チュートリアル / もしもMotionBuilderでプリビズをしたら
第6回:バーチャルカメラをつかってみよう

  • MotionBuilder
  • アニメーション
  • カメラ
  • コラム
  • チュートリアル
  • 上級者
  • 中級者
  • 映画・TV

昨年の11月に発表され、話題となったキャノンのCinema EOS。これからのデジタル撮影を加速させるような製品でした。映画やCMなどの撮影では、REDのEPIC、ARRIのALEXAなどデジタルフィルムストリームカメラが活用され、映像制作のデジタル化が大きく推進されています。このカメラもその一端を担っていくことでしょう。
さて、今回は、同じデジタルカメラでもCGを介して扱うカメラ、バーチャルカメラについてお話したいと思います。

バーチャルカメラ?

バーチャルカメラという特別な名前はついているものの、その正体は、MayaやMotionBuilderなどのCGソフトウェアの中で生成される「カメラ」です。CGアーチストのみなさんであれば、毎日使っているものであり、なんにも珍しくありません。
では、なぜ「バーチャルカメラ」という呼び方をしているのでしょう?
それはCGアーチストだけでなく、実写撮影を行なうカメラマンでも扱うことができるカメラだからです。実際のカメラマンが、実写を撮影するのと同じ感覚で、レンズを交換したり、ジブクレーンやステディカムと言った機材を使用したりしてCG世界の中を「撮影」できる。それがバーチャルカメラです。

バーチャルカメラに使われるシステムにはいろいろありますが、最も一般的なものはVICONなどの光学式モーションキャプチャシステムを使用したものでしょう。人物の動きをキャプチャするのと同じように、カメラ(もしくはカメラとして認識させるオブジェクト)にマーカーを貼り付け、移動と回転をキャプチャします。モーションキャプチャシステムの応用なのですから、当然、ベースとなるソフトウェアはMotionBuilderとなります。


「エースコンバット アサルト・ホライゾン」のバーチャルカメラ

バーチャルカメラの好例が、バンダイナムコゲームズさんの「エースコンバット アサルト・ホライゾン」(ACE COMBAT® ASSAULT HORIZON & ©2011 NBGI 2011/10/13発売)ではないかと思います。この中で、基地内での主人公たちのやりとりを、バーチャルカメラを使って撮影しました。

私が制作チームから相談を受けた際に注文されたのが、「ドラマとしての臨場感を加えたい」ということでした。それならば、ドラマなどの撮影経験が豊富な(株)IMAGICAの撮影グループのカメラマンに参画してもらい、実際の撮影でも活用されるステディカムという、カメラのブレを抑える装置を使用して、本当のドラマを撮影するようにCGの世界を撮影しましょうということになりました。



光学式モーションキャプチャースタジオにマーカーを取り付けたビデオカメラを入れ、カメラマンの大畑さんがステディカムを装着して撮影を行いました。実際の撮影で、セットの中を歩きながら撮影するのと装備は同じです。大畑さんは、撮影対象物が目の前になく、モニター越しでしか確認できないという状況に最初は戸惑いを見せたものの、すぐに慣れて、撮影は順調に進みました。ドラマなどの撮影の経験を活かし、あらかじめモーションキャプチャされたキャラクターの演技を撮影していきます。通常、CGアニメータの皆さんがやっておられるようなキーを打っていくCGカメラアニメーションの作成手法ではできない生々しいカメラワークをCGに組み込むことで、ドラマとしての臨場感を演出することができたのではないかと思います。

プリビズとバーチャルカメラ

このバーチャルカメラがプリビズでも大きな力になります。
プリビズによる確認作業が最も必要なのは、監督であり、カメラマン(撮影監督)です。ところが、ほとんどの場合、監督もカメラマンもCG制作の技術は持たれていません。そのため、今までですと、自分の確認したい事をCGのオペレーターに告げて、それを実現してもらうことになります。ですが、バーチャルカメラを使えば、いつもやっているアングルチェックを行なう感覚でプリビズを行なうことができるのです。オペレータへの説明を省略でき、自分の確認したい事をそのまま実行できるということは大きな効率アップにつながります。 バーチャルカメラを使うと、1日に50カット以上のプリビズ制作が可能となるのです。

今公開されている映画「はやぶさ 遥かなる帰還」(©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会 2012年2月11日公開)では、はやぶさのCGカット制作のためにバーチャルカメラを使用したリアルタイムプリビズを行なっています。 非常に短期間で効果的なプリビズを行なえるだけでなく、この時点で監督や撮影監督の見せたいはやぶさのアニメーションやカメラの動きを大方確定できたことで、物語の中ではやぶさという探査機をより魅力的に見せるためのクオリティ向上に時間を費やす事ができました。効果がどれ程かは、劇場でご覧になってご確認頂ければと思います。

バーチャルカメラは、時間がかかると思われているプリビズの作業を素早く、かつ効果的に行なうことができるツールなのです。


Previz by Toei Digital Center Zukun Lab


Previz by Imagica

さて次回は、プリビズにおいて最も重要なカメラ設定についてお話したいと思います。
お楽しみに。

製品購入に関するお問い合わせ
オートデスク メディア&エンターテインメント 製品のご購入に関してご連絡を希望される場合は、こちらからお問い合わせください。