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第36回:カラーマネジメント Rec.709は3種類ある?

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こんにちは、パーチ長尾です。

先月は東京と沖縄のCG制作会社さんに、カラーマネジメントセミナーで訪問しました。そこでは制作スタッフ全員がセミナーを受けてくれました。
カラマネというと技術が先に立ってしまいがちですが、導入の成功要因で一番大きいのは「スタッフ教育」なんです。やっぱり関係者全員が理解しないと、協力してもらえない、導入がスムーズに進まないので、全員受講は本当に重要なポイントです。
でもセミナーを社内で企画するとなると、カリキュラム制作や講師育成が大変なので、私を呼んでいただくと便利なんだと思います。

カラマネを導入する会社さんが増えているためか、質問をもらうことも増えてきました。その中で、カラマネセミナーに参加された方から、「Rec.709のガンマ」について質問をいただきました。このカラープロファイルは HDTV をターゲットにしているので、カラマネワークフローの基準にする方も多いのではないかと思います。

でも調べていくとこの規格はいくつかのバージョンが存在していて、どれを利用して良いのか迷ってしまいました。

そこで今回は、この Rec.709 について詳しく見ていこうと思います。このプロファイルの取得方法についても紹介しますので、役立ててみてください。

Rec.709 とは? 規格の目的と利用メリット

Rec.709 カラープロファイルは HDTV を活用するために作られたものです。制作現場で HDTV の色をシミュレーションしながら制作して業務を効率化したり、製造時(映像編集時によく利用されるマスターモニタ)の色基準になったりしています。
制作用のモニタをこのカラープロファイルに合わせることで、マスモニと同じ色で作業できるので、撮影・3DCG・合成処理など全ての工程で、常にマスモニを見ながら仕事ができるようになります。前段階に戻って制作し直す、色調整をし直す、などの無駄を省くことができますね。

それと、カラープロファイルを基準にするともう1つ大きなメリットが生まれます。
従来のマスモニは個体差と経年劣化がありましたが、カラープロファイルを使ってモニタ調整を行うことで常に同じ状況を作り出すことができます。
具体的には、個体差があると、モニタごとに色が違うので、編集ルームや会社ごとに色が違ってしまいます。
経年劣化が補正できないと、購入時から徐々に色が狂っていきます。
しかし、カラーマネジメントモニタを使用すると、定期的に測色機を使って経年劣化を補正し、Rec.709 をターゲットに調整し直されるので、全てのモニタの色を一致させることができます。


図1「モニタ統一のメリット」
Rec.709やsRGBなど、最終アウトプットにあったカラープロファイルを基準にするメリット

ガンマが違う3種類が存在する

Rec.709 は sRGB とよく似ていて、カラープロファイルの3要素のうちガンマだけが違う規格です。


図2「Rec.709, sRGB 比較チャート」
ガンマが異なるカラープロファイルの違い

ガンマが違うということは、中間部分の濃度が違って見えるということなので、全体の色調に影響が出ます。また以前に制作したマテリアルも濃くなるか、薄くなるかして、違って見えてしまいます。

ガンマ【1.9】

ITU-Rという団体が Rec.709 の規格を定めています。2002年4月に出た勧告によると、Rec.709 の階調データに関する定義式が記載されていて、ガンマで表現すると1.9に近いものになっています。
この規格を反映して作られたカラープロファイルを利用する場合は、以下の点に気をつけてください。
プロファイルを正しく認識する「カラーマネジメント対応アプリケーション」だけを活用する場合は問題ありません。しかし、3ds Maxや Maya のようにガンマだけを設定するアプリケーションと併用する場合は、このカラープロファイルが定義式で記述されているので、完全に一致させることができません。特に Maya の場合は、設定したプロファイル名がいくつのガンマ値を使っているのかが不明瞭なものもありますので、きちんと実証しておく必要があります。


図3「3つのプロファイルの違い」
ガンマが異なる3つのプロファイルをカーブで比較

ガンマ【2.2】

本来の規格とはずれている ガンマ2.2 というカラープロファイルがあります。Adobe 社の製品をインストールした際に2つの Rec.709 が一緒に入ります。
・HDTV(Rec.709) ガンマ2.2に設定されている
・HDTV(Rec.709) 16-235 階調を16-235に制限してある
なぜガンマが2.2に設定されているかは不明ですが、自社の用途に合っていれば利用できるかもしれません。

代表的なカラープロファイル AdobeRGB や sRGB もガンマは2.2です。Rec.709 はガンマ以外は sRGB と同じなので、ガンマ2.2の Rec.709 はほぼ sRGB と同じと言えます。それであれば sRGB で運用した方が、WEB等のコンテンツ制作でも同じワークフローでいけるので便利だと思います。

ガンマ【2.4】

放送関連ではマスモニを基準に色を決めてきました。理由は不明ですが、現在制作されているマスモニが持っている Rec.709 カラースペースはガンマ2.4がデファクトスタンダードになっているようです。
そこで、この値にあわせた新規格が2011年3月に【BT.1886】として策定されました。すでに規格がスタンダードになると思われますので、これからカラマネを導入され、最終アウトプットを HDTV にする予定の場合は、ガンマ2.4を採用することをお勧めします。
すでに Rec.709 を運用されている場合は、どこかのタイミングでガンマ2.4へ変更が必要になると思います。カラマネの利用者が増えると企業間でのデータのやりとりが多く発生します。そのときに同じ規格で運用しておかないと事故が起きたり、思いが伝わらないことが起こるためです。

BT.1886 は正式には Rec709 とは違う規格ですが、すでに私たちが「Rec.709」という名前に慣れてしまっているためか、私たちが入手できるカラープロファイルとしては、Rec.709(ガンマ2.4)といった名称で提供されることが多いようです。

3DCGソフトのガンマ設定については「2.4」に設定します。


図4「3ds Maxのガンマ設定」
《表示》部分のガンマ値を2.4に設定。ただし《ビットマップファイル》部分はテクスチャ画像の入力とレンダリング画像の出力を管理しているので、ここは一般的なデジタル機器で使用されている2.2にします。

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