チュートリアル / Mayaで作るセルルックキャラクター
そこはかとなくアウトローなモデリング方法でセルルックの美女を作ってみた
第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

2022.06.23
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皆様、エスエフグラフィックス林です。
前回からまたさらに間隔があいてしまって本当に申し訳ありませんが、第4回張り切ってスタートします!

今回は前回の続きである「目」のアプローチ法の後編になります。また、駆け足気味ではありますが、鼻と口の表現方法に関しても触れさせていただきます。

目の二重などのライン部分の表現

二重などの実線に見えるラインは、一般的な方法として
①実際にメッシュで皮膚の重なりをモデリングし、シェーダーのアウトライン機能でラインを描画させる
②テクスチャにラインを描き込んでしまう
といった2つの方法が考えられます。

ただ、上記のデメリットとして
①ラインの描画をシェーダーに依存するため、入り抜きや太さなど細かなコントロールが困難で、カメラとの距離やアングル、表情によっても意図通りに見せるのが難しい
②表情で大きく変形させた際にテクスチャの伸びや歪みが発生しやすい。特定の表情でラインを消失させるような表現ができない

といった点が挙げられます。
これはどういうキャラクターモデルかにも寄ってくるので、もちろん上記の方法で問題無いモデルも多々あると思いますが、今回のキャラクターモデルに関しては「意図通りに描画されない」「一部の表現を妥協する必要が出てくる」可能性が考えられました。

そこで、今回は極めて原始的な方法ではありますが、自由度が高くかつ2Dテイストのキャラとの相性が良い手法をご紹介できればと思います。
それでは早速、前回までのサンプルモデル(第3回終了時)を使用して解説していきます。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

テンプレートベースで作成した顔面モデルで、「ライン想定」のポリゴンを選択し、抽出ツール等を使い顔面から切り離します。
今回は眉、眉下方の眼窩(くぼみ)のライン、上瞼の二重ライン、下瞼と眼球のキワラインの4つの箇所を画像のように切り離します。
※わかりやすいよう該当部位は赤色にしてあります。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

切り離したラインメッシュを統合し、元の位置よりほんの少しZ方向手前に配置します。
抽出時、顔面メッシュに空いてしまった穴はふさいでしまいます。
この段階でライン側、顔面側メッシュとも分割の追加が必要な場合対応します。
フォルム自体が大きく変わってしまわないよう気を付けながら、ブレンドシェイプを考慮し分割していきます。
表情によって直線的にも曲線的にも変形させる場合がありますので、なるべく「等間隔」に余裕をもって分割を増やしておくと良いでしょう。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

顔面に空いた穴を塞ぎ、各ラインの浮き具合をパーツ毎に微調整しました。
フェイシャルアニメーションで大きな表情変化がある場合には、顔面+ラインパーツともに分割をもっと増やす必要がありますが、今回はそこまでの表情はないため、このまま進めます。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

顔面メッシュ、ラインメッシュを変形させ簡単な表情を作成してみました。
この構造では、ラインメッシュは顔面メッシュから独立したメッシュです。このため、太さの緩急や入り抜きなど、シェーダーやテクスチャに依存することなく調整が行えます。
ラインメッシュの頂点同士を吸着させることでラインを途中で途切れさせ、完全に消失させることもイメージ通りに行うことが可能になります。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

さらに発展させて、眉間のしわや涙袋下のラインなどを追加ラインパーツとしてあらかじめ顔面に埋まるよう仕込んで置き、特定の表情で浮き出るようにしてみました。
追加パーツの初期位置、形状に気を付けておけば、ブレンドシェイプによる変形途中の値(0.5とか)でも特に違和感はありません。
画像のように「ラインに隣接する影色部分」も追加すると一層自然に見せることが可能です。

構造としては単にポリゴンを浮かせて重ねているだけですので、めり込みのすり合わせは注意する必要があります。
形状が未完成の状態でも一旦仮でブレンドシェイプ設定を行い、動かしながらめり込みが発生しやすい箇所をチェックするとよいでしょう。

まつ毛の表現

2Dキャラで処理が難しい部分の一つにまつ毛があります。
今回のサンプルキャラの場合、デフォルト状態では上まつ毛は目じりに3本です。しかし、そのまま閉じて半開きにするとなんだか物足りない感じになります。
キャラモデルを作成したことがある方ならご存じだと思われますが、目が半開き状態だと特に印象がかわってしまいがちですね。
とはいえデザイン自体は変えたくありません。特に版権キャラなど元の設定画が完全にFIXしているものに関しては、勝手に改変するわけにもいきません。
この問題を完全に解消できる訳ではありませんが、今回はポリゴンフェースの片面描画を利用した対処法を紹介したいと思います。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

画像では常時見えてほしい目じり側の3本まつ毛を赤色にして、目を閉じた場合では見えてほしい中腹のまつ毛を緑色に設定してあります。
それぞれフェイスの法線方向を逆に設定します。
基本的にはそれだけです。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

カメラアングルや表情の変化をつけた比較画像です。
半開きや目を閉じた際は緑のまつ毛も描画され、見開きや正面アングルではデザイン通り赤色の3本のまつ毛のみが描画される仕組みです。
ちょっと反則のようにも思えますが、構造的にシンプルかつツールや環境に左右されない対処法として知っていて絶対損はありません。
まつ毛に限らず、片面描画を効果的に使いこなすと表現の幅が大きく広がります。

鼻筋の表現

先ほどの片面描画を応用した鼻筋の表現方法を紹介します。
まずは、その前提として簡単に鼻筋に関してちょっとした解説を行います。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

サンプルモデルをA~Cまで3つ用意しました。
画像下段のようにサイドビューから見た際の鼻の高さ、シルエットは共通です。
正面から見た際の鼻の中央の幅(青色フェイス)のシルエットにそれぞれ変化をつけてあります。
青色と肌色の境目は最も面の切り替わり角度差が大きく、斜めアングルではこの位置にラインが描画されることになります。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

トゥーンのアウトラインを設定して、斜めアングルで比較してみます。
違いがお分かりいただけるでしょうか?

つまり、鼻筋ラインの見え方は鼻自体のZ方向の高さだけではなく、センター部分天面の横幅でラインが大きく変わるということです。
なかなか思ったイメージの鼻にならない、デザインの印象に近づかない、また第三者から鼻が低いor高いなど指摘された際などはサイドビューで鼻の高さを見直すのではなく、フロントから見た際の中央部分の幅+バランスを検討してみると解決の糸口になるかもしれません。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

先ほどのセンター部分のバランス等を考慮しつつ、片面描画のメッシュを作成していきます。
鼻ライン用メッシュは、元の顔面メッシュから鼻筋のフェイスを複製して反転、加工していくとやりやすいかと思います。
インスタンスを作成し表示した状態で作業を進めます。
基本的に作業自体はパースビューで行っていきます。パースカメラの焦点距離などの設定を時折変更して、不自然さが生じていないか確認しながらの作業になります。
特に発生しやすい不具合として、正面アングルの際、左右のメッシュが同時に見えてしまいがちですので念入りにチェックします。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

一通り調整した状態です。
画像右側の正面アングルでは左右のラインが完全に非表示となり、カメラとの角度がつくに従い片側が強くラインが描画するようなバランスに調整してみました。
一本調子に見えないバランスに纏めるのがコツです。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

ラインの擦れ、陰影となるエッジの強調などニュアンスを加えてみました。顔全体の輪郭線はシェーダーでアウトラインを加えています。
サンプルキャラのようにレトロ(90年代?)な濃いめのキャラとか、鼻の描画に特徴があるイラストの再現などでは有効かもしれません。
なかなか根気が試されますが、辛抱強く調整すると一見するとどんな構造か判らない面白い表現が可能です。
また、左右のメッシュは必ずしも対象形状である必要はないので、ニュアンスに変化をつけるのも有効かと思います。

一般的なシェーダー依存のアウトラインは、頂点カラーや専用マップによって緩急の制御を行えます。しかし、工夫をしないと画一的で似通った印象になりがちです。
シェーダーのアウトラインと片面描画を併用すると一味違う印象的なキャラにできるかもしれませんね。

口の輪郭の表現

目鼻同様、口の表現もモチーフにより千差万別ですが、どんな作風(画風)でも表現できる手法を紹介いたします。
基本的に目の二重ラインの応用なのですが、メッシュの切り離しは行いません。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

唇と口内との境目にエッジループを1つ追加し、追加されたポリゴンループをテクスチャorマテリアルにてライン想定の色に設定します。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

唇の帯の幅+シルエットを整えて意図したライン形状に見えるよう調整。
基本はこれだけです。
二重ライン同様にシェーダーやテクスチャ表現ではなく、帯状のポリゴンで形取ってしまおうということですね。
ほんのちょっとした作業ではありますが、これで変形時の制限もなく確実に口の輪郭ラインを表現することができるようになります。

第4回:2次元キャラクターの目を魅力的に表現する為のアプローチ法 後編

色々表情を作ってみました。
分割がちょっと足りなかったので、ちょっと苦しい形状のものもありますが・・・
口の表情を作成するポイントとしては、「デフォルトの口からの変形」ではなく、それぞれの表情の口を新規で作る(描く)イメージで作成するとメリハリのある良いものになるんじゃないかと思います。
2Dで描かれる口のラインは単純に唇同士の「合わせ目」として描かれることもあります。あるいは、「影、隙間、奥行き」の表現を兼ねている場合や、ラインを消失させることで密着感を強調するといった場合もあります。

また、ブレンドシェイプで大量のターゲットを作成する際は、「ラフで構わないので変化の大きなターゲットを一旦そろえる」と良いかと思います。
一個一個順番に作成していくと、どうしても初期に作成したターゲットと後半に作成したターゲットとで解釈や作成時のスキルに差が出やすいです。
初期のターゲットはこぢんまりとしていて、終盤作成したターゲットはダイナミックになりすぎたり、クオリティにばらつきが出てしまうのです。
いったんラフでも表情バリエーションの全体像をイメージして、それぞれのターゲットの位置づけ、ユニークポイントを明確にしていくほうが、経験上遥かに作りやすいと断言できます。

私の場合は、
①口元
・母音「あ」「い」「う」
・「口を開けた笑顔」「絶叫」

②目元
・目閉じ
・見開き
を最初にラフで作成し、そこから拡張する感じで進めます。
一般的にはブレンドシェイプパーツは最終的に結合するかと思います。この段階ではターゲットモデル作成用の構成と割り切って、パーツをばらした状態でブレンドシェイプの動作を確認できる構造が望ましいです。
パーツのコネクト設定など含めブレンドシェイプ設定をMELスクリプトにしておくと作業がはかどるかと思います。

上記のような「メッシュを浮かせる」、「片面描画」いずれの表現方法も、必ず最終的に使用を想定しているシェーダー、エンジンで正しく表示されるか事前にチェックしてください。
特に片面描画は一般的なアウトライン機能付きのシェーダーでは表現できない場合がほとんどかと思います。必ず片面描画パーツ用にシェーダーを切り替えて問題ないかなどをチェックしてください。

今回紹介した手法に限らず、完成イメージに対して一番適した方法を模索するのもキャラモデリングの醍醐味の一つだと思います。ですので、今回の方法は決してどのキャラクターモデルにも対応できるという訳ではないので、あくまでアプローチの一つとして皆様の参考になれば幸いです。

今回もコラムに使用したMayaデータサンプルを用意いたしました。
データは目元、口元で合わせて2種となっております。
簡単なブレンドシェイプの設定を施しておりますので、実際にシェイプエディタで動かしてご覧ください。

次回の第5回は「法線設定によるキャラクター印象の明確化」といった内容でお届けいたします。

それではまた次回お会いしましょう。

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