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The Black Eyed Peas Experience 
イニス Interview 「超短期間でのダンスゲーム開発を可能にしたHumanIK等の新ミドルウェア活用術」

The Black Eyed Peas Experience イニス Interview 「超短期間でのダンスゲーム開発を可能にしたHumanIK等の新ミドルウェア活用術」
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BEPメンバー自身の理想のBEPをクリエイトする

3Dキャラクターモデラー 中根 知之 氏

3Dキャラクターモデラー
中根 知之 氏

BEPの紅一点"ファーギー"のモデリング作業。ビジュアル表現にこだわりを持つアーチストだけに厳しいダメ出しがあった。

――作品のポイントであるBEPらしさの表現に関してはいかがでしょう

中根氏:そうですね、順にご紹介しましょう。まずキャラクタモデリングに関してですが、キャラクタはBEPメンバーの4人は4ステージ分16体。他に各ステージに3人ずつダンサーがいるので、これも4ステージで12人。BEPと会わせて計28体で、ポリゴン数は各1万前後です。基本的に3ds MaxのDirectX Shaderを使い、一番重要なのがノーマルマップなので、実機に出す前にノーマルマップの状態を確認しておくという流れです。テクスチャは、当然BEPメンバーは他のダンサーより豪華に使っています。身体で1枚、顔で1枚、また髪の毛が長いファーギーはさらに髪の毛で1枚という感じですね。基本、顔は4ステージ分使い回しますが、身体の方は各ステージでコスチュームが異なるので、その部分だけ取り替えて時間的ロスを抑えています。

――モデルはやはりBEP本人たちにも見てもらったのですか?

中根氏:それは当然です。もともと彼らはビジュアル表現に強いこだわりを持ったアーティストですから。実際、本人たちのダメ出しは厳しく、リテイクも非常に多かったです。こちらも最初あらゆる資料を集め、それもまんまリアルにでなくある程度補整して作ったんですが......求められるレベルは非常に高かったですね。

アイエル氏:ファーギーはせっかく3Dモデルで自由に作れるんだから、リアルな自分より少しデフォルメしてゲームとして楽しめる方向にしたい、と言ってましたね(笑)。

中根氏:そういえば、あるステージのファーギーの衣装で、参考にしたビデオではスカートだったのでその通り作り、あちらのデザイナーのOKも貰ったんですが、本人の希望で大慌てでパンツに作り直したことがありました。あれやこれやでマスター1カ月前くらいまで作り直しが続いて大変でしたが、ある意味、BEP自身の理想像になっていると言えるかもしれません。

3Dモデリングマネジャー 中村 基典 氏

3Dモデリングマネジャー
中村 基典 氏

背景はステージ中心でライトも色も動的に変化する。3ds Maxで焼き付けを行って疑似的にライトが当たっているよう見せている

――背景もBEPらしさの演出に一役買っていますね

中村氏:ええ、当然ながら本作の背景はほとんどがステージです。動くライトがあり、色も絶えず変化していくというシーンが主になっていて、この華やかな演出がBEPらしさに結びついています。そこで背景ではこの光と色の表現にもっとも力を入れました。スペック的には1マップ30~40万ポリゴン程度で、テクスチャは圧縮状態で20メガくらいのサイズで作っています。ただ、実はUnreal Engine自体が、動的にライトが変わるといった処理は描画コストが高いので、今回はリアルタイムの影は極力使わずに、こうした演出に対応するかが一番の課題となりました。

――その解決策は?

中村氏:3ds Maxの焼き付けを活用しました。具体的にいうと、3ds Maxのテクスチャレンダリング機能を使って、選択したメッシュにライティングされている状態を焼き付けするんです。このテクスチャを貼ることで、3ds Maxで計算した影が落ちている状態を疑似的に作りだしています。ライトが当たって光っている部分についても、同様に3ds Maxでライトを当てた状態をレンダリングして貼り付けます。明るい部分はUnreal上で、色を変えたり光の強さを変えるなど制御できるので、曲に合わせて色を変えビートに合わせて光らせるといったことができるように仕込んだのです。また、観客席にライトが当たっているように見える表現についても、3ds Maxの機能を利用しています。3ds MaxはUV情報を複数持てるので、たとえば1つ目に通常のディフューズテクスチャが見えている状態のUVを入れ、2つ目はUnreal Engine上で影を焼き付けるためにベタ焼きした、重なることのない状態のUVを起きます。もちろん3番目もまた別のUVを入れておいて、これらを動的にUVスクロールさせることで観客席にライトが当たっているように見せています。...... Xbox 360には凄いグラフィックのゲームがたくさんありますが、ここまでライトを駆使したゲームって他にはないんじゃないか、と自負していますよ。

――アニメーションについては?

アイエル氏:アニメーションに関しては3つの大きなポイントがありました。1つ目はもちろんダンスですね。そして2つ目はアバターまわり。アバターはいろんな服の組み合わせができるので、どんなパターンのコスチュームでも、ダンスに合わせて服やいろんな所をきれいに揺らすシステムを考えました。そして3つ目は、先ほどお話したアバターシステム。ユーザの動きをフェアにアバターにフィードバックさせることです。まあ、何と言ってもダンスゲームですから、ダンスをきれいに楽しく見せるのが1番重要だったのは間違いありません。

MotionBuilderによるアバターのアニメーション作業

――ではダンスアニメーションの開発の流れをご紹介ください

アイエル氏:開発自体は一般的な流れ通りです。決めた曲を聴きながら振り付けを決めて、ダンサーに練習してもらい、モーションキャプチャーを録ってデータを貰い、それをきれいなモーションに仕上げて行く。これを短期間で28曲もやるのは大変でしたが、ディティールにはこだわってます。たとえば日本のダンサーはどうしてもノリが異なるので、モーキャプはアメリカで、あちらのダンサーや振り付け師を使って行いました。もちろん動きは男女でも違いますから、男女別々に踊ってもらってます。1曲80モーション前後で、それが28曲分プラスダウンロードコンテンツですね。アメリカのモーキャプスタジオは偶然映画「アバター」で使われたスタジオが使えたので、ノイズ取りの必要がないほど高精度なデータが録れ、後工程が凄く楽になりましたよ。

――1曲9つのステップを3つずつ小分けにして覚えていく形でしたね

アイエル氏:小分けにしたのは、スムーズに覚えてもらうためと、もう一つはユーザのダンスを評価するシステムもステップごとにKinectで拾ってそのフェーズごとに評価する仕組みだったので、これに対応する必要があったから。でも、そのダンスとダンスの繋ぎの部分もブレンドではなく、しっかりデータを持たせて、すべてきれいに繋がるようにMotionBuilderで作業しています。ブレンドだと滑ってしまうなど、見た目が汚くなりがちですから。

――大変な短期間で開発したにも関わらず全てに渡り完成度が高いですね

小澤氏:ありがとうございます。時間があればもっともっとやれたという部分も当然ありますが、ゲーム内容については、手前みそながら良くできていると自負しています。BEPファンに限らず多く方に遊んでいただけると嬉しいですね!



導入製品/ソリューション Autodesk 3ds Max
Autodesk MotionBuilder
Autodesk HumanIK
Autodesk Scaleform
導入目的 ・Unreal engine上で、キャラクタのモーションを不自然でないようリミット制御する
・厳しい納期をクリアするための作業の効率化
導入ポイント ・制作グループ内に最も普及し熟練者多数のため
・豊富かつ多彩なプラグインの幅広い活用のため
・使いやすいスクリプトによるツール等の作り易さ
導入効果 ・キャラクターモーションのリミット制御を実現
・アニメーション工程の生産性の飛躍的向上
・ダンスアニメーション全般の品質向上
今後の課題 ・さらなる品質向上と作業効率化
・3D CGアニメーションの新たな表現手法の開発
・より幅広いミドルウェアの活用
作品概要 「The Black Eyed Peas Experience」
対応機種 Xbox 360
ジャンル ダンスゲーム
発売 11月/北米・ヨーロッパ地区
販売 ユービーアイソフト株式会社
開発 株式会社イニス
© 2011 Ubisoft Entertainment. All rights reserved.
http://blackeyedpeas-experience.ubi.com/
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