• Home
  • >
  • ユーザー事例
  • >
  • ゲーム
  • >
  • 株式会社スクウェア・エニックス Final Fantasy XIII リアルタイムカットシーンのワークフロー

株式会社スクウェア・エニックス 
Final Fantasy XIII 
リアルタイムカットシーンのワークフロー

株式会社スクウェア・エニックス Final Fantasy XIII リアルタイムカットシーンのワークフロー
  • Maya
  • MotionBuilder
  • ゲーム

キャラクタセットアップ環境

Autodesk Softimage は、補助ボーンを含む高度なリグセットアップやキャラクタのエンベロープ調整に利用されている。ライトニングやスノウのハイモデルは、基本構造、補助ボーン、フェイシャル用ボーン、ヘア用ボーンを含めると計 223 本のボーンで構成されている。(ローモデルのリグでは、フェイシャルと指のボーンが簡略化されている。)肩、腕の回転、ひじ、ひざ、おなかのへこみなどを巧みに制御する多数の補助ボーンがエクスプレッションやコンストレイントを駆使して組み上げられているのが特徴だ。

Softimage のエクスプレッションで仕込まれる補助ボーン
>拡大
Softimage のエクスプレッションで仕込まれる補助ボーン
エンベロープ調整の様子
>拡大
エンベロープ調整の様子
モンスターは、リグセットアップとアニメーション作業も Softimage を利用
>拡大
モンスターは、リグセットアップとアニメーション作業も Softimage を利用
ボディモーション調整
>拡大
MotionBuilder と Softimage の互いの特長を生かすパイプライン

キャプチャ対応が出来ないような派手なアニメーションや骨構造が特殊なモンスターのアニメーションは Softimage で行われている。他にも召還獣が登場するバトルのカットシーンでは Softimage 内で手付けによるカメラアニメーションや Animation Mixer を利用した編集も行われている。

Schematic View でリレーション関係を把握しながら、使い勝手のよいドープシートやFカーブエディタによる快適なアニメーション環境が Softimage の魅力であるという。

MotionBuilder で作成したカメラのカット情報が、そのまま Softimage 内にも読み込める環境が構築されているため、双方の強みを生かしながらカットシーンのアニメーションは制作されているのである。

中間ファイルを用いたレイヤー構造のデータ運用

モーション中間ファイル
>拡大
平行作業を行い、データを最終的にマージする
モーションファイル種
>拡大
多数のファイル管理が課題に

ゲーム用バイナリデータに変換する前のデータは中間ファイルと呼ばれる。「FF XIII 」の開発環境では、miga (ミグエー、またはミガ)と呼ばれる社内製のアスキーアニメーションデータを中間ファイルとして使用している。

miga の特長として、選択したノードの情報のみデータ出力が可能なことがあげられる。このため、データのレイヤー的な管理・運用が行えるというメリットが生まれる。「FF XIII 」の開発ではこれを利用してボディ、フェイシャル、シミュレーションのセクションからそれぞれ miga 出力を行いマージする手法が採用された。このように、担当範囲ごとに細かくファイルを分割する手法は、モーションデータに限った利用方法でなく、平行作業を実現するため開発全体で取り入れられているワークフローであるという。

しかし、データをレイヤー的に利用すると扱うファイル数が増加してしまう問題が必然的に発生してしまう。1 つのカットシーンで、実に 3,000 個を超えるファイルを扱うことも珍しいことではなかったという。こういった状況下では、必要なファイルを素早く選択することが困難であったり、サーバへのデータアップロードでヒューマンエラーが発生したりする課題が生まれてしまう。

そこで、Neji と呼ばれる社内製のエクスプローラ形式のアセットブラウザがデータ管理に活用された。Neji ではファイルにメタデータを付随させることでコメントの入力や担当分けの情報も管理が行える。さらに、利便性を追求するために Neji に対するカスタマイズも行われた。カットシーンの ID 検索から miga ファイルをキャラクタごとに表示する機能などエクスプローラ方式ではなくカットシーンモーション班が利用しやすくなるよう専用の GUI が構築された。アセット管理においては、少ない動作で必要な情報だけを扱えるようにすることで、アップロードミスやデータの巻き戻りなどのヒューマンエラーを極力抑える工夫が行われているのだ。

平行作業のフェイシャルパイプライン

サウンドデータと配置情報
>拡大
フェイシャルに必要とされたデータ

フェイシャルアニメーションの作業では、複数の班にまたがるデータや情報のやりとりが行われた。例えば、セリフの配置情報はカット班、セリフの ID・内容・音声データはサウンド班といったようにセクションをまたいでファイルを管理する必要があったという。さらに、いつ、どのファイルを更新したのかという情報を管理することも作業では重要となる。そこで、フェイシャル作業に必要な情報を一元管理するための WEB ツールが PHP と VB スクリプトを用いて構築された。

PHP の場合は、Excel ファイルも扱えるために効率化が実現出来たという。同時にデータベースとしても機能させる仕組みを用意することで、企画班など DCC ツールを利用しないスタッフがウェブブラウザ上で作業データのステータス確認を行えるように環境は整えられた。WEB ベースで動作するツールのため、Softimage 上では特別な GUI を作成することなく、Netview を介してダイレクトにデザイナがファイルを利用できることも大きなメリットであったという。

フェイシャル作業工程
>拡大
データ待ちのロスを無くすワークフローで作業は進行
音素解析エンジンによるリップシンク
>拡大
音声解析を用いた自動リップシンクが場面によって採用されている

続いて、フェイシャルアニメーションの編集パイプラインについて詳しくお聞きした。前述のモーションキャプチャ演技者の音声をピンマイク収録した仮の音声データを利用してフェイシャルアニメーション作業は進められる。これにより、ボディアニメーションの最終調整と並行する形でフェイシャル作業が行えるのだ。本番用の声優の音声データを待たずに先行作業を行っておき、本番データがあがってきた際にファイルを上書きすることで簡単に差し替えられるようになっている。

フェイシャルのアニメーションは、Netview から Animation Mixer トラックに読み込んだ仮音声データにあわせてパラメータを調整していく作業からスタートする。母音と子音を簡素化したパラメータを利用して調整が行える。さらに、これらと裏で連動したさらに細かい調整パラメータが多数存在する。(詳細な音素、左右オフセット、口角の形状、唇の上下など)

表情を制御するフェイシャル用ボーンは、ライトニングやスノウといった主人公クラスで 39 本。ローモデルや NPC キャラクタ(町人など)ではさらに少なくなる。唇まわりの筋肉表現は、ボーンをエクスプレッションでカーブにリンクして制御が行われている。

流れとしては、まず音声データに合わせて母音を指定する。そして、怒っているセリフの場合は音声のニュアンスに合うよう細かい表現を追及していくというワークフローである。少ないアクションで動きを定義が可能で、かつ微調整が出来る仕組みがフェイシャルでも重要であったという。田中氏いわくキャラクタのイメージを保ちつつ個性を出すフェイシャル表現が心がけられているという。フェイシャル作業では、気が付くと自身の表情も自然と一緒に動いていることも多いそうだ。

なお、Softimage のビューポート上では、キャラクタのボディモーションも読み込まれた状態でフェイシャル設定を行うが、作業しやすいようにカメラをコンストレイントで顔に固定することができる。Softimage 上で複数キャラクタを同時に調整するケースはあまりなく、キャラクタ同士が対峙する場面も Step2 動画を参考に調整が行われた。

また、海外版の英語音声のフェイシャル表現も同様の手法で日本人スタッフが手付けでリップシンクを行なった。英語のリップシンクは、ローカライズチームがムービーによるチェックを行うことで、さらなるクオリティアップを実現している。ちなみに、カットシーンのフェイシャルは、全て手付けアニメーションが行われているが、左図のCタイプDタイプのフェイシャルでは音声解析技術を利用した自動リップシンクが採用されている。

フェイシャルの最終調整では、音声データとボディモーションを本番用データに差し替える。そして、仮作業で作成したフェイシャル用のキーフレームを読み込み、目線の調整などを行う。このように、どうしても開発後半に片寄りがちな作業量を分散させることで、短期間でも高いクオリティを実現したのである。

〈 次ページへ続く 〉付属物とヘアのシミュレーション

製品購入に関するお問い合わせ
オートデスク メディア&エンターテインメント 製品のご購入に関してご連絡を希望される場合は、こちらからお問い合わせください。