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カプコン Interview 「BIOHAZARD 6 映像表現を支えるリードアーティストのこだわりとアイデア」

カプコン Interview 「BIOHAZARD 6 映像表現を支えるリードアーティストのこだわりとアイデア」
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Cut Scenes

カットシーン制作については、リード シネマティック アーティストの村上氏に詳しくお聞きした。制作協力を担当された株式会社ジャストコーズ・プロダクションの山田氏も東京からテレビ会議で取材に応じてくださった。

シナリオ上で重要なドラマパートは、カットシーンによって表現される。カットシーンでは、感情のこもったフェイシャルモーションや演出にあった綿密なリアルタイムライティングが要求される。

前作と比較すると、シーン総数はバイオ5では61シーンであったのに対し、バイオ6では108シーンと約2倍の物量を完成する必要があった。総尺もバイオ5が70分、バイオ6が167分と同じく2倍以上の時間だ。しかし、プロジェクトの期間は、バイオ5が9ヶ月に対し、バイオ6では12ヶ月と1.3倍の猶予しか無い状況であったという。この物量にどのように対応していったのだろうか。

まず前作のパイプラインが見直され、ジャストコーズ・プロダクションとより密接な制作を行うことでマネージメントコストを削減することが行われた。今作では監督を含めCGチーム、ライティングチームは日本で組織し、アクターによるプリビズ、モーションキャプチャーを海外で収録するという切り分けが行われた。

制作を国内に集約することでチェックや外部制作とのテクニカルなトラブルシューティングのレスポンス向上が図られたのである。

ジャストコーズ側の監督が演出ディレクションを行い、カプコン及びジャストコーズのアニメーションスーパーバイザーが演技モーションやテクニカルな面での問題をチェックするという体制だ。

制作スピードを上げることができた要因の一つにビデオストーリーボードの精度向上も挙げられるという。ビデオストーリーボードは、本番キャプチャのリハーサルを兼ねており、アクターが演技に入り込めるように衣装も用意されて撮影が行われた。

ビデオストーリーボードの効果をまとめると次のとおりだ。

•本番キャプチャの事前リハーサルとなる
•演技とセリフに違和感があればこの段階で修正が可能
•キャプチャ収録でのロスを削減出来る
•フェイシャルキャプチャー時の演技確認が可能
(アフレコ段階のCG映像は、無表情のためビデオでテンションを確認出来る。)
•制作の加速化
•精度の高い演技
•雰囲気の把握
•編集制作での迷いを払しょく出来る
•チェックの加速化(ディレクタの事前チェックで、最終段階での大きな変更を防ぐ)
•コストの算出やシーン難易度の目安となりスケジュールの精度があがる。
•テイストの伝達(新規参入スタッフにシーンの制作テイストを即時に伝達が可能。)
•必要なアセットの決定
•早期にゲームに仮組されカットシーンが可視化されるので開発のテンションがあがる

・アニメーションの効率化

海外で撮影したモーキャプデータは、国内でのインテグレーション作業を経て利用されていく。インテグレーションとは、Softimageで制作されたキャラクタや背景のデータをMotionBuilderに読み込んでレイアウトしたり、C3Dのモーキャプデータをキャラクタライズしたりといった事前準備だ。

続いて、ヴァーチャルカメラによる撮影が行われる。今作のカメラアニメーション制作にはヴァーチャルカメラが全面的に採用されている。監督自身がカメラ撮影を担当しているので、監督が望む臨場感あふれるカメラのアニメーションが撮影出来る。また、手付アニメーションによる手振れと違って、大げさな手振れにならず微妙な表現が可能だという。インテグレーションやヴァーチャルカメラによる撮影は、ジャストコーズの東京スタジオが担当した。

こうして撮影された膨大なMotionBuilderのカットは、スクリプトによる自動化でSoftimageシーンへと一括変換が行われた。インテグレーションの段階である程度アニメーションが出来上がっているが、キャラクタ性を重要視しながらSoftimage上のリグで指やボディの細かい補正が行われた。毎カット毎カットで各々のキャラクタが何を考えているかを深く考察しながらモーションは修正されたという。最終的には、SoftimageからMTFrameworkへとスクリプトで出力することで、カットシーンがゲーム上で再生されるのだ。精度の高いインテグレーション、行き来の少ないカメラアニメーション、スクリプト処理による時間短縮など効率的なパイプラインであることが伺える。

「MotionBuilderはリアルタイム性が段違いに優れており、重たいシーンでもさくさくアニメーション再生が行えます。キャラクタライズ機能も強力なのでモーションの再利用が効率よく行えますね。」と、MotionBuilderの魅力についてジャストコーズの山田氏は語ってくださった。

・こだわりのフェイシャル表現

フェイシャルキャプチャーは、ジャストコーズのLAスタジオで音声との同時収録が行われた。なお、パフォーマンスキャプチャやイメージベースドの手法も検討されたが、開発当時の技術としてはボディとフェイシャルは個別で収録するほうがトータルクオリティを向上出来ると決断がされた。

47個のマーカーで収録は行われ、モデル側では84本のリグで制御される。バイオ5では、インゲームとカットシーンでフェイシャルリグの共有化は行われていなかった。バイオ6では同じフェイシャルモーションをインゲーム23本、カットシーン84本のボーンで共有出来る仕組みになっているという。また、より自然な眼球の肉の追従、ほっぺたの動きを表現するためエンベロープウェイトの精度をリッチにしたという。

本作ではドラマを重要視しているため、キャラクタから伝えたいメッセージというのも必然的に増加したという。しかし、キャラクタがあまりにしゃべり過ぎると制作コストが上がってしまう。そこで、表情からメッセージが伝わるような演技にこだわってフェイシャルアニメーション作業は行われた。ビデオストーリーボードのリファレンスもベースになっているが、もっと繊細な部分はキャラクタの思考をディスカッションしたり、自ら演技したりといった研究が行われた。作り手の気持ちを上乗せして、目の細かい動き、口の細かい動きがより伝わるように努力したと村上氏は語ってくれた。

リップシンクについては、音声解析技術は利用せずにキャプチャーベースの手法が採用されている。口の動きには特にこだわりをもって制作が行われたそうだ。どうしても日本人スタッフでは理解できない唇の微妙な動きや舌の動きなどは、英語がネイティブのリップシンクスーパーバイザーの監修で細やかな調整が行われた。こうして、海外から見ても違和感の無い自然なリップシンクや緻密なフェイシャル表現を実現している。

・リアルタイムライトディレクション

カットシーンのライティング調整は、3段階で行われている。
まず1stライティングとして、ライトの方向性や色味が設定される。マズルフラッシュや爆発など、サウンド、エフェクト発生の演出タイミングでもライトが仮設定されるのだ。

1stが完成した時点でエフェクト班やサウンド班にこのデータを渡すことで並行して作業を開始出来るため制作フローを加速出来るのだ。

続いて、2ndライティングでは、すべての要素が入った状態で細かい調整を行なっていく。この段階では、アートディレクタと監督の演出意図を加味して調整された背景モデルも仕上がっている。また、フェイシャルモーションも完成しているので、最終状態のアセットが読み込まれた状態で仕上げが行われる。

1stと2ndを比較すると、髪や目、唇の質感が増して、顔のライトに階調幅があるのが分かる。

3rdライティングでは、メモリや描画処理に関連した調整が行われる。微調整のレベルなので、見た目には影響は無い内部処理的な対応だ。このようにしてカットシーン映像は作りこまれていくのだ。

こだわりやアイデアが随所に盛り込まれた本作では、SoftimageやMotionBuilderがコンテンツ制作で重要な役割を担った。次回のプロジェクトでも、誇張はするが正しい演出を心がけてさらに新しいレベルの映像表現を追い求めていきたいと宮崎氏は語る。

最高のグラフィック表現とゲームとしての面白さを常に突き詰める株式会社カプコンのクリエータからは今後も目が離せない。

株式会社カプコン
株式会社カプコン
宮崎 政人 氏:Lead In-Game Cinematics Artist
黒田 和正 氏:Lead Visual Effect Artist
福井 誠 氏:Lead Character Artist
村上 亮平 氏:Lead Cinematics Artist
株式会社ジャストコーズ・プロダクション
株式会社ジャストコーズ・プロダクション
山田 竜一 氏: Animation Supervisor
導入製品/ソリューション Autodesk Softimage
Autodesk MotionBuilder
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