チュートリアル / もしもMotionBuilderでプリビズをしたら
第8回:カメラ設定を見直そう(その2)

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前回は、MotionBuilderのカメラ設定項目についてお話しました。今回は、実際のカメラがどのような設定になっているのか、また実際の撮影にMotionBuilderのカメラを合わせるにはどうするのかについてお話したいと思います。


カメラのアパーチュア

前回お話したAparture Size(カメラ設定の中のAdvanced SettingsにあるFilm Formatに応じて変わるFilm WidthとHeightの値)というのは、実際のカメラで言うと、レンズの最終的な開口面の大きさ、つまりフィルムに映し出される画像の大きさであり、アパーチュアと呼ばれています。これは、SMPTE(米国映画テレビ技術者協会)やISO(国際標準化機構)で明確に数値として定められており、どんなフィルムカメラを使用しても変わる事はありません。
その数値を知る方法としては、日本映画テレビ技術者協会が発行している「映画テレビ技術手帳」を参照することでしょう。この手帳は毎年改訂され、新しい情報を追加して発行されます。撮影現場スタッフはほぼ全員がこの手帳を所持しており、撮影マニュアルとして利用しています。映像の仕事をされるのであれば、ぜひ入手されることをお勧めします。

では、数値について検証してみましょう。

映画やCMなどで撮影に使用される35mmフィルムの標準アパーチュアは22mm × 16mmです。インチに変換すると0.866inch × 0.630inchになります。この設定で撮影される映像に合わせるためには、Aparture Sizeが同じ数値であるFilm Format「35mm Academy」を選択せねばなりません。

では、映画撮影などでよく使われるスーパー35はどうでしょう。アパーチュアは24.92mm × 18.67mm、つまり0.980inch × 0.735inch。従って「35mm Full Aparture」を選択しなければならないわけです。

このようにカメラ設定は、既存の設定を選ぶだけではなく、実際の撮影方法を理解してそれに応じて正しく設定をすることが重要です。

表示設定

Advanced Settingsが正しければOKかというとそうではありません。Camera Settingsで正しい表示設定にしておかねば、正しい見え方にはならないので注意しましょう。
ResolutionをFixed Ratioにすると、Widthの表示がHeightを1.0にした際の比率になります。この数値をAdvanced SettingsのFilm Aspect Ratioと同じにしておくことが必要です。35mm標準で撮影する場合の正しい見え方を確認するためにはWidthを1.37に設定しておかねばなりません。

映画のフォーマットであるシネスコ(縦横比1:2.35)と呼ばれる横長の映像に合わせるにはどうすればよいでしょうか。シネスコ映像を撮影する場合はアナモフィックレンズという横方向に2倍圧縮できるレンズを使用するのが基本です。アナモフィックレンズのアパーチュアは22mm × 18.59mm(0.864inch × 0.732inch)、撮影される画像は横方向に圧縮されて詰まったものになります。「35mm Anamophic」を選ぶと、Squeeze Ratioは2.0になってはいますが、縦にも横にも圧縮されており、アナモフィックレンズで撮影した画像とは違います。このままだと間違った見え方になっているので、Squeeze Ratioは1.0に変更し、表示設定でWidthを2.35に設定することが必要です。
最近では、スーパー35で撮影して上下をカットすることでシネスコを作り出すことも多く、その場合はアパーチュアを24.92mm × 10.6mm(0.980inch × 0.417inch)に設定し、表示設定のWidthを2.35に設定しておかねばなりません。

このようにカメラ設定は、実際の撮影方法をどのように行なうかにより、各設定をそれに適合するように臨機応変に変更することが必要なのです。現場スタッフとの情報交換は欠かさないようにし、正しく設定を行なう事を心がけるようにしましょう。



デジタル撮影カメラ

最近はフィルム撮影が少なくなり、デジタル撮影カメラを使用することも多くなりました。特に日本映画はほとんどがデジタル撮影です。
デジタル撮影カメラも様々な機種があります。よく利用されているRED社のRED ONE、ARRI社のALEXA、SONY社のF35、また昨年リリースされたCANON社のEOS C300、先日行なわれたNABで発表されたBlack Magic社のCinema Cameraなど、新しい機種も続々出て来ています。
機能も充実し、活用する技術も向上した事でフィルムと遜色ない仕上がりが得られるようになりました。それに加え、デジタル合成や編集との親和性も良い事から、この数年で飛躍的に増えてきました。

ただ、ここで大きな問題が出て来ています。
あまりにも急激なデジタル化の波により、アパーチュアの標準化が間に合っていない点です。現状では、フィルムのようにどんなカメラを使ってもアパーチュアが決まっているわけではなく、デジタル撮影カメラは機種によってアパーチュアが変わるのです。
「そんなのおかしい、だってアパーチュアはレンズの開口部の大きさなんだから変わるわけない」と思われるでしょう。それが変わるのです。なぜか、それはCCDなどのデバイスが受像できる領域の違いなんです。デバイスの解像度、さらにそのデバイスに対しレンズがどのようにセッティングされるかにより画像をキャプチャする範囲が変わり、結果として撮影される画像の大きさ、つまりアパーチュアが変わるのです。REDに至っては撮影の設定によって撮影解像度が変わるため、アパーチュアも変わってしまいます。各カメラの仕様を見ても掲載されているのはデバイスのサイズだけであり、アパーチュアの設定にはまったく参考にはなりません。



私も情報収集に努めたり、撮影の際にチャートを撮影して頂いて計算するようにしていますが、続々と出てくる新機種に対応する事ができず、頭を悩ませています。ISOやSMPTEには、なんとか早く標準化して頂くようにお願いしたいものです。

アパーチュアが不明なカメラの場合は、わかっているデジタル撮影カメラの設定や35mm標準もしくはスーパー35設定で対応しますが、実際の画像サイズとは違う事は説明しておくようにしています。デジタル撮影される場合のプリビズのカメラ設定には特にご注意ください。

さて次回は、カメラ設定(その3)として、第4回でご紹介した3D立体視カメラの設定についてお話ししようと思います。
お楽しみに。

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