チュートリアル / CGキャラクター制作ワークフロー ~魅力的なキャラクターを創るために必要なこと~
第1回:事前計画とモデリングの基本について
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①はじめに
3回に渡ってキャラクター制作の一連の流れを紹介させていただくことになりました中井と申します。キャラクター制作は高い造形力や技術が必要と思われがちですが、ソフトウェアの進化や購入アセットの充実によって、その敷居はかなり低くなっています。
デッサン力や絵がうまくないとモデリングは上手くなれないなんて言う人もいますが、そんなことは決してありません。(現に私はすごく絵が下手です。)コンピュータの力を使ってモノ作りをするところにCGの魅力があると思いますので、CGをうまく使いこなすための知識を共有できればなと思っています。
今回の内容はキャラクター作成の工程を最初から最後まで通しで伝えるというものなので、一つ一つの工程については深堀りしていません。どの工程でどういったことをするのか。それに適したツールは何か。といった基本の流れを紹介していく内容となります。
今回のコラムで作成するキャラクターの最終イメージになります。
②事前計画
CG作成にとって事前計画はすごく大事です。手あたり次第に作業しても右往左往して時間を浪費するだけなので各工程で作る部位、使うツール、おおよその時間設計をしておくと効率よく作業が進みます。
リファレンス集め
まずはアートや絵をごっそり見て何が作りたいか、どんなデザインにするかなど自分の作りたいもののイメージを固めていきます。リファレンスを集めるというよりも自分のモチベーションを上げるという意味で大切な工程です。目指すものが良くなければ、当然出来上がるものも良くありません。
僕の場合、リファレンスはPinterest, Instagram, ArtStationの3つのサイトを使ってかき集めます。アート寄りのリファレンスはPinterestやArtStationが強いですが、オンリーワンな個性を求めている場合にInstagramを重宝します。
リファレンスは集めればいいというものではありません。沢山の画像の中から選定を繰り返し繰り返し行って最終的に作るものを決めていきます。私の場合大量のリファレンスを管理するためにPurerefというソフトを使っているのですが、イメージを視覚的に整理できるので便利です。
ラフ絵
リファレンスから自分のイメージが固まりだしたらそれをビジュアライズするためラフ絵を描いていきます。絵の上手い下手は重要ではなく、「何を作るのか」を明確にすることが大切です。どういうシルエットにして、どんな服装を着ているのか。作る必要がある要素が明確になればいいです。絵で補えきれないところは写真リファレンスなどで補完するといいでしょう。今回はポーズを固め打ちして作るフローをとりましたが、Tポーズでキャラを作成してから骨を入れてポーズを組むというやり方もあります。
時間割
ラフ絵が出来上がったら、各工程でどのパートを作成するのか?一番効率的に作るにはどのツールを使えばいいのか?どれくらい時間を使うかなど、事前に作業の目安をつけます。今回のモデル作成は1日2時間を作業時間として1か月内で完成するように計画しました。
各工程をタスク分けして時間割を決めてあげる事は、限られた時間で作品を作り上げるという意識を生み、自分のスキルアップにも繋がります。ビギナーの方やツールの使い方を覚えながらやるという人はもっと時間がかかるのは当然ですが、決してだらだらやらない事がモチベーションを保つ上でも大切です。作業前に作業の手順やツールの使い方をYOUTUBEなどで学習し、作業時間にそれを実践する。この繰り返しが一番効率的で時間を無駄にしないフローだと思います。
③基本のモデリング
モデリングには百人百通りの進め方があり、これという正解がないので何から始めていいのか分からなくなりがちです。私の場合だと3通りの進め方を決めており、作るものによってそれを使い分けています。自分自身で確固としたモデリング方法を決めておくと迷いも少なく効率的に作業を進められます。
BOX MODELING
一番オーソドックスなモデリング方法で1×1×1のBOXからエッジを足していって造形を進めます。最小限のエッジ数で造形を進められるため、トポロジーが綺麗な状態でモデリングが出来ますが複雑な造形物を作るには経験が必要です。
このモデリング手法で注意すべき点はメッシュの流れに沿ってポリゴンを配置していくということです。目や口のような円状になっている形には円状のポリゴン配置をすることでポリゴン数を最小限にできます。少ないポリゴン数で構成されているほど制御が簡単になり、メッシュの歪みも少なくなります。
YOUTUBEには良質なチュートリアルがたくさん上がっています。上手い人の作業を観察することが何よりもスキルアップに繋がります。
PLANE MODELING
面を張ってから押し出すという手法で、単純な厚みをもっている造形物などはこれで作ることが多いです。厚みがない状態で複雑な形状を制御できるので取り回しが便利です。
ライブサーフェイスと組み合わせることで、レリーフやプロテクターなども簡単に作ることができ、キャラクターの衣装などを作る際にかなり重宝するモデリング手法です。
PRIMITIVE MODELING
単純なオブジェクトを並べて配置した後、ブーリアンで接合してリトポするというシンプルなモデリング方法です。プリミティブの状態でシルエットなどを調整できるのでポリゴンモデリングに慣れていない人でも簡単に造形ができます。静止画用のモデリングなどトポロジーに気を使わないときやブロックアウトの工程でこの手法をよく使います。
ポリゴンをちくちく調整するのではなく、スピード優先の手法となります。スカルプトツールなどと組み合わせることでより迅速にモデルを作成することができますが、メッシュ数が多くなったり、ポリゴンの流れが汚くなるので後にリトポ作業が必要となります。リトポは標準機能でもできますが、スピードとクオリティを重視してQuad Remesherというツールを使っています。
④ブロックアウト
それではキャラモデルを作成していきましょう。 今回はキャラクターを動かすことは考えていないので最初から最終絵のポーズを目指してモデリングしてきます。Tポーズを作成して骨を入れてからポーズを取るという方法もありますが、面倒くさがり屋なのでなるべく時間のかからない方法で進めます。最初はブロックアウトという工程で各パーツを並べてキャラのシルエットを取っていきます。(③で説明したPRIMITIVE MODELINGの要領です。)
ベースにするブロックアウトモデルは自分で作ってもいいですが、ネット上には無料で手に入れられる良質なモデルがいくらでもあるので、目指している頭身に近いモデルを探して使うことをお勧めします。今回私が使用したのはこちらのフリーモデルで、Maya上で各パーツを親子付けして動かしやすいように構造を作っています。
https://cubebrush.co/rodesqa/products/a7l85g/free-stylized-anime-primitive-anatomy
ブロックアウトの良いところはパーツの移動、回転、拡大だけで造形を固めていけるというシンプルさです。何度も何度もトライアンドエラーを繰り返し、納得のいくシルエット、形状になるまでパーツを動かしましょう。
配置が固まったら、ブーリアン、リトポをかけてメッシュをワンスキンにします。
リトポにはQuad Remesherを使用しています。
では、今回はここまでにして、次回はもっと作り込んでいきます。お楽しみに。