Starship Troopers: Invasion
SOLA DIGITAL ARTS Interview『 Entertainment Creation Suite、 Maya、3ds Max、Softimage、MotionBuilderを駆使! フルCGで創るハリウッド映画人気シリーズの最新作』
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通常の1/3まで作業時間を圧縮したFaceRobotの威力
――フェイシャルと言えば、今回はFaceRobotを活用されたと聞きました
河田氏:そうですね。 実はこれも監督の狙いの一つだったんですが、今回はSoftimage搭載のFaceRobotというフェイシャル用Rig・Animationキットを使用しています。このFaceRobotを全面に使って本編を制作した例は、国内ではあまりありません。おそらく「STi」が初めてでしょう。
――FaceRobotの導入経緯をご紹介ください
河田氏:これも導入背景は、スケジュールとコスト対策という意味合いが強かったですね。なにしろ「STi」では顔出しするキャラクターが15体もあり、そのフェイシャルのターゲットからすべてを一から作るのは、スケジュール的にもちょっと考えられない状態でした。そこへコロッサスさんから「ぜひFaceRobotを」という強い推薦があり、また同社がFaceRobotで作ったサンプルの出来の良さもあって採用になりました。
――どのような効果、メリットが得られましたか?
岡田氏:FaceRobotはフェイシャルギリングとそのアニメーション制作に特化したソリューションで、非常に簡便な作業でリアルなフェイシャルアニメーションを作りだせます。実際、あそこまでのセットアップをあの程度の簡単な作業で作れるのは凄いことだと思いますね。あのシステムをイチから作ろうとしたら、開発期間だけでたいへんな時間がかかったでしょう。
――具体的にFaceRobotでどのていど効率化できたでしょう?
岡田氏:セットアップの時間だけで換算すると、調整期間等を含めても「多少削れたかな」程度だと思いますが、その実力が発揮されたのは実際の作業に入ってからです。カメラを入れ込んで顔の調整をして......という従来の作り方に比べ、時間もコストも半分以下に抑えられたんじゃないでしょうか。
加納氏:FaceRobotの効果ということで言えば、今回の効果はもっと大きかったんじゃないかな。私の実感値では、普通のやり方で作る3分の1ほどに時間短縮してくれた気がします。もっともFaceRobotを本格的に使った初めての取組みだし、中盤から後半に進むまで作業結果がどうなるか分からないまま進んでいたので、実は結構ドキドキしてました。最終的には、やれるだけやるしかないと開き直りましたが(笑)
――キャラクターやクリーチャのリグ構造で何か工夫されましたか?
岡田氏:新たに開発している時間はなかったので、基本的には今までしてきたことの延長線上です。たとえば ICE Deformersのデュアルクォータニオンに少し手を入れたものとか、疑似的に筋肉の表現をやった程度で、つまりMotionBuilder上の動きに合わせてセカンダリーの骨で動かすやり方です。ただSoftimageとMotionBuilderで筋肉のシルエットが変わりすぎるのもアニメーターは嫌でしょうし、レイアウトも取り難いと思うので、ある程度、Softimageで仕込んだ仕組みはMotionBuilderでも再現可能なレベルにし、結果があまり違い過ぎないようにしました。もっとも上半身裸とか全裸のキャラクターもいたので、それらはまたSoftimageの方で詰めたりしていますが。
――人間のキャラクターがすごく多いですよね
岡田氏:ええ。最終的な体数はものすごく多くなりました。モブキャラまで含めるとだいたい70体くらい......。セットアップ担当が私を含め2名だったので、まともにやってたらとても終わりません(笑)。そこで最初の段階で荒牧さんにキャラクターの身長を決めてもらったんです。男で3パターン、女で2パターンの身長ということにして、そこからベースとなるものを5パターンすべて作ってしまいました。そして、ツールを使ってそれを全部流し込んでいく感じで、他のキャラクターたちをセットアップしていったんです。
――そういった自社開発のツールは他にも?
岡田氏:そうですね、特にキャラはカット数が非常に多かったので、ルーチンワークを減らすためのツールをたくさん作りました。アニメーションもコンバートされたものからカット単位でハイポリなキャラクターを読込んで、カット作成用のシーンを一連で作るものとか、複数体のキャラクターがいるとき勝手にパス分け素材分けまで全部してくれるツールとか......。最終的には、キャラ回りだけで30から40くらいは書いていると思います。
各分野のプロが蓄積した経験値をフルに生かして
――背景についてはいかがでしょう、特にこだわった点などありますか?
中澤氏:背景も同様で、かなりの量があったんですが、マット担当まで含め背景チームのスタッフがちゃんと揃ったのは納品3ヶ月前で......。それまでは基本SOLAの3人と協力会社の方1名の計4名でやるしかありませんでした。そこで"1年半という期間で可能なレベル"をあらかじめ決め、そこからブレないようにしていったんです。背景についてはそれが一番のポイントでしたね。
中澤 勤 氏
――具体的にはどんな工夫を?
中澤氏:ファームの準備が遅れ、当初レンダーもどこまでコストをかけられるか分からなかったんですが、45あるステージ数はどうしてもシナリオから削れないということでとことん省力化を図りました。カメラに映る処と映らない処の区別を先にしっかり決め込み、映らない所は作らないよう徹底したんです。そうすればレンダリングも軽くなりますからね。そのため、作ってないのに作ってあるように見せるにはどうするか、に始終頭を使っていた、というのが実感です。実際、完成した映画には、"作ってあるようだけど実は作ってない"というシーンがたくさんありますよ。
――いちばん苦労したのは?
中澤氏:実は作業が始まる前のアニマティクスモデルが一番大変でした。ファインモデルになってから迷っていたら終わらないので、そのアウトラインとかライトのポジションなど決めた上で、誰が担当してもそれなりに作ってもらえるようにする必要があったんです。つまり、誰がやっても一様に、レンダリング結果が一定の基準で出てくるようにするためのセットアップですね。ライティングもショットで詰められたらいいんですが、その時間も無いと思ったので、平均点より少し上を行くくらいのライティングになるように仕込んでおきました。それでショットで調整せずに一括でレンダーに投げても、全体としてそれらしい絵が出来上がるように調整したのです。
――エフェクトに関してはいかがでしょう。今回のテーマは?
清塚氏:エフェクトチームでは3ds Maxをメインに使ったんですが、今回のプロジェクトはMayaのワークフローで動いているプロダクションだったので、Mayaから3ds Maxへスムーズにデータを持っていくことが一番の課題でしたね。いろいろ検討しましたが、解決法は単純で、今回はFBX変換で処理しています。FBX形式にしてしまえば、おおむねどのソフトでも行ける、ということですね。
清塚 拓也 氏
――特に工夫したエフェクトなどありますか?
清塚氏:バグに着弾するとパッと体液が飛び散るんですが、あれは実は基データはRealFlowで作っています。しかし、本編中のショット数が結構多く、それをいちいちシミュレーションしていられないので、Maya内で完結するようなアセットを作り、Mayaの作業だけでフィニッシュまで持っていけるワークフローを組みました。つまりRealFlowのパーティクルデータをメッシュ化してMayaへ持っていき、それを配置すればOK!といういうやり方ですね。これでかなりの工数を抑えられました。また、煙なども3ds MaxのFumeで作っていますが、これも単純に3ds Maxでレンダーしたのではなく、3ds Maxでレンダーした平面素材をAfter Effectsの3D空間内に置いてリライトしてやっています。ライティングをAfter Effects内でやるやり方ですね。レンダーしなおす必要がないし、他のカットでも使いやすいなどのメリットがあるんです。
――皆さんのお話をうかがうと、今回は共通して時間との闘いが最大のテーマだったようですね
河田氏:当然ですが、アメリカの企業と契約を結んだ以上、スケジュールはおいそれと動かせません。もっとも今回は向こうのプロデューサーが融通を効かせて3週間ほど伸ばしてくれたんですが......。結果として、テクニカルディレクターを立てたりパイプラインを構築する間もなく、映画制作に突入してしまいました。ですから今回は新しい技術や表現に挑戦するというより、各分野のプロフェッショナルが蓄積してきた経験値をフルに生かして作りあげたという側面が強かったですね。
――最終的にプロジェクトへの参加スタッフ数は?
松本氏:SOLAとしては最大で35名ほど。それに、前述した協力会社4社のスタッフが中心となりました。その他にもエフェクトやコンポジットなどでは、外注先にスポット的に入ってもらった人もたくさんいます。特に後半は海外を含め多くの人に手伝ってもらいました。本編のクレジットには300名くらい載ってますよ。
――アメリカでの反響とか聞こえてきてますか?
松本氏:映画版のファン、原作小説のファンそれぞれで、また評価はいろいろ分かれるようですが、総じて悪くないと思います。
河田氏:正統派のパート4だという感じで、おおむね高評価をいただいてるようですね。間もなく日本でもBlu-ray/DVDがリリースされるので、劇場公開を見逃した方は観てほしいです。荒牧監督も言ってましたが、フルCGの映画が苦手という人でも、アクション好きやSF好きなら、ストレートなエンタテイメントとして違和感なく楽しめる映画になっています。いろんな意味でサービスしまくっているので、ぜひご覧ください。
「スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン」
(Blu-ray/DVD)
11月21日リリース(SELL & RENTAL)
導入製品/ソリューション | ・Autodesk Entertainment Creation Suite ・Autodesk Maya ・Autodesk 3ds Max ・Autodesk Softimage ・Autodesk MotionBuilder |
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導入目的 | ・フルCG長編映画のCGツールとして ・アニメーション制作の基幹として(MotionBuilder) |
導入ポイント | ・各分野クリエイターが使い慣れたソフト ・FBXによるデータ交換の容易さ |
導入効果 | ・各クリエイターがパフォーマンスをフルに発揮 ・各CGソフトの特徴を生かした活用 ・高いクオリティと作業効率化の推進を両立 |
今後の課題 | ・蓄積した新しいノウハウの普及 ・さらなる自動化の推進による生産性向上 |
作品概要 |
「Starship Troopers: Invasion」 製作年 2012年 配給 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 上映時間 89分 監督 荒牧伸志 製作 ジョセフ・チョウ 製作総指揮 エドワード・ニューマイヤー キャスパー・バン・ディーン http://www.ssti.jp/ ©2012 Sony Pictures Worldwide Acquisitions Inc. All rights reserved. |
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*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。