チュートリアル / Mayaプロフェッショナルモデリング
第3回:Mayaでモデル制作 後編

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皆さんこんにちは、SAFEHOUSEの坂田です。

前回は【Mayaでモデル制作の前編】の記事を書かせて頂きました。
読んで頂いた皆様ありがとうございます。今回はその後編となります。

前回はダラダラと解説を続けてしまった結果、相当中途半端なところで終わってしまったので、今回は要点を絞って少しテンポを上げていこうと思います。

今回のコラムではミッドモデルの制作を完成まで解説していきたいと思います。引き続きよろしくお願いします!

バレルのモデリング

前回はスライドパーツの制作を進め、下記の画像のような状態になっていると思います。
今回はまずスライドではなく、バレル(銃身)をモデリングしていきます。

前回までの状態
前回までの状態
P38バレルの半分近くはスライドに隠れてしまっています
画像では分かり辛いですが、P38バレルの半分近くはスライドに隠れてしまっています。アニメーションさせる予定であれば隠れている部分もモデリングする必要があります。

バレルは銃弾が発射される際の通り道のような部分です。またバレルの後端にはチャンバーと呼ばれる銃弾が装填される場所があります。

ラフモデル

バレルは基本的に円柱をベースにした形状なので、銃の構成パーツの中では比較的モデリングしやすい部分になります。
しかし、今回のP38のバレルはスライドに噛み合っていて少し複雑な形状をしているので、スライドを仕上げる前に先にモデリングしていきます。

早速バレルをモデリングしていく前に、多くの銃のバレルにはライフリングと呼ばれる螺旋状のミゾのような物が入っています。ミッドモデルではこのライフリングをモデルで再現していくのですが、いくつか注意が必要です。

ライフリング
ライフリングには右回りと左回りがあります。形状も色々種類があるのでよく観察してみましょう。

上記の画像のように今回のP38では6本のライフリングがバレルに入っています。最後にトポロジーを整えることを考えると、バレルのポリ割りは6で割り切れるのが望ましい状態です。
今回のバレルのポリ割りは36で進めることにします。

ラフモデル

36で進めた場合、6で割った際のポリゴン数は6になります。このポリゴン数が偶数になる状態が個人的にはベストなポリ割りです。
というのも、下記の画像のように円形に同じ形状が並んでいるようなオブジェクトは1ピースをモデリングして他は複製するスタイルで進めることが多いですが、その1ピースが左右対称の場合はミラーやシンメトリ機能が使えます。

車のホイールのような複雑な形状では意識してモデリング
ライフリングのような単純な形状では大して問題ではありませんが、車のホイールのような複雑な形状では意識してモデリングするといいかもしれません。

ちなみにポリゴン数が奇数だと中央のエッジがないので、下のGIFのようにシンメトリ機能がうまく動作しないことがあります。またミラーした際にも中央に余計なエッジが追加されるので個人的にはポリゴン数が偶数になるポリ割をおススメします。

シンメトリ機能がうまく動作しない例

それではバレルをモデリングしていきましょう。

これでバレルの大まかな部分が完成しました。

ライフリングをモデリング

次はライフリングをモデリングしていきます。

ライフリングは一見面倒な形状をしていますが、デフォームのツイスト機能などを使えばモデリングは簡単です。
今回ライフリングはブーリアンでモデリングします。そこでまずはブーリアン用のメッシュをモデリングしていきます。

ブーリアン
実物のライフリングは凹凸が少なくエッジの効いた鋭いものが多いです。ここでモデリングした形状がそのままライフリングの印象に適用されるので、試しにブーリアンして形状をチェックした方が良いかもしれません。

次にブーリアン用メッシュのスケールを合わせておきましょう。 今回モデリングするP38は直径9mmの弾を使用する拳銃なので、メッシュの外径も9mmに調整します。

9mmのモデリング
画像のように外径がおよそ9mmなのが正しい状態ですが、ぶっちゃけ多少ズレてても分からないので極端に正確に合わせる必要はないと思います。

それでは実際にライフリングをモデリングしてみます。

最後に照準器や後ろの切り欠き部分をモデリングしてバレルのミッドモデルは完成です。

バレルのミッドモデル
今回見えない部分のモデリングはかなり端折っています。スライドを可動させた状態でのレンダリングを想定しているなら、内部までモデリングした方が良いでしょう。

スライドのモデリング

次は前回途中まで作っていたスライドをモデリングしていきます。

バレルのミッドモデル
スライドは動作させることで一部内部構造が露出します。なのでアニメーションさせる場合であればある程度内部をモデリングする必要が出てきます。
バレルのミッドモデル
銃などは一見左右対称な形状でも、実際は左右非対称な形状であることがかなり多いです。

これでスライドがモデリング出来ました。
動画では細かい部分は省いてますが、おおよそ見える部分は全てモデリングしています。

スライドのモデリング

次はスライド周りのパーツをモデリングしていきます。
スライドに付いているパーツ一つ一つを見ていくと、ほとんどは単純な形状で簡単にモデリングできそうなパーツばかりですが、スライド左側のセーフティーレバーが少し面倒な形状をしています。

セーフティーバーのモデリング

P38のセーフティレバーは曲面と角ばったディテールが交差しており、少しばかり複雑です。こういった形状ではモデリングの順番が重要です。
今回は動画でセーフティレバーのモデリングを解説していきます。

これでスライドのパーツが全てモデリングできました。
ミッドモデルでは滑り止めの段差までモデリングしています。こういったディテールは後でローモデルにベイクする際の、ノーマルマップのクオリティーに大きく影響してきます。

スライドのモデリング

フレームのモデリング

次はフレームのモデリングに入っていきます。

フレームのモデリング
フレームは大部分がグリップで隠れているため、形状を把握するのが難しいかもしれません。しかしグリップで隠れているところまで正確にモデリングする必要はないので、今回は見えない部分は端折っていきます。

フレームはシルエットが曲面で構成された少し面倒な形状をしているので、大まかな部分をモデリングした後、上部のディテールを優先して先にモデリングしていきます。
また分かり辛いですが、フレームにも左右非対称の部分があるので対称な所からモデリングを進めていきます。

フレームのシルエット
シルエットの大部分は曲面で構成されていて、下までシームレスに繋がっています。また曲面には若干膨らみがあり、メッシュに歪みがあるとそこそこ目立つ形状です。
フレームのモデリング

ある程度モデリングできたらシルエットの曲面部分をモデリングしていきます。

手動でエッジを追加してエッジフローなどで曲面や膨らみをモデリングしてもいいのですが、確実に歪みが発生する上に間違いなく面倒なので例によってブーリアンで一括でモデリングしていきます。

フレームの曲面部分が完成しました。

フレームの曲面部分

次にフレーム内部をモデリングしていきます。といっても内部はほぼ見えない部分なので最低限のモデリングだけで済ましていきます。今回は見える部分のみで内部パーツなどは基本的にモデリングしません。

フレームのグリップ(持ち手)側はマガジン(弾倉)を装填するために大きく抉れています。
マガジンはアニメーションで抜き差しすることが多いので、マガジンがフレームに干渉しないようにモデリングしていきます。

フレームのシルエット
フレームの後ろにはハンマー(撃鉄)が収まるスペースや、トリガー(引き金)が収まるスペースがあるのでブーリアンなどでモデリングしておきます。

これで一通り対称な部分のモデリングは完了です。
次に非対称な部分のモデリングですが、フレーム上部の切り欠きの位置が左右でそれぞれ違うので確認しながらモデリングしていきます。

フレームのシルエット

これでフレームのミッドモデルは完成です。次はフレーム周りのパーツをモデリングしていきます。

パーツのモデリング
フレームにはトリガーやハンマー、スライドストップなどのパーツが取り付けられていて、それらのパーツを留める為のピンがフレームに刺さっています。

基本的に個々のパーツは単純な形状なので、モデリング自体はそれほど難しくありません。
しかしパーツの取り付け位置や、パーツ同士の位置関係がズレたりすると、そこそこ目立ちます。
特に上記のパーツはアニメーションさせる事の多いパーツなので、配置は正確に行いたいです。

また背景の図面に実物の画像などを使用している場合は基本的にパースがかかっているので、画像端の方のパーツは大きく歪んでいたりします。

トリガーのモデリング
今回使用している図面は以前モデリングしたものをレンダリングしたもので、パースがなくズレは気にしなくていいのですが、再現度的に微妙なので途中から結構無視してモデリングしてます。

なので、基本的に上記のようなパーツはパーツ毎に図面や画像を用意してモデリングすることをオススメします。
しかしパーツごとに画像を用意したとしても歪みが無いわけではありません。なので実際はどのような形状なのか、ある程度推測しながらモデリングする必要があります。
またパーツの正確な形状を確認する為にも、複数の角度からアップで写っているリファレンスは集めておいた方がいいでしょう。

それらを踏まえてパーツを一通りモデリングしてみました。スライドと同じく、滑り止めなどの細かいディテールまでモデリングしてあります。

p38本体のモデリング

これでP38本体のミッドモデルは大体用意できました。
次はマガジン(弾倉)のモデリングです。

マガジンのモデリング

マガジンのモデリング
マガジンは通常フレームに格納されているのでほとんど見えません。ですがリロードアニメーションなどで全体像が映ることが多いので、ほとんどの場合マガジンは全体をモデリングする必要があると思います。

マガジンは金属の板をプレス加工などで曲げるなどして製造されているので、今までのパーツと異なり全体的に厚みが少なく、曲面も多くなっています。

今回は大まかにモデリングした後に厚みを付けて調整する方法でモデリングしてみます。

マガジンのフレーム部分が完成しました。他のパーツも金属板から形成されているので、同じような方法でモデリング出来ると思います。

次はマガジンスプリングのモデリングです。
マガジンスプリングは銃弾を上に押し上げるためのバネですが、大体のマガジンスプリングは前後に長い楕円のような形状をしています。

MayaにはプリミティブにHelixがあるので、そこから押し出しなどで伸ばして複製でモデリングしていきます。

マガジンスプリングのモデリング
今回はそこそこポリゴンを割っていますが、あまり見えない上にかなりポリ数が多くなってしまう部分なので、もうすこし少ないポリ割の方がいいかもしれません。

またこのようなスプリングのモデルは後から長さを調整することが多いと思うので、簡単なリグを組んでおくと便利です。

マガジンのモデリング

これでマガジンのモデルは完成です。

グリップのモデリング

グリップのモデリング
P38のグリップには木製と樹脂製の二種類があるようです。いずれにせよほとんど曲面で構成されていて、今回の中でも最もモデリング難易度が高いパーツです。

今までのパーツは直線で構成された部分が多く、ブーリアン主体のモデリングで何とかなっていました。
しかしグリップはほとんどが曲面で構成されていて形状も左右非対称で複雑です。こういった形状ではブーリアンを使用したモデリングはオススメできません。

そこでグリップは今までモデリングした曲面と同じように、サブディビジョン表示を使用して左右対称な部分からモデリングしてみます。
P38のグリップは右側が左側に比べてシンプルな形状になっているので、右側の形状に合わせてモデリングしていきます。

グリップのモデリング
最初は大まかな形状から進め、マルチカットツールなどでエッジを足しながらエッジコンストレインやエッジフローなどで形状を整えていきます。

取り敢えず左右対称な部分はこれでokです。

ここで少しグリップの形状に注目してみます。

グリップは前述のようにほとんど曲面で構成されていて、平面的な部分はほとんどありません。
しかし図面や少ないリファレンスのみでモデリングすると、四方が角ばった平面的な形状のグリップになってしまうことが多いです。
これは個人制作だけでなく有名タイトルのモデルでもよく見る現象です。

モデリングの違い

中には角ばった形状のグリップも実在しますが、多くのグリップは手にフィットするよう大きく丸みを帯びた形状になっています。
そのことを意識しながら断面が楕円形になるようなイメージでモデリングすることで、より立体的にグリップを再現できると思います。

次は形状が複雑な左側をモデリングしていきます。
左側のグリップにはいくつか突起や窪みがありますが、窪みの部分は最後にブーリアン等でモデリングしたいので、まずは突起をモデリングしていきます。

フィンガーチャネルのモデリング

上記のような複雑な曲面ではポリゴンの流れが重要です。

より最適化されたトポロジーであれば最低限のポリゴン数でキレイな曲面をモデリングする事ができます。また余計なポリゴンが少なければそれだけ作業も修正も楽になり、歪みも発生しにくくなります。

曲面のモデリング
曲面をモデリングするときは一つの頂点から繋げるエッジの数は5本に留めて、出来る限り四角形ポリゴンを意識します。個人的に歪みが気にならなければ三角形ポリゴンや、最終的にスムーズする前提なら五角形ポリゴンも問題ないと思います。

今回は上記の画像のようなエッジの流れを意識します。凹凸に対して囲むようなエッジの流れが理想です。

一通り曲面をモデリングしてみました。最後にサブディビジョン表示を解除したあと、スムーズを使って実際にポリゴンを分割しています。

phongシェーダなどのハイライトが強めに入るマテリアルを使用することで、歪みなどを確認しながらモデリング
このような曲面をモデリングする際はphongシェーダなどのハイライトが強めに入るマテリアルを使用することで、歪みなどを確認しながらモデリングしやすくなります。

次に前述の窪みや切り欠きの作成に入っていきます。
例によってブーリアンを使った作業なのでまずメッシュの穴を塞いでおきます。

ブーリアンで内側をモデリング
穴を塞いだ後にフレームに干渉しないよう、簡単にブーリアンで内側をモデリングしています。

基本的に作業内容は今まで通りですが、グリップの下の窪みは強めのベベルが入っています。
曲面にブーリアンした後はトポロジーを修正しないと基本上手くベベルが出来ないのですが、面倒なので今回はベベルしてからトポロジーを修正する荒技を使ってモデリングしてみます。

最後にグリップを留めているボルトや残りの切り欠きなどをモデリングしてグリップのミッドモデルは完成です。

程度傾けたモデリング
ボルトなどのパーツは実際に手で締めるとキレイに垂直や水平になることはほぼありません。なのである程度傾けることで自然な表現になると思います。
ミッドモデル完成

これで全てのパーツのモデルが揃いました。とりあえずミッドモデルは完成です。

まだ多くのN角形がありますが今の段階で修正してしまうと、リダクションやUV作業が難しくなるので今回はまだ修正せずにこのままの状態にしておきます。

ハードサーフェスモデリングについて

今回のようなブーリアンを多用するモデリング方法は実際の機械パーツなどをブロックから削り出して製造する方法と似ています。
現実の機械部品などは大量生産する必要があるので、生産性の高い形状を効率の良い方法で製造されている場合が多いです。
なのでそのようなパーツをモデリングする場合は同じような手法を取ることで比較的楽に形状を再現できると思います。

少し話が逸れますが、友人のプロダクトデザイナーの話では製品をデザインする際、強度や製造コストなんかを考えながらパーツをデザインするそうです。
今回のような銃器に留まらず、おそらく世の中の多くの製品はそのようにデザインされているのだと思います。
そんな感じでパーツがどのように製造されているのか、どうやって強度を担保しているのか、などを考えながらモデリングすると面白いかもしれません。
そうすることでオリジナルデザインのプロップにも、より機械的な魅力や説得力を持たせることが出来ると思います。

今回のモデリングでは見える箇所のみ制作しましたが、モデリング自体はMayaの基本操作さえ分かってしまえばそれ程難しいものではありません。
なので最後は自分がどこまでこだわって作り込めるかだと思います。
今回のP38であれば内部パーツのモデリングや、工場による形状の違いなどはまだ作りこめる部分です。
それに今回僕の集めた資料が不完全で、形状を再現しきれていないかも知れません。

そのように作り込もうと思えばどこまでも作り込めますし、その逆も然りです。
仕事では納期やクライアント要望の中で制限がある状態の作業になりますが、時間があるなら一度好きなものを限界までこだわってモデリングしてみても面白いかもしれません。

次回の内容

次回はMayaとZBurshを使用したモデルのポリッシュを解説し、そしてハイモデルの制作に入っていきたいと思います。
よろしくお願いします!

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