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GRAVITY DAZE 
ソニー・コンピュータエンタテインメント Interview 『横へ・上へ「落ち」ていく新感覚――重力軌道アクションが拓く未知の世界』

GRAVITY DAZE ソニー・コンピュータエンタテインメント Interview 『横へ・上へ「落ち」ていく新感覚――重力軌道アクションが拓く未知の世界』
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「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(以下「GRAVITY DAZE」)」は、PlayStation屈指の人気ホラーゲーム「SIREN」のディレクター・外山圭一郎氏が、新ハード「PlayStation Vita」をプラットフォームに創りだした、かつてない重力アクションアドベンチャー。Vitaのモーションセンサーが可能にした驚異の重力軌道アクションと、高精細な有機ELディスプレイが描く圧倒的なビジュアル世界は多くのゲームファンを魅了し、PlayStation Vitaとともに大ヒットとなった。ここでは、Autodesk Mayaをメインツールに、この全く新しいゲーム世界を創りだした外山氏らソニー・コンピュータエンタテイメントの開発チームの皆さんにお話を伺った。

"横に落ちていく"感覚をどう表現するか

――あらためて「GRAVITY DAZE」の概要をご紹介ください

外山氏:この「GRAVITY DAZE」の企画は、当初フレンチコミックのような世界観の中で重力を操る、アクション・アドベンチャーとして制作を進めてきました。いわゆるオープンワールドといいますか、縦横に広がる箱庭世界のフィールドを、独特の浮遊感とともに自由自在に駆け巡ってさまざまなミッションをこなしていくゲームです。重力を操るという新機軸やモチーフとしたフレンチコミックの世界だけでなく、日本的なキャラクタ性の楽しさやアメコミ的なヒロイズムのカッコよさまで上手くミックスして、まったく新しい冒険活劇のエンタテイメントを創ろうと考えました。

――重力を操るという発想の原点は?

外山氏:フレンチコミックの中でも、私は特にMœbiusが大好きで、ゲーム業界に入る前から彼の絵や世界観にすごく魅かれていました。で、このMœbiusの特徴のひとつとして、広々とした開放的な空間に人が浮かんでいる一種の浮遊感的な表現がモチーフとしてよく使われているんです。私はあれがとても好きで、ああいうビジュアルが成立するゲームがあるとしたらどんなゲームデザインになるのだろう、と考えたのが出発点です。その答えが"重力を操る"ことでした。重量を操ることで人はカッコよく飛ぶのではなく......daze......翻弄されるように浮かび、漂う絵が成立するわけで。そこから重力とフレンチコミックの世界を掛け合わせる、という発想が生まれました。

外山 圭一郎 氏
Sony Computer Entertainment
Worldwide Studio
JAPANスタジオ
インターナルデベロップメント部
ゲームデザイングループ
クリエイティブディレクター
外山 圭一郎 氏

――かなり時間をかけた企画なのですね?

外山氏:そうですね。企画が動き始めたのは2008年。「SIREN」の前作「SIREN NEW TRANSLATION」の完成後です。終わるとほぼ同時に立ち上げて、2008年の夏から2009年の頭にかけて企画を練ったりプリプロ的な映像を作ったりしていました。2008年からというと長く感じられるんですが、その間ずっと作り込んでいたわけではないんですよ。実は当初PS3をプラットフォームとして進めてたのですが、PlayStation Vita(以下Vita)が登場しこれに切り替えたため、人数を絞って基礎研究的なことを行っていた期間がかなり長くて......とにかくずっといろいろ模索しながらやっていた感じです

――Vitaへのプラットフォーム移行の狙いは?

外山氏:Vitaが登場したとき、試作したGRAVITY DAZEでちょっとしたテストを行ったんです。するとVitaのモーションセンサーとの相性が素晴らしく、何とも言えない独特の浮遊感が生まれました。しかもジャイロセンサの精度も飛躍的に高くなり、画面が一緒に動くので画面の向こう側に世界が広がっているような独特の感覚があったんです。これは携帯機ならではの効果で、この方がより作品のコンセプトに合致すると感じたのです。もっともこのプラットフォーム変更の手間もあり、ローンチに間に合わせるには量産フェイズの時間が1年しかなくて、結果的にかなりタイトなスケジュールになってしまいました。最終的には「無理に間に合わせて細部に目をつぶるか、遅らせても最後まで作り込むか」の選択になったほどでしたが、ここは完成度を重視して、ローンチ期間内ですが少し後ろにずらして作り込んで仕上げました。

――新ハードだからこその難しさもあったのでは?

外山氏:たしかに携帯機の場合、据置きのゲームとは違う発想で作る必要がありますが、今回はむしろ逆でした。前述の通りオープンワールドというコンセプトはVitaの方がフィットしますし、Vitaなら高度な物理演算もこなせます。新しいハードにも関わらず、無理な制約などに悩まされることなく、思い通りに自然に作れた実感がありますね。......これは私個人の感想ですが、Vitaは携帯ゲーム機として最初の完成形と言えるのではないでしょうか。美しいディスプレイや優れた右スティックの操作感といった、ゲーム機としての基本的なポテンシャルが実にしっかりしています。ゲームの作り手である私たちが、求めるものがきちんと揃っているんですね。

――基礎研究期間中、最も重要な課題となったのは?

山口氏:絵に関して言うと、ディレクターの方からまず「重力」というテーマを示されていたので、やはりこれをどういう風に表現するかが最大の課題となりました。最初はコンセプトアート的な"絵"として、数人でムービーを作っていきましたね。当時はまだプラットフォームはPS3の予定だったので、PS3のメカニズムで表現できるような、しかもCGとの親和性が高い表現ということを考えながら......。実際に製作可能で神秘性もあって、インパクトもあるものを、というコンセプトで作っていきました。

外山氏:もう一つの課題は重力関係です。やはり重力アクションゲームですから、重量を使ったメカニックの部分の追求に相当の時間をかけました。特に飛翔感ならぬ"落下感"の表現は、最大のポイントだったと思います。単に仕様に則って落ちるだけなら、わりとあっさり実現できるんですが、当然それでは私たちが表現したい感覚は伝えられません。いったいどんなふうに描けば、本当に"横に落ちていく"かのような感触を感じてもらえるのか......そういったところに時間をかけて詰めていったんです。

山口 由晃 氏
インターナルデベロップメント部
ビジュアルアートグループ
シニアアーティスト
山口 由晃 氏

――"飛ぶ"とはまったく違う感覚ですからね

土蔵氏:そうなんです、そこは本当に苦労しました。普通にやるとどうやってもただ飛んでいるだけのように見えてしまうんですよ。そこでいろいろ工夫してたどり着いたのが、たとえば"足から落とす"という描き方です。実際には後付け的に調整しただけなんですが、足から落ちる時の見た目が、パッと見で落ちていくように見える錯覚を引き起こしてくれます。座標計算では、普通に飛ぶ場合と全く同じなんですが、面白いですよね。景色の流れ方とか、頭部が次第に下になって落ちていく様子とか......そういう描写が、どれだけプレイヤー自身の過去の落下した時の記憶やイメージと一致するかがポイントで、そこが上手くマッチするように合わせていきました。

土蔵 利威 氏
インターナルデベロップメント部
テクノロジーグループ
テクニカルディレクター
土蔵 利威 氏

斎藤氏:物理法則等にも気を遣いましたね。もちろん現実の物理法則をそのまま反映させるわけではなくデフォルメもしているんですが、それでも慣性の法則など、基本的な物理法則に照らしてあまり嘘を付きすぎないよう注意しています。たとえば主人公が"落ちて"いく時も、ロケットみたいにいきなり大きな初速ですっ飛んでいくんじゃなくて、ゼロからだんだん加速していくようにしていく感じですね。"落っこちる"のですから、初速ゼロからでなければおかしいですから。

――そうした細かい配慮が繊細なリアリティを生み出しています

土蔵氏:その意味では、ゲームの設定に助けられた部分もだいぶあります。たとえば落下中はほとんどキャラクターを動かせないという設定なんですが、その"動けなさ"加減が、プレイヤー側にも落下する時の感覚を呼び起こしてくれたりもするんですよ。実際、最初はカメラが背後から追従して自由に方向転換できたんですが、それでは"飛ぶ"のとまったく変わらない。で、むしろこういった"動けない不自由さ"があるところが、だんだん「落ちているように見えるね」という話になっていったんです。

斎藤 俊介 氏
インターナルデベロップメント部
ビジュアルアートグループ
シニアアーティスト
斎藤 俊介 氏
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