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第29回:カラーマネジメントの基礎知識 ガンマを設定するとRGBの値が変わる

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こんにちは、パーチ長尾です。

前回は「色の絶対値と相対値」についてお話ししました。色がデジタルデータとしてどのように扱われているのか? RGB値が絶対ではないんだ、ということがわかってきたと思います。

色をデジタルデータで管理するのに普段は意識をすることがあまりないですが、私たちの制作業務の中でも一番大事なところだったりしますよね。3DCGソフトの動作、モニタの発色、撮影した画像の処理、など意識しなくても色は勝手に数値化されています。
何も意識しなくても色が合ってくれれば、制作に集中できて質も効率も高まりますが、現在はカラーマネジメントというシステムの導入期ですので、意識しないで色が合うのはもう少し先になりそうですね。

いろいろ覚えることが多くて面倒ですけど良いこともあると思います。デジタルでどのように色が扱われているのかがわかると、3DCG制作や写真・動画編集のコントロールがよりうまくなるんです。
こういった時期に関わると仕組みの根っこ(本質)が理解できるというのがうれしいですよね。

ところで、先日【カラーマネジメントセミナー】をしていたときに、ポストプロダクションで働いている方から質問をもらいました。
「3DCG側で色を管理する必要があるんでしょうか? これまではポスプロ側でカラコレしていたんですが」
3DCGでレンダリングしたデータは動画編集へまわります。これが自社内で行われる場合もあれば、ポストプロダクションのような別会社へ行く場合もあります。このような大きなパイプライン(ワークフロー)でも、3DCG制作行程だけでも、質と効率を上げることができるのがカラーマネジメントの特徴です。

そのメリットは、
・3DCG側で狙い通りの色を作って、それを編集行程に正確に伝えることができること
・Director が3DCG行程でも、編集行程でも色に関する指示を統一できること
・動画内に登場する個々の物体の色が正確になること(全体の色あわせでは対応できない色管理ができる)
・無駄な色修正が減ること
と、お答えはしたんですが、実はこの質問の真意は【工程間のパイプライン構築の難しさ】かな? とも思っていました。

カラーマネジメントの導入がすでに完了している広告・印刷業界では、導入初期に【各工程間の調整】が問題となっていました。
後工程からは「前工程で管理されても対応できない」ということをよく聞きました。
前工程からは「データを渡す際の色管理基準に満たないと納品できない」ということを聞きましたねえ。

じゃあどうやって導入が進んだのか? が一番興味あるところですよね。 それは、【一気に業界全体のルールが決まって導入が進んだ】のではなく、【質と効率を上げたいと思った会社から徐々に導入が始まった】というものでした。やはり変化というのは徐々に始まって、ある日気がついたときには仕組みが大きく変わっている、というものなんでしょうね。今、広告・印刷業界でカラーマネジメントを導入していない会社は滅多に見なくなったように思います。

カラーマネジメントは導入すると空気のような存在で、「あることに気がつかない、でも無いと非常に困る」といったものです。そのため、広告・印刷業界でも全てのクリエイターが色に関して詳しいかというとそんなことはなく、勉強する人はたくさんいます。 先日、知人の上原さんが本を出したので、早速読んでみましたが、色のことや2D処理をわかりやすく説明してくれていました。お勧めなので紹介します。


「写真の色補正・加工に強くなる」(技術評論社・上原ゼンジ・庄司正幸著)
図1「写真の色補正・加工に強くなる」(技術評論社・上原ゼンジ・庄司正幸著) カラーマネジメント・2D処理をわかりやすく解説した最新刊

なぜ256段階?

前回に引き続き、色に関するちょっとした疑問に触れていきたいと思います。
RGBは 0〜255 までの256段階で表しますが、これは8ビットで表せる段階なので使われているようです。1ビットは0か1を表すので2段階を表現できます。8ビットなら2の8乗なので、256段階を表現することができるわけです。
RGB各色ともに8ビットずつで、合計24ビットが1ピクセルあたりの情報量として処理されています。256 x 256 x 256 = 約1670万色という数字を見かけたことがあると思います。
「100%」というほうが理解しやすいと思いますが、慣れてしまうと256段階表記でも自然に扱えるから不思議ですね。

3ds Maxでメンタルレイを使うと、カラーセレクターは 0〜1 で表わされています。3DCGのバーチャル世界は色をより細かく複雑に取り扱っているので、8ビットにこだわるのはかえって不自然だからなのかもしれませんね。入力についても小数点以下3桁(例:0.001)まで入力できるので、256段階の8ビットに比べてずいぶんと細かく調整することができるようです。

カラーセレクターだけでなく、ポスト処理で品質を上げるためには、色の分解能は重要なポイントになります。色を何段階で表現するか(微分するか)を【色の分解能】といいます。
レンダリングした画像を保存するときに TIFF を選ぶと8ビットの他に16ビットが選べます。また、HDR形式なら32ビットまで記録できます。

8ビットでレンダリングした画像は、1色あたりは256段階で表すので、どんなに滑らかなグラデーションでも256段階で表現されてしまいます。完全な黒は0、白は255となります。
そのため、ポスト処理時の色調整でトーンジャンプが現れることがあります。図2を見てください、これは226〜255(%で表すと90〜100)のグラデーションを色調整して226を0にしたときに現れたトーンジャンプです。これはわかりやすくした例ですが、色調整を行ったときにはトーンの圧縮もしくは伸張が行われ、その際に8ビットのように色の分解能が低いデータはトーンジャンプという画像劣化を起こしています。特に起こりやすいのはこの例のような撮影やレンダリングの画像にコントラストが弱い場合や、色調整を複数回繰り返した場合です。

最近はHDR形式でレンダリング画像を保存し、ポスト処理を行うケースが見られるようになりました。32ビットのメリットは、ポスト処理時に露出や色温度を変更できることだといわれていますが、そのほかに色の分解能の高さもあります。

それから、解像度や全体の色調以外にも【トーンジャンプ】も気をつけてみると品質がアップしますよ。



図2「トーンジャンプ」 8ビットのデータにはトーンジャンプが起こり、画像が劣化している。16ビットのデータではトーンジャンプは確認できない。

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