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friends もののけ島のナキ 
八木竜一氏・鈴木健之氏(白組) Interview 「3ds Maxで"手づくり"したCGアニメ映画の新しくて懐かしい、誰も知らない映像新世界」

friends もののけ島のナキ 八木竜一氏・鈴木健之氏(白組) Interview 「3ds Maxで

2012.01.24

  • 3ds Max
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日本人の多くが知る国民的な童話『泣いた赤おに』の物語が、最新の3D CG技術によって全く新しいCGアニメーション映画へ生まれ変わった。 「friends もののけ島のナキ」は、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「SPACE BATTLESHIP ヤマト」で知られるヒットメーカー・山崎貴監督とNHK教育テレビ放映の「うっかりペネロペ」や「鬼武者3」等のオープニングムービーのCGを手がけた八木竜一監督の最新作となる長編劇場用アニメーション。それは長年構想を温めてきた念願の一作であり、SMAP・香取慎吾をはじめ、山寺宏一やYOU、阿部サダヲら豪華なメンバーが参加した大作であり、同時に3ds Maxを駆使しながら"プレスコ"や"ミニチュア実写とCGの融合"などユニークな技術を注ぎ込んで創りあげた、まったく新しい映像世界である。本作品で共同監督を務めた八木竜一氏とCGスーパーバイザーの鈴木健之氏にお話を伺った。

「限りある資源」をどう上手く使っていくか

――山崎監督の念願の企画だそうですが、八木監督が参加したのは?

八木氏:私が声をかけられたのは2006年頃でした。ナキやグンジョーといった主役キャラクタ(の原形)が描かれた紙がペロッと送られてきて、後からすぐ彼から電話がかかってきたんです。「......で、やる?」っていうから、「おお、やるやる!」って(笑)。彼は、小さい頃に『泣いた赤おに』の話でとてもショックを受けたと言っていましたね。「CGアニメの仕事に携わったら、いつかこれをベースに物語を創りたいと思っていた」と。でも、その段階では、まだ製作委員会などもきちんとは固まってなくて、山崎君やプロデューサーたちと4人ほどでずっとシナリオの打合せをやっていました。もちろん他の仕事もありますから、それを毎日やっていたわけではありません。月1回とか2週間に1回とかそんな感じでしたが、最終稿に相当するプレスコ台本まで数えると、脚本は19稿に達しました。

八木 竜一 氏
株式会社白組
監督
八木 竜一

――その段階ではまだ実際に撮れるかどうかも分からなかった?

八木氏:ええ。映画配給会社にプレゼンテーションして企画を承認してもらわなければ、映画の製作は進められません。そこで脚本が8稿まで出来あがったところで、とりあえずテスト映像のパイロット版を撮ってみようということになりました。普通の実写映画なら、シナリオとキャスティングを示せばある程度イメージがつかめますが、アニメはそうはいきません。たとえば「ヤマトで木村さんが主役です」といえば「おお、いいじゃないか!」となりますが、脚本とイメージイラスト1枚ではさすがに作品の雰囲気や特長は伝わりません。私たち自身が作品の方向性を確認し、共有するためにも、パイロット版を作る必要がありました。CGとミニチュアの融合やプレスコといった手法も、この段階で既に決っていたんですよ。

鈴木 健之 氏
株式会社白組
CGスーパーバイザー
鈴木 健之
ミニチュア撮影風景
ミニチュア撮影風景。事前に作ったCGレイアウトに合わせ、カメラやライティングを調整する。

――なぜそうした技術を使うことになったんですか?

八木氏:そうですね。日本でCGの長編アニメーションを作り、劇場公開するのは、そう簡単なことではありません。劇場にかける以上、ピクサーやディズニーのアニメ映画とも較べられます。もちろんそれらとは違う日本のオリジナリティも出したいですし、「ナキ」をご覧いただいたお客様にはそれらとできるだけ同じ満足を感じてほしい。しかし、残念ながら私たちにはハリウッドほどの予算も人員もありません。とにかく何にでも"限り"があるわけですから、その限りある資源をどう上手く使っていくかがポイントでした。どこに力を入れるか見極め、そこに力を注ぎ込むことで、全体として良いものに見えるようにしていくことが重要なんです。そして、そのための工夫の一つが、CGとミニチュアの融合でありプレスコでした。

1/6サイズで作ったナキの家のミニチュア
1/6サイズで作ったナキの家のミニチュア。カメラが入る場所やライティング時は分離しながら撮影する。

――CGとミニチュアの融合とは?

八木氏:「ナキ」では、ミニチュアを作って撮影し、この実写とCGを融合させて背景の一部に使用しています。たとえばナキたちの家は外観も内観もミニチュアですし、外のシーンでも地面の一部や木の幹などはミニチュアとなっています。ミニチュアを作るということは、言わばシェーディングしレンダリングして最高の質感が付いたモデルが、いきなりそこにでき上がるということなんですね。実際、フルCGのシーンにミニチュアの建物等が出てくると、その質感やリアリティが突き抜けて良いんです。ただ、やはりカメラはCGほど自由には動けません。逆に同じ背景でも岩肌とか草むら等はCGの方が良い感じになりやすいし、カメラワークも自由自在でがんがん行けます。ですから「ナキ」では、ミニチュアを使うことでCG製作の負担を減らしながら、映像は両者の良いとこ取りをしようと考えました。実はこれって2003年ごろに作った、『鬼武者3』というゲームのムービーで使った手法なんですよ。このときミニチュア合成とCGキャラクタ合成を行い、すごく上手くいったんで、「ナキ」のパイロット版を作る時、あれでやってみようということになりました。

――では、プレスコとは? あまり耳にしたことがない手法ですが

八木氏:プレスコとは、俳優さんのせりふを先に録り、その声の演技に合わせてCGアニメーションを作っていく手法です。通常の日本のアニメとはまるきり逆のやり方ですが、実は海外のアニメーション製作では、このプレスコというやり方を取ることが多いのです。今回は最初からこのプレスコで行こう、と決めていて、私と山崎の間でそれがブレることは一切ありませんでした。理由は本物の子供の声を使いたかったから。そして、役者さんのテンションを正確にアニメーションに反映させたかったからです。たとえば同じせりふでも、せりふの頭を強調するのか終わりを強調するのか、役者さんの解釈と表現で雰囲気は全く変わります。当然、それぞれアニメーションも違うものになるべきで、そこを丁寧に表現したかったんです。もっともパイロット版の段階では、まだ役者さんにオファも出せませんから、その時は香取さんの孫悟空の台詞などをお借りして作りました。この人にやって欲しい、という願いを込めて(笑)。

"時間をかけずに良いものを作る"ための試行錯誤

――パイロット版の段階でいろいろ実験をされたんですね

鈴木氏:ええ。その時はまだ世界観もきっちりと決っていたわけではないし、最初の1年は、技術的な面を中心にほとんどずっと研究し続けていた感じですね。他にもたとえばパイロット版では、主人公のナキはモーションキャプチャーをベースに改造したものでしたが、グンジョーは100%キーフレームアニメーション。この両者が一つの画面に同居していて不自然ではないか、というテストも兼ねていました。結果としてモーキャプベースでも手付けのアニメーションのようなムードが出せると分かり、基本これらは同居できるという判断で進めることになったんです。パイロット版の室内シーンの寸劇では、モーキャプベースのナキとキーフレームアニメのグンジョーがミニチュアの背景の中で演技しています。

――あまり他では観たことのない独特のルックを感じます

八木氏:それも重視したポイントの一つです。CGアニメもピクサーにはピクサーっぽさ、ドリームワークスにはドリームワークスっぽさというべき独特の見た目がありますが、一般の観客にとってその違いはそれほど大きくないでしょう。でも、私たちが作るものは、それらとははっきり違うものとして、見た目の感じも一線を画す必要がありました。狙ったのは、"フォトリアルだけどリアルすぎず、デフォルメすべき処はデフォルメした"見た目ですね。CGとミニチュアを融合し、アンバランスさを感じさせるオーバースケール気味の背景に、こうした不思議なキャラクタが立っていると実は意外と相性がいいんです。実写の背景だと情報量が多すぎて嘘臭くなってしまいますが、この場合、背景も嘘の世界ですから、そこにこういうキャラクタを立たせると"嘘と嘘で本当になる"みたいな、そんな世界観になる。誰も観たことのない、新しい世界が生まれるわけです。

――そうやって作ったパイロット版で映画会社の了承を得られたのは?

八木氏:2008年の中ごろでした。東宝の配給会議でプレゼンして承認をいただきました。アニメーションって自由に表現できるだけに、逆に企画段階では最終的にどんな絵面になり、どんなムードになるか分からないことが多いんです。しかし「ナキ」の場合はこのパイロット版で実際に動いたものをお見せすることができたので、われわれのイメージを早い段階できちんと伝えられ、かなり強力なプレゼンができたと思います。

――では、そこからバリバリ作り始めて......?

鈴木氏:いや、なかなかそうはいきません。前述の通り、最初の1年は技術面の研究がほとんどでしたね。そして次の1年でその研究の成果に基づいて、作るものなどの準備をしていきました。いろいろなモノを作ったり、キャラクターを準備したりコツコツ作業して。で、最期の1年でドバーっと一気にシーンを作っていった――というのが、ざっくりした全体の流れになります。まあ、実際にはもう少しタイトで(笑)。最期の1年、つまり2010年の、いわばみんなが走り出す段階になっても、まだけっこう試行錯誤しながらという状態でしたね。システム的にも改善されて落ち着いて回りだしたのは、その年の夏ごろからだったと思います。

八木氏:そうですね。どれをミニチュアで作ってどれをCGで作るかの切り分けとか、CGも基礎的な岩の造形とか、砂をどう表現するかとか、波打ち際をどうするとか、遠くの海をどうするとか。またキャラクタならアニメーションスタイルをどうするとか......これはまあ、リアルであると同時にアニメ的なオーバーアクトな動きを加味したアニメーションスタイルに固まっていったんですが......とにかくそんなことを、皆で喧々諤々やりながら試行錯誤していたのが2010年前半。で、ようやく後半になって回り始めた感じかな。まあ、回り始めてからも、まだ個別の作業がドーンと残っていて、正直ちゃんと終わるのか心配しながら進めていましたね(笑)。

――やはりスケジュールというのは簡単には動かせないんですね

八木氏:言うまでもありませんが、時間をかければかけるほど良いものができるのは確かなんです。でも、私たちも仕事でやっているわけで、つまり「時間=お金」なんですね。いくら良いものを作っても、時間をかけすぎたのでは意味がない。きちんと予算内に収めること、これを当然の大前提とした上で良いものをつくっていく必要があるわけです。ですから、ここでの試行錯誤は"時間をかけずに良いものを作る"ためのものであり、私たちは何とかして"予算以上の価値ある映像を作る"パターンに持ち込もうとしていたのです。まあ、予算的には製作期間は2011年3月までしかなかったので......。実際、本編は3月10日に2Dがほぼまとまって試写しました。そう、あの東日本大震災の前日のことだったので、よけい印象に残っています。

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