チュートリアル / もしもMotionBuilderでプリビズをしたら
第2回:Vcamというプリビズシステムを紹介します

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前回はプリビズの概要についてお話しました。
今回はMotionBuilderを使った、プリビズシステムについてお話したいと思います。


プリビズのためのシステムとは?

プリビズは「あらかじめ、どういう映像を作るか目に見えるようにしておく」という作業です。では、それを行なうのは誰でしょうか。プロデューサー?監督?カメラマン?それとも制作スタッフの方々でしょうか?実は決まりはありません。要は、だれがその作品のクオリティを決めるのかということなのです。作品のクオリティを決めるキーパーソンが、プリビズを行なわなければなりません。

CGソフトウェアを使ってスタジオセットやロケ現場を想定して仮想空間をつくり、その中の仮想カメラを移動させながらアングルをつくっていくというのが一般的なプリビズの手法です。しかしながら、プリビズを行なうキーパーソンはCGアーティストではありません。中にはCGソフトを扱える方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方は非常に稀でしょう。

本来、プリビズの道具というものは、CGソフトでありながら、CGアーティストではないキーパーソンが扱えるものでなければならないのです。そのような矛盾したシステムを実現したのが、米国InterSense社のVcam Systemです。

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CGアーティストではない方に、マウスやキーボードを駆使してCGソフトを自由自在に扱えと言っても無理な話です。ではどうすればいいかというと、いつも扱い慣れているモノをインターフェースとして持たせてあげればよいわけですね。つまり「カメラ」です。実際に、撮影現場でカメラを扱っている感覚で、CG上の仮想カメラが扱えればよいのです。Vcamはその名のとおりのVirtual Cameraであり、カメラ型インターフェースを実際に移動させることで、CG上の仮想カメラを制御できるようにした、まさにプリビズのためのシステムなのです。


Vcamについて

Vcamは超音波センサーを利用したシステムです。写真奥にある3本の横棒(Soni-Frame)にそれぞれ3つの超音波発信機が組み込まれており、一方でカメラのレンズフード部分の四隅に4つの超音波受信機が組み込まれています。受信される超音波の位相差を計算することで、Soni-Frameに対するカメラの位置と回転角を算出します。

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Vcamは元々バーチャルシステムとして開発されたものでした。今から十数年前、各テレビ局に天気予報などで背景にCGをリアルタイムで合成するバーチャルシステムが導入され始めたわけですが、その時に開発されたバーチャルシステムの一つでした。しかし、エンコーダなどの機械センサーを使用したものに比べると精度が良くなかったため、ほとんど採用されることがなく、世の中から消えて行ったのです。

それに目をつけたのが、米国ハリウッドのプリビズアーティストたちでした。彼らはこのシステムを改良し、より使いやすいシステムを作りあげたのです。Vcamがなぜプリビズに適しているのか、おわかり頂けるでしょう。


MotionBuilderをベースとして

おいおい、MotionBuilderの話が全然出てこないじゃないかとお怒りの言葉が聞こえてきそうです。VcamはMotionBuilderをベースとしています。なぜ、MotionBuilderかといえば、デバイスを接続させることが他のソフトに比べ容易にできるからです。

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プリビズはカメラを動かせば良いのではありません。必要に応じて、動かさなければならないモノが出てきます。例えば、空中戦のプリビズをつくるのであれば、戦闘機を動かすためのインターフェースが必要となります。超音波受信機を追加し、それに戦闘機を割り当てても良いでしょうし、ゲームコントローラーをつなげてゲーム感覚で扱ってもよいでしょう。また、俳優を動かしたり、CGモンスターを動かしたりしなければならない時もあるでしょう。そういう場合に、MotionBuilderであれば、様々なデバイスをつなげることができるのです。

プリビズはCGのテクニックがあればできるというものではないのです。プリビズを行なうべきキーパーソンが自由に扱え、イメージを具現化し、「あらかじめ、どういう映像を作るか目に見えるようにしておく」ことができるようにすること。それがプリビズを担当するアーティストがすべきことであり、その作業に最も適したCGソフトウェアがMotionBuilderなのです。

今回は、MotionBuilderを使ったプリビズシステムのお話をしました。
次回の「もしビズ」は、ハリウッドでどのようにプリビズが発展してきたか、そのルーツをお話したいと思います。次回をお楽しみに。
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