株式会社カプコン 
『バイオハザード5』が放つ極限のグラフィック

株式会社カプコン 『バイオハザード5』が放つ極限のグラフィック
  • Maya
  • MotionBuilder
  • カプコン
  • ゲーム

最高峰のフェイシャル表現

『バイオ 5』のフェイシャル表現が目指したものは、「生きた表情」であるという。これまでのシリーズでは、フェイシャル表現にシェイプターゲットを利用してきたが、『バイオ 5』ではボーンによるフェイシャル制御が採用された。また、従来の手付けアニメーションの限界をブレークスルーするためにフェイシャルキャプチャの導入が検討された。

そこで、モーションキャプチャデータで表情をドライブさせるフェイシャルリグの準備が、リアルタイム演出ムービー制作リーダの平林氏によって進められた。フェイシャルリグは、内部に3層のレイヤ制御が仕込まれており、マーカーの移動情報をボーンの制御へ反映させるものだ。

このフェイシャルリグにキャプチャデータを割り当てる稼動範囲のテストやリップシンクのテストが行われた。結果として満足のいく豊かな生きた表情が得られたために、フェイシャルキャプチャ方式が正式に採用されることになった。

『バイオ 5』ではリップシンクに関しても、音声解析制御ではなくモーションキャプチャによる制御が行われている。そこで、役者によるセリフの音声収録と同時に、フェイシャルキャプチャが行われたという。表情を重要視する場合は、ボディとフェイシャルの同時収録という手法も可能であったそうだ。

キャプチャデータは、どのステップでも
アニメーション調整が行える
モーキャプリグ
(キャプチャされたマーカーデータの動き)

キーアニメーションリグ
(マーカーの動きをオフセット調整可能なコントローラ)

システムキーリグ
(手付けアニメーションで修正されたディテールを持った唇の形状と唇のカール)

ベースリグ
(さらに、どうしても気になる部分は、基幹の80本のフェイシャルボーンで微調整が可能)

あえて音声との同時収録を行った理由は、音声と口の動きでタイミングを完全に同期させることを重要視したためである。音声との同時収録では、役者はあくまで声の演技に集中している。このため、キャプチャされた表情や口の演技データの精度は必ずしも完全に満足がいくものではないかもしれない。

しかし、音声が「あ」と発せられたときにキャプチャデータが「あ」の口になっている限りはタイミングの修正に時間をとられることはない。そこで、表情のデータ精度を上げる修正の労力を見込んでもこの方式の採用が選択された。

フェイシャルリグが 3 層のレイヤ制御のであるため、これらのどの段階でもアニメーションのチューニングをオフセット調整で行えることがクオリティの向上につながっている。キャプチャデータに対して柔軟に修正が行えるワークフローを整えたことで、最高水準のフェイシャルアニメーションは生み出されたのである。

最後に

海外プロダクションとの協業という新たな試みを成功できたのは、日本の開発スタッフからのバックアップが大きかったと平林氏は語ります。急遽、精度の高いモデルデータを用立てることや、海外スタッフへのリグ提供から仕様解説、モーションを作成しての演出指導まで日本の開発チームは快く応じてくれたそうだ。海外、国内チームともに一丸となって協力作業を行ったことが、相乗効果をもたらしプロジェクトを成功へ導いたのである。また、プレビズやバーチャルカメラ技術をゲーム開発に積極的に取り入れたことが、限られた時間でも最大限に映像クオリティを引き出す結果に繋がったことは間違いないといえる。

常に最先端の映像表現を追求するバイオハザード開発チームからはこれからも目が離せない。バイオハザードでは、シリーズ毎にその恐怖はとどまることをしらないと言われているが、グラフィックの進化に関しても、今後もとどまることをしらないと確実に言えるであろう。

インタビューにご協力頂いた開発スタッフの皆様

インタビューにご協力頂いた開発スタッフの皆様

株式会社カプコン

左から
平林 良章 氏 リアルタイム演出ムービー制作リーダ
清家 征雄 氏 モーションチームリーダ
福井 誠 氏 キャラクタモデルチームリーダ
松下 禄範 氏 キャラクタデザイン・モデリング担当
堀 嘉純 氏 背景チームリーダ

© CAPCOM Co., Ltd. 2009 All rights reserved.

導入製品/ソリューション ・Autodesk Softimage
・Autodesk Maya
・Autodesk MotionBuilder
製品購入に関するお問い合わせ
オートデスク メディア&エンターテインメント 製品のご購入に関してご連絡を希望される場合は、こちらからお問い合わせください。