プロダクション
まずは作品のテイストを決める必要があります。そのテイストに合わせて、手描きの手法がメインの作品なのか、CGなどのデジタルツールを最大限に駆使したいのか、手描きとデジタルをどの割合でコンビネーションするのかなどを考え、それに合わせて制作のワークフローでどの道を通るのかを設定していきます。
作画メインの作品
『君の名は。』や『この世界の片隅に』のキャラクターは手描きの作画がメイン。背景も美しい手描きの美術をふんだんに使用していますが、場面によってはCGをこっそり使用している場合があります。例えば『君の名は。』では、描くのが難しいディテイールの多い空間を3Dで作り上げて作画や美術のガイドにしたり、壮大な風景を見せたい場面では背景に3DCGを用いているカットが多数あります。
©2016「君の名は。」製作委員会
株式会社 コミックス・ウェーブ・フィルム 『君の名は。』 ユーザー事例ストーリー
メインキャラが作画で脇役はCGの作品
『ひるね姫』や『台風のノルダ』のキャラクターはデジタル作画で描かれている。前者では、モブキャラや車、背景の一部にもCGを使っています。
フルCGの作品
『モアナと伝説の海』『SING』など、ディズニーやピクサーなどの北米のプロダクションの作品はフルCGで制作されているものが多いです。
©2012「009 RE:CYBORG」製作委員会
株式会社サンジゲン 『009 RE:CYBORG』 ユーザー事例ストーリー
プロダクションの主な工程
作品やスタジオによって、作業工程が多少異なりますが、メインの工程を説明しますね。
レイアウト
絵コンテを元に、各カットの場面設定を描いたものです。どのアングルで何が写されているのか、キャラクターがどのサイズで映って、何処から何処までどう動くのか、カメラワークなどの指示も含まれます。これを元にアニメーターがキャラクターを動かし、美術担当は背景を描きます。
誰がレイアウトを描くのか?
演出家がレイアウトを描くことがありますが、物量が多い作品では複数のレイアウト担当者(海外ではレイアウトアーティストと呼ばれる)がいます。基本的には原画の担当者がレイアウトまで描きます。作品によっては演出家がレイアウトを描くことがありますが、特定のパートを監督自らレイアウトを描くケースもあります。CGを取り入れている作品では、CGのレイアウト担当がCGソフトウェア内でレイアウトをとることがあります。いずれのケースでも、演出や監督がレイアウトを確認し、構図や画面のおさまり具合が納得いくまで修正の指示を出します。
原画
レイアウトや絵コンテを元に、動きの要となる絵が作画される。例えば「ジャンプする」というアニメーションを描く場合は、「地面に立っている絵」「ジャンプする前の予備動作の絵」「ジャンプした時の一番高い位置の絵」「着陸した時の絵」など、その動きの本質が最も分かりやすい要所要所で描かれるのが原画。動きのキーとなる要所をおさえているので海外では「キーアニメーション」と呼ばれています。
原画マン
原画を描くアニメーターのこと。動きのエッセンスを描くプロです。既にレイアウトが用意されている場合は、そのレイアウトに合ったような動きのポーズを決めていきます。しかし、大体の担当カットでは、レイアウトも含めて原画を描く場合も多いようです。それに対して、作画監督が演技に修正やキャラクターの見栄えに修正を入れることがあります。
作画監督
作品全体(または各話)の原画を全てチェックして、しかるべき修正指示を入れます。作品全体を通して、キャラクターの見た目や演技を統一させるための調整役です。
ID-0 ©ID-0 Project
動画
原画のクリーンアップ作業も含みますが、原画と原画の間をつなぐ絵を追加して、動きを完成させる工程です。画力が必要としますが、それ以上に演技の理解力が大事だと思います。
動画マン
新人アニメーターはまずは動画から始めます。原画のニュアンスを広い、動きの軌道やスピード感を伝えるために原画と原画の間に適切な絵を入れるという、単純に見えて以外と脳を使う大事なお仕事です。
© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会
彩色
動画をデジタルデータ化して色を塗る工程です。
色彩設計
キャラクターやものなど、いわゆる「セル」の色をシーンごとに設計して、色見本表を作成する担当です。
色指定
色指定スタッフは色彩設計が作った色見本表を元に、どのカットでどの色をしようするかを決めます。作品によっては同じスタッフが色彩設計と色指定を兼任している場合がありますが、それぞれに複数人のスタッフがいる場合もあります。
ペイント(仕上げ)
決められたパレットを用いて、キャラクターやものなどの「セル」に着彩する担当です。
CG作品での彩色はどうなの?
CGのキャラやメカなどは、3Dのモデルデータ自体を色指定表通りの色で設定します。そのモデルデータを使用している全てのカットでは同じ設定が共通されるので、各カットを改めてペイントする手間隙を省くことができます。モデリング段階では仮色のモデルを作り、仮色のままアニメーション作業を進めることがありますが、途中で色指定の色味である本番カラーに差し替えて、最終的なレンダリングで3D素材を出力します。
蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- ©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ
背景美術
プリプロ段階で作成する美術設定や美術ボードと、プロダクション段階でレイアウトから各カットの背景や美術素材を描くという作業に分かれています。
現在でも紙に絵の具で描く背景美術を用いる作品が多いですが、近年ではデジタルで描かれた美術の出番も多くなってきています。また作品によって、背景が全てCGで作成されている作品もたくさんあります。その場合は、手描きの美術素材をCGに上手く混ぜているケースが殆どです。
美術設定
プリプロ段階で、作品の世界観を表現するために必要な舞台がデザインされます。作品で、様々な場所で物語が繰り広げられるなら、それらの場所がどういう場所なのかを考えなければなりません。現実に存在する場所を舞台に選んだ場合でも、架空の世界でも、それらの絵に説得力を持たせるためには、きちんとしたドキュメンテーション(資料や情報を収集して整理すること)が必要です。
美術ボード
美術設定を元に、それぞれの場面(場所)がどんな色味なのか、どんなタッチや質感で描くのか、の見本となるボードが作成されます。同じ場所でも、早朝・昼・夕方・夜などの時間帯によって色味も変わるので、時間経過がある作品では、それぞれの時間帯や季節でボードが描き分けられます。
各カットの背景美術
レイアウトを元に、各カットの背景美術が作成されますが、基本的にはそのシーンの美術ボードの色身や雰囲気に合わせて描かれます。セルとの合成やそのカットの撮影処理を考慮して、遠景や近景とその中間層は別々のレイヤーで描くのが一般的です。
「シドニアの騎士 第九惑星戦役」
©︎弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
制作進行
各工程の繋ぎ役として、スタッフとの打ち合わせを手配したり、各工程に作業を発注して、演出や監督の指示をスタッフに届け、スタッフからの上がりを確認して演出や監督にチェックに回します。各工程の進行がスムーズに進んでいるかを確認しつつ、決められたスケジュールと予算内で作品が完成するために、スタッフと交渉したり、スタッフの仕事量や振り方を調節する必要があります。アニメーション制作が如何にスムーズに進行するかは制作進行にかかっていますので、作品の「要」だと言っても過言ではありません。
制作進行として元も必要な能力はコミュニケーションです。そして気遣いです。作品の進行の管理において、まめな確認や連絡、迅速な対応が求められていますが、仕事を頼んでいるスタッフに気持ちよく仕事をしてもらうためには、相手のことをよく知り、きちんとコミュニケーションを取ることが、進行のスムーズさに繋がる秘訣ではないでしょうか。
小規模な作品は小さなチームでは、FTP経由のデータのやり取りが主流ですが、オンラインストレージでファイルを共有して確認できるツールを取り入れているスタジオが増えてきます。Shotgunの様なオンラインの制作管理ツールを用いると、複数のスタジオとのやり取りを一箇所で行うことができる上、複数の作品を同時平行に管理することができるそうです。
WHY 3DCG? 〜3DCGが支えるコンテンツ制作の現場〜
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