世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合 後編

世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合 後編

2020.09.30

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ーーところで第一話を制作するのに半年かけたとの噂を聞いたのですが。

西脇:かなり長く時間をかけました。全体の整合性のすり合わせで、1年はかかっています。

ーー1年?!そこまで時間をかけたものなんですか!

寺尾:そうなんです。第1話を作っていく中で、方向性をあれこれ実践しながら探っていったんです。もちろん最初にテストをするんですけど、いろいろなカットを作っていくうちに、「やっぱりこうした方がいいな」って新しい絵にして、カットで全部調整していくんですね。そうすると、最初のカットと、100カット目の練度が変わってくるから、「やっぱ100カット目のほうがいいから、頭の99は100カット目に合わせましょう」ってずっと納得するまでやっていたら、1年かかっていた......と。

西脇:ずっと直していましたね。特に色が付いて、フィルムになってから、何度も何度も確認をして。そこで演出陣やデジタルチームから「もっとこうした方が」というオーダーが来るので、そのすり合わせに1年かかりました。制作スタート時はロケハンにも3回ぐらい行ってるんです。

ーーロケハンに3回というのはかなり多いですね。

西脇:作品の大切な最初のシーンだから頑張ってロケハンしてましたね。

寺尾:作品に合ったシュチュエーションを探していろんな山を撮ってるんですよ。「もっと見た目や、レイアウトが良い山があるかもしれない」って言われて「また!?」って言いながら、いろいろな所に行ってました。

西脇:細かい所でも、木々のバランスや下生えの配置、土の見え方など、想像では補えない部分に森らしさを感じるものでして、森を描くといっても、ただ樹木を並べて描いただけでは本物っぽい森にはならないんです。たとえば幹の周りに雪が積もらず少し空洞があく表現を本編でやりましたが、その辺りの細かい部分などすごく参考になりました。

寺尾:ufotableは1タイトルにかなり時間をかけてしまうスタジオなんです。メインの制作ラインはほぼ一つ、1ラインで、全員で一つのタイトルをしっかり作る。僕が鬼滅の第1話をテストしているときに、「西脇くんは第1話から第7話ぐらいのCGやる」みたいな感じでそれぞれが没頭する。ひたすらブラッシュアップを繰り返す一年でした。

西脇:一年ずっと没頭していた感じは、『Fate/Zero』の最初を思い出すよね(笑)。あの時は、「半年分の絵を最初に決めるって考えると」と試行錯誤していたので。鬼滅もかなりビジュアル的に新しい方向性になったので、最初に時間をかけました。みんな原作準拠意識が高いというか、デジタルと作画の絵を、原作の絵のバランスに近づける調整するのに苦労して。「原作のこの絵をどうアニメにしよう」ということを、全員で目指しているので。

寺尾:監督の外崎さんも社内にいるので、フラッと来て「CGと作画とどっちがいいかな」とか「こういうことできる?」って相談してくれるんですよ。それってすごく嬉しいことなんです。実際に作ってからリテイクになるよりも、作る前にちょっと一緒に話すだけで、作り方が綺麗になることが多々あるので。

ーー演出も作画もCGも全部内製だというそこがufotableさんの強みですよね。

西脇:例えばCGを外注していると、演出との話し合いのために2日待たなくちゃいけない事がある、聞けばすぐわかるような簡単な確認に何日もかかってしまう、という事態も起こるんです。スタジオ内ではそのコミュニケーションの苦労がないので、その分、作業に使える時間が増えるということはありますね。

寺尾:部の垣根もほとんどなくて、「ここちょっと相談したいな」と思ったら階段上がればいいだけですからね。でもufotableのスタッフは皆、ファンを落胆させるようなフィルムは作れないっていうのは、心から意識していると思います。少しでも良い絵を、石にかじりついてでもこのカットを直すのだ!って最後の最後までホントに粘っています。だから、僕とか西脇くんが今できることを、そのまま外に持っていって「こんなことできるよ」って言っても、できないんですよ。このufotableのコミュニティやカルチャー・信頼のおけるチームがないと作れない。

西脇:作品としてまとめるっていうのは、もう、もはや個人の力ではないんですよね。って話していると、なんだか意識高い系の会社みたいになってきましたけど、そんなことはなくて、わいわいと作っています(笑)。チームは大事です!

強いクリエーターになる方法

ーーところで、お二人がCG業界に入ることになったきっかけは?

寺尾優一氏
西脇一樹氏

西脇:僕は小学生の頃に見た『ジュラシックパーク』がきっかけです。CGアーティストのKAGAYAさんのデジタルイラストに影響もされたりして。それで専門学校に入って、ずっとR&Dをやっていました。Maya でスクリプトを書いたり、エフェクトを作ったり。その後就職した会社で 3ds Max を覚えて、エンタメの世界に行きたくなってufotableに転職したと。そういう経緯です。

寺尾:僕は祖父が油絵の絵描きで、その影響で絵を好きになったんです。それで芸術大学に進学して、その時期がちょうど世の中で「一人でアニメを作る」ということが流行りはじめた頃でした。衝撃でしたね。それで僕もCGで映画制作を始めたんです。結局途中からいろいろな人を巻き込み始めて、最終的には大所帯になって(笑)。その時点で、やっぱり集団制作が好きだったんだろうなと思っています。そのとき一緒に作ってた人、今社内にいますからね。

ーーCGクリエイターを目指す人にアドバイスはありますか?

寺尾:言うは易し、ですけれど......困難に遭遇したとき、「できるまでやめない」みたいなことをしっかりやっておくと、プロになっても、汎用性の高い能力になりますね。そうすると引き出しが増えていくから、強みが出るんじゃないかと。オンライン上に過去の事例はたくさんありますが、見たことのない問題に立ち向かう心構えみたいなものは、本来オーダーメイドの一点物で、自分の中で作り上げるしかないものですから。そういう覚悟のあるプレイヤーは強いと思います。後はやっぱり、僕たちは一人ひとりがエンターテイナーで有ることを忘れないでほしいです。作品の充実、ユーザーの充実が自身の幸福につながっていくよう、常に努力していくことを大切にしてほしい。

西脇:自分で目標を決めて自分で作る時間って、社会人になると取りにくいんですよ。仕事だと誰かに指示や依頼をされる形で作品なりプロダクトなりを作ろうっていうことになるんですけど。自分でゴールを決めて満足するまでやるっていうのを、学生の頃にやっておくといいでしょうね。その時には、チュートリアルを探すことに腐心するのではなく「どうすればいいんだろう」って自分で考えるようにしてほしい。誰かが作った物の組み合わせでしか物を作れない人は、誰かが作った物しか作れないということだと思うので。そのために、例えば自分が好きな作品の1シーンを、自分でまるごと再現してみるなんてのは良いアプローチかもしれません。そこに行き着くまでの道のりを自分で考えてみて実際にやってみる。見比べて何が違うんだろう?としっかり観察して、アップデートを繰り返す。

ーーそこでオリジナリティみたいなのが出てくるはずだと。

寺尾:「方法がわからないからやめる」んじゃなく、できる方法を粘って粘って考えてやってみる。それだけで大分違うんじゃないかなと思います。

ーーでは最後に、10月に公開される劇場版への意気込みをお聞かせください。

寺尾:"竈門炭治郎 立志編"から"無限列車編"へ。TVから劇場へ。スタッフ一同、これまで通り、これまで以上に真剣に作品と向かい合い、制作を続けて来ました。
今のような時代でこそ、たくさんの方々にエンターテイメントを愉しんでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

西脇:無限列車編は、これまでのufotable作品の中でも群を抜いてCGの物量が多く、技術的難度も高いものになりました。鬼滅ファンの皆様はもちろん、CGを生業にしている方や業界を目指す学生さんにも良い刺激になるのではないかと思います。楽しんでいただければ幸いです。

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デジタル部のブログにて、よくあるご質問について解答していますので合わせてお読みください。
古い記事ながら今でも質問いただくことが多く、お役に立てば幸いです。

いつか会う戦友達へ向けて
http://www.ufotable.info/2012/07/blog-post.html

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