チュートリアル / もしもMotionBuilderでプリビズをしたら
第9回:カメラ設定を見直そう(その3)

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前回は、MotionBuilderでの一般的なカメラ設定項目についてお話しました。今回は、3D立体視ステレオカメラの設定についてお話したいと思います。

ステレオカメラ設定

3D立体視の仕組みなど基本については、第4回「3D立体映像のプリビズ」で記しましたのでそちらをご参照頂くとして、ここでは具体的にどう設定を行なうかについてお話しします。

ステレオカメラをシミュレーションする場合、数年前までは既存のCGソフトにはそのようなカメラ設定がありませんでしたので、自分で2つのカメラを制御するリグをつくって行なわれていたと思います。MotionBuilderには2012からステレオカメラがサポートされ、リグを設定しなくてもシミュレーションができるようになりました。既にMayaなどのCGソフトでステレオカメラがサポートされるようになっており、MotionBuilderは後発でしたが、設定の面では他と比べてもかなりよくできていると思います。では、設定内容を見てみましょう。

シーンの中に「Stereo Camera」をつくると、前回説明した「Advanced Settings」のとなりに「Stereo Settings」というメニューが追加されます。これがステレオカメラの各種設定を行なうメニューです。



ステレオカメラの種類

まずはスクリーン面を表示させてみましょう。下段の「Show」の項目に「DisplayZeroParallaxPlane」という項目がありますね。それをチェックしてみましょう。
また、「Camera Settings」に戻って「View」の項の「Camera Near/Far Plane」にもチェックを入れてみて下さい。これで3Dカメラの設定内容がわかりやすくなります。

最初に「Stereo」の項目について説明しましょう。ここには以下の4つがあります。




「None」と「Parallel」はその名の通りですが、分かりにくいのは「Converged」と「Off-axis」です。両方とも交差法によるステレオ撮影ですが、違いは台形歪(キーストン歪)があるかないかです。




この歪みは左右のカメラが異なった角度で被写体に対していることが原因であり、交差法撮影では必ず発生するものです。つまり、これがない「Off-axis」が現実世界ではありえないもの、CGの世界だからこそできることなんです。
ですから、実写撮影のプリビズを行なう際には「Off-axis」は使用するべきではありません。この台形歪が問題になるかどうかをチェックする事もプリビズの大事な目的の一つなのです。

視差調整

視差はカメラ間距離(インターアクシャル)とカメラからスクリーン面までの距離(コンバージェンス)によって決定されます。 MotionBuilderでは、インターアクシャルを「InteraxialSeparation」、コンバージェンスを「ZeroParallax」で設定します。

「InteraxialSeparation」はデフォルトで6.35が設定されています。これは1グリッドを1cmとした場合に6.35cmとなり、人間の平均的な左右瞳間距離になっています。
これをどういう数値にするかですが、普通に考えれば、この数値で固定することが当然のように思えます。 でも、映像で考えるとなかなかそうはいかないのです。
例えば、コンバージェンスを10m、その位置にキューブを置き、手前5mに球、奥5mに円錐を置いたとすれば、それは現実世界でも不自然でない位置関係であり、何の問題もありません。(ステレオカメラ画像はアナグリフ表示しています)



では、コンバージェンスを50cmと近くし、その位置に球を置き、奥5mにキューブ、さらに奥5mに円錐を置いたらどうでしょう。



奥のキューブと円錐の視差が大きくなりすぎて、立体に見えにくくなってしまいました。
このような場合にはインターアクシャルを狭くして視差量を少なくします。それにより、奥のものも見やすくなってきます。これは、コンバージェンスを遠くして、目の前にオブジェクトを置いた場合でも同様です。被写体がスクリーン面に対して大きく離れて配置されている場合にはインターアクシャルを小さくしないと映像として成り立たなくなってしまう場合があるのです。



コンバージェンスを50mと遠くし、その位置にキューブを置き、手前5mに球、奥5mに円錐を置いてみましょう。



どのオブジェクトも同じ視差になり、立体感が感じられなくなってしまいました。
このような場合にはインターアクシャルを大きくして視差量を大きくします。それにより、立体感を感じる事ができるようになります。遠くの被写体はインターアクシャルを広げないと視差が生じず、立体的に見えないのです。例えば、野球やサッカーなど被写体までの距離があるような撮影の場合には、インターアクシャルは大きくします。



当然ながら、以上に記した数値がダメな数値という訳ではありません。前回に述べたようなカメラのアパーチュア設定やレンズサイズなどにより変わってきます。
今回ほんのちょっとやってみたシミュレーションでも「うわ、面倒くさい」と思われた事と思います。これを撮影現場でやるなんて。。。考えただけでもぞっとしませんか?

3Dステレオの可能性

最近、日本では3D映像制作が急速に少なくなっています。それは3Dによる映像効果が少ないと思われているだけでなく、このような作業の大変さが大きな要因になっていると考えます。ですが、マーティン・スコセッシ監督の「ヒューゴの不思議な発明」などを見ると、3Dの効果は次世代映画表現の一つとして確立できる分野だと思えます。だって、面白いでしょう!

3Dステレオ映像制作は今までの制作に比べて大変です。作業量もコストもかかります。でも、どう見せるか、どう3Dを使うかということをしっかりとストーリーに組み込む事で、新しい面白さが生まれるのではないでしょうか?それをプリビズを使って可能にできる、私はそう確信しています。

さて次回は、カメラからちょっと離れ、MotionBuilderの一番オーソドックスな使用法、モーションキャプチャシステムについてお話ししようと思います。
お楽しみに。

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