3ds Maxで実現するフォトリアルなビジュアライゼーション リアリズムへのこだわりが詰まったワークフロー

3ds Maxで実現するフォトリアルなビジュアライゼーション リアリズムへのこだわりが詰まったワークフロー
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今回の作品は、3DアーティストのRyan Elliot(ライアン・エリオット)氏によって制作されたものです。 Elliot氏が、どのようにしてフォトリアルなビジュアライゼーションを実現させているのか、そのワークフローをご覧ください。


私の名前はRyan Elliotです。西オーストラリア州パース市で3Dアーティストとして活動しています。この業界で約4年の経験があり、国内外の広告から商業開発における構想計画図のフライスルー動画、映画用のデジタルダブルの作成に至るまで色々なプロジェクトに携わってきました。ここパース市で様々な方法で創造性を発揮する機会を得てきました。

私はもともと建築業界に興味があり、その道に進むのだろうなとは思っていました。キャリアの途中で3Dの可能性に見いだされたことで、気が付いたら建築ビジュアライゼーション業界に身を置いていました。そして、Viewport社で働いている間は、建築ビジュアライゼーション制作に取り組んできました。

「Viewport社は、西オーストラリアの日当たりのよい海岸沿いにある企業です。リアルタイムのバーチャルリアリティ ウォークスルーやインタラクティブシミュレーションなど最先端の仕事で知られています。ソフトウェアエンジニアとデジタルアーティストで構成されているチームが存在し、芸術と科学の完璧な融合を生み出しています。視覚的にリアリティがある表現を維持するために必要なのは、技術と創造性のバランスです。」 - Viewport社ディレクター Julius Jeppe氏

プロジェクトについて

このプロジェクトは、我々のオフィスでのワークフローを改善し、チームのスキルアップを図るために遂行されました。
プロジェクトのリードアーティストであった私は、今回制作するアパートモデルのインテリアデザイン、照明、マテリアル設定、モデリング、ポストプロダクションを担当しました。

完成イメージ

「このプロジェクトは、今まで経験したどの仕事よりも楽しいものになる。」そう感じた私は、ワークフローに個人的なこだわりを多く取り入れることにしました。

このようなシーンで作業する場合、現実の世界で撮影している状況をイメージします。現実の撮影では、建物やインテリアはすでに用意されています。そして、カメラを持ち込んで撮影を行います。ですので、今回のワークフローにおいても、カメラの配置作業は最後に行いました。

カメラに基づいて作業するのではなく、現実の世界と同じようにシーンを構築するのです。
重要でないアプローチのように思えるかもしれませんが、このフローをとることにより、レンダリング作業時の自由度が増し、最初は考えてもいなかったショットを見つけることができる可能性も生まれます。

アパートの3Dモデルについて

このアパートは、SketchUpでモデリングされ、ディテールを追加するため3ds Maxへインポートしました。

SketchUpでモデリングされ、3ds Maxにインポートされている

フロアボードとコンクリートタイルは、3ds Maxのプラグイン『Floor Generator』を使用し作成しています。バスルームのタイルと野外の手すりは、同じく3ds Maxのプラグイン『Rail Clone』を使用し作成しました。

SketchUpでモデリングされ、3ds Maxにインポートされている

ライトの設定

ライティングは、成果物の雰囲気の多くを伝える要素であり、リアリズムへの重要なステップです。
そのため、ライティングは色と明るさの両方でバランスが取れていなければなりません。

このセットアップでは、特にドラマチックな絵を狙っていなかったので、非常に迅速に素晴らしい結果をもたらしてくれる、デフォルトのCorona SunとCorona Skyを使用しました。
ライティングにHDRIを使用することもよくありますが、通常は、より個性的なライトを追加したい場面、例えば強烈な夕焼け空のような場面で使用します。

私はいつも同じ方法でライティングを始めます。それは、シンプルなレンダーカメラと透明なマテリアルを除外したオーバーライドマテリアルを作成することによって確認する方法です。これは絵作りをするため私に真っさらな状態を与えてくれます。

以下は、私が使用したマテリアル(Override CoronaMtl material, Glass CoronaMtl, CoronaSky)になります。

マテリアルとレンダーオーバーライドの設定内容

フォトリアルなシーンを設定する時は、常にカメラ、ライト、マテリアルに実世界の値を使用する必要があります。任意の値があってはなりません。
任意の値は物事を複雑にしがちで望ましくない結果を招く可能性があります。

こちらが、Corona SunとCorona Skyによるライティング結果です。

Corona SunとCorona Skyによるライティング結果

ライティング結果に満足したら、シーンの主要なマテリアルの作成を開始します。
プロジェクトの後半で問題を回避するため、マテリアルの設定はシンプルに保つのがいいかと思います。

木製の床

木製の床

白い壁

白い壁

コンクリートタイル

コンクリートタイル

以下は、これらのマテリアルが適用されたシーンのレンダリング結果です。ここで先に進む前に、太陽の角度と全体的なライティングに満足していることが重要です。
シーンによっては、1日の様々な時間に複数の太陽の角度があり、その角度の中には、さらにショットに適している角度があるかもしれません。
また、植物、家具、人物などがシーンに配置されてくると、太陽光をもう少し細かく調整する必要があります。

DWGファイルの読込み

家具について

家具のデータに関しては、ほとんどを既存のライブラリから選択し、一部はこのプロジェクト用にモデリングしたり、購入したりしました。
これらのモデリングやマテリアル設定作業は、本番シーンの作業に並行して、別シーンで行われました。
並行して進行できる作業を積極的に分担することにより、複数人で同時に作業を進めることができるので、この方法は素晴らしく高速で効率的な方法と言えます。

ソファ
ソファ
家具

以下は、家具データに使用されているマテリアルです。

ソファの生地

ソファの生地

枕の生地

枕の生地

銅

カメラの設定

マテリアルが完成したので、カメラのアングルを決めていきます。
ここでは、構図に注意を払うことが重要です。この作品を見る人が目を向ける焦点は、シーン上のどこにあるべきなのかという事を常に意識してください。
メインリビングルームのショットでは、コーヒーテーブルと青いクッションが焦点領域で、そこからキッチンに視線を誘導しています。

カメラアングルを調整するのに便利なスクリプトがいくつかあります。Image Composition Helperは私が使用しているスクリプトの1つです。
また、フィジカルカメラの使用も素晴らしい選択です。ISO、シャッタースピード、絞り、焦点距離を制御できるようになると、あなたの3Dライフはより良い物になるでしょう。
もしあなたが写真に精通しているのであれば、この方法でカメラを設定することにより、現実と同じようにシーンを撮影できます。
このように、実世界の数値に基づいてカメラを設定でき、実世界と同じような見た目にレンダリングできれば、そのシーンで使用されているマテリアルやアセットは、実世界と同じように動作するという事になります。マテリアルやアセットは、他のフォトリアルなシーンにおいても使用しやすいデータとして保持出来るのです。

カメラの設定
カメラの設定
カメラの設定
カメラの設定

ポストプロダクション

画像を過剰に処理すると、リアリティが損なわれる可能性が生まれます。ポストプロダクションは最小限に抑えることを心がけます。ポストプロダクション作業のほとんどは、LUTまたは単純な曲線を使用して実現できます。
以下は、Adobe Lightroomを使用して画像を編集した例です。
主にカーブでシャドウとハイライトを調整し、わずかな色補正を行っています。

最終レンダリング

最終レンダリング: ベッドルーム
最終レンダリング: ベッドルーム
最終レンダリング: キッチン
最終レンダリング: キッチン
最終レンダリング: リビングルーム
最終レンダリング: リビングルーム
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