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「トロン:レガシー」 VFX 三橋忠央 氏 Interview Mayaをプラットフォームに創る、究極のデジタル・ヒューマン
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Mayaはアーティストが映像を創るためのツール
----三橋さんは長年にわたるAutodesk Mayaユーザだそうですが
三橋氏:私が本格的に3D CGを学んだのは、先ほどお話したサンフランシスコの美大に入ってからです。具体的には1997年頃ですね。で、最初は別のCGソフトを学ぶクラスだったんですが、次の学期になったらそのクラスは無くなって、Mayaという新しいソフトを学ぶクラスになっていた。ずいぶん素早い乗換えですが、教師たちはこの新しいMayaのβ版テスターをやっていたようです。ここで学んだので、私も最初のMaya 1.0以来のユーザということになります(笑)。今みたいに専門別に分けずにMayaのことを全て学ぶという感じのクラスでしたが、資料や参考書もなく先生たちも手探り状態なので、私はマニュアル等を2回くらい全部通して読むなどして勉強しました。まあ、Maya自体、今のものと比べればずっとシンプルでしたからね。
----当時、Mayaに対してどのような印象をお持ちでしたか
三橋氏:当時それほどいろんなソフトはありませんでしたが、それでもMayaに触れたら"もう絶対他のCGには移れない!"と感じました。それくらい他とは全然違っていて、まさに"アーティストが映像を創るため"に開発されたツールと強く感じさせてくれたのです。それまでの3D CGはどこか技術者目線で、ユーザにもすごく高度な知識が要求される感じでしたが、Mayaのインターフェイスはもっとずっと直感的で。単純なことですが、マニピュレータひとつ取っても当時としてはとても革新的で、何歩も時代の先を行っていました。
----以来、ずっとMayaを使い続けてらっしゃる?
三橋氏:そうですね、ずっと使っています。他の製品を検討したこともありましたが、やはり全体的な総合評価でつねにMayaの方が全然良い、という結論になるんです。では、なぜMayaでなければならないか?それは、先ほども話に出たアーティストに適した直感的な操作性と、プロジェクトの必要に応じ、柔軟に変化し対応できる拡張性の高さがあるからです。ぶっちゃけ私たちは、ライティングやシェーディングに関して、Mayaに付いている機能をほとんど使いません。完全に自分たちで作ってしまうわけです。この自家製のものをプラグインなりなんなりでMayaの中にロードし、他のツールともシームレスで使えるようにできるんです。この圧倒的な懐の深さ、拡張性の高さはやはりMayaだけのもの。これがある限りツールチョイスにおいてMayaは絶対に外せません。実際、そうしたツールを入れてシーンを構築していくわけですが、Mayaより直感的にできるツールは他にありませんからね。
----Mayaが一種のプラットフォームになっている?
三橋氏:ええ、私たちはMayaを土台に、カッティングエッジなテクノロジーを詰め込んだプラグインを作るわけですが、それもMayaという土台がしっかりしているからこそ可能なんです。しかも、それらを全部合わせた時にアーティストたちが使いやすいものになっている。これは他には真似できないMayaならではの特長です。また、長年のユーザとして見ても、直感的な操作性はVer.1の頃からブレずに継続されているし、バージョンアップ毎に追加される新ツールは相変わらず魅力的です。前述の通り、プロジェクトで必要になれば自分たちでツールを開発しますが、自分で何か表現を試したいとか絵を作りたいとき自分でツールまで作るのはやはり大変です。その点、Mayaの新機能は、そうした"自分たちで作るとすごく大変"な機能が、アーティストに使いやすい形で始めから入ってくる。新バージョンの発表は今もすごく楽しみですよ。
----ご自身、今後チャレンジしたいフィールドは?
三橋氏:もちろんデジタル・ヒューマンは今後も追求していきます。改善の余地はまだまだあるし、ニーズも広がっています。それ以外では、炎や煙の表現にチャレンジしたいですね。実写と見紛うようなクルマのCGなら、わりとすぐに出来てしまうでしょうが、炎や煙のような自然現象は本当に難しくて......。コンピュータグラフィックスの表現の中で、まだまだノビシロが多い部分じゃないかな、と思っているんです。
導入製品/ソリューション | ・Autodesk Maya |
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導入目的 | ・CG制作のメインツールとして ・自作ツール・システ厶のプラットフォームとして ・限られた制作期間・予算内での効率的な制作 |
導入ポイント | ・アーティストの映像制作に最適な直感的な操作性 ・何事にも柔軟に対応できる懐の深さと高い拡張性 ・ユーザの要望に応えた着実なバージョンアップ |
導入効果 | ・アーティストによる映像制作の効率化・品質向上 ・多様な自作ツール・システ厶のシームレスな連携と、 これによる効率的な運用 ・アーティストと技術者のコラボレーションの促進 |
今後の課題 | ・より効率的な効果的な制作パイプラインの追求 ・デジタル・ヒューマン技術のさらなる高度化 ・炎・煙などより多彩な新しいVFX表現の創造 |
作品概要 |
「トロン:レガシー」 上映時間:126分 製作年:2010年 監督:ジョセフ・コジンスキー 製作総指揮:ドナルド・クシュナー 撮影:クラウディオ・ミランダ 配給:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ (C) Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. |
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*上記価格は年間契約の場合の1ヶ月あたりのオートデスク希望小売価格(税込)です。