプチセミナー(酒の肴程度)、ATA企画さんの皆さんが制作されたCGの品評会(辛口コメントOK) などです。会費は3000円です。本企画の首謀者は、ATA企画(多田)、fieldjam(林田)、 COMPUTER VISUALIZATION(渡辺)、Next Picture(冨田)となっています。 最後に告知するURL等を記載して置きます。ATA企画さんの事務所は30~40人位の参加は行けると言ってましたので、年末の飲み会として気軽に参加頂ければ幸いです。

ATA企画
HP http://www.atakikaku.com/

Next Picture
HP http://www.next-picture.co.jp/

最後に今回掲載しているCGパースはマンション広告用に制作したパースです。特にこのパースはwebでの先行告知のために雰囲気重視のパースをとの依頼で私が好き勝手に描いたパースです(幸いクレームや修正等はありませんでした 笑)

それではまた次回。


更新日 2011.12.07
著者プロフィール
冨田 和弘
冨田 和弘
Next Picture株式会社 代表
1990から2007年まで大成建設設計本部に所属し、プレゼンテーションGrのプロジェクトリーダーとして建築家原広司氏、伊東豊雄氏との多数のプロジェクトをはじめ、大規模プロジェクト・海外プロジェクト・設計コンペ等にCGディレクター及びデザイナーとして参画。2008年に株式会社未来技術研究所の建築ビジュアライゼーションセンターの所長に就任。2009年より独立し現在に至る。2006年より京都大学建築学科非常勤講師。建築ビジュアライゼーションの講演、執筆多数。一級建築士。
HP:www.next-picture.co.jp

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