チュートリアル / 3ds Max × ビジュアライゼーション
第5回:何の変哲もない「一軒家の外観」その① モデリング
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皆さんこんにちは。オートデスクの吉田です。
依然としてコロナウイルスが猛威を振るう中、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は中々外出ができず、運動不足で体重がすごいことになってまいりました。
という事で(どういう事で?)今回からは新しい作品を題材に、お話をしていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
今回の作品について
今回は下図のような一軒家の外観作品を作っていきます!
何の変哲もない一軒家の作品ですが、作業工程それぞれにポイントがありますので、順を追って紹介していきます。
今回モデリングでは3ds Max 2021.2の新しい機能を使ってみたり、マテリアルではV-Ray 5のアセットライブラリを使用したりと、割と新しめな情報も含んでおりますので、既存ユーザーの方にも楽しんでいただけるのではないかと思います。
それでは今回も楽しくVIZしていきましょう!
使用するツール
・3ds Max 2021.2
・V-Ray 5
・Forest Pack Lite
・Adobe Photoshop
V-Rayは古くから多くのMaxユーザー様に愛されているレンダラーの一つです。
VIZの業界でも広く使用されています。
Arnoldと同じく物理的に正しく、きれいな出力をしてくれます。
今回は先述の通り、V-Ray 5のアセットライブラリのマテリアルを使用してみたり、UIが新しくなったフレームバッファのレイヤ機能なども触っていきたいと思います。
Forest Packは3ds Maxを使用してVIZのお仕事をしている方々には、かなりなじみ深いプラグインです。
簡単に言えばスキャッタ系のプラグインです。
木や草や小石などのオブジェクトを、指定の範囲にランダムで配置してくれます。
VIZのお仕事においては、植栽を並べたり、背景に森や草原を作成する際に非常に便利に使用することができます。
また、アセットの種類が豊富で、対応しているレンダラーも多岐にわたります。
今回は無料版のForest Pack Liteを使用していきます。
こちらは配置できるアセットの種類や数は制限されますが、無料版でも商用利用可となっているので、実際のお仕事で使ってみたいという方でも、試しやすい製品となっています。
ワークフロー
ワークフローですが、基本的には前作(第1回~第4回)の時と同様です。
1. モデリング
… 3ds Max 2021.2新機能のスマート押し出しを利用したモデリング方法の解説などをします。
2. マテリアル
… V-Ray 5のアセットライブラリを活用して、スピーディなマテリアル設定と編集をしていきます。
3. ライト・カメラ
… 外観作品のライティングの特徴や、カメラの構図、モーションブラーの設定方法などを解説します。
4. レンダリング
… V-Ray 5の簡単なレンダリング設定の解説や、フレームバッファ内の新しい機能の解説をします。
家のモデリング
今回、モデリングの工程は大きく2つに分けて解説していきます。
「家のモデリング」と「周りの環境のモデリング」です。
それでは早速「家のモデリング」から始めていきましょう!
家のモデリングでは、大きく3つの機能について解説していきます。
まずは3ds Max 2021.2の新機能「スマート押し出し」です。
3ds Max 2021.1のアップデートで、ポリゴン選択時にShift+移動による押し出しが可能になりました。
これを3ds Max 2021.2で強化したのがスマート押し出しです。
通常の押し出しは、押し出した面の周りに新しい面が作成されます。
なので、例えば法線のマイナス方向に面を押し出した場合、選択している面の位置によっては、既存の面と作成された面が重なってしまうことがありました。
しかし、スマート押し出しでは、押し出した面の周りが再構築されて、面の重なりがない形状を維持してくれます。
これをうまく利用すれば、多少複雑な外壁の形状も、今までより直感的、かつ速いスピードで作成が可能です。
ちなみに、このスマート押し出しの機能は、「編集可能ポリゴン」オブジェクト環境下で有効になります。(ver. 2021.2現在)
次に、「ブーリアン」です。これは既存機能です。
ブーリアンは2つのオブジェクトを結合したり、除算したりする機能です。
壁に窓やドアのための穴をあけるときに便利です。
最後に「スウィープ」です。
スウィープは、第2回の解説でも少しだけ触れましたね。
ラインに沿って色々な断面形状を押し出してくれる機能です。
窓やドアの枠を作ったり、シーンによっては1本のラインから、外壁、内壁、けこみなど複数のモデルに展開することも可能です。
また、スウィープの断面形状は、自分でカスタマイズすることもできるので、天井の廻り縁や、壁や柱の装飾に使用することもあります。
周りの環境のモデリング
外観の作品を作る際、大変になってくることの一つが、この環境のモデリングです。
今回の場合、周りの環境とは、周りの建物や道路、敷地などなど、主役の建築以外のモデルすべてと考えてください。
例えば、内観作品の場合、カメラは閉じられた空間の中にあることがほとんどです。
なので、設計図通りに躯体を立ち上げれば、それだけでカメラの画角内には余分な余白というものはなくなります。
しかし外観の場合はそうはいきません。
設計図には、主役の建築だけが記載されていて、「その周りの空間がどうなっているか」という情報が全くないという案件も珍しくありません。
では、そのような場合はどうすればいいのか?
実際のところ、それはクライアントの意向によって様々です。
適当に道路や塀や植栽を配置してくれとおっしゃる方もいれば、周りの環境をモデリングしてしまうと、見た人に固定されたイメージを植え付けてしまうので、図面に書いてある建築だけにしてくれとおっしゃる方もいます。
建築だけでいいのであれば、作業的には非常に楽です。
周りの環境はV-Ray Planeなどの無限平面を置いてあげれば作業は完了します。
ですが、空と延々と続く地面だけの環境というのは現実ではありえないので、確実にリアリティは損なわれます。
なので、周りの環境はできるだけ作ってあげたり、360度画像を活用したりしてあげるのがいいかと思います。
たった10分~20分の追加モデリングで、作品の印象は大きく変わります。
今回はここまでとさせていただきます。
次回はマテリアルのお話をしようと思います。
V-Ray 5のアセットライブラリを活用した、スピーディなマテリアル設定作業のご紹介なんかもできればいいなぁと思っていますので、ぜひ次回をお楽しみに!