株式会社カプコン
ストリートファイターIV

「3D で動く、最高級の絵」を実現した株式会社カプコンの挑戦

生誕20周年という大きな節目をむかえた株式会社カプコンの人気タイトルが対戦型格闘ゲームのパイオニアといえる「ストリートファイター」シリーズだ。「ストリートファイター」シリーズは、これまで多様なプラットフォームに向けてリリースされてきており、シリーズ累計がアーケード筐体50万台、家庭用ゲームソフトでは2,700万本を超える世界的な大ヒットタイトルだ。この生誕20周年の記念プロジェクトの一環として、最新作「ストリートファイターIV」の開発は進められたのである。前作「III」からも約10年の歳月を経た、まさしく全世界のファン待望のタイトルであった「ストリートファイターIV」は、2008年6月のアーケード版稼動に続いて、2009年2月、「プレイステーション 3」、「Xbox 360」の両プラットフォームに向けリリースが行われた。

「ストリートファイターIV」は、従来からの対戦型格闘ゲームならではのゲーム性や馴染みのキャラクタ達はそのままに、格闘ゲームファンから過去のシリーズ経験者まで幅広い層が楽しくプレイできる充実した内容となっている。 株式会社カプコン(以下、カプコン)から発売された「ストリートファイターIV」プロジェクトに全面的な製作協力を行ったのが株式会社ディンプス(以下、ディンプス)である。そこで、開発担当の皆様に今回のプロジェクトでオートデスク製品をどのように活用されたかをお聞きするためインタビューの機会を設けて頂いた。

2D アートデザインの 3D 化プロセス

プロジェクトは、カプコンのアートディレクタであるイケノ氏による 2D アートデザインを開発現場の 3D デザイナが 3D データ化していくところから始まった。その際に、クライアントであるカプコンから伝えられたキーワードは、「3D で動く、最高級の絵」であった。これは、古き良き 2D ドット画時代の動きや雰囲気を再現しながらも、グラフィック的には次世代感を持った今までにない表現を実現するという非常に困難な課題であったという。こういった課題をクリアしたうえで、世界中のユーザ各自が持っている自分の中でのストリートファイターはこうあるべきという理想を超えるグラフィックが完成するまでは苦労の連続であったそうだ。

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コンセプトデザインが見事に
3D 化されているのが分かる

まずは、カプコンのイケノ氏が描いたコンセプトデザインが開発現場のもとへと届けられた。コンセプトデザインのフォーマットは、スケッチブックのラフ画をスキャンしたデータやデジタルデータとして描きこまれたものなど様々であったそうだ。これらを元に 3D デザイナによって約1か月間でモデリング、リグセットアップ、シェーディングの一連の作業が行われた。そして、何パターンかの 3D イメージを作成して、カプコン側へとタッチの提案が行われたのだ。初回のタッチ提案に対するカプコンからのフィードバックでは、グラフィックに格闘ゲームキャラとして強さの表現を求められたそうだ。そこで、カプコンとの密な打ち合わせや、開発現場内で様々な検討が行われ、筋肉の表現、手足のディフォルメ、ドット画的な要素を突き詰めていく方向で研究は進んでいった。こうした確認プロセスを重ねることで最終的にこれまでにないグラフィックへと進化をとげていったのだ。

【Softimage インタビュー】

ここからは、実際に各工程で行われた作業について開発現場の亀井氏に詳しいご説明を頂いた。「ストリートファイター IV」のプロジェクトでは、キャラクタモデリング、キャラクタアニメーションなどキャラクタに関係した作業は Softimage をメインツールとして開発が行われている。

まず、最初の工程ともいえるキャラクタモデリングの作業では、Softimage のモデリング機能であるコンポーネント調整モードやプロポーショナルモデリングが力を発揮したそうだ。これらの機能のおかげで、直観的に粘土をこねるような感覚でキャラクタの形状を作り上げることが出来たという。最終的には総数 25 体を超えるキャラクタに対して 2 パターンの衣装を含むモデリングデータが用意された。なお、ゲームのプレイヤブル(操作できる)モデルデータと演出映像で登場するモデルデータは両方とも同一解像度の約 16,000 ポリゴンのモデルデータが使用されている。

一体のキャラクタには顔やボディなどにカラーマップ(512 ピクセル) 4 枚、ノーマルマップ(1024 ピクセル) 4 枚のテクスチャデータが使用されている。最終的な実機データではテクスチャのアルファ情報にスペキュラの値を持たせることや、モデルの頂点カラーとしてアンビエントオクリュージョンの値を焼き込むなどの効率的なデータ容量に対する工夫ももちろん行われている。

グラフィックの質感を作り上げる際には、いきなり実機でのリアルタイムシェーダを作成するのではなく、まずコンセプトデザインを決定するためにSoftimage上でシェーダのプロトタイプ作成が行われた。シェーダ開発のプロトタイプ作成作業は、Softimage のレンダーツリーとFxTreeを駆使して進められた。Softimage 内部の 2D 合成機能である FxTree は、背景との合成はもちろん、シェーダ要素ごとの素材合成に役立ったそうだ。

キャラクタの質感を作り上げるために用意された素材は、基本カラー、外周部、照り返し、ディフューズ、リムライト、セルフシャドー、スペキュラ、アンビエント情報 (実際は頂点カラーに焼きこみ) である。これらの要素は Softimage でレンダーパス素材として切り分けられたうえで、FxTree 内に読み込まれている。このためパラメータの調整を行った際の合成結果の更新も内部データとしてスムーズな連携のもとに確認が行えたアドバンテージがあったのだ。

こうして満足のいく質感のシェーダがデザイナの手によってレンダーツリーで組み上げられた後に、同様の質感を実機上に再現するためにプログラマがリアルタイムシェーダを作成していくのだ。GUI でシェーダが組めるレンダーツリーを介してデザイナとプログラマが意識を共有することで、ともすれば抽象的になりがちなグラフィック処理の指示をお互いに的確にコミュニケーションが出来たという。

プログラマによって再現されたリアルタイムシェーダは、おもに次のように構成されている。まず、絵のタッチ自体を再現するシェーダがベースとなっており、キャラクタの外周部のコントラストアップが図られている。さらに、影色に対する調整 (紫色がかった陰影)、輪郭線の要素、そのうえで筆タッチの表現が加えられている。この筆タッチの表現はこだわって作りこみ、とても苦労した表現であったそうだ。こうして完成したリアルタイムシェーダは、「Xbox 360」や、「プレイステーション 3」といったプラットフォームにあわせたシェーダコードの書き換えによるチューニングも行われているため、どのプラットフォームでも同様のグラフィックが再現されているのだ。

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