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「上空地を最大限に利用した未来の高層ビル」
アルゴリズムデザインラボ インタビュー
3D モデリング、BIM、環境シミュレーション...... 3ds Max を核に展開する「泥臭い」コンピュテーションの世界

「上空地を最大限に利用した未来の高層ビル」 アルゴリズムデザインラボ インタビュー3D モデリング、BIM、環境シミュレーション...... 3ds Max を核に展開する「泥臭い」コンピュテーションの世界

2016.10.11

  • 3ds Max
  • 建築・製造・広告

高層ビル街をバックに聳える巨樹のような"それ"は、最上部に波打つ"大地"を広げ、そこから幾つもの果樹をぶら下げている。伝説の世界樹のようなその「高層ビル」は、観る者のイマジネーションを強く刺激する――それが AUTODESK CREATIVE DESIGN AWARD 2015 ビジュアライゼーション部門のグランプリ受賞作品「上空地を最大限に利用した未来の高層ビル」である。高層ビルの概念を覆すこのユニークな作品の制作者の1人、重村珠穂氏は、Autodesk 3ds Max など多彩なデジタルツールを駆使して建築設計デザインを多角的にサポートする、新しいタイプのクリエーターである。世界を舞台に多様なデザインビズを展開する重村氏に、そのクリエーティブ活動についてうかがった。

アンチテーゼの発想で高層ビルの問題解決を

――なぜ DESIGN AWARD 応募作を「高層ビル」に?

重村 珠穂 氏
株式会社 アルゴリズムデザインラボ
代表取締役
重村 珠穂 氏

重村氏:「高層ビル」はその存在じたい素敵なもので、街に1棟置けば、それだけでその街は大都市に仲間入りできます。そのため、中東などでは高層ビルがしばしばランドマーク的に建てられますが、実は人々の実際の生活にはあまり役立っていないケースもしばしばです。こうした高層ビルのあり方への疑問が私たちの出発点で、いわば一種のアンチテーゼとして高層ビルが抱える問題をきちんと解決していこう、と考えたのです。ですから、これは当初からきわめてコンセプチュアルな計画であり、実際には建たないことは承知の上で発想を広げました。

――高層ビルが抱えるさまざまな問題点とは?

重村氏:私は NY の新ワールド・トレード・センターのプロジェクトにも参加しましたし、アトリエ設計事務所で高層ビルの設計をお手伝いすることも多く、その造り難さ、デザインにおける自由度の低さは承知しています。ある建築家の先生が仰ってたのですが、結局のところ高層ビルはファザード......あの表面のデザインしかできません。構造的にも特別大きくしたり細くするのは難しく、サイズ感も制限があって、エレベーターを置いてしまうと中で自由になるスペースもまた少なくなってしまいます。実は問題だらけの建物なのですよ。

――それをどんな発想で解決していったのですか?

重村氏:たとえば真っすぐな直線で構成され、下の方が大きくなっていく高層ビルの基本的な形は、主に構造的な必要から生まれたものです。そこでこれを何とかして逆転させ、上を大きくできないか......という考え方で、全てをアンチテーゼ的に発想していくことで、いろいろ気づくことがありました。高層ビルで人が集積するのは地面レベルが中心で、最上部は展望台にするくらいしか価値が生まれません。この最上部をもっと価値あるものとするにはどうしたら良いのか?と考えを進め、天地を逆転させて最上部に地上を作ってみたらどうか、というアイデアに行き着きました。その結果があの変な形なのです(笑)。

――最上階の「地上」から「部屋」が下がり、樹木のようです

重村氏:高層ビルは基本的に増築することが不可能です。そこでこれもなんとか増築できないか考え、最上部の「地上」からぶら下げれば増築できるかな、と。......そんな風に考えていくなかで、気づいたら「うわあ、木になってる!」と(笑)。もちろん構造的にはすごく大変な計画ですが、そんなアイデアでも、こうしてビジュアライゼーションを駆使すれば、そこに込めたアンチテーゼのコンセプトを誰かに伝えられるわけです。これがヒントとなって、少しでもより良いものづくりに繋がればいいな、と思っています。

――ビジュアライゼーションの力ですね

重村氏:グランプリに決まった時は「やった!」という思いとともに、高層ビルの難しさが理解された、という喜びがありました。こうしたビジュアライゼーションの重要さは、実際の仕事でも同じです。特に大勢の人が関わって創る、まだ実際には存在していない建物のプロジェクトでは、それらの人が思い浮かべるイメージはそれぞれ全く異なるのが普通です。だから、まずビジュアルでそれを共有できなければ何も始まりません。最近、私は建築コンペにもよく関わりますが、コンペ段階においても、ビジュアルがもっとも思いを伝えてくれるという実感があります。

――今回の使用ツールと制作工程をご紹介ください

重村氏:ソフトは 5~6 種類を使い分けますが、ビジュアライゼーションには 3ds Max が絶対欠かせません。特に建築分野では 3ds Max はデフォルトです。そして、その前段階で形状を試行錯誤する時は別の 3D モデラーを使います。今回はこの 3D モデラーで無責任に形を捏ねくり回し、それを友人とキャッチボールしながらアイデアを練り上げ、確定した所で 3ds Max で細かくビジュアル化したりレンダリングし、Adobe 製品でレタッチして仕上げました。制作期間は約1週間でしたね。また、仕事で図面化が必要な場合は Autodesk Revit を用い、以前は AutoCAD も使っていました。さらにCAEソフトも目的に応じて数種類を使用します。

圧倒的な表現力を持つ 3ds Max

―― 3ds Max が「絶対欠かせないデフォルト」なのはなぜですか

重村氏:レンダリングエンジンの機能が他製品に比べ安定しており、光の表現もずば抜けてリアリティ豊かなのです。私はハーバード大の建築学科でアルゴリズム・デザインを学びましたが、ここでは日本の建築学科にはないレンダリングの授業があり、建築コンペのアニメーションを造っている現役デザイナーが講師でした。光の反射や再現、気持の表現、没現実型レンダリング等々を学んだんですが、その先生が使っていたのが 3ds Max だったんです。実際、3ds Max は他と比べて表現力が圧倒的に優れているし、いま思えば当然の選択でしたね。

――表現力の違いが実務で活かされた例をご紹介ください

重村氏:具体的な物件名は出せませんが、ある大きなアリーナの計画で環境シミュレーションを行っていた時、日照シミュレーションが必要になりました。シミュレーションはコンサルに依頼する予定でしたが、アリーナ自体のボリュームが大きく、3D モデルも重くて扱いづらいため1週間以上かかると言われたんです。そこで「自分たちで使ってやろう!」ということになり、3ds Max でシミュレーションして結果をクライアントに提出しました。その後1週間ほどして、依頼していたシミュレーション結果が届きましたが、私たちが 3ds Max でシミュレートした結果と大差なかったんです。つまり、大枠を把握するなら 3ds Max のシミュレーションで十分だったんです。これも 3ds Max のエンジンとしての能力がしっかりしているからでしょう。

第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館コンペ柴田直美(キュレーター)萬代基介(建築家)案のデータ作成支援業務ビジュアライゼーションと環境解析とレーザーカッター模型の製作

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――3ds Max はデザインが完成してからの活用が中心ですか

重村氏:そうとも限りません。たとえば近年、日本の建築業界でもようやく BIM(Building Information Modeling)の活用が拡大していますが、このBIMにおいて、建築モデルに持たせる情報は、扱いやすさを考慮してシンプルなものになりがちです。デザインのディティールまで表現しない、カクカク角張った建築モデルなのです。BIM の途中段階でもしばしばビジュアライゼーションが必要になりますが、そのままレンダリングしても使えないので、いったん 3ds Max へ持っていってリアリティのある形状に修正してからレンダリングにかけるのです。そうした操作も、3ds Max なら非常にスムーズで作りやすいのです。

――コンピュテーションの会社と聞きましたが、BIM の仕事も?

重村氏:建築業界に特化したコンピュテーションデザインの会社ですが、皆さんが思っている「コンピュテーション」とは少し違うかもしれません。建築業界では、難しい数学やコンピュータ言語を使いコンピュータだけでデザインを成立させる手法と思われがちですが、私の"それ"はもう少し泥臭いコンピュテーション。コンピュータの力を借りて、良い建物づくりのためのデザイン支援を行う仕事です。事業の柱は3つあり、1つが BIM の建築情報に関わるもの、2つ目がビジュアライゼーション、そして最後は環境シミュレーションです。

――泥臭いコンピュテーションとは?

重村氏:泥臭く仕事している建築現場やアトリエ事務所にコンピュータを持ち込み、一緒に試行錯誤していくやり方ですね。お客様が使いこなせない新技術をパーシャルに支援したり、ゼネコンや組織設計事務所の難度の高いプロジェクトも、コンピュータの力を借りてスムーズに進められるよう支援します。今年竣工予定の台北南山広場プロジェクトでは、高さ 272m の超高層オフィスビルの形状検討で3次元モデルを作り、風のシミュレーション等も行って周辺への影響を調べるなどしました。また 2013 年の「MILANO SALONE」では日本企業の展示デザインに協力。著名建築家のスケッチを元に3次元空間を作りました。複雑にうねった 3次元形状のデザインで風のシミュレーションも行い、構造的にも成立させるためモデリングとレンダリングを支援したのです。

――建築家のスケッチから 3D モデルを起こすのですか

重村氏:多くの場合、建築家の方からいただくのは 3D スケッチではなく、手描きの簡単な 2D スケッチ。そこから 3D を起すわけですが、こういうやり方はアトリエ事務所との仕事ではけっこう多いのですよ。初期段階では、建築家の方も自分の考えが現実に成立するかどうか確証がないケースもしばしばあります。そこで、そのアイデアを私たちが 3D モデル化することで、先生ご自身も見えてなかったポイントが見えてきて、結果としてアイデアが広がったりデザインが固まったりしていくわけです。

建築業界を救うBIM

――建築業界でもコンピュータの活用が広まりましたね

重村氏:そうですね。日本でもようやく BIM の活用が本格化しつつある実感があります。実はこうした BIM に代表されるコンピュータの幅広い活用こそが、建築業界の厳しい現状を救うカギなのではないか、と考えています。

――厳しい現状とは?

重村氏:近年、建築業界では若手の優秀な職人が減っています。優秀な若い人が、この建築業界になかなか来てくれなくなったからです。昔なら職人になっていた人たちが、みんな Web デザインなど別の業界に行ってしまい、現場は人手不足に陥って事故やトラブルも増えている状態です。そこで重要になってくるのが、BIM に代表されるコンピュータの活用です。つまり、現場任せにせずに、計画・設計側がBIMやコンピュータの技術を活かして事前に現場をトータルに把握し、管理していくことで、省力化が図れると考えているのです。

――まさにBIMの発想ですね

重村氏: BIM という手法自体、クルマの生産システムを建築分野へ応用した発想に基づくものです。事前に建物を3次元でモデル化して1度きちんと成立させ、ロジカルに建てていくようバーチャルにシミュレーションしておけば、事故やトラブルも抑えられるはず。きっとこの BIM が建築業異界を救ってくれると思っています。私の仕事も最近は BIM 関連のものが急増しており、今度こそ「来てる!」と感じます。建築業界にも 3ds Max のようなツールを本当に活用する時代が到来しつつあるのかもしれませんね。

――「3ds Max を本当に活用する時代」とは?

重村氏:現状、建築業界は 3ds Max を十分使い切れていません。しかし、BIM の普及とともに、ウォークスルーなどさまざまなビジュアライゼーションへのニーズがますます高まり、いっそうリアルな 3 次元空間のクリエーティブが重要な課題となり、否応なく 3ds Max など 3D CG ツールの重要性が増していきます。私自身のことをいえば、いま Autodesk Stingray にすごく興味があります。これはリアルタイムビジュアルやアニメーション、インタラクティブコンテンツ制作のためのデザインエンジン。実は忙しくてなかなか試せていないのですが、お客様とのコミュニケーションツールとしてすごく期待しています。

――コミュニケーションツールとして?

重村氏:ええ、多くのお客様が関わる大型プロジェクトでは、計画の善し悪しと同じくらい関係者間のコミュニケーションが重要になります。お客様を含めた関係者全員がきちんとプロセスを踏んでコミュニケーションを取り、プランの内容を共有できていれば、たとえデザイン的に問題が発見されても誰かが怒って頓挫するなんてことはありません。落ちついて善後策を話し合い、修正するなりしてスムーズに進めていける。それには、リアルな 3D のビジュアライゼーションでプランを共有するプロセスが重要です。Stingray や Revit で作った 3D データを常に見せるようにするのが、良いかもしれませんね。特に Stingray なら、お客様もいっそう「俺たちで創ったプラン」という感覚を共有しやすいでしょう。

――今後のご計画は?

重村氏:いま興味があるのはシミュレーションです。といっても私にとって、3ds Max によるビジュアライゼーションもリアリティを再表現するためのシミュレーションの1つ。まだ建っていないものを建っているかのようにシミュレーションする、ということです。そう考えていくと、たとえば都市計画の分野でもオートデスク製品でもっと遊べそうな気がしますね。最終的にはコンピュータに任せて「自分の想像を超えた建物」が生みだせたらすごく楽しいでしょう。......もっとも、わたし自身そこまで任せられる技術はないので、まだまだ切磋琢磨しなければと思っています(笑)。

校歌の音符を元にデザインした、某大学エントランスホールのパネル

校歌の音符を元にデザインした、某大学エントランスホールのパネル

パネル割のルール

パネル割のルール
横方向 3 つのパネルの高さと幅で 1 音符の表現
A.1 枚目と 2 枚目の高さで音符、3 枚目で音域を表現
B.1 枚目の幅で章の始まりか、通常音符
C.2 枚目と 3 枚目の幅で、音の長さを表現

株式会社アルゴリズムデザインラボ
設立 2012 年 3 月
事業内容 環境デザイン開発、ソフトウェアの販売・開発・教育・普及活動、建築設計・環境シミュレーション、建築 CG 作成等
代表者 代表取締役 重村珠穂
所在地 東京都渋谷区
http://algo.co.jp

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導入製品/ソリューション Autodesk 3ds Max
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