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dot by dot inc.による「SHUT UP AND MAKE SHIT」!クマをかぶったプログラマーとその仲間が、つくるいろんなモノ

dot by dot inc.による「SHUT UP AND MAKE SHIT」!クマをかぶったプログラマーとその仲間が、つくるいろんなモノ

2017.11.29

  • テクノロジー・アート
  • 建築・製造・広告

2017年9月21日と22日の2日間にわたって、オートデスク株式会社の主催によるユーザカンファレンス「Autodesk University Japan 2017」が開催されました。本レポートでは、その中で行われた dot by dot inc. によるブレイクアウトセッション「クマをかぶったプログラマーとその仲間が、つくるいろんなモノ」の様子を紹介します。

dot by dotはもともとデジタルプロダクションに所属していた5名が独立して2014年に立ち上げた会社です。現在は13名のスタッフが在籍しており、広告業界での活動と並行して、製品開発や空間演出などの分野で活躍しています。ソフトウェアからハードウェア、TVプログラムにいたるまで、幅広く手掛けているのが特徴で、設立してまだ4年目ながら、すでに数多くの作品を世に生み出してきました。

「クマをかぶったプログラマーとその仲間が、つくるいろんなモノ」の様子

本セッションでは、dot by dotが手掛けてきたさまざまな作品について、そこで使われている技術や、その製作の背景など、同社Planner/CEOの​​富永勇亮氏と、Programmer/CTOのSaqoosha氏が紹介しました。

1. VRアトラクション「トレンドコースター」

VRアトラクション「トレンドコースター」

まず最初に紹介されたのは、会社設立1年目の2014年に制作された「ヤフー トレンドコースター」と「進撃の巨人展」360° 体感シアター"哮"のVR作品の2つ。

​​「ヤフー トレンドコースター」は、ソーシャル上の話題性によってコースが変動するHMD型(ヘッドマウントディスプレイ)で体感できるバーチャルジェットコースターです。音声認識で入力されたキーワードをリアルタイム検索して、ソーシャル上でそのキーワードがどれだけ話題にされているかによってコースを自動生成します。

「技術的には、ソフトウェア周りはWindowsとUnityでVR用の映像を作成。コース情報はリアルタイム検索の結果を元に自動生成して、モーションの制御情報をハードウェア側のモーションシミュレータに渡す仕組みになっています」(Saqoosha氏)

​​参考サイト: https://www.codeaward.jp/awards/2015/work01.html

2.「進撃の巨人展」360° 体感シアター "哮"

「進撃の巨人展」360° 体感シアター "哮"
©諫山創・講談社/「進撃の巨人展HMD」製作委員会

上野で開催された進撃の巨人展で発表された「進撃の巨人展」360° 体感シアター "哮"については、富永氏によると、「これはおそらく日本で最初のVRを使った本格的な有料コンテンツ」になるそうです。HMDを付けて進撃の巨人の世界に入り込むことができるというもので、最大で同時に40人が体験できます。東京だけでも2ヶ月間で10万人が体験し、その後、大分や大阪、フランス、台湾、イタリアと興行が続く大人気作品となりました。

​​VR元年と言われる2016年の2年前にVRの大作を世の中に発表したことについては、「広告業界で戦っているので、新しい技術を使ってどういった表現が実現できるのか、その技術が大衆化する前に検証を重ねておく必要があります。VRについては、そうして準備していたものを、2014年に世に出したという感じです。この作品は公開1年前から企画がスタートしたのですが、当時はまだちゃんとしたVR作品が世の中に出ていなかったので、いろいろなところから承認を得るのが大変で、モックアップの作成とデモンストレーションを何度も行いました」(富永氏)と、まだVRが世の中に受け入れられる前だったため、苦労もあったようだ。

参考サイト: http://www.kyojinten.jp/

3. 人気コミック『進撃の巨人』1 巻を関西弁版化

©諫山創・講談社
©諫山創・講談社

「進撃の巨人とのコラボ作品を製作した縁から、思わぬ仕事が舞い込んできました。それが進撃の巨人のプロモーションです。進撃の巨人という作品は知名度は高い一方で、内容や画風が原因で食わず嫌いをしている人も少なくないといいます。そのような悩みを同作品の編集部から相談され、プロモーションのために、主人公のセリフなどを関西弁にしたコミカルなバージョンを作ったら面白いのではないかと考えて提案しました」(富永氏)

実際には、セリフだけでなくタイトルや漢字のルビ、都市の名前など細部にも関西ネタを入れるなど、かなり凝った作りになっています。その結果、オンラインでの公開時には大変な大反響を呼び、既刊の売上が250%向上するという成果!最終的には新刊とセット販売という形でコミック化も実現しました。

4 . インスタレーション「Flower Mirror」

最近ではインスタレーションを手掛ける機会も増えてきているといいます。株式会社大丸の創業300周年を記念して製作した「Flower Mirror」は、​​約3,000本もの造花を使った圧巻のインスタレーション展示です。これはショーケース内に並べられた約3,000本の花が、前に立った人の動きに合わせてデザインを変えるというものです。

仕組みとしては、​​3,000本の花に約800個のステッピングモータが取り付けられており、人の動きに応じてモータを制御して花を前後させるようになっているそうです。制御アプリはUnityで作成されています。通常このようなインスタレーション用のカメラにはKinectを使うことが多いと思いますが、この作品の場合は屋外での展示という性質から、ステレオカメラのZedが使われたそうです。

参考サイト: http://300th.daimaru.co.jp/flowermirror/

インスタレーション「Flower Mirror」
インスタレーション「Flower Mirror」

5. アルチンボルド展でのインスタレーション

続いて、最近の作品としてアルチンボルド展で展示されたインスタレーションが紹介されました。ジュゼッペ・アルチンボルドは、果物や野菜、動植物などを寄せ集めた独特な肖像画の製作で知られるイタリア出身の画家で、当該のアルチンボルド展は国立西洋美術館において2017年6月20日から9月24日まで開催されていました。

dot by dotが製作したのは、自分の顔をアルチンボルド風の絵画にしてくれるというインスタレーションです。壁に貼られた額縁の前に立つと、そこに果物や野菜を寄せ集めて構成された自分に似た肖像画が浮かび上がります。開発は​​デジタル・メディア・ラボと共同で行い、モデリングやテクスチャには3ds Maxを、シェーダーやポストプロセス、Kinectの制御、アプリ本体のプログラミングにはUnityを使用したとのことです。また、似顔絵生成エンジンの開発にはPythonが使用されているそうです。

このインスタレーションについては大きく分けて以下の4つの手順で開発が行われました。

1. アルチンボルドの作品を3Dで再現してみる

アルチンボルドの作品は2Dの絵画なので、3DCGで表現したときに、果物や野菜をどのように配置したら本物風になるのかを考える必要がありました。そこで、まずは本物の作品を3Dモデルで再現して確認してみたそうです。

2. 特定の誰かに似せたモデルを作ってみる

次に、オリジナルの作品から離れ、特定の個人の写真を元にして、その人に似せたモデルが作られました。

3. ジェネレーター用のバリエーションをいっぱい作る

個人の顔で再現できたら、同様の手順でいろいろな顔の特徴に合わせたパターンで作ります。このとき、太めな人、細めの人、若い人、年配の人などの区分けを行い、複数のパーツを組み合わせて顔を構成することでできるだけ幅広い特徴をカバーできるようにしました。また、実際の写真を直接モデル化するのではなく、先に似顔絵師に似顔絵を描いてもらってから野菜のモデルにすることで、うまい具合に特徴の抽象化が行えたといいます。

アルチンボルド展でのインスタレーションのスライド

4. 組み合わせプログラムを書く

パーツの組み合わせについては、パーツごとに違う合わせ方をしているのが興味深い点でした。プログラム上は髪型とひげ、メガネは可能な限り正確に、目や鼻、口などは大きさを合わせる程度、そしてほかのパーツは適当(なんとランダム!)で組み合わせる仕組みになっているそうです。基本的には、髪型などの目立つ特徴さえ合っていれば似ているように見えるため、その部分を合わせることを最重視しているとのことです。

とはいえ、メガネをかけているか否か、ひげを生やしているか否かの判定には苦労したそうです。たとえば肌が色黒の人や、顔の彫りが深い人はなかなか正確に検出できません。そこで、この判定には機械学習を用いることで、最終的に98%ほどまで精度を上げることができたといいます。

AUJ セッションの様子

6. 「MUJI 10,000 shapes of TOKYO」

次に紹介された株式会社良品計画と東京都及び東京都観光財団による東京の良さを世界にPRする企画「MUJI 10,000 shapes of TOKYO」は、最新の技術に頼らない作品の一例と言えます。これは無印良品の販売商品だけで東京の街並みをジオラマとして再現した作品で、実に10,000点もの商品が使われたとのことです。Webサイトでは使われた商品の一覧なども公開されています。

富永氏は、作品作りの際には、テクノロジーを前提にすることがないように心掛けているそうです。

「作品というのは、まず目的や課題があって、それに対してどういう表現が適しているかといったクリエイティブな要素を考えます。実現するためのテクノロジーについて考えるのはその後のタイミングです。特定の技術に限定せずにより新しいチャレンジをできるというで、仕事の幅を広げていけるのだと思います」(​​富永氏)

「MUJI 10,000 shapes of TOKYO」のスライド

7. 自社開発のプロジェクトも

dot by dotでは、日頃のアイデアワークから生まれるさまざまなアイデアを元にして、実際に自社開発のプロダクトやサービスも発表してきました。SIX Inc.と共同開発した「Lyric speaker」もそのひとつです。

これはスマートフォンからWi-fiを経由してスピーカーに楽曲を送ると、その歌詞をインターネットから探してきて、曲の再生に合わせて表示するというインタラクティブなIoTスピーカーです。単に歌詞を表示するだけでなく、音楽解析サービスを使って曲の性質を解析し、曲調に合わせた演出を行います。この商品は、SXSW 2015においてアジアからのチームで初めてBest Bootstrap Company賞を受賞しました。

参考サイト: https://lyric-speaker.com/index.html

AUJ セッションの様子
Lyric speakerのスライド

また、「​​WEAR YOU ARE」は、JAXAの人工衛星「だいち」が撮影した衛星写真をプリントしたTシャツやスマートフォンケースを作れるサービスです。ユーザが任意の場所の写真を選んでプリントできるのが特徴で、大きな反響を生みました。​​富永氏によれば、普通に衛星写真を使おうとすると、非常に高い使用料を支払わなければならないそうです。そこで「​​WEAR YOU ARE」では、使用料の安い古い写真に限定することで、安価での提供を実現しているとのことです。

またTシャツの販売については、過去の経験を生かした部分もあるといいます。

「実はTシャツについては以前も2回くらい作って販売したことがあるんですけど、そのときは在庫問題という、デジタルクリエイターには全く縁のない課題に苦しめられました。そこで、今回はGMOペパボ株式会社さんのSUZURIというオンデマンドのTシャツ作成サービスと提携することで、在庫を気にせずに製品を提供できる仕組みを採用しています」(富永氏)

WEAR YOU ARE

「なぜこんなことをやるのかとよく聞かれるんですが、単に"思いついたから"に他ならないんですね。こういうチャレンジをすることで、ひとのお金で広告を作るだけではなくて、自分たちの力で商品を作り、流通、PRまで考えることで、知識と経験が得られるのは、広告案件にも活きます」(富永氏)

参考サイト: https://wearyouare.jp/

その他に、ソニーが発売したトイ・プラットフォーム「toio」の開発にもdot by dotが参加しています。こちらはハードウェアやプラットフォームの開発をソニーが行い、ゲーム企画やゲームプロトタイプの開発、UXの設計開発などをdot by dotとSIX Inc.が共同で行ったとのことです。

​​参考サイト: https://first-flight.sony.com/pj/toio

8. 作品作りの鍵は、強いネットワーク

dot by dotが3年間の間に世に送り出してきた作品は、ここで紹介されたものの倍以上にものぼるといいます。なぜ短期間にこれだけ多くの作品を作ることができるのでしょうか。「それは、強いネットワークを持っているから」だと​​富永氏は言います。

dot by dotでは、作品作りのほかに、クリエイティブに特化したコワーキングスペース「Holster」や、イベントスペースとして使えるギャラリー「​​Gallery Holster」、そして工房施設を持つシェアオフィス「Atelier」などの運営も行なっています。そのため、自然と人が集まりやすい環境が出来上がっており、同社の作品作りの要になっているそうです。

「いろいろな技術を持った人が集まれる環境を作ることで、会社そのものの規模を大きくしなくても、コラボレーションしながらいろいろなことにチャレンジすることができています。発表してきた作品だけ見ると捉えどころのない会社に思われるかもしれませんが、その捉えどころのなさがdot by dotの強みです。もし設立当初にVRだけにこだわった作品作りをしていたら、今回紹介したような作品にはつながらなかったと思います」(​​富永氏)

最後に​​富永氏は次のように語って講演を締めくくりました。

「考えたものをひたすら作っていく。『SHUT UP AND MAKE SHIT』というのは僕たちの社是みたいなものなのですが、とにかく黙々といろんなものを作っていこうという発想のもとで、モノ作りに取り組んでいます」(​​富永氏)

『SHUT UP AND MAKE SHIT』

ジャンルも作風も、スタイリッシュな作品から爆笑を誘うものまで、クリエイティビティが爆発しているdot by dotの作品たち。「SHUT UP AND MAKE SHIT」、とにかく生み出し続けることが大事だという精神から生み出される作品たちから、クリエイターたちは大きなインスピレーションを得ていました。