Maya の Bifrost が Pixomondo 社のVFX制作で効率化に貢献
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世界的なバーチャル・プロダクション & ビジュアル・エフェクト企業であるPixomondoは、Maya の Bifrost を使用して、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』、『シャザム!神々の怒り』、最近では『アントマン&ワスプ:クアントマニア』などのVFXプロジェクトを成功に導きました。
Bifrost は Maya のビジュアル プログラミング環境で、煙、火、砂、雪などの特殊効果を作成できます。アントマンでは地形のスキャッタリング処理などのプロシージャル シミュレーションとVFXを作成するために使用されています。ドイツのフランクフルトにある Pixomondo スタジオの Groom CFX 責任者である Thomas Kutschera 氏に、Bifrost をアーティストのワークフローにどのように統合しているのか話をお聞きした。
Pixomondo では何を担当されていますか?
私はグルーミング エフェクトの制作を管理し、パイプラインの合理化を目的としたツールとワークフローを開発するチームを率いています。ツールやスクリプト開発と実際のエフェクト制作作業は、ほぼ 50/50 の割合です。
Bifrostを使い始めた理由は?
2 年半ほど前に Bifrost を使い始めた理由は、オールインワン アプローチによって非常に多くのことを実現できるためです。当初、アーティスト達は自分たちのワークフローに Bifrost をどう適合させるか若干の戸惑いがありましたが、今では運用も軌道に乗り社内にも素晴らしいコミュニティが開花しています。また、 Discord の Bifrost Addictsは非常に便利でアクティブなリソースですね。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ではどのような役割を担当しましたか?
Pixomondo は、異世界の生物、動物、樹木、植物があふれる「ファンタスティック フォレスト」シーケンスの制作を担当していました。私たちはコンセプト アートとルック デベロップメントから始めて、植物や生物の外観と挙動を表現するなど全シーケンスを担当しました。モデリング、テクスチャリング、シェーディング、リギングを行い、レイアウト、アニメーション、ライティングなどすべてのプロセスは Maya を利用して制作されています。シーケンスにはたくさんのこだわりが含まれています。流れるように時が進むシーケンスですが、背景にあるものすべてのディテールを確認するため、きっともう一度鑑賞したくなるでしょう。VFX制作はとても楽しいものでした。
Bifrost がファンタスティック フォレスト シーケンスに適したツールだったのはなぜですか?
VFX スーパーバイザーの Max Riess は、このシーケンスの研究開発に必要な時間を提供してくれました。そこで、私は木々や植生を配置するプロシージャル処理について検討しました。Bifrost を使用することで、共通の特徴を持つ、高さと太さが異なる 100 本の樹木をパラメーター制御で表現きるという結論に至りました。個々のアセットを手作業でモデル化せずに森林を埋めることができれば、時間を大幅に節約できるのです。最終的に、ファンタスティック フォレスト シーケンスを豊かにする全ての要素は、Bifrost でスキャッター配置しました。木と地面を繋ぐ網状の植物から地面のキノコまで、さまざまな要素を全てのシーンで散在させるように配置したのです。
MayaのBifrost を活用してワークフローを開発していきました。ワンクリックでレイアウト情報やジオメトリデータを読み込み、グラフ情報のインポートまで行える UI を構築したのです。そして、アーティストが簡単に調整を行えるよう主要なパラメータを公開し、必要なキノコの数、ストランドを引っ張る重力の強さを定義できるようにしました。アーティストは、複雑なグラフを掘り下げる必要はなく、限られたパラメータを編集するだけで済むため作業はスムーズに行えました。設定が完了したシーンは、ボタン 1 つでパブリッシュを行い、ライティングチームの作業に引き渡すことができます。このワークフローにより、見た目に一貫性がありながら特徴が異なる大量のショットを非常に迅速に制作することができました。
Bifrost のモジュラー アプローチは強力で、スーパーバイザーの指示にも迅速かつ効率的に対応できました。例えば、シーン内でオブジェクトを追加または削除したい場合もグラフ編集で即座に調整ができます。Bifrost は処理や描画も高速なため、ビューポート内の作業も軽快に行えます。クラウドの VDBデータもビューポートでの表示は非常に正確であり、反復調整を快適に行えます。最初のセットアップにはある程度の準備時間は必要かもしれませんが、微調整を行ってシーンを洗練させたい場合に Bifrost は非常に柔軟で効率的です。
Bifrost のコンパウンドを構築しておくと大幅な時間の節約につながるのです。別のショットや別のコンテキストで似た処理が必要な場合は、作成したコンパウンドを新しいグラフでも使用することができるためです。Bifrost はプロダクションの最中でも機能を進化させられるうえ、過去の資産をスマートに再利用できるので、一からツールを開発するという必要はありません。
アニメーションやシーンを作るアーティストたちも、Bifrost コンパウンドの細部を理解している必要があるのでしょうか?それとも、アーティスたちは直感的に使える状況なのでしょうか?
アーティストがたとえば「スキャッター コンパウンドをロードしたい」場合は、シーンに取り込まれたスキャッター アセットは自動的に接続され、すぐに結果が得られるよう使いやすい UI を構築して提供します。このため、アーティストは Bifrost でコードを変更する必要はありませんが、必要に応じてグラフ内に入り、自分にあうように機能やUIを調整することができるのです。
全てを Maya で完結させる利点はありますか?
Maya 内でレイアウトや環境制作を行っている場合、Bifrost を使用すると別の部門や別製品にデータ変換をする必要がなくなります。そういった観点で、すべてを Maya 内に保持しておくことはとても大きな利点です。シーンの種類によっては、特殊なタスクで Houdini を利用するというケースもあるでしょう。スキャッター処理に関しては、すべてが 1 か所にまとめられており、ソフトウェア移動の変換作業に時間を費やす必要がないため、Maya に統合されている Bifrost は優れたソリューションでした。
Bifrost の技術情報はどう手に入れていますか?
私がDiscordのBifrost Addicts を使用しているのは、他の Bifrost ユーザーに助けや解決策を求めるのに最適な場所だからです。定期的にチュートリアルを参照して、新しい開発に関する情報を入手しています。仮にその時点で特定ソリューションや特殊なワークフローの情報は必要ないかもしれません。しかし、プロダクションのなかで急遽対応に迫られるという可能性は十分にあります。また、参加者同士で汎用的なコンパウンドを共有したり、質問に答えたりも頻繁に行われています。つまり、何かを与えると何かを得ることができるのです。それが Bifrost の開発を促進し、ユーザー ベースの拡大に役立つと考えています。
長い間 VFX に携わって、新しいテクノロジーを常に把握されていますが、今はどのようなトレンドを追っていますか?
私が最初に取り組んだ長編作品は、90 年代に遡る『ピノキオの冒険』でした。ワークフローを合理化するには、何が起こるか常に先を見据えることが重要です。Bifrost は急速に発展しているので毎日がエキサイティングです。現在、 USD (GitHub の Bifrost-USD ) とBifrost スキャッター処理を組み合わせることにも注目しています。優れた実装によってレンダリング時間を大幅に短縮できるのではと考えています。 Bifrost の進展には今後も大きな期待を抱いています。
*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。