チュートリアル / 読んで触ってよくわかる!Mayaを使いこなす為のAtoZ
第1回:nCloth+Mudbox でラクラク布製作(1/3)
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Mayaのコラムを担当させていただくことになりました。実際の作業スピードの向上にはマーキングメ ニューやホットキーの使い方を、効率化にはノードのコネクションやcgfxの話などが良いのですが、 初回は華のあるものの方が良いかなあと思いましたのでnClothを取り上げたいと思います。とは言え、 実務にすぐ役に立つ方が良いと思いますので、実際はちょっと地味...な話になってしまうのですが、 納得しながら使い方を知っていただけることでしょう。
Maya2010からComplete、Unlimitedの区別がなくなり、単一のMayaで全ての機能を使用できるように なりました。ゲーム開発で見逃してはいけないお得な機能がこのnClothです。nClothでは高品質なクロスシミュレーションをリアルタイムに行うことが出来ます。
ゲーム製作ではよく服など布モデルが出てきます。それに伴い法線マップが必要になります。なので 製作にnClothを上手く使えば当然作業効率が上がるのですが、「クロスシミュレーションというと何か難しそう...」と思われるかもしれません。使用するのにちょっとしたコツがあります。簡単なシミュレーションならあっという間に使えるのですが、複雑なことをしだすと上手くいかなくなり、専門知識が必要となってきます。この加減を見極めることが大切です。
大まかなしわはシミュレーションして細かいところはMudboxで行う、というのがもっともバランス の良いやり方だと思います。早速作成を始めても良いのですが、理論的なところを知っておくと作業 がより速く上手く行きます。ので、しばし地味な話にお付き合いください。
というわけで布の陰影について改めて考えて見ましょう。 これは実際の布の写真です。
右側から光が当たっていますので右側が明るく、左側が暗くなっています。次に強めにぼかした写真 を見てみましょう。
先ほどより陰影がシンプルになり、明暗の傾向がわかりやすくなりました。暗い部分にも明るいとこ ろがあり、なんとなく横方向に明暗の波を感じませんか?具体的に図に描き込むとこんな感じで陰影 (と布の凸凹)の波があります。
この、緩やかな陰影の波を低周波、低周波成分といいます。こう聞くとデザイナーとしてはなんとな く難しそうな印象を受けるのですが、何かとCGでは役に立ちますのでぜひ覚えておくと良いです。
では、改めて元の写真を見て見ましょう。左側の暗い部分の中に、先ほどのぼかした写真以上にディ テールがあることがわかります。「ディテール」を別の言い方に変えると、明暗の波が多くある、と いう感じですね。画像に波を線で描くとこんな感じになります。
これを高周波、高周波成分といいます。
低周波と高周波をあわせると、下のようなグラフになります。
適当に描いているので正確ではありませんが、これが布の陰影の実態です。実は布といわず世の中あ らゆるものに、大きな陰影の流れ(低周波)と、その中に細かい陰影の違い(高周波)があります。 高周波は低周波ほど強くなく、低周波の中にディテールとして存在しています。例えば海の波を思い 浮かべてください。大きな波の表面に、細かい波があります。細かい波は大きな波ほど目立たず、ディ テールとして存在します。
さらに重要なのは、この低周波の陰影のクオリティがリアリティに直結します。大まかな陰影が間違っ ていると、いくら細かいところを調整してもリアルにはなりません。
もちろん例外もありますが、大体そう捕らえておけば間違いありません。
話を3DCGに戻しますと、nClothでは低周波(大まかな陰影)をシミュレーションさせます。そうすることで大まかにリアリティのあるモデルを作ることが出来ます。また、そのぐらいのポリゴン数のシミュレーションならすぐに扱えるようになります。
ディテールはそのnClothのシミュレーション結果に、Mudboxで追加していきます。こうすることでもっ とも効率がよくクオリティの高い作業ができます。
では、次回は実際にnCloth+Mudboxの作業を行ってみましょう。