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Transformers Prime 
吉平直弘氏 (ポリゴン・ピクチュアズ) Interview 「Smoke for Mac OS Xで作業フローを一新し、 世界レベルの品質要求と過酷なスケジュールをクリア。」

Transformers Prime 吉平直弘氏 (ポリゴン・ピクチュアズ) Interview 「Smoke for Mac OS Xで作業フローを一新し、 世界レベルの品質要求と過酷なスケジュールをクリア。」
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作業フロー健全化により全般的なクオリティが向上

――では以前からSmoke導入を検討してらっしゃったんですね?

吉平氏:ええ、前述したフィニッシングツールのパフォーマンスの問題は3年くらい前から感じており、その頃から「次はSmoke」と言い始めていました。つまり3年がかりで導入にこぎ着けた(笑)。具体的に言うと「トランスフォーマープライム」のCG制作が始まったのが2010年初頭で、Smokeが実際に導入されたのはその年末です。ウチの会社って意外と手堅いんですよ。他に較べて安いといっても、やはり高価な買物ですから。ただ欲しい、便利だという要求だけでは、当然買ってもらえません。導入すればこんなことができてこんな効果が生まれる、と具体的に示して説得しなければならない。そこで、たとえば今までのプロジェクトにおける平均的なリテイク数やフィニッシングで要求される作業などを洗い出し、細かく分析して、Smokeでこれにどのように対応するか、何年くらいで減価償却可能か計算し、具体的な費用対効果を出しながら申請書を書いたんです。

――綿密ですね!

吉平氏:ですから12月に実際に導入した時には、すでにSmokeで何をどうしてどのように使っていくか、かなり細かい部分まで充分にイメージできていました。もちろん操作を学びながらですから、最初からフル回転というわけには行きませんでしたが、昨年の暮に導入してひと通りチュートリアルを終わらせて、年明け1月から数カットずつ使い始めました。

――最初はどのような作業から手がけていったのですか?

吉平氏:一番はリテイクへの対応です。これが現場レベルで一番ニーズが高い課題と感じていたので......。というのは、リテイクが発生した時の対応を全部3Dでやっていると、結局もう一度レンダリングし、もう一度何十レイヤーもある素材をコンポジットし直して、それをエディトリアルチームに渡してモニタを見て、「ダメだ」となったらもう一度全部やり直し......というような繰返しをやっているわけですね。でも、これをポスプロでやれればはるかに速い。その場で見てその場でリアルタイムに直していく。このやり方で、2Dで直してしまえれば1時間もかからないのに、という葛藤がありました。「時間がなくて見通しが立たず直しきれないが、このクオリティでは納得したくない」。そういう高い目的意識の中で、これを何とか解決したいという強い思いがあったんですよ。

――3DCGのスタジオでは2Dで直すセクションはまだ珍しかったのでは?

吉平氏:そうですね。ウチでも2Dレベルの修正は専門的なものではないし、現にいるコンポジットのプロは絵を作り上げていくアーティストであって、修正対応に長けているわけではないですから、2Dで直すと言われても、みんなあまりイメージがわかなかったと思います。だから「2Dでこれだけ直せちゃいますよ」と、「ニキビでもシワでも消せますよ、人だって消しますよ」とアピールして(笑)。まあ、社内的にはやはり多少の抵抗感はあったでしょうね。Smokeでそこまでできるのなら、ライティングやコンポジットのチームの仕事はどうなるのか、とか。あるいは逆に、面倒くさいことは全部Smokeでやってもらえるんじゃないか、とか。

――Smokeの導入が制作フローのカタチを変えた?

吉平氏:そうです。新しくSmokeによるフィニッシングの選択肢が1つ付け加えられたわけですね。まあ、実際に「トランスフォーマープライム」のCG制作が進んでいって、この厳しいスケジュールの中でどうやってより良いもの・クオリティの高いものを作っていくのか、皆で追求していくうちに、自然発生的に、"Smokeを組み込んだ新しいフロー"ができ上がり、「最後に直す」という今のこのスタイルが固まっていったんだと思います。

各部門が相互にバックアップし合える制作体制へ

――その「最後に直す」スタイルの効果は?

吉平氏:リテイクというのは、どれくらい発生するのか、数が読めませんからね。Smokeにより「次のエピソードもやらなければいけないのに、こんなにリテイクが来た!」とか「やってもやっても終わらない」とか、3Dのアーチストは、そういうストレスから解放されて、作業フロー全体が健全なカタチになりました。実際、アーティストは修正に時間を費やすより、レンダリングされたテイクワンを出すことが重要なんだと思います。最初のステップは、とにかくまず全ショットを揃えてしまうこと。これに時間を費やした方が、全体としての整合性が向上して後の修正もやりやすくなる。当然その方が業務効率も向上するし、クオリティも良くなるんです。

――Smokeでのリテイクの処理もスムーズにできている?

吉平氏:ええ、それに関して良いニュースがあるんですよ。Smokeによる「最後に直す」スタイルの導入で作業フローが健全化されたことで、皆の作業のクオリティが上がり、同時にリテイク自体が減ってきたんです。Smokeを使う側の私としては、もっとリテイクがたくさん発生してほしかったんですが。だって腕の見せ所じゃないですか(笑)。まあ冗談はとにかく、「トランスフォーマープライム」でみずから高いハードルを設定して、これを何とかクリアし続けているのではないかと思います。

――業務の効率化という点ではいかがですか?

吉平氏:自分がやっている作業など評価し難い部分もあるんですが、効率は全体として確実に向上していると思います。従来は間々あった"こなせないテイク"というものが減ってきた実感がある。つまり、「もう時間がないので、すいませんが、これで勘弁して下さい!」ということが少なくなったんですね。それはもちろん、プロデューサーチームが一生懸命フォローしてくれているわけですが......とにかくそういうケースは減っています。だから、どのエピソードも、みんなわりと気持ちよく終われているんです。もちろんリテイクの全てをSmokeで処理しているわけではありません。アーティストに戻して直してもらうケースも当然ある。しかし、Smokeで最後に直すという方法が加わって選択肢が増えたことは、やはり皆にとって大きな影響がありました。

――大きな影響とはどのような?

吉平氏:たとえば、ここからここまでの処理はポスプロに頼もう。で、そこからこちらはここで処理しよう......という感じで、各部門が相互にバックアップし合える体制ができたんです。全体が見えていてトータルでバランスが取りやすいから、納期を守り高いクオリティを維持することが無理なくできるんです。そのお陰もあって作品はアメリカでは高く評価されており、エミー賞にノミネートしていただきました。日本のプロダクションとして非常に誇らしいですね。

――CG制作はもう終盤だと思いますが、Smokeに関する今後の抱負は?

吉平氏:キャパシティの問題はあるにせよ、クオリティを積み上げていく方面でもっと寄与できないかな、と考えています。たとえば「トランスフォーマープライム」ではエピソードごとに「こんな感じになります」という静止画が1枚出てくるんです。そこでたとえばこのビジュアルに基づいて"ここまでコンポジットで追い込めます"といった指標を作る。あるいは"各ショットのクオリティを短時間で上げる工夫"や"各シーンに対する終了後のブラッシュアップ"等もやっていきたい。とにかくSmokeはまだまだスペックを豊富に持っているので、アーティストの「今までなかったものを作りたい」という欲求に応えて、いろんなことができる可能性を持っています。後はそれを実現していくための体制づくりですね。技術面や品質の向上だけでなく、より優れたパイプラインの構築についても頑張っていきたいと思っています。

導入製品/ソリューション Autodesk Smoke for Mac OS X
導入目的 ・3D CGアニメーションの編集&フィニッシング
・かつてない高いレベルの品質と厳しい納期の両立
・「後で直す」新しい制作フローの確立
・OpenEXR納品への確実な対応
導入ポイント ・きわめて導入しやすい価格帯
・オールインワンのクリエイティブツールセット
・圧倒的な処理スピードの速さ)
導入効果 ・リテイクの後処理によるフロー全体の健全化
・作業品質の全体的向上によるリテイク減少
・部門相互間のバックアップ体制の確立
今後の課題 ・多角的なアプローチで品質向上へさらに寄与
・Smokeを幅広く活用できる体制の整備、確立
作品概要 「TRANSFORMERS PRIME」
製作年:2010~2011年
総監督:Dave Hartman
CG制作:株式会社ポリゴン・ピクチュアズ
配給:HubTelevision Networks
(C)2010Hub Television Networks,LLC.All Rights Reserved.
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