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東映アニメーションに聞く次世代のアニメーション・ワークフロー:後編 一枚も紙を使わないアニメ制作は可能か?!遠隔求人も可能にした「SHOTGUN & 東映ドロー・データ・マネージャー」

東映アニメーションに聞く次世代のアニメーション・ワークフロー:後編 一枚も紙を使わないアニメ制作は可能か?!遠隔求人も可能にした「SHOTGUN & 東映ドロー・データ・マネージャー」
©トロル・ポプラ社/おしりたんてい製作委員会

2018.04.24

  • Shotgun
  • 映画・TV

日本のアニメーション業界が抱える、人員確保の困難さや、長い労働時間などの様々な問題を解決する鍵がデジタル化にある...そう業界で語られるようになって久しい。

そもそも、「デジタル作画」とは何か?東映アニメーションが定義する「デジタル作画」とは、デジタルのツールを使って絵を描くことだけではなく、デジタル・ツールを使って、完全ペーパーレスでアニメを作るフローを実現することである。東映アニメーションデジタル映像部のプロデューサー、今村幸也氏はそう定義する。

デジタル作画は火星旅行?!

業界の動向

「この定義でテレビシリーズのアニメを作れている会社は、日本ではいま弊社を入れてごく数社だけだと思います。テレビシリーズをデジタル化するというのはそれほど難しいことなんです」

今村氏はデジタル作画の難しさを、地球から火星へ行く工程になぞらえる。

業界の動向 TVシリーズ デジタル化への道のり

「地球から月までは比較的簡単に行けます。アプリケーションを買えば実現できます。いわゆる、海外で量産される動画仕上げの工程ですね。ところが、月から火星までの道のりを原画工程とするとそこをデジタル化することは非常に難しいです。」

大きな障害になっているのが、ツールが使える人材の不足と導入コストの高さだ。
「月までは簡単に行けるんですが、日本のアニメ業界は、ここで止まってしまっています。テレビシリーズが難しいのは、演出家や作画監督が話数ごとに変わるので、デジタルが使えない人だと紙での対応に戻ってしまいます。例え演出家がデジタル化されたとしても、作画監督がデジタルを拒否するとやっぱり紙に戻る。そうやって高価な機材を揃えて労力と時間をかけてもそれなら紙でいいや、と結局諦めてしまうのです。」

しかし押し寄せるデジタル化の波に抗うクリエイターの理由とは何なのだろうか?

「やり方がわからない。それだけです。今まではカット袋にLOやタイムシートを入れて次に回せば作業が終わっていた。でもデジタルになると、どこが始まりでどこが終わりかわからなくなってしまう」

デジタル化が実現されないのは、アニメ業界でデジタル作画のルールをインフラを含めてどう作っていいのかわからないことが多いからだという。日本のアニメの作り方は独特のため市販されているアプリケーションではすべてに対応できず、そのためその間を埋めるルールやインフラを独自に構築しないといけない。

「東映アニメでは、『正解するカド』と『おしりたんてい』でデジタル化を実現しました。弊社では10数年前からフィリピンでの動画仕上げにStylosとPaintManというツールを導入して、月産6万枚まで作れる。これが地球から月までの道のり。難しいのはここからなんです」

『正解するカド』
© TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI

ドロー・データ・マネージャーとは

ドロー・データ・マネージャー

東映アニメがデジタル化を実現したシステムが、自社開発の「ToeiDrawDataManager(東映ドロー・データ・マネージャー)」だ。この基幹部分に、Autodesk のクラウドベースの進行管理ツール「SHOTGUN」が導入されている。

ドロー・データ・マネージャーは、監督、作画、演出、原画、制作と作品を繋ぐシステムである。従来のアニメ制作工程における「カット袋」を全てデジタル化し、ツール上で従来の作業工程の順に進行することができる。また全てがデジタル化されているので、個人の進捗状況なども把握できるというのがメリットだ。紙で行われた工程をデジタル化し、フォルダ構成などのルール化を行い、ワークフローを設定する--今までアナログでやっていたことをデジタルに落としこんだ。

ドロー・データ・マネージャー

「これがあることによって、作画さんたちが迷うことなく作業を進めることができます。デジタル化の最大の欠点は、無限にコピーできることです。同じファイルがいっぱい点在してしまって、どれが本物かわからなくなる。でもこれを使うと最新がひと目で分かるので、自分が作業するべきファイルがすぐ分かるんです」

ツール内ではサムネイルや動画が表示され、カットの指示やタイムシートの情報がわかる。作業履歴が全部残るので、誰がいつ何をやっているのかをリアルタイムで把握することができるのだ。これまでに制作進行のスタッフが苦労して動かしていたものが、デジタル上でまかなえてしまう。その労力の節約は大きい。

「作画担当の作業が終わると、次は演出さんのフォルダに入ります。自分の担当フォルダだけ見て作業をすればいいんです。CLIP STUDIOで作業した原画が描けました、次に送ります、と処理するだけでどんどん自動的に進んでいく。アニメ制作はレイアウト、原画、背景、動画、仕上げなどに分かれていますが、それら全ての担当にスムーズにファイルが渡るようになっているんです」

このツールは監督、原画マン、演出家ら、制作スタッフ全員に配布され、誰もがアクセス可能となる。作画管理ビューにてカットリストが表示され、データ転送を指示すると、SHOTGUNを介して社外スタッフへもカットデータが自動で送られる。

「メリットは、どこで作業が止まっているかということや、誰がどれだけやっているのかということがひと目で把握できることです。作業が止まっている人がいたら、その時に初めて制作が『どうしました?』と声をかければよいので制作の負担が激減しました」

そして、ここまで全てがデジタル化されていれば、物理的に同じ場所にいる必要もない。

「フィリピンのスタジオまで、自動でデータが飛ぶようになっています。原画が終わりました、動画に送ります、というボタンを押すと、フィリピンのサーバーに原画データが飛んでいく。SHOTGUNで情報を管理することによって名古屋にいる人でも大阪にいる人でも、場所を気にせずに頼むことができるんです」

遠隔で自身が担当するデータが送られてきた場合、ドローデータクライアントというツールのなかに担当カットが表示される。クリエイターは担当カットをダウンロードして、自身の作業が終わったらデータをアップロードすれば、SHOTGUNを経由してドローマネージャーのサーバーに格納されるという仕組みだ。「リテイク中」などのステータスも表示されるので、ひと目で進行状況がわかる。

SHOTGUN

「SHOTGUNを使った管理のもう一つの利点は、FTPサーバーを介したデータのやり取りの負担を軽減できることです。外注スタッフが仕事を始めるためにいちいちFTPサーバーを設定してダウンロードして...という手間を減らせるようワークフローを構築しました。現在、社外で作業する外注クリエイターには液晶ペンタブレットに設定資料と、ドロークライアントをインストールして宅急便で送っているんですよ。そうすると届いたその日から作業ができますよね」

アクセスのしやすさは重要な要素だ。

「SHOTGUNは、まずデータベースとして非常に優秀です。そして、インターネット上で誰でもアクセスできるので非常に使い勝手がいい。セキュリティ面での信頼度も高いですし。今全体的な設計は自分が行い、プログラマがSHOTGUNの構築と開発をしているんですが、難しいSHOTGUNをわかりやすく使うためのUIを作って欲しいといつもお願いしています」

仕組みがわからない人でも、ボタンひとつで使いこなすことができる。それが今村氏が理想とするツールづくりだ。

タイムシートもデジタルで

タイムシート

さらに現在は、SHOTGUNと作画ソフト「CLIP STUDIO」が連動したデジタルタイムシートも独自開発を行っている最中だ。タイムシートとはキャラクタの動きのタイミングや撮影のための指示を記した楽譜のようなもので一般的に作画マンと演出家が作成しており、今や日本独自の仕組みである。

「フルデジタルにおけるいちばんの壁がこのタイムシートなんです。ここがデジタル化されていないので、結局紙でタイムシートを書かなくてはならなくなってしまう。弊社のタイムシートは、手描きにも対応していますし、原画・演出・作画監督などの工程をタブ管理することができ、作業履歴が全部追えるようになっています。」

東映アニメーションで開発されているデジタルタイムシートには、従来のタイムシート機能に加え絵コンテ撮機能や本撮時のAfter Effectsへのタイムシート情報の流し込み機能も付けられている。CLIP STUDIOのタイムライン情報をタイムシートにインポートし、タイムシートで調整したものをCLIP STUDIOにエクスポートする機能も搭載。2018年5月からNHK Eテレにて放送開始されるアニメ『おしりたんてい』にもこの機能が活用されている。

おしりたんてい 「みなとまちの トゥクトゥクチェイス」
©トロル・ポプラ社/おしりたんてい製作委員会

「デジタルタイムシートは現在も開発中です。ドローマネージャーと連携して全カットのシート情報を一覧表示して、動画仕上げの枚数を表示したり、原画が何カット上がって何パーセント終わっているという情報は、進捗ボタンを押すだけで各制作担当にメールが送られたり。また、撮影への応用として撮影ボタンを押せばAfter Effectsが立ち上がってBG(バックグラウンド)やTP(トレス・ペイント)の素材をサーバーから集めてきて、タイムシートの情報に合わせて自動でリマップして撮影を組んでしまう...という機能も開発中です」

SHOTGUNであれば全ての情報がデジタル管理されているので、タイムシートを参照しながらの撮影までも出来てしまう...それがこの先目指すところだという。

求人もSHOTGUNで

今村幸也氏

デジタル作画のメリットとして、今村氏は「求人がリアルタイムでできるようになったこと」を語る。応募者のアドレスをSHOTGUNに入力して面接者用の専用ビューを作成し、設問を出していく。

「『今から試験を開始しますのでパソコンの準備をしてください』と連絡して、作業をしてもらうサンプルファイルをダウンロードしてもらいます。設問が完成したら専用ビューにアップロードしてもらいます。作業にかかった時間は基本自己申告していただきますが、SHOTGUN上でいつデータがダウンロードされアップロードされたのかもわかるので、ある程度の時間はこちらで把握することができます」

SHOTGUNによって、年間を通してデジタル作画のリクルーティングが出来るようになったという。

「デジタルですから、データのやり取りも楽ですし、中身のデータの綺麗さもわかるんですよね。CLIPSTUDIOのレイヤーが何枚重なってるのかもわかるので、几帳面なのか几帳面じゃないのかというところもわかります(笑)」

面接は送付されたファイルを元に選考されてから、初めて行われる。全てを机の上で管理できることが、あらゆる工程の短縮につながるという。

これからの理想

今村幸也氏

今村氏にデジタル化の未来を聞くと、「よりクリエイティブな人がお金をもらえる仕組みになっていく」と語る。単なる作業員が不要になり、クリエイターたちはよりクリエイティブなことに専念できるようになるという。

「ただ実現には、予算の壁が大きいと言われます。デジタル化するためのサーバーの容量も、一人ひとりに支給するパソコンも...導入化を検討するプロダクションも、『なかなか真似できない』と諦めてしまいがちですが、その先のことを考えた時に動くべきは今だと思っています」

最後に、今村氏がこれからのデジタル化時代に生きるCGクリエイターたちへのメッセージを頂いた。

「何か一つのことを磨いてほしいんです。全てのスキルが完璧でなくていい。キラリと光るものが一つあれば採用されます。だから、これだと思うことを磨いてください」

SHOTGUNによって場所も時間もこだわらない働き方が提示され、それによって新しいクリエイティビティが生まれる--今村氏のお話からは、そんな予感が感じられた。

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