チュートリアル / もしもMotionBuilderでプリビズをしたら
第10回:モーションキャプチャを使ってみよう(1)

2012.07.09

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これまで1年に渡り、プリビズの概要とそれに関わる技術の紹介をしてまいりました。プリビズについて大筋ご理解頂けたのではないかなと思います。さて、今回から、MotionBuilderの基本に立ち戻り、モーションキャプチャについてお話ししたいと思います。


プリビズで使うモーションキャプチャ

モーションキャプチャシステムにはいろいろありますが、皆さんが最初に思い浮かべるのは光学式のモーションキャプチャシステムではないでしょうか。体育館のような大きなスタジオにたくさんのカメラを設置し、アクターに光が反射するマーカーをつけて、アクターの動作の一部始終を収録するシステムです。マーカーがつけられるものであれば、どんなモノでもキャプチャしてしまう、非常に優れたシステムです。

しかしながら、今回ご紹介するのは全く別のシステム、慣性センサーをつかったMVNというシステムです。



オランダのXsens Technology社が開発販売しているシステムで、慣性センサーが仕込まれているスーツを着用するだけでアクターの動作をキャプチャすることができます。カメラも専用スタジオも必要なく、映像制作に限らず研究分野でも活用されています。日本ではゼロシーセブン株式会社が取り扱っておられます。

このシステムを初めて知ったのは2008年でした。LAにあるプリビズ会社The Third Floor社のChris氏からの紹介で「おもしろいシステムがあるよ」と聞かされたのがMVN(当時はMovenという製品名)だったんです。

なぜこのシステムがプリビズに向いているかというと、セッティング時間がほとんど不要(スーツを着るだけ)、場所を選ばず、あらゆる人物の動作をキャプチャできるからなんです。プリビズには時間をかけられないし、コストも限られています。キーフレームで人物のアニメーションを制作するのは非常に大変なので、ほとんどの場合、簡単な動きだけに停められています。しかし、もし細かな人物の動作をプリビズに反映する事ができれば、プリビズの精度を上げることができ、より詳細な設計を行なう事ができるようになります。それを実現できたのがMVNだったのです。

MVNの設定

MVNの設定は非常に簡単です。
1)アクターに専用スーツを着てもらいます。
2)使用するPCのUSBに受信機を差し込みます。
3)各関節間の長さを測定し、個人データとして入力します。
4)スーツに内蔵されている発信器のスイッチを入れ、データの送受信を確認します。
5)気を付けに似た直立の姿勢(Nポーズ)でキャリブレーションをとります。
はい、これで終了です。
この中で一番気をつけるのが3項の測定です。MVNには元々キネマティクス情報が割り当てられていますが、欧米の機材ですので欧米人の体型に準拠しています。日本人が使用する場合は大きく体型が異なる場合があるため、正確な測定が必要となります。MVNは慣性センサーの数値をキネマティクスに対応させて計算し動きを算出するので、キネマティクスが正確でないと誤差を生み、動きを重ねる毎に誤差が大きくなっていきます。この測定を正確に行なう事で、精度を高める事ができるのです。

キャリブレーションは直立姿勢を数秒行なう事で十分です。ですが、それではうまくキャリブレーションが取れない(関節の動きが不自然)場合は、Tポーズなどいくつか追加のキャリブレーションを行ないます。全部のキャリブレーションを行なっても数分で終了します。

キャプチャしてみましょう!

スタジオ収録では面白くないので、外に出てみましょう。
収録場所に選んだ公園に到着後、キャリブレーションを行ない、すぐに収録開始。
MVNにはMotionBuilderのプラグインがありますが、直接接続するのではなく、専用ソフトであるMVN studioとの通信によってデータを取込むものです。MotionBuilderで直接収録する事も可能ですが、今回はシンプルにMVN Studioで収録します。



スタジオに戻り、収録したデータを再生し、MotionBuilderで取り込みを行ないます。
このシステムにバーチャルカメラなどの機材を追加し連動させる場合には、 MotionBuilderで収録した方が同期をとる事も容易になるので有効でしょう。


道具を使いこなす

私が実際に仕事でMVNを使用したのは、スポーツ選手の動きをキャプチャする作業でした。プリビズではなく、キャプチャすることが目的でしたが、日本ではなかなかMVNを使用する機会がなかったので、この作業は非常に刺激的でした。

自分で使ってみると、良いところだけじゃなく悪いところも見えてきます。
MVNも完璧なシステムではなく、野球のバットスイングのような非常に速い動きだと慣性センサーの精度を超えてしまうのか、キネマティクスが崩れてしまうという現象が時々現れました。また、慣性センサーによる計算値で関節の動きを計算しているので、どうしても若干の誤差は生じます。例えばぐるっと円形に走って同じ場所に戻って来たとしても、その場所はスタートした場所とは若干ずれてしまいます。
このようにいろいろ問題点はあるのですが、MVNの特筆すべき性能は、場所を選ばずにすぐに使えるということ。この利点を活かして使いこなす!ということが重要です。 どんなシステムでも道具であり、使い方によって活きも死にもするものなのです。

みなさんもプリビズに限らず、プロジェクトの内容によりもっとも効果的な機材を選び、映像作りにご活用ください。まあ、機材選びをするにもプリビズが有効なんですけどね(笑)。

さて次回は、第2弾として一人一台使えるモーションキャプチャシステムについてお話ししようと思います。
お楽しみに。

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