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第100回:3DCG用語の不思議(モデル編その2)

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第100回:3DCG用語の不思議(モデル編その2)

英語圏で発明された言葉を日本に輸入するとき、適切な日本語に当てはめる、または新しい言葉を作ることがあります。
その手間をサボっているのか、明確な翻訳の責任者がいないからか、最近のビジネス用語は英語そのままのことが多いです。

「コンセンサス」とか聞くことありますか?これは日本語で「合意」という訳があるのに、ビジネスではカタカナで使われることが多いですね。
ちなみに、英語圏で生活している同僚からは「コンセンサス」という言葉を一度も聞いたこと無いですけど…。

CGの世界でも同じような状況というか、進化のスピードが速くて、学術的に意図して翻訳されることよりも、そのまま言葉が定着することが多いようです。もっともこれについては、無理に日本語化するよりも英語のままのほうが、情報を集めやすいなど利点が大きかったりもします。
CGの場合は数学や幾何学が絡むので、そっちの分野で既に翻訳されている言葉もありますし、結構ごちゃごちゃです。

ましてや業界標準の言葉というよりは、ソフトウェアごとに用語が決まっているので、更に混迷を極めます。
例えば「頂点」「Vertex」と書いても「バーテックス」とは書きません。この差は何なのか?

というわけで今回は用語の不思議モデル編のその2、コンポーネントに関わる不思議を見ていきましょう!
3DCG一年目のみなさんも、これが分かれば仕事で役立つこと間違いなし!?

頂点はVertex

メッシュのこの部分の呼び方です。

Vertex

「バーテックス」と書くと、どうも慣れないですね…。
Mayaのヘルプドキュメントではほぼ「バーテックス」という文字は登場しません。書くときは「Vertex」か「頂点ちょうてん」か「頂点バーテックス」です!

そう、これが3DCG用語の不思議です。
例えば上の画像の部分を見ながら「ここは頂点」ということも「ここはVertex」と言うこともあります。
でもカタカナ英語で書かないので、「ここはVertex」と喋っても「ここはバーテックス」と書きません。「ここは頂点バーテックス」という解釈で書きます。

あー、名探偵コナンの映画のサブタイトルのルールと同じですね。(「魚影」と書いて「サブマリン」と読む、的な)

日本語英語どちらに統一すべきという一貫性がないので、話しながらも「頂点を選択してから、隣のVertexにスナップさせて…」とか平気で言います。
使っているMayaのUIが日本語か英語かでも、どちらで呼びがちか変わりますね。英語UIを使っていると、メニューにVertexと出てくるわけで、自然と呼び方が混ざっていきます。

改めて用語としてまとめると、よくあるのは、
「頂点」と書いて「ちょうてん」または「バーテックス」と読むか、
「Vertex」と書いてバーテックスと読む、のどちらかです。

ただし頂点は「ポイント(Point)」や「点」とはあまり呼びません。
ポリゴンの点はたしかに見た目も点なのですが、呼び名は「頂点Vertex」です。

メッシュデータの細かい話になってしまうので今回は触れませんが、ポリゴンの点は内部的に実際に存在します。ただ、見えているポリゴンの点は「頂点」と呼びます。

パーティクルで出てくる点は「点」です。または「ポイント」

パーティクルで出てくる点は「点」です。または「ポイント」

NURBSカーブの制御点は「CV」(シーブイ)と呼びます。
CVは「Control Vertex」の略ですが、「コントロールバーテックス」とか「コントロール頂点」と書くことはほぼ無いです。CVですね。

NURBSカーブの制御点は「CV」(シーブイ)と呼びます。

「CV」といえばNURBSカーブの制御点、「頂点(Vertex)」と呼べばメッシュのことになります。
「点」は実際のところ、仕事上は、その時の話の流れによっては「CV」であったり「頂点」であったり、パーティクルの「点」であったりします…。

エッジの呼び方

エッジ

算数で図形が出てきたとき、三角形の線の部分は「辺」と呼びましたよね。
でもMayaでは辺と呼ばずに「エッジ(Edge)」と呼びます。

これまた、用語の不思議が発覚します…。

なぜかエッジの場合、日本語に当たる「辺」があるのに、「辺」と書くことも呼ぶこともないです。
そのため、日本語で書くときは「エッジ」です。(頂点のときは逆で、Edgeはエッジというカタカナ英語で書いてOK。)

でも本数として数えるときだけは「1エッジ」「2エッジ」とは言わず「1辺」「2辺」と数えるような…。または「1本」「2本」。
3DCG上ではエッジなのに、スクリプトやプラグインの処理は数学っぽいので、「辺を求める」なんてコメントが書かれている場合もあるような。

エッジの両側にフェースがあるときは「エッジ」ですが、片側にしかフェースがないときは特別に「境界エッジ」とも呼ばれます。メッシュの切れ目、境界にあるエッジだからです。

エッジと境界エッジ

英語では「Border Edge」で「ボーダーエッジ」と呼びます。でも「ボーダーエッジ」とカタカナ書きはしないです。
何故か日英まぜこぜで「境界エッジ」とも呼びます。でも「境界辺」「ボーダー辺」とは呼びません。基準はもうよくわかりませんけれど。

フェースの呼び方

フェース

更に謎を深めるものとして「フェース」があります。
フェースは日本語で書けば「面」です。
エッジと違って、ドキュメント内でも日本語の「面」と呼ばれます。
頂点と違って「フェース」と読み書きします。一番自由度が高いです。

ところが前回のコラムでも紹介した通り、自由すぎて「ポリゴン(Polygon)」とも呼ばれます。(メッシュの場合)
「ポリゴン」と呼びますが、その日本語に当たる「多角形」とは呼びません。

しかも「ポリゴンフェース」「ポリゴン面」という言い方もあります。(いいかげんにしてくれと、空に向かって叫ぶことも可)
二重に同じ事を言っているように聞こえますが、「多角形の面」ということですので、用語として成り立っていて、実際に使うこともあります。

「フェース」「面」ではNURBSのことを指している可能性もあるので、「ポリゴンフェース」といえばメッシュのことであるとわかるのです。

フェース頂点

フェース頂点

頂点は一つに見えますが、より細かい単位としてフェースごとに頂点があります。
上図のように一つの頂点に3つのフェースがある場合、各フェースに属した頂点の集まりであるため、実はフェース頂点が3つ存在します。

このフェース頂点は割りとよく使用されます。例えばフェースに頂点カラーをつけると、それは「フェースに色を付ける」わけではありません。「フェースに属している頂点に色を付ける」ことになります。

フェースに属している頂点に色を付ける

法線を編集するときも同じで、ソフトエッジはフェース頂点が同じ方線の値になっている状態です。ハードエッジは各フェース頂点がバラバラの法線値になっている状態です。

フェース頂点

この、フェースに属した頂点のことを「フェース頂点」と呼びます。または「頂点フェース」と呼びます。
ここに来て、日英まぜこぜ&前後入れ替えという、新しい技が登場です!謎にバリエーションが豊富!!

でも「バーテックスフェース」というカタカナ書きはしません。「Vertex Face」「Face Vertex」と書きます。

UV

UV

紫外線ではありません。かと言って割当たる日本語もなく「ユーブイ」とカタカナで書いているのを見たこともありません。
そう、UVに関してはカタカナ表記すら許されず「UV」と書きます。

UVはフェース頂点のように、フェースごとにUVを持てます。でも「フェースUV」とは言いません。なので、ちょっと区別しにくいときもあります…。
UVは常に「UV」と書き、読む。

ただ、繋がったUVの塊を「UVシェル」と言います。

UVシェル

でも「UV殻」とは言いません。シェルは日本語書きをせず、「シェル」のままです。

法線

法線

「法線」は英語で「Normal」といいます。英語の授業で習うNormalは「正常」という意味でしたので、始めは慣れないかもしれません。
口語ではノーマルと呼びますが、カタカナで「ノーマル」と書くことはほぼ無いです。

「法線マップ」というテクスチャは、この法線をテクスチャ化したものです。
これに関しては「ノーマルマップ」と書くこともあるような…。

法線という言葉については、英語より日本語のほうが便利に書けます。
というのも、英語だとややこしくて「NormalなNormal」なんて書かれていると、ちょっとややこしいです。
幸い日本語は使い分けができるので「正常な法線」と書けます。

ノーマルという用語をややこしくさせるものとして「ノーマライズ」があります。これもカタカナ書きはせず「Normalize」または「正規化」と書くのが普通ですかね。
法線には長さがあるので、それを整えるための処理を正規化といいます。

「NormalをNormalizeする」というのは「法線を正規化する」という意味になります。
日英組み合わせとして「Normalを正規化する」「法線をNormalizeする」という合作も出てくるので、ご注意ください。

「アブノーマルなノーマルはノーマライズして、ノーマルな見た目にしておいて」と言う先輩がいたら、それは「異常な法線は正規化して、正常な見た目にする」ということです。
メニューの「メッシュ表示 > 法線」のあたりで直しておきましょう!

まとめ

用語のまとめは面白い(?)だけでなくて、意外と仕事に関わる重要なところです。
英語圏であれば「フェース頂点」を検索するとき「Vertex Face」と書けば、自動的に「Face Vertex」も加味してくれるため、ヒット率が高いです。

ところが日本圏では「Vertex Face」で引っかからないかもしれません。でも検索するときに、「バーテックスフェース」と書いても情報が引っかかりません。一般的にどのように書かれるかを知っておくことが大切です。

なんとなく、今回登場した用語をまとめるとこんな感じです。Mayaをベースとした場合です。

元英語 日本語書き カタカナ書き 日英まぜこぜ その他
Vertex 頂点 バーテックス
Edge エッジ
Border Edge 境界辺 ボーダーエッジ 境界エッジ
Face フェース ポリゴンフェース・ポリゴン面
Polygon 多角形 ポリゴン
Face Vertex
(Vertex Face)
面頂点(頂点面) フェースバーテックス
(バーテックスフェース)
フェース頂点
(頂点フェース)
UV (該当なし) ユーブイ
Vertex Color 頂点色 バーテックスカラー 頂点カラー
Normal 法線 ノーマル
Normal Map 法線図? ノーマルマップ 法線マップ
Normalize 正規化 ノーマライズ

他の用語も同様で、対応する日本語があったりなかったり、あっても日常的には使われなかったりとマチマチですので、そういうものとして付き合っていくことになります。少なくとも英語は書き言葉と読み言葉にブレがないので、確実に抑えておきたいところです。

あと「シェーダー」のように、英語のカタカナ表記では最後の言葉に伸ばし棒をつけるかどうかという問題もあります。「テクスチャー」もそうですね。
MayaがAlias社の頃は「シェーダー」でしたが、Autodesk社に買収されたあとは「シェーダ」という用語に統一されています。なので世間一般的にはどちらもありです。
検索するときは、完全一致に失敗する可能性も考えて、基本的には短い文字、つまり「シェーダ」や「テクスチャ」から検索し始めるといいかもしれません。

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