ワウ株式会社
CITROËN Metropolis concept
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【CADデータからのヴィジュアライズ】
Softimageで行われた作業について中間氏に詳しくお聞きした。制作にあたりシトロエンのデザインチームから、iges形式でCITROËN MetropolisのCAD設計データが提供された。データをSoftimageに読み込んだ際には、ボディのメッシュ編集やリダクションといった一切のモデリング修正を今回は行っていないそうだ。
レンダリングの効率化を考慮して、タイヤ部分はインスタンスを使用する最適化が行われている。そして、車のボディ全体は、リファレンスモデルによる管理を行ったという。リファレンスモデル化しておくことで、仮に車のホイール部分にモデル修正を行う状況が発生しても、参照元のデータを変更することで全てのシーンで自動的にデータのアップデートが行えるためだ。
今回のプロジェクトではモデリング作業は行われていないが、中間氏は普段の業務を通じて、やはり非破壊のアーキテクチャのアドバンテージを強く感じるという。アニメーションを完了し、デフォーマ変形も適用した後にも、編集前のモデリング状態に即座に切り替え編集を進めることが出来る。そこでは、属性データを破壊せずに最終アウトプットに修正を反映できるため、締め切りの直前までクオリティを追い込む理想的なワークフローを実現出来るという。石井氏は、コンポーネントを意識せずに直感的にモデリングが行える操作性を高く評価している。また、モーショングラフィックス表現でよく利用する段階的なオブジェクトの形状変化に役立つポリゴン複製オプションやディフォーメーション機能が充実している点もお気に入りであるという。
ムービーでは、光のラインときらめくパーティクルによって、CITROËN Metropolisの高級感あふれるボディが優雅に照らし出されている。ボディラインに沿って流れる光のトレイルの周りにも、煙のように細かいパーティクルが幾重にも発生し重厚さを演出している。
CITROËN Metropolisのボディには、映り込み調整がしやすいCar_Paintシェーダが割り当てられた。ベースとなるビューティーパスは、シーン内の全ての点光源が有効な状態でレンダリングされた。光の明滅によってボディを複雑に照らすためのマスク素材は、軽いPhongシェーダのみのパスでレンダリングされた。こうした発光表現のための素材や多数のパーティクルエフェクトからなる全ての素材は、ショットによって30パスにも及んだという。素材のレンダリングは、ブレードサーバのレンダファームにジョブが投げられ、1400x788の解像度でレンダが行われた。そして、コンポジット段階でグロー処理、火花の被写界深度、カラーコレクションなどの2D処理が行われた。
なお、レンダリング素材のパス管理には、Softimageのレンダパス機能が活用されている。パス毎に表示オブジェクトやレンダリングオブジェクトの切り替えるベーシックな利用方法から、オーバーライドの柔軟性を活かしてパスによって異なるパラメータをオブジェクトに組み込むテクニックもよく利用されるという。つまり、パスAとパスBで環境マップ用の天球オブジェクトに異なる回転と移動をオーバーライドさせるのだ。一つのシーン内でパス、パーティションとオーバーライドを組み合わせることで、効率的にレンダリング表現のバリエーションをもたせることが可能なのだ。
【ICEパーティクルによる幻想的なエフェクト】
光を放つラインオブジェクトの動きは、ボディのエッジをトレースしたカーブディフォームによる制御である。トレイル先端に強い光を放つポイントライトが仕込んであり、ボディにヒットした際に発光が強まり、その後は減衰するよう仕組まれているという。キラキラと点滅するパーティクル表現は、シンプルにキューブのインスタンスが利用されている。高いリフレクションを持ったキューブに環境マップとしてHDR画像を写りこませることでハイコントラストな反射表現を行っている。
なお、ヒットした際に飛び散るパーティクルは、美しい軌跡が再現されるように3Dモーションブラーでレンダリングされている。煙表現のパーティクルは、コストを考えてOpenGLハードウェアレンダリングによって処理が行われた。 一部のショットでは、あえて実写の煙素材を割り当てたオブジェクトをシーン内にさりげなく追加しているそうだ。CG表現の中に実写素材を含めることで空気感やリアリティが増し、映像に説得力が生まれるためであるという。
幾重にも発生する煙のようなパーティクル表現は、ICEパーティクルを用いたタービュランス制御で表現された。一度組み上げたICEの制御は、他のカットでうまく再利用されているという。何パターンものパーティクルの動きを作成するにも、コンパウンド化したICEノードを割り当てることで応用が可能なのだ。発生数、広がるスピード、乱流などのパラメータを調整するだけで、ショットごとにICEパーティクルのバリエーションを増やす作業も容易にこなせたそうだ。
ICEパーティクルは、RenderTreeと同じ感覚で作業出来るため、慣れてしまえばスクリプトを必要とせずに高度な制御を実現可能だ。最新のSoftimage 2011.5 Subscript Advantage Packでは、メニューからの操作で自動的にICEノードが裏で生成される親切な仕組みになっており、これには中間氏も感心したという。また、今回のプロジェクトでは、かなりの数のパーティクルを発生させたにも関わらず、マルチスレッドに最適化されているICEの優れた処理速度によって作業も快適に行えたという。
中間氏と石井氏は、ICEの登場によってここ最近Softimageをとりまく状況に良い変化を感じているという。ICEを介してユーザ間の情報共有が活発になってきたことや、ICEをベースとしたユーザ発信のテクノロジが増えてきているためだ。Lagoaの統合によって流体表現がとても充実したことにも喜びを感じているという。
「工夫次第でどんなアイデアもヴィジュアライズ出来るICEには無限の可能性を感じています。特にアブストラクトな表現やモーショングラフィックス表現は、ICEが得意とする部分だと考えています。これからも、ICEやLagoaを活用して人々がWOWと驚くような映像表現を探求していきたいですね。」と中間氏は最後に語ってくださった。
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中間耕平 氏 Visual Art Director / 石井葉子 氏 Visual Designer
導入製品/ソリューション | ・Autodesk Softimage |
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