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何をするのか、どうしてやるのか、見つける人が強くなる。堤大介監督が語る「世界と会話するクリエーターになるために」

何をするのか、どうしてやるのか、見つける人が強くなる。堤大介監督が語る「世界と会話するクリエーターになるために」

2017.11.09

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さまざまなセッション、ハンズオン、インタラクティブな展示などを通じて、先端テクノロジーを実践できる「Autodesk University Japan 2017(AU Japan)」が、2017年9月21日(木)、9月22日(金)の二日間、ヒルトン東京お台場で行なわれました。

AUJ 2017の様子

「Autodesk University Japan」は、製造、建築、土木、メディア&エンターテイメントなどの業界において将来を見据えながら業務に役立つ情報を「学び」、さらに参加者の方々が「交流」の場としても機能するカンファレンス。

今年のテーマは「The Future of Making Things ―創造の未来」。トークセッションでは、オートデスク製品の最新テクノロジー動向のご紹介、イノベーションを推進されているお客様による事例、ソフトウェア操作のスキル向上のためのセッションが提供されました。その中でも、身近な存在でもある「メディア & エンターテインメント セッション」を中心に紹介します。

初日となる9月21日(木)は「アニメーショントラック」と称し、CGを用いた映画作品のスタッフによるここだけでしか聞けない制作に関する話題が語られました。新進気鋭のアニメーション監督であり、アカデミー賞ノミネート作品『ダム・キーパー』の堤大介監督、『楽園追放』の 水島監督、『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』の野末監督、本年公開予定の『GODZILLA』の瀬下監督が登壇し、毎回満席で行なわれました。

登壇した堤氏

まず最初のセッションは、アニメーションスタジオTonko Houseの監督、堤大介さんが「世界と会話するクリエーターになるために」というテーマで登壇。ピクサーの『トイストリー3』のアートディレクターを担当した後、現在は自らのスタジオ「Tonko House」を立ち上げます。普段はアメリカに住んでいる堤さんは、この公演のために来日。いままで経験したキャリアや作品を通して、「どういった作品が世界中の人々に感動してもらえるのか?」という問いかけを紐解く内容でした。

「What」を探す青年時代

「世界と会話するクリエーターになるために」冒頭

まず冒頭から堤さんは、日本のクリエイティブの関心の低さを懸念します。新聞に掲載されていたアドビシステム社の世界中の中高生を対象に行った「Generation Z」調査結果(http://www.adobeeducate.com/genz/)を読んで、 「中学生や高校性に採った"自分がクリエイティブか?"というアンケートに対して、アメリカはほぼ半数、イギリスは37%、ドイツ40%が自分はクリエイティヴだと答える中、日本は8%という結果で日本の生徒がクリエイティヴだという自覚がない」という記事に驚き、クリエイティブなものを作る環境について考えるようになったそうです。そこで、今回のトークのテーマは、作品の制作においての「What(なにか)」「Why(なぜか)」の違いについてを語り、クリエイティヴの根源に触れていきました。

そこから、絵を描くことに触れるまでの堤さんの生い立ちに遡ります。小学生の頃の堤さんは野球少年。彼の中での「What」は野球だけでした。高校の頃も朝から晩まで野球漬け。ただ、好きだったけれど上手ではなかったので、どんなに頑張っても結果が出ないという状況。高校卒業と同時に野球をしなくなり、「What」がなくなってしまったそうです。

高校卒業後は、何をしたいかもわからず、野球ばかりしていて受験勉強は全くしなかったので、日本国内の大学進学はできず、当時の円高留学ブームに乗って、目的もなく逃げるようにアメリカに留学してしまいました。そこで、英語がしゃべられなくても単位を取ることができる「絵画のクラス」を受けたことがアートを志すきっかけになったそうです。

「世界と会話するクリエーターになるために」セッションの様子

アメリカのカルチャーの面白いところは褒めるところで、絵のクラスに年配の生徒の方も多くよく褒めらたことが思い出でした。それもあって、自分の中での「What」が絵を描く仕事に変わったそうです。

それもあって美大に転入して、その後アニメーションの業界へ進みます。CGアニメーションの会社に就職してから、堤さんの中で「What」が「絵を描くこと」から「アニメの仕事をすること」に変化しました。アニメの仕事は、絵描きの仕事と違ってチームワークが重要。野球をしていた堤さんにすごく合っていて楽しかったそうです。

「世界と会話するクリエーターになるために」セッションの様子

2007年に『ファインディング・ニモ』などの大作を作った、最王手のアニメスタジオ、ピクサーへ移籍。映画全体を色や光を通し感情を表現したマップにしていく、カラースクリプトを中心に仕事をしていきます。

カラースクリプト

これは「カラースクリプト」。ライティングのためのガイドとなる目安を作ります。CGアニメーション映画は一枚一枚きれいな絵を重ねるだけでなく、どういう絵作りをしたらお客さんの感情が動くのかを考えるのも重要なのです。その作業を世界最高峰の自負を持つ人々が集まる環境で務めていました。これは堤さんにとって大きなキャリアになりました。

「What」が見つかり「Why」を探す

「世界と会話するクリエーターになるために」セッションの様子

堤さんは、会社でアニメーションの仕事をしながらプライベートでも絵を描いていました。「絵を描くことは観察力。絵を描くことはものすごく自分に大切だった」という強い想いもあって、個人的なプロジェクトが動き出します。

国際的なチャリティプロジェクト「スケッチトラベル」が始まりました。いろいろなアーティストに会ってスケッチブックに絵を描いてもらうプロジェクトで、当初堤さんがファンのアーティストと会いたいという思いから始まって、アーティストと直接描いてもらい繋がっていったそうです。

堤さんの熱意に共鳴して、イラストレーションやアニメーションの巨匠とされるさまざまなアーティストが参加してくれました。完成までに4年半掛かりましたが、最終的に60ページのスケッチブックに72人のアーティストが参加しました。

「世界と会話するクリエーターになるために」セッションの様子

スケッチブックは完成しましたが、参加者があまりにも豪華なので、堤さんだけが独占する訳にはいきません。そういった経緯で、チャリティとしてオークションに掛けることになり、なんと1000万円以上の金額に達します。そして出版した利益含めて、世界中に図書館を建てるサンフランシスコの国際非営利団体「Room to Read」に寄付をして、本が読めない地域に図書館を立てる資金になりました。

最初は遊びで始めたプロジェクトが、子どもたちが目を輝かせて本を読むことになったことによって、堤さんはいろいろと思いを巡らせます。「僕はなんで絵を描いているんだろう?」と考えるようになりました。いままで明確で満足していた「What(なに?)」があっても、制作している理由である「why(なぜ?)」に答えられなかったのです。

そこから、ピクサー在籍中に休暇や週末に自主制作で映画『ダム・キーパー』を制作するようになりました。自分の中での「Why」を見つけるために始めたそうです。

「Why」を考えながら現在も作品を作る

「世界と会話するクリエーターになるために」セッションの様子

2014年には、環境的にも恵まれていたピクサーを辞めて、ゼロから自分たちが作りたいものを作るためにパソコン一台から、アニメーションスタジオTonko Houseを立ち上げました。なぜ自分たちはアニメーションの仕事をしているのかを追い求める「Why(なぜ?)」の旅に出るようになったのです。

現在、堤さんは『ダム・キーパー』の劇場映画を制作しています。日本のクリエイターと日本で制作するというコラボレーションすることを目標にして、アメリカと制作の方法が違うためか苦労をしているそうです。

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Tonko Houseを設立して3年目になって、「Why」というのが常に堤さんの中でのテーマだと語ります。常に問いただして、「なぜTonko Houseがこの作品作る必要があるのか?」というところから作品を作り始めているそうです。

それは作品の根底的な部分に繋がるそうです。「Whyがしっかりしていれば、文化や国をまたいでも心に届くはずだと僕は考えている。ピクサーもそこを大事にしているから届いている。自分たちもそれを大切にしている。そして世界に向けて作品を作っていきたい」と堤さんは最後に志を語って、拍手が鳴り止まない中、公演は終了しました。これを機会に、みなさんもまずは自分の中での「What」と「Why」を確認してみてはいかがでしょうか?