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カプコン Interview 「BIOHAZARD 6 映像表現を支えるリードアーティストのこだわりとアイデア」

カプコン Interview 「BIOHAZARD 6 映像表現を支えるリードアーティストのこだわりとアイデア」

2013.03.04

  • MotionBuilder
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前作『バイオハザード5』から3年半の歳月を経て、シリーズ待望の最新作『BIOHAZARD 6』(以下、バイオ6)が2012年10月4日にリリースされた。日本が誇る最高のホラーエンターテインメントとして、そのグラフィックや臨場感はさらなる進化を遂げている。株式会社カプコンでリードアーティストとして活躍する開発スタッフの皆様に、この超大作はどのように開発が行われたのか詳しいお話を伺った。

Character

リード・キャラクタアーティストである福井誠氏の本作での役割は多岐に渡ったという。アーティストとして自身が制作に参加することはもちろん、キャラクタ制作で求められる表現のためのパイプライン構築、さらには制作・クオリティ管理といったマネージメント業務までこなされたというから驚きだ。

・ゾンビの欠損表現

被弾するゾンビの欠損表現は重要なテーマである。このため、制作が始まる前に仕様策定や検証作業が進められた。

大きく分類するとボディ、服の2種類に対してダメージ表現が行われている。ボディのダメージ表現は、通常ボディとダメージ用ボディで2種類のパーツを入れ替えることにより表現されている。胴体を例に取るとパーツの組み合わせで、右腹部・左腹部・胸部(背中)の3か所で合計7通りの欠損が行われている。一見するとシンプルな形状に見えるが、実際はかなり細かいパーツの集合体で形成されているという。胴体の他に、手・足・頭、そして服など、全身で10か所以上のパーツが用意された。

前述のとおり胴体が3か所欠損するということは、組み合わせで7通りのパターンが生じる。つまり、7パターンに対応するテクスチャを7枚用意する必要が生じる。さらに、破れだけではなく血しぶき用のテクスチャも必要なため、上半身の服だけで14種類ものテクスチャが必要な状況が発生した。そこで、データの最適化を実現するため、福井氏はチャンネルマスクという新たな手法を思いついたという。

チャンネルマスクとは、1枚のテクスチャをRGBAの4チャンネルに分解して、各々のチャンネルに独立した4枚のマスク画像を登録する手法だ。1枚のテクスチャで複数のマスク画像を扱えることもさることながら、RGBAの4チャンネルを任意に合成して出力できることが利点であるという。

Rチャンネル(右腹部欠損用) + Gチャンネル(左腹部欠損用)という組み合わせで胸部以外の破れと血しぶきを表現。

チャンネルマスクの導入で表現は犠牲にせずに、14種類も必要だったテクスチャをわずか2枚のテクスチャにまとめることが出来たという。アーティストはデータの管理が容易になり、メモリ効率の面でも大きなアドバンテージとなったそうだ。

パーツコントロールとチャンネルマスクの他に、テンプレートマテリアルを使用して欠損表現は制御されている。 テンプレートマテリアルとは、シェーダ構成・パラメータ・アニメーションなどがプリセット登録されたマテリアルシステムのことだ。命名規則に従うだけで、複雑な構成も自動で完了出来るうえに、一括データ修正が可能なため作業効率が大きく向上したという。

・頂点プッシュ

頂点プッシュとは、マテリアルからの制御でメッシュの移動・変形を行ってくれるシェーダである。最大の特徴は、 「ボーンが不要」という点に尽きると福井氏は語る。

ご覧いただけるように、バイオ6ではキャラクタだけでなく背景など至る所でこの頂点プッシュを使用したアニメーションが盛り込まれている。これまで、こういった動きを表現するには、ボーンをセットアップし、モーションスタッフがアニメーションを付けて・・・と様々な手順を踏む必要があったという。しかし、タイトル半ばで頂点プッシュのシェーダが開発されてからは、セクションをまたぐタイムラグが無くなりキャラクタ担当がマテリアルで制御を行うことで、すばやく意図通りのアニメーションを制作出来るようになったという。

関節を入れる必要がないので、ウェイト作業などの時間が省け、描画コストも少ないため、脈動する箇所が多いボスクリーチャーなどでは、従来手法よりも描画・処理は軽減されているという。
なにより、納得いくまで自分で作りこめるようになった為、表現の幅が広がり、キャラを作りこむ楽しさの向上につながったというのが一番大きかったという。

頂点プッシュは、単純なループパターンだけでなく、何回に一回か違うパターンを挟んだり、エクスプロージョンと呼ばれる複雑な制御(動画後半での恐竜の動き)も行える。頂点プッシュ用UVの配置作業は、Softimageで行われ、アニメーションのプレビューや調整はMTFramework上で行われた。
(注:MTFrameworkとはカプコンが自社のゲーム開発用に作成し、使用しているクロスプラットフォーム開発環境およびゲームエンジンの総称)

UVのエリアごとに移動のベクトルを設定し、そこに配置されたUVに対応した頂点を設定方向に動かすというシェーダを利用したエクスプロージョン表現。

・ディストーションを用いた透明表現

バイオ6で行われた透明表現をまずこちらの動画でご覧いただきたい。

イルジヤと呼ばれる蛇のようなクリーチャは、自身を透明化する体液を噴出し、姿を隠しながらクリス達に襲い掛かってくる。このイルジヤの透明部分を表現するのに歪みシェーダが用いられた。

フレームバッファの内容をモデルのワールド法線を用いて歪ませることで疑似的に透明表現が行われている。イルジヤは神出鬼没な設定のキャラなので、このディストーションの機能をさらにマテリアルブレンドすることで、透明から実体、実体から透明への変化を表現している。

「今回題材として取り上げたテクニックは、技術的に高度なものでは無いかもしれません。しかし、工夫や発想の転換で、色々と面白い表現が出来ると感じて頂けたのではないでしょうか。」と福井氏は語る。

チャンネルマスクと頂点プッシュについては、特許も取得されているという。こういった柔軟な発想はどうやって思いつくのであろうか?福井氏によると、最初に表現したい内容への強い思いがあり、そこから様々な情報をつなぎ合わせていくアプローチを行うことが多いという。このため、日頃から海外ゲームの情報や学術論文などに幅広いアンテナを張り巡らせているという。好奇心や探究心を常に強く持つことで、表現と情報のピースが結びつくのだという。

今回のプロジェクトでもSoftimage向けに様々なツール類が用意された。複数のキャラクタに一括でエンベロープウェイトを読み込む処理、GATORをコンポーネント単位で適用する処理(注:2013では標準機能としてサポート)、メッシュの対象化とウェイトのミラーを同時に行うツールなどなど。基本的には、自身が2度は同じ処理をやりたくないと思ったらツール化を考えるという。これらのツールは、ワークグループで共有し、チーム内で多くのデザイナに利用されパイプラインに浸透しているという。

メールで告知するだけではどうしてもチーム内に浸透しないという内製ツールの問題を各社でもよく耳にする。福井氏は、ツールを作る行為だけでは自己満足で、皆に使ってもらえるところまで責任をもって普及のプレゼンすることが大事だと後輩にも伝えているそうだ。増え続ける物量とより豊かな表現を技術で吸収できるようにアイデアを常に出して取り組んでいきたいと力強く語ってくれた。

キャラクタモデリング作業では、Softimageの非破壊アーキテクチャが生産性を発揮したという。

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