『映画ドラえもん のび太の新恐竜』後編
ワークフローの基幹を支えるShotgun

『映画ドラえもん のび太の新恐竜』後編 ワークフローの基幹を支えるShotgun

2020.08.20

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前編に続いて、株式会社MORIE(以下、MORIE)の皆様に「映画ドラえもん のび太の新恐竜」(以下、「映画ドラえもん」)のCGアニメーション制作についてお話を伺った。

映画ドラえもん のび太の新恐竜
映画ドラえもん のび太の新恐竜

恐竜の3DCGパート制作において、MORIEではモデリングからアニメーション、レンダリング、基本的なコンポジットまでの一通りの作業を担当したという。

モデリングとアニメーションにはMayaが使用されている。レンダリングはVray、コンポジットはAfter Effectsで行われた。また、輪郭線のレンダリングでは、近距離モデルにはPencil+を、遠距離モデルではVrayToonといった使い分けも行われている。

MayaのPencil+設定画面
MayaのPencil+設定画面

25種類の恐竜アセット、約140カットのCG映像を制作するにあたり、その膨大な情報の整理にShotgunが活用された。

MORIEでは、これまでのプロジェクト管理にはGoogleスプレッドシートを利用してきた。GoogleスプレッドシートやExcelは手軽に扱えるため、短期間・小規模な案件では便利なものだ。しかし、手軽な反面、担当者が自由に変更出来ることでレイアウトに統一性がなくなったり、シート間の情報に不整合が生じたりといった不都合も生じていた。また、更新作業の属人化やサムネイル添付などで途端にレスポンスが悪くなる点も課題となっていた。

プロジェクト前半に利用していたスプレッドシート
プロジェクト前半に利用していたスプレッドシート

こういった課題を解決するために、本制作開始を前にShotgun上でのプロジェクト管理へ移行、連携するツールなどの制作が行われた。

「映像コンテンツ系のプロジェクト管理において、Shotgunの有用性は改めて語るまでもないかとも思います。Shotgunは、あらゆる行程がひとつのデータベースにまとまり相互リンクしています。スプレッドシートのように各セクションでシート間の不整合を気にすることなく進捗管理が行えました。進捗状況の確認も文字情報だけでなく、グラフを使って視覚的にわかりやすく確認ができます。」とShotgunの魅力について伊藤氏は語る。

例えば、グラフ機能を活用して、作業の優先度ごとの進捗、担当カット数、データの受け取り待ち情報といった作業者が確認したい内容の視覚化が行われた。

グラフ機能を活用

ちなみにMORIEでは機材管理にもShotgunを活用している。以前は各作業マシンの状況を個別にチェックして周っていたが、スクリプトを走らせてShotgun上に情報が集約される仕組みに切り替えられた。

機材管理にもShotgunを活用

従来型のワークフロー

従来のワークフローは、リギングしたキャラクターをアニメーション工程でリファレンス、それをさらにレンダリング工程でリファレンスするという直列型が採用されていた。二重リファレンスが発生し、構造が複雑なアセットなどでは工程が進むほど何をするにも重たくなる、レンダリング時のエラーを誘発する、といった問題を避けられない。そのため、デフォーマの多重化など自由なアニメーション表現に貢献する機能の利用を避けねばならないこともあった。数カットレベルの規模の小さなプロジェクトであれば、こういったワークフローでも力技で進めることは可能である。しかし、今回のような大量カットを処理するには厳しいと高畠氏は感じていた。

従来型のワークフロー

改良型のワークフロー

新たなワークフローでは、アニメーション以前の工程はそのままに、その結果をAlembicキャッシュとして出力。レンダリング以降との分離が図られている。アニメーションシーンの状況がレンダリングに影響することはないため、これまで避けていたような複雑なリグなど、アニメーション表現の自由度を担保する施策を柔軟に採用することができた。

またキャラクターアセットはリギングが済んだ時点でAlembicを出力し、ルックデヴやレンダリング設定が進められた。

改良型のワークフロー
Alembicファイルが読み込まれた様子
Alembicファイルが読み込まれた様子
Advanced Skeleton によるリグ
Advanced Skeleton によるリグ

大きな判型でアニメーション作業を進めコンポジット時にカメラワークを付ける「大判カット」に対応するため、レンダリング解像度はカットごとに変更する必要があった。

これを毎カット手で打ち変えることはヒューマンエラーのもとになるため、Shotgun上に情報を集約し、Alembicキャッシュ出力時/レンダリングシーン構築時に書き込み・読み込みを行うことで作業者負担を軽減している。

MayaからAlembicを書き出す様子
MayaからAlembicを書き出す様子
解像度やパスなどの情報がShotgunで管理されている
解像度やパスなどの情報がShotgunで管理されている

レンダリングを行う際には、インポートツール上のボタンを順にクリックしていくことで必要な情報が収集され、レンダリングシーンが構築される。Alembicキャッシュにはマテリアルの情報は含まれていないため、レンダーセットアップ上でマテリアルをアサイン+必要な情報のオーバーライド(VrayObjectPropertyのSubdivision設定、Pencilのアウトライン設定等)する作業の自動化も組み込まれている。

200体におよぶ恐竜を読み込んだ群衆シーン
200体におよぶ恐竜を読み込んだ群衆シーン

恐竜ごとに数種のレンダーレイヤが組まれており、レンダリング時にはそれが登場する恐竜分出力されるため、レンダリング素材の数は膨大なものになる。異なる種類のキャラクターが前後交差するようなカットの場合は、マスク素材を別途用意して対応が行われたそうだ。

レンダリングを終えた素材は、シンエイ動画より提供されたシーンカラーAEPに組み込まれる。これは昼・夜・天候・場所...などにあわせて色彩設計されたAfter Effectsファイルで、カットごと・恐竜ごとに適切に選択する必要がある。

フロー図

そのため、カットを指定してシーンカラーを組み合わせ、レンダリング素材を読み込む仕組みが整えられた。カットごとの仮コンプファイルを開き、ツールを実行すると、Shotgunに入力されたカットの色彩設定の情報を取得、各恐竜に色彩設定済みのコンプファイルが自動で割り当てられるといったものだ。

色彩設定をShotgunで管理
色彩設定をShotgunで管理

「これだけのカット数をスプレッドシートで管理をしていたら、シートの更新作業だけでも相当なコストになったと思います。Shotgunを利用したメリットはとてつもなく大きなものでした。また、データベースとしても非常に使い勝手がよく、アイディア次第でワークフローのシステムを支える存在として活用が出来る強力なソリューションだと感じています。」と高畠氏は力強く語ってくださった。

今後は、大量に保有しているモーションキャプチャ データのライブラリー化も進めたいという。Shotgun上でモーションを視覚的に確認して、簡単にMaya内で再利用できるような環境を構築していくというプランだ。

なお、Shotgunを活用した自動処理のパイプライン構築に興味があるスタジオは、MORIEに一度声をかけてもらえれば相談にのることも可能とのことだ。

「『映画ドラえもん のび太の新恐竜』では、今回紹介した羽毛恐竜を含めて多くの恐竜がCGと作画によって生き生きと描かれています。映像はもちろん感動のストーリーを劇場でぜひお楽しみください。」と森江氏は締めくくって下さった。

株式会社MORIE

株式会社MORIE
2016年設立。CM、アニメ、TV、映画など、あらゆるジャンルのCG映像制作をディレクションからプロデュースまで手掛ける。代表の森江康太氏は本作でCGアニメーション スーパーバイザーを務めた。

高畠 和哉 氏
ワークフロー全般の開発を担当。そして、MayaのXGenを用いた羽毛表現も担当。普段からアート面とテクニカル面の両方をこなす。

伊藤 浩之 氏
Alembicキャッシュを用いたワークフローやShotgun周りのPythonツール開発などパイプライン構築を手掛ける。開発だけではなくジェネラリストとしてアートワークも担当。

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