Starship Troopers: Invasion
SOLA DIGITAL ARTS Interview『 Entertainment Creation Suite、 Maya、3ds Max、Softimage、MotionBuilderを駆使! フルCGで創るハリウッド映画人気シリーズの最新作』
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この夏、全国で劇場公開されヒットとなった「スターシップ・トゥルーパーズ:インベイジョン」(以下「STi」)は、人気SFアクション映画「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズの最新作である。ポール・バーホーベン監督の第1作「スターシップ・トゥルーパーズ」から数えて4作目となる本作の監督は「APPLESEED」等で知られる荒牧伸志氏が、また制作は日本のCGスタジオ SOLA DIGITAL ARTSが担当し、ハリウッドのハイレベルな要求に応えて人気シリーズのテイストを継承。さらにCGならではの表現に挑戦したシリーズ初のフルCG作品となった。このビッグプロジェクトに、Autodesk Entertainment Creation Suiteに搭載されている、Maya、3ds Max、Softimage、MotionBuilder等々を駆使して挑戦した6人のクリエイターにお話をうかがった。
各分野のプロフェッショナルが大結集
――荒牧監督の新作があの人気シリーズの続編と聴いた時は驚きました
河田氏:実はこの企画は、われわれの方から提案したものなんです。というのは2009年、サンディエゴで開催されたアメリカンコミックのイベント「サンディエゴ・コミコン」で、荒牧監督とプロデューサーのジョセフ・チョウが米国ソニーのプロデューサーに会い、一緒にCGで映画を作ろうという話になったのがきっかけです。最初はもっと柔らかい企画を提案されたんですよ。髪の毛が揺れまくりのキャラクターもので、マントなんかも翻ってるような(笑)。しかし、当時まだちゃんとしたスタジオもない状態だったのでそれは難しい。そこで逆に、ソニーピクチャーズエンタテイメントの作品で硬いモノ系の代表格『スターシップ・トゥルーパーズ』はどうか? と逆提案し、「それはいいね!」ということになったんです。
CTO/CGプロデューサー
河田 成人 氏
――それにしてもなぜ「スターシップ・トゥルーパーズ」を?
河田氏:荒牧監督がバーホーベンの「スターシップ・トゥルーパーズ」のファンだったのはもちろんですが、実は監督はもともと原作のSF小説『宇宙の戦士』の大ファンで、強い思い入れがあったんです。特に作中で主人公たち兵士が着用する"パワード・スーツ"がすごく気に入っていたんですが、映画の『スターシップ・トゥルーパーズ』第1作では、残念ながら予算その他の問題でこのパワード・スーツが登場しなかった。そこで、何とかしてこれを自分たちの作品で再現したい、という思いがあったそうです。
――シリーズ第3作に"マローダー"というメカが登場しますが?
河田氏:ええ、たしかにマローダーはパワード・スーツのつもりで作られたメカだと思いますが、われわれの考えるパワード・スーツとはちょっと違っていたんです。そこで監督が思い描く、よりスタイリッシュなパワード・スーツを新たにデザインし、これに大暴れしてもらおうと考えました。マローダーについても、その新型としてマローダー・マークIIというメカを新たに登場させています。
――人気シリーズだけにいろいろ意識されたようですね?
河田氏:CG作品とは言え、実写版「スターシップ・トゥルーパーズ」3部作の流れを踏まえるという前提があるわけですから、やはりフォトリアルな部分を狙いたいという思いがありました。それから、やはりパワード・スーツです。荒牧監督の考えるパワード・スーツを敵役であるバグと思いきり闘わせ、よりスタイリッシュなSFアクションものにしたいというのが非常に大きかったですね。また、今回は人間のキャラクターが非常に多く登場することから、群像劇としての面白さも狙っています。
――制作スケジュールが厳しかったと聞いています
河田氏:ええ(笑)。話が持ち上がったのが2009年で、2010年の4月頃からシナリオ開発やプロット開発を開始。そして、同じ年の11月頃にシナリオが完成してグリーンライト(製作開始のGOサイン)が点いたんです。そこであわてて技術者を集めてスタジオを開設し、2011年1月からSOLA DIGITAL ARTSのスタジオが稼働しました。映画が完成したのが2012年の5月ですから、実質1年半かからずに長編を1本仕上げたわけで......半端でなくタイトだったのは確かですね。
――するとSOLAはこの映画のために生まれたスタジオなんですね
河田氏:確かに「STi」が創設のきっかけですね。もともとディレクターの荒牧とプロデューサのジョセフ・チョウ、そしてCGプロデューサの私の3人だけの会社だったんです。それが急にこの案件の契約が決まってビッグプロジェクトが動き始めてしまったため、そこから凄い勢いでスタッフィングを始めました。私や監督の知り合いをたどり、長編CGの制作経験を持った力のあるスタッフに声をかけていったのです。彼らは各分野のスペシャリストとして自分の世界を持った人たちですが、私の力不足もあり、全体のまとめ役がないまま走りだしてしまった処はあります。
――映画制作のプロジェクトとしては少々イレギュラーな形では?
河田氏:ええ、どうしようもなかったとは言え、反省点ですね。ただ、集まってもらったスタッフは、荒牧監督が絶大な信頼を置く個人や協力会社ばかり。だからバラバラの個性を持っていたとしても、とりあえず荒牧監督の方向は向けます。そこでこの1点をテコにして、何とか全体をコントロールしていきました。もちろん容易ではありませんが、テクニカル的にもアート的にもこれほど高いパフォーマンスを備えたプロたちだからこそ、こんな短期間では到底なしえないクオリティの映像が創れたんですよ。もちろんSOLAだけでは手が足りず、コロッサス、ワンダリウム、ポリジー、モズーといった協力会社各社に、初期段階から力になってもらえたことも非常に大きかったですね。
Entertainment Creation Suite、Maya、3ds Max、Softimage、そしてMotionBuilder
――すると当初は使用ソフトも決まっていなかったのでは?
河田氏:そうですね、監督や私の回りの人間がMayaユーザが多かったので「基本Mayaだろうね」なんて言ってたんですが、 まず"人ありき"でスタッフを集めたため、結果としてさまざまなソフトの使い手が参加することになりました。Mayaはもちろん3ds Maxユーザもいるし、コロッサスさんのようなSoftimageユーザもいるという状態でした。
――すると制作パイプラインはどのような形に?
河田氏:以前からの監督の構想の1つとして、MotionBuilderを使い、キャプチャデータを基にかなりの部分までアニメーションを詰めるというアイデアがありました。今回、協力会社もMotionBuilderを使える処が多かったということもあり、これを試そうということになったんです。すでにMayaチーム、3ds Maxチーム、Softimageチームがありましたが、それぞれ別のモデルをつくりアニメーションさせると相当なロスなので、この点からもアニメーション制作の基幹はMotionBuilderということに決めたんです。しかもモーションエディットに留まらず、アニマティクスもこのMotionBuilder上でつくって、"アニメーションOK"の処まで持っていこうと考えました。そして、そんなツール検討の際に、オートデスクのCGアニメーション製品が複数搭載されているEntertainment Creation Suiteの存在を知り、導入を決定しました。
――キャラクターについては?
河田氏:基本的には人型の生身の人間キャラクターとパワード・スーツはSoftimageでつくり、敵役の"バグ"と背景はMaya。エフェクトは3ds MaxにMayaも併用しています。そして、最終的にでき上がったものをすべてAfter Effectsに集めてコンポジットチームがコントロールしているので、コンポジットは相当複雑なことになったしまったかも......
松本氏:いや、そんなことはないですよ(笑)。当初の素材数をできるだけ絞り込んでやっていましたから大丈夫でした。
松本 勝 氏
――MotionBuilderでアニマティクスを作った後、どうやってSoftimageやMayaに分けて行ったのですか?
岡田氏:キャラクターに関してはある程度までセットアップした状態で用意し、カメラについてもMayaとSoftimage双方で共通に使えるものを作りました。そのカメラデータはそのまま両方を行き来できるようにしておいて、キャラクターの骨データだけをSoftimageに持っていって......というパイプラインですね。また、Mayaで作られた背景等についても、MayaのシーンのままもらってFBX等で読込み、Softimageに持ってくる形です。
テクニカルディレクター
岡田 博幸 氏
――カメラのアニメーションはどの時点で付けるのですか?
加納氏:MotionBuilderの作業は、基本、カメラのアニメーションがフィックスしてからになります。もちろんその後、MotionBuilder上では作れないものなど、細かい調整などが入ってくるとは思いますが。
加納 一明 氏
――アニメーションに関して特に工夫されたポイントは?
加納氏:まず余裕のないスケジュールという前提があったので、作業の効率化やスピードアップのためずいぶん工夫しました。たとえばバグ等も全部プリセットで基本的な動作を作っておいて進めたんです。要するにゲーム的なやり方ですね。アニメチームのリーダーが"人間キャラを刺して投げる"などのバグの基本的なモーションを作り、それをアニマティクスアニメーション制作の協力会社に渡してリファレンスとして使ってもらったんです。そうすることでアニメーション全体の統一感を守り、同時に作業のスピードアップを図っていきました。
河田氏:それと......アニメーションの工夫という点では、モーションキャプチャーのアクターをアメリカから招いたというのも挙げておきたいですね。
――なぜわざわざ海外からアクターを?
河田氏:「STi」はある意味"海兵隊もの"なんです。登場する人間キャラは兵士ですから、銃を構えて自然に絵にならなければ話になりません。この"素で銃を構えて絵になる/ならない"という点から見ると、日本人アクターとアメリカ人アクターでは大きな差があります。実際、アメリカ人の体型の役者が銃を持って立つと、それだけで雰囲気が全然違うんですよ。フェイシャル・キャプチャーも、同様にアメリカ人のアクターさんにマーカーを付けて行いました。「STi」はハリウッド映画であり全編が英語劇ですから。外人さんの方がジェスチャーも顔の表情も豊かなので、キャプチャーしたとき面白いデータが取りやすいんですよ。まあ、これは技術的にどうというより、作品のテイストに合わせた工夫です。
――アメリカ人のフェイシャルはそんなに違いますか
加納氏:基本的に日本人は表情幅が少ないので、動き幅は確実に上がるだろうと思っていました。キャプチャーをし、データとして見ることでアメリカ人の表情の豊かさに改めて驚かされました。日本人はかなり動いているように見えても、実は表情は固まったままで動くのは口元だけだったりしますが、外人アクターは本当に顔の動きが停まりません。つねに情報があるというか、キャプチャーすると眉とか眼とか頬とか絶えず多様な情報が入ってくるんですね。実際に顔の動きを見ると「こんな風に動かせるんだ!」と驚くほどで、日本人にはできないような動きもかなりありましたね。
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*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。