ShotGrid で『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』を生み出した ShadowMachine スタジオ

ShotGrid で『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』を生み出した ShadowMachine スタジオ
画像提供:Netflix
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アニメーション制作スタジオ ShadowMachine『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』は、昔ながらのおとぎ話を新たな視点で表現した素晴らしいストップ モーション映画です。Netflix 向けにダークなテイストで映像化された同作品は、主にポートランドのスタジオで、4 年以上もの歳月をかけて制作されました。アメリカの映画評価サイト IndieWire からは「傑作」と絶賛され、スタジオ初のアカデミー賞を受賞したほか、英国アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、アニー賞、VES アワードなど数々の賞を受賞しました。世界的なパンデミックや地元での抗議活動、大規模な山火事といった非常事態が続くなか、制作チームは芸術の力を信じて、人々の心を打つ意義深い作品を完成させました。それを思うと、作品はますます輝きを増します。Autodesk ShotGrid は、本作品の制作プロセス全体を通じて、共通データ環境として使用されました。混乱した状況の中で一貫した確実性を実現するコラボレーション ツールとして、同作品の成功に欠かせない存在となりました。

私たちは先日、同スタジオの IT システム管理者兼パイプライン技術者であるドン・シュワルツ氏、美術制作マネージャーのホイットニー・シュマーバー氏、スケジューラー兼第 1 助監督のジャレド・バムガーナー氏に、同作品に命を吹き込んだ制作作業についての話を伺いました。インタビューのハイライトを以下にご紹介しましょう。

ShotGridの画面
画像提供:ShadowMachine

ーーShadowMachine はどんなスタジオですか?

ドン:アレックスとコリーが 1999 年に設立した、実績のあるスタジオです。ポートランドとロサンゼルスの両方に制作拠点を構えています。ShadowMachine の名が初めて世間に知られるきっかけとなったプロジェクトは『ロボット・チキン』でした。以降も数多くのプロジェクトを手がけ、エミー賞も何度か受賞しました。ポートランドのスタジオではストップ モーションの制作のみを行っていますが、ロサンゼルスのスタジオでは主に CG を制作するほか、ストップ モーションの制作も行っています。

ーーShotGrid はいつからスタジオで使っていますか?

ドン:『ピノッキオ』以前もロサンゼルス スタジオでいくつかのプロジェクトに使用したことはあったのですが、それほど広範囲には導入していませんでした。ポートランド スタジオに初めて ShotGrid が導入されたプロジェクトが『ピノッキオ』で、私自身もこの時に初めて ShotGrid をセットアップしました。

ジャレド:ホイットニーと私は以前、Laika というスタジオに勤めていたのですが、そこでは長年にわたり、ShotGrid をユニークな方法で使用していました。『ピノッキオ』プロジェクトが始まったとき、大量の Google スプレッドシートや整理しきれていないサーバーの状況を改善することがこのスタジオに必要なことは明らかでした。まずはデータベース管理を実現するため、ドンと私は ShotGrid の統合システムを構築しました。そして 2018 年 6 月、私は初めて『ピノッキオ』のタスクを入力しました。

ShotGridの画面
画像提供:ShadowMachine

ーー大規模なプロジェクトが始まろうとする中で ShotGrid をスタジオに導入した経験はいかがでしたか?

ジャレド:私が以前勤めていたのは、R&D 専門の部門もある大規模なスタジオだったので、ShotGrid の統合は私にとって初めての体験でした。当時『ピノッキオ』には、カスタム ツールの構築を外注できるような予算がなかったため、なんとか自分たちで作っていったのですが、これがドラマのようにスリリングでやりがいのある仕事でした。ストップ モーションは手作り感に溢れていて、その作業はいつも映画学校時代のことを思い出します。そんなところがとても好きです。外部からの協力をあまり受けずに自分たちで ShotGrid プロジェクトを立ち上げたのも、素晴らしい経験でした。自分たちで問題を解決できるようになれば、より自由を手に入れることができます。

ドン:私は ShotGrid のビデオを見たりチュートリアルを読んだりするなど、しっかり時間をかけて多くの基礎を学びました。また、オートデスク サイトで見つけたスペシャリストのサポートを利用することで、スピーディーにパイプラインをセットアップし、学習を進めることができました。

ーー『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』の制作作業は、どのような情報をベースに開始されたのですか?

ホイットニー:ストップ モーションのプロジェクトは、開始時点ではまだあまり詳細が決まっていないことが多く、手探り状態です。主人公が木製であることは明らかでしたが、それ以外のデザインはまだ流動的でした。少し具体的に言うと、もともと作品の構想段階では 48 セットの計画でしたが、最終的に納品したのは 99 セットとなりました。最後まで、数多くの要素が指数関数的に増えていきましたが、ShotGrid のおかげで整理された状態を維持することができました。通常、ストップ モーションの作業範囲を詳細に把握するのは難しいのですが、ShotGrid では各チームの作業内容を項目化して作業負荷のキャパシティを評価したり、各セットがいつ頃完成するかを予測してジャレドに知らせたりできました。部門間でたくさんの問題を解決しながら、プロジェクトを進めていきました。そして最終的に完成した『ピノッキオ』は、あらゆる面で当初の計画を大きく上回るものとなりました。

ShotGridの画面
画像提供:ShadowMachine

ーーShotGrid は、各部門でどのように使用されていますか?

ジャレド:アーティストが作成した素材は、なるべくすばやくシームレスに ShotGrid に取り込めるようにします。プロジェクトの最初に、コンセプト アーティストとキャラクター デザイナーが、ShotGrid にコンテンツをプッシュします。その後、さまざまなテクニカル デザイナーが作業を進めていきます。そこから直接スカルプターが作業を開始する場合もあれば、美しいキャラクターをデザインするアーティストや、パペットの情報をスカルプターに伝える人などが作業に関わる場合もあります。セットについては、コンセプト アートを基にセット デザイナーが技術的なデザインを作成し、その後アート ディレクターが補足として参照画像を追加します。このように豊富な制作データやデータのステータスをすべて ShotGrid に集約した後に、撮影用の実際のオブジェクトの制作を開始しました。ストップ モーション アーティストの多くは、コンピューターで作業するのではなく、外でオブジェクトを撮影したり、机上で彫刻したり、木工所で作業したりします。そうした作業をデータベースで管理したり、有意義な方法で追跡したりするのはなかなか困難です。

ーーShotGrid を最もよく使用するのは誰ですか?

ジャレド:アシスタント カメラ オペレーターが最も頻繁に ShotGrid を使用します。アシスタント カメラ オペレーターのチームは、一日中 ShotGrid に写真を追加しています。ストーリーボード アーティストもコンテンツを追加します。ShotGrid のデータベースはポスト プロダクションにも欠かせません。ストーリーボード アーティストがコンテンツを追加し、編集部門と共有します。このプロジェクトでは Avid Media Composer を使用したのですが、編集者がシーケンスを ShotGrid に直接送信できたことは非常に便利でした。私たちは常に最新バージョンの映像を把握して作業する必要があります。そして編集者はステータスを最新に保ちつつ、問題なく制作を進行する必要があります。

ドン:プロジェクトには大量のアセット バージョンが存在します。コンセプトが承認されると、アーティストがそのコンセプトから撮影用オブジェクトを作成します。ステージに配置するオブジェクトなど、さまざまなアセットの制作過程はすべて ShotGrid に記録されます。この作品では、信じられないほど大量のアセットが作成されました。

ShotGridの画面
画像提供:ShadowMachine

ーーそれほど大量の情報を、どうやって整理しているのですか?

ホイットニー:構成要素を大・中・小のサイズ別で分類し、スケジュールに簡単に貼り付けることができるタスク テンプレートを作成しました。コンセプト アートからアート タスクが始まり、作業完了までの日数が設定されます。作業完了後、その作品はセット デザイン、プロップ デザイン、グラフィック デザイン部門に送られ、それぞれに異なる担当者が割り当てられます。デザイン面が完成したら、テクニカル チェックを行います。ここでは全部門の責任者が集まってドラフトをレビューし、デザインや機能上の潜在的な問題を洗い出します。次に、オブジェクト制作現場の準備や、制作スケジュールの管理などに必要なドキュメントを作成します。ジャレドさんの設定した撮影スケジュールに合わせて、必要なものをすべてきちんと作成するためには、こうしたドキュメントが欠かせません。

ドキュメント類は紛失しがちなので、いつでもすぐに参照できるように、すべてをデジタルで保存する必要があります。ShotGrid なら、過去のバージョンを誤って削除してしまうといった問題もありません。すべてのアセット情報にアクセス可能なだけでなく、ラベル付けされているため履歴やプロセスを詳細に確認できます。『ピノッキオ』には 99 のセットがあり、各セットにセット パーツが含まれます。各セットに含まれるパーツは 1 個から数千個まで幅広く、キャラクターや関連コンポーネントも含まれます。私たちにとって ShotGrid は、『ピノッキオ』の百科事典です。細かな木くずに至るまで、作品に登場するあらゆるものが記録されています。

ーーこのプロジェクトで最大の課題は何でしたか?

ジャレド:新型コロナウイルスへの対応は大変でした。私たちの仕事は映画を制作することだけではありません。チームの安全を守ることも重要な仕事です。2020 年 3 月当時はまだ、何が起きているのか誰にもわからないような状況下でした。私たちはただ全力でこの映画を進めようと努力しました。一方で、私たちの作品が映画関係者から「史上最高のストップ モーション映画」と評されていると知り、プレッシャーと同時にやりがいも感じていました。

ホイットニー:私が『ピノッキオ』で最も苦労したのは、職場と自宅はそれまできっちり分かれていたのに、突然、メンバーが子供たちと寄り添いながらビデオ会議に出席していたり、音を立てないようにつま先立ちになりながら作業用の写真を説明していたりと、チーム全員の家の中の様子が見えるようになったことです。当初は、夜中に気落ちした同僚から、「また会社に出社して、皆と一緒に苦労を乗り越えながら、美しいものを作りたい」といったメッセージをもらうこともよくありましたが、『ピノッキオ』は皆にとって安全な場所へと変化していきました。

その頃ポートランドでは、人種差別に対する抗議運動が起きたほか、山火事も拡大していました。いつ避難指示が出て帰宅できなくなるかわからないので、人々は大切な物を職場に持ち込んでデスクの下に保管していました。また、唐辛子スプレーを吹き付けられて出社できなくなった人もいました。マネージャー兼リーダーの私は、こうしたすべてに冷静に対処する必要があるのですが、感情を抑えるのはなかなか大変でした。誰もが不安な状況でなんとか役割をこなしているなかで、各自が自信をもって作業を進められるような環境を構築し、会社やプロジェクトの持続可能性を確立する必要がありました。そこで安心をもたらしてくれたのが、使い慣れた ShotGrid でした。ShotGrid は、すべてのプロセスを一箇所に集約できる、頼りになるソリューションです。ShotGrid を導入したことで、大きな安心感が得られました。これがなければ『ピノッキオ』を完成させることはできなかったでしょう。

ShotGridの画面
画像提供:ShadowMachine

ーープロジェクトの途中でリモート環境に移行されたわけですが、どのように移行を進めましたか?

ホイットニー:リモートワークが突然始まった際に、作業を中断したくなかったので、ShotGrid は必要不可欠なものとなりました。私はアーティストたちに、状況次第で今後 2 週間は自宅でアセットの構築を継続できるように、必要なツールや参照画像をすばやくまとめるように指示しました。幸い、ほとんどのアーティストは既に自宅にワークスペースをセットアップしていたのですが、レビュー手段については検討する必要がありました。

全員が在宅勤務になったため、アート ディレクターが歩き回りながら物理アセットをチェックする代わりに、チーム メンバーが携帯電話で写真を撮り、アート・ディレクターにテキストメッセージで画像を送ってレビューを受けるようになりました。かつてのように作業現場を歩き回りながら全員の作業状況を見ることができなくなったので、ShotGrid ですべてのタスクを項目化することにしました。これは、アート部門に所属する 54 人のメンバーがそれぞれ何をしているか追跡し、完成までのスケジュールや必要な情報を参照し、把握するのに役立ちました。各アーティストの自宅間で物理アセットをやり取りするという課題も、部門コーディネーターがサポートすることで解決できました。たとえば、ピノッキオが村を歩くシーンの撮影用に 27 の建物を作成しました。各建物は、平均 7 人のアーティストの自宅を行き来した後にやっと完成し、スタジオに送り戻され、設置・組み立ての後に撮影されました。

ーーチームは何人体制でしたか?

ドン:『ピノッキオ』の制作作業に携わったのはたしか 357 人位だったと思います。その約半数が ShotGrid を使用しました。また、ビジュアル エフェクトはベンダーに外注しました。

ShotGridの画面
画像提供:ShadowMachine

ーー他にはどのような会社が関与しましたか?

ジャレド:ShadowMachine ポートランドが映画制作の中心的な拠点となり、ビジュアル エフェクトはカナダのチーム、パペット制作は Mackinnon & Saunders 社に協力を依頼しました。グアダラハラのスタジオにも、パペットやセットの制作や撮影の一部を協力してもらいました。共同監督のマーク・グスタフソンやグレルモ・デル・トロと、しっかり連携をとりながらレビューを行うことができました。

ーーShadowMachine の今後の予定を教えてください。

ジャレド:現在、Mike Judge が制作/出演する NBC Peacock の番組『In the Know』を制作中です。今お話しできるのはそれくらいですが、これは『ピノッキオ』とはまったく異なる作品となります。

ShotGrid は Flow Production Tracking に製品名が変更されました。
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