トレンド&テクノロジー / 冨田和弘が斬る!建築ビジュアライゼーション業界
第20回:制作ネットワークを構築する その2

2012.02.15

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読者の皆様、明けましておめでとうございます。本年もこれまで以上に言いたい放題(書きたい放題)やっていく所存ですので、暖かく見守って頂ければ幸いです。新年1発目ではありますがお題は前回に引き続き「制作ネットワークを構築する」です。前回はバーチャルカンパニーの話を事例を踏まえて簡単にお話ししましたが、今回はより詳しくお話ししようと思いますのでお付き合い下さい。今回本コラムを初めてお読みになる方、又は前回は読んでいないという方は前回のコラムをご一読頂いた上で本コラムを読み始めて下さい。そうしないと誤解と疑問が多く生じる可能性があると思いますので。(前回のコラムを読んで頂けた方も、一度さらっと前回のコラムに目を通して頂ければと思います。)

バーチャルカンパニーとは

バーチャルカンパニーとは小規模事務所(又は個人事務所)間での制作に関する相互ネットワークの事をいいます。現状でも制作を下請け業者に出している人や、他事務所と共同制作で仕事をしている人がいると思いますが、前者の下請けに出す形では無く後者の共同制作というスタイルに近いネットワークです。共同制作と若干異なるのは、複数(多数)の事務所がバーチャルカンパニーに参加していて、プロジェクトがトリガーとなって、その中で集められた(参画表明した)数社が共同制作を行う点です。(何故この様な事をして協業する事を勧めるのかは前回のコラムで書いていますので、今回は割愛します。)

バーチャルカンパニーの仕組みを以下に挙げていきます。

1. 複数の会社(個人事業主)が集まり、仮想的に1つの会社のように振る舞う。
2. 参加各社は通常は自身の業務を遂行している会社(個人事業主)が主体。
3. 参加各社は必ずしも建築CG関係者である必要はない。(例:異業種CG制作者、映像関係者、ネットワーク関係者等)
4. 参加各社に上下関係はなく、フラットな関係をもつ。
5. バーチャルカンパニー内で参加各社は各々が一般の会社で言う1つの部署として存在する。
6. 制作業務は参加各社の何れかの会社が持ち込む。(持ち込んだ会社はプロジェクトの取りかかりとしては、クライアントの側面をもつ)
7. 仕事を持ち込んだ会社がプロジェクトのリーダーとなって、参加各社の中からプロジェクトの内容・性質を鑑みてプロジェクトに参加して欲しい会社を選択しプロジェクトを立ち上げる。
8. 6~7の様に参加各社は何れも営業部としての側面と制作部署としての側面の2つの役割を持っている。

仕事は参加各社の何れかが持ち込むことになります。そして持ち込んだ会社はそのプロジェクトのリーダーとして動きます(説明上A社と呼びます)。A社自身の繁忙度にもよりますが、前回のコラムで触れているようにA社は基本的にはマネージメントに徹します。制作を請け負う会社はA社のマネージメントとディレクションのもと制作を行います。プロジェクトの規模が大きく参加会社が複数に跨る場合は、制作会社の内の1社がディレクターを兼ねるケースもあります。大規模プロジェクトの場合は単独でディレクションを行う会社を1社立てる必要が出てくると思います。

9. 実際の制作の発注クライアントにはA社以外は見えないようにする。(クライアントはA社に仕事を発注しているので、後ろ盾として制作を行うバーチャルカンパニーのプロジェクト参加各社の存在を知る必要がない。)
10. 必然的にクライアントとの窓口はA社になり、打合せ、制作フィーの決定等のマネージメント業務を行う。
11. A社は窓口としてクライアントとの対応をきちんと行い9を維持し、プロジェクト参加会社は制作内容に関して守秘義務を負う。
12. A社はプロジェクト参加各社とフィーの取り決めを行う。

簡単に言えば、クライアントはいつも業務依頼している制作会社にふつ~に仕事を出してるだけなんだけども、実は制作の部分を別の会社がやっているという塩梅です。そのためにも品質やテイストに変化があると問題なので、A社のディレクションや制作会社のスキルは重要です。制作会社を前面に出さないようにする理由は、言葉は悪いですがクライアントを横取りしてしまうような事を未然に防ぐためです。一般に自社(A社)に来た仕事を他社(B社)に振り難い1番の理由は、その後そのクライアントがA社をスルーしてB社に振ってしまうことが往々にしてあるからです(実際に経験がある方もいると思いますが)。特にクライアントが設計関係だと起こりがちです。悪意があっての事では無いと思いますが、これでは他社と協力して何かを行うというのも難しくなってしまうので、そのために上記の9は必須です。12のフィーの取り決めも重要です。この点も前回書きましたが、この場合のA社が自社のプロジェクトでの役割に関わらず、 一般の外注のケースのようにプロジェクトフィー全体の3割~5割はA社が取って、残りのフィーから作業分担に合わせて制作会社にフィーを分配するような事をしないことです。A社とその他のプロジェクト参加各社の関係はパートナーであって発注者→下請けの関係ではないので、純粋に各々の作業内容と作業量に応じてフィーの分配を行うべきです。

バーチャルカンパニーを上手く機能させるために

バーチャルカンパニーを上手く機能させるためには更に幾つかの事柄があります。

1つはバーチャルカンパニーの参加を仕事を貰うための手段とは考えないことです。ここでいうA社はたまたま繁忙期に複数の業務が重なったため、その他の会社から見ればクライアントになった訳で、A社自身が忙しくなく依頼があれば制作会社側にまわりたい時も必ずあります。お互いの会社を助け合う+経費削減のための仕組みなので、最初からどちらかの側にまわるつもりで参加していると当事者やその他の参加各社との関係がおかしくなってしまいます。結果的に仕事を持ち込む側が多かったり、制作側が殆どになってしまうようなケースは問題無いと思いますが心構えは重要です。要は精神的な話です。

もう1点は、参加各社が互いを信頼できる関係にあるか(築けるか)です。あの会社と協業してみたいと思わせる何かを互いに持つことが重要です。何かとは単純に制作スキルだけではありません。モデリングが早いとか、時間的な無理が利く等もそうですし、アニメーションの際の音楽センスだったり、レンダリングスキルは今一だけど、非常に良いアングルを出すとか、背景のレタッチは特筆すべき点がある等も立派な動機です。もっと言えば、これまでに見たことの無いような表現力のあるコンテンツを創造したいとか、自分一人ではなしえない様な大きなプロジェクトを成功裏に導きたいとか、更には建築ビジュアライゼーション業界をひっくり返すような事をしたい等、お互いが高い志を持って同じベクトルを共有できるかにかかっています。(お金がベースだと失敗の確率は高まるでしょう)

最後は理想論のようになってしまっているので、「そんなに世の中甘くない」とか「理想通りに事を運べれば苦労は無い」など思われる方もいると思いますが、私はそうは思っていません。この類の話を実現させることは確かに難しいのですが、成功するか失敗するかの分岐点は、上で書いたように、理想論ともとれる確固たる意志と目的意識を持っているかにかかっています。上手くいかずに離散しそうな時に理想論とも取れる高いプロ意識と先を見たベクトルがお互いの精神的な支柱となって命を繋ぐのです。よくビジョナリーカンパニーの話ででてくるビジョンなど、「本当にこう思って会社経営をやってるの?」と思うような理想的な事が掲げられていたりしますが、成功する企業はこのビジョンが苦しい時の社員の最後の精神的な支柱となり、カンフル剤となって会社を危機から救ってくれます。そうして成功した会社も多数あります。

バーチャルカンパニーの先に

バーチャルカンパニーを続けていきプロジェクトを多数こなし、且つパートナーシップが上手くいっているようだと、常々パートナーとして固定的に動く会社が出てくる事が考えられます。私はバーチャルカンパニーの先行きとして、この様な会社同士はくっついて1つの会社になるのが自然な成り行きと考えています。中には会社であれ、個人事業主であれ、トップとして采配を振るいたい人もいるかとは思いますが、そういう人は別にして(悪いと行っている訳ではありません。あくまで考え方の相違というだけです)、そうでなければ自然に組むことが出来るのでは無いかと思います。または、1つの会社にしなくても事務所をシェアするのもありかと思います。事務所をシェア出来ればより緊密に動けますし、何より経費を削減できます。プロジェクトによってはハードやソフトを融通しあうのもあるかと思います(そうなってくると結局は会社にしたら? という次のステップが待っているとは思いますが)。

まだまだ利点は沢山有るのですが、後数回分のコラムの分量が必要になりそうなのでこの辺にしておきます。次章に行く前に1つ問題点を。昨今、守秘義務の遵守が厳しくなり、孫請け等が厳しく規制されるようになってきています。世の中の流れとして当然というか遅すぎる規制ではありますが、バーチャルカンパニーの考えからすると問題です。どうやって切り抜けるか! 切り抜け方は幾つかありますが(勿論グレーな方法ではなく、クライアントにご迷惑をかけない正攻法で)、ここではここまでにしておきます。実際にプロジェクトをご一緒する時に一緒にクリアしましょう。

最後に


マンション広告用パース 制作:Next Picture

ここまで読み進められてどう思われましたか?やっぱり理想論の域を出ていませんかね?BIMの登場などで業界の状況も変化していき、変化の具合ではワークフローが激変しそうな昨今、更には業界がどんどんシュリンクしていく中で、小規模事務所や個人事業主が生き残っていくため、否、変化に対応して発展していくための1つの手法と私は考えています。判断は読者の方それぞれに委ねるとして、実際に活動は開始しようと思っています。

前回この場を借りて告知をさせてもらったNeFKAもその1つです(ご報告が遅れましたが、第一回は予想を超える多数のご参加を頂きました。参加頂いた皆様本当にありがとうございました)。まだ首謀者間でNeFKAの活動に対して完全なコンセンサスを取れてませんが、概ね同じベクトルの元活動を続けていこうと言うことで合意しています。参加して下さった方には次回からの進め方や希望をお聞きするために近々アンケートの様な物をお送りするかとは思いますが、届いたら時間のある時で構わないので返信頂けると幸いです。因みに次回は4月の初めか5月の中以降(GW前後はみんさんGW進行で大変だと思いますので)に開催予定です。前回多数のご参加を頂けたので次回は少し広い場所でも借りようかと話をしているところです。また告知しますので開催の際は宜しくお願いいたします。

最後に今回掲載しているCGパースは前回に引き続きマンション広告用に制作したパースです。この業界のパースは独特ですね(笑)。クライアントの希望に上手く沿えたか今一ピンと来てませんが(←それが問題)、私なりの答えです。

EUの問題や足下の日本の政治などあまり明るい話題が無い昨今ですが、お互い強く不安定な世の中を乗り越えていきましょう!それではまた次回。

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