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スクウェア・エニックスは『ファイナルファンタジーXVI』でMayaとMotionBuilderをいかに使い倒したか| テクノロジーの掛け合わせが新たな表現を生み出す

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ナンバリングシリーズ初のアクションRPGとして2023年6月22日(木)に発売された『ファイナルファンタジーXVI(以下、FF16)』。ストーリーやグラフィックの美しさにアクションゲームとしての要素が加わったシリーズ最新作だ。PlayStation®5でのリリースとなった『FF16』では、従来にも増して美しくリッチな映像表現が求められた。とりわけカットシーンにおいては、ドラマ性の高いシナリオ体験を美しいグラフィックと共に楽しめるよう開発スタッフたちは全力を尽くしたという。カットシーンの制作を担当したアーティストたちは、今回どのような試行錯誤を行なったのだろうか。

インタビューを受けていただいたスクウェア・エニックス社の皆様
株式会社スクウェア・エニックス
岩渕栄太郎氏(リードシネマティックテクニカルアーティスト)
坂本厚史氏(シネマティックテクニカルアーティスト)
鈴木健夫氏(シネマティックマネージャー)
沢田裕貴氏(リードカットシーンモーションアーティスト)
東川聡仁氏(リードリギングアーティスト)

スクウェア・エニックス本社にて左から鈴木氏、坂本氏、岩渕氏
スクウェア・エニックス本社にて左から鈴木氏、坂本氏、岩渕氏

スクウェア・エニックス × Autodesk
テクノロジーを掛け合わせることで進化し続けてきた

「FF16をプレイするために有給をとる社員がいる」。2023年6月中旬、X(旧Twitter)やネット上でこういった投稿が目についた。学生のみならず、社会的立場のある大人までもがこのような発言をしている様子を見て、現代日本におけるエンターテインメントの存在意義を改めて考えさせられた。これらの投稿が本気かネタかはさておき、多くの人々がFF16の発売を心待ちにしていたのは事実であろう。

1987年に第1作となる「ファイナルファンタジー」が誕生し、1997年に発売された『ファイナルファンタジーVII』では舞台を2Dから3Dへと移行したことで一世を風靡。同作は、ゲームのあり方や制作手法に大きな影響を与えたことでも話題となった。そんなファイナルファンタジーシリーズもついに今年で36周年を迎えた。

Final Fantasy 16

同シリーズが今日までファンの心をつかんで離さない理由のひとつとして、「映画さながらのカットシーン」が挙げられる。同作はシリーズが誕生して以来、美しいビジュアルはさることながら、観るものを引き込むストーリーと独特な世界観の構築に徹底的にこだわってきた。見方を変えて言ってしまえば「自分でプレイできる映画」のようでもある。「ファイナルファンタジーは観てるだけでも満足」という言葉をこれまで何度聞いたことか。2018年にNetflixで公開されたドラマ『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は、作中に選択肢が出てくるドラマとして話題となったが、ファイナルファンタジーを生み出した日本人にとって、『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』はそこまで斬新に感じられなかったかもしれない。なにせ参加型のドラマはすでにファイナルファンタジーで体験済みなので......。話が少し飛躍したが、忙しい現代人をも夢中にさせるには、それなりの理由があるというわけだ。

Final Fantasy 16

さて、このファイナルファンタジーシリーズをテクノロジーで支えているのがAutodeskのソリューションだ。Autodeskが提供するツールや開発環境を用いて、スクウェア・エニックス側も新たな拡張機能を開発しグラフィック表現やゲーム体験を底上げしようとする。現在はMayaやMotionBuilder、ShotGridをメインツールとしてファイナルファンタジーシリーズの開発が進められている。3DCG×ゲーム表現の進化と歴史を学びたければ、ファイナルファンタジーシリーズをひととおりプレイすればとりあえずは事足りるであろう。

今回、PlayStation 5(以下、PS5)でのリリースとなった『FF16』では、従来にも増して美しくリッチな映像表現が求められた。映画さながらの美しいカットシーンとストーリー&ドラマでファンを魅了するファイナルファンタジーシリーズの最新作。本作で開発チームはどのような挑戦をしたのだろうか。

リギングチーム × アニメーションチーム
プレイヤーを引き込む繊細な表情芝居を追求する

PS5でのリリースとなったFF16。カットシーンを制作するうえで彼らが心血を注いだのは「ストーリー」「芝居」「表情」といったドラマの部分である。なかでも人間さながらの生々しく繊細な表情筋の動きを再現するため、リギングチームは開発初期の段階からアニメーションチームに綿密な聞き取りを行なった。リードカットシーンモーションアーティストを努める沢田裕貴氏は「モーションキャプチャーの技術も重要ですが、やはりリグが良くなければ良い表情を作り出すことができません。ちょっとした瞳や瞼の動きまで人間らしい生々しい表現を再現できるよう、リギングチームの総合的な協力を受けて表情芝居を突き詰めていきました」と語る。

リードカットシーン モーションアーティスト 沢田 裕貴 氏
リードカットシーン モーションアーティスト 沢田 裕貴 氏

アニメーターが求める表情芝居をいかに叶えるか。リギングチームはアニメーターのサポートに徹するため、あらゆる角度から彼らの希望と意見の聞き取りを行い、相談しながら進めていったという。その甲斐あって、開発初期の段階ですでに希望を叶える手段と手ごたえが感じられていたと、リードリギングアーティストの東川聡仁氏は話している。

Maya上でキャラクターの顔の表情をコントロールするツールをFACSベースにて開発
Maya上でキャラクターの顔の表情をコントロールするツールをFACSベースにて開発

FACSベースで表情筋の動きを反映させていきました。細かい筋肉の動きや表情のニュアンスは、ただ単にFACSのまま使ってしまうと "リニアな動き" になってしまうので、いかにナチュラルな動きになるようになじませるか。リニアな印象を与えないよう工夫を凝らしてリグに組み込んでいきました」(東川氏)。

リードリギングアーティスト 東川 聡仁 氏
リードリギングアーティスト 東川 聡仁 氏

FACSをベースにしたのは、昨今ではFACSベースのフェイシャルリグが主流になっており、アニメーターたちが日ごろから使い慣れているFACSをベースにしてリグを組むことで、違和感なく作業に打ち込むことができるだろうという東川氏の配慮である。とは言え、中にはFACSにはないポーズも多少は登録されているとのこと。いずれにしてもアニメーターの使い勝手を最優先し、必要なものを取捨選択しながらフェイシャルリグを付けていったという。リギングアーティストは常にアニメーターの使い勝手と表現を意識し、彼らの作業を下支えする存在である。事細かにアニメーターの希望を聞き取り、技術力と想像力を駆使して彼らが目指す表現をいかにストレスフリーに実現できるかに全力を注いでいる。

リニアな印象を受けないFACSリグ

東川氏が言う「リニアな印象」というのは、「AのかたちからBのかたちへ直線的に動くがゆえに不自然な印象を与えること」である。FACSに登録したポーズ間の動きがより繊細かつリアルな動きとなるようにポーズ間の動きを補完することで、リニアな印象を解消する必要があった。簡単に手法を説明すると、まずはポーズ登録ツールにFACSベースでポーズを登録。ボーンを仕込み、それぞれのポーズに遷移する過程の繊細な動きは、ドリブンキーのアニメーションカーブを調整してリニアな印象を解消。また、「レイヤードテクスチャノード」でレイヤーを重ねるようにポーズ間をブレンドし、ポーズAとポーズBが同時に行なわれても目指した動きがきれいになじむようフェイシャルリグ内で設定できるようにした。これにより、ポーズ同士が干渉することなく、繊細な筋肉の動きを思いのままに表現することができるようになった。

表情芝居のほかに我々の目を楽しませてくれるのが、やわらかさと揺れ感のある衣装の表現である。本作では重ねこんだ衣服が多く登場するのだが、いわゆる「揺れもの」と呼ばれる表現は、同社謹製の物理エンジン「Bonamik(※1)」と補助骨システム「KineDriver(※2)」を使用して表現している。「Bonamik」は同社が誇る優秀な物理エンジンだが、二重に重ねられたスカートのような複雑な揺れや干渉、とりわけオイラー角を用いた回転アニメーションを要する表現はBonamikを以てしても難しかったという。「Maya上で揺れものや補助骨の根本にドリブンキーを設定し、「KineDriver」を使って実機に反映させています。この工程によってようやくきれいな揺れ感が実現しました。Maya上でポリゴン同士がめり込みやすい箇所の修正を試行錯誤した後に実機に反映していけるというフローだったのですが、これが非常に効率的でした」(東川氏)。

カットシーンでのBonamik

※1Bonamik:同社のテクノロジー推進部により開発された、骨ベースでシミュレーションをするソルバー。 直列や並列の骨等に対しコネクションをつなぎ、布等のようなシミュレーションをさせることが可能
※2KineDriver:同社のテクノロジー推進部により開発された、補助骨による形状補正システム

リグに関してもう少し補足しよう。本作で用いられるキャラクターのリグは「プライマリリグ」と「セカンダリリグ」の2種類のリグが用意されている。基本となる身体の動きを付けるときは「プライマリリグ」を使い、より繊細な演出が求められる衣類や髪の毛といった揺れもの等の動きは「セカンダリリグ」を使うといった具合だそうだ。実機で検証した際に動きが物足りなかったり、めり込みが発生してしまっていたりした際は、セカンダリリグで微調整をするという流れになっているとのことだ(実機で揺れ具合を検証したアニメーションの結果をFBXで出力して流し込めば、セカンダリリグにリターゲットできるようにセッティングされている)。

プライマリリグ(左)とセカンダリリグ(右)
風でたなびく衣類の表現。物理エンジンである程度は揺れるものの、ふわふわひらひらとした絶妙な布の揺れ感がいまいち足りない...。そこでWaveDeformarを用いてシミュレーションとは別にベイクし直してから、再び実機で確認するという手法で対応した

「Bonamik」にしろ「KineDriver」にしろ、MayaをはじめとするAutodesk製品の可能性を数倍、いや数十倍にまで引き出す同社のテクノロジー推進部が現場スタッフから絶大な信頼を集めていることを言葉の端々から感じ取った。リードシネマティックテクニカルアーティストの岩渕栄太郎氏は、高い拡張性を誇るMayaは他のDCCツールとは一線を画していると話す。「デフォルトの機能だけではどうしても物足りなかったり、ユーザエラーによる制限が発生したりしますからね。データのミスを事前に解消するために作業データのチェッカーを付けるといったこともMaya上で行なっています。このように弊社で開発した機能をMayaに追加することで、アーティストの皆さんに快適で効率的な環境を提供することができるので、大変重宝しています」(岩渕氏)。

リードシネマティック テクニカルアーティスト 岩渕栄太郎氏
リードシネマティック テクニカルアーティスト 岩渕栄太郎氏

ファイナルファンタジーシリーズのような大規模開発の現場では、Mayaをプラットフォームの中心に開発が進められるケースが多い。「とにかくMayaは強い」「Mayaを通せばなんとかなる」。これまで筆者が行なった数々の取材で幾度となく聞いてきた言葉である。長年にわたって引き継がれるアセットを改良しながら制作が行なわれるということもよくあることで、自社内で機能拡張しやすいがゆえに、もはや手放せないツールとなっているのだ。

Maya × MotionBuilder
プロジェクトごとに快適で効率的なパイプラインをつくる

同じAutodesk製品とはいえ、MayaとMotionBuilderの連携や使い分けについては事前に計画しておかなければならない。本プロジェクトにおいても、Mayaに使い勝手の良さを感じるアーティストがいれば、MotionBuilderに使い勝手の良さを感じるアーティストもおり、その好みははっきりと分かれていたという。今回は、MotionBuilderで制作したデータは「Send To Maya」を用いて必ずMayaを通してゲームエンジンに反映させるというフローを主軸に据えてパイプラインを構築したそうだ。

MB to Maya のワークフローの大枠
Send to Maya

また、MotionBuilderと比較するとSDKが充実しているMayaでしか開発できない作業等もある。岩渕氏は「目新しい手法ではないのですが......」と前置きをしたうえで、「チェッカー(チェックツール)」を通して発生した修正をMayaで行い、ゲームエンジンに出力するという工程をパイプラインに組み込んだと話してくれた。

シネマティック テクニカルアーティスト 坂本 厚史 氏
シネマティック テクニカルアーティスト 坂本 厚史 氏

岩渕氏とシネマティックテクニカルアーティストの坂本厚史氏がMayaに実装したチェッカーは、作業が完了した作業データのミスや抜け漏れがないかを自動でチェックするツールだ。このチェックを行なった上で後工程に回すことで、ゲームエンジン上で発生するバグを回避する仕組みである。カットシーン用のチェッカーは、フレームレートの数値や命名規則をはじめ、キャラクターの位置や動きを付ける際に誤ったキーを入れているといったヒューマンエラーを一括してチェックしてくれる。「人の目で確認できることではあるのですが、本作のような大規模タイトルとなると登場するキャラクターの数は非常に多く、一元管理して正確にエラーを見つけ出すこういったフローは地味ですが必須かもしれません」(坂本氏)。

赤枠がチェックすべき内容のリスト/右側にデバッグの内容が返ってくる
赤枠がチェックすべき内容のリスト/右側にデバッグの内容が返ってくる

話題がMotionBuilderの流れに入ったので、本作におけるMotionBuilderの使い方についても聞いてみた。岩渕氏によると、アーティストからの強い要望を受けて、試行錯誤の結果MotionBuilderの使用を決定したという。「アーティストの皆さんからは、MotionBuilderを使うことに対する根強い要望がありました。レイアウトを行なう際、特にショットのつながりを意識しながらカメラの位置を構成するのですが、再生の速さと横のつながりが求められるのです。MotionBuilderが彼らに好まれる理由は、何と言っても再生速度の速さなんですよね」(岩渕氏)。

MotionBuilderにてキャラクター複数体が読み込まれたカットシーンの一場面
MotionBuilderにてキャラクター複数体が読み込まれたカットシーンの一場面
実機に出力されたカットシーン
実機に出力されたカットシーン

■カットシーン制作におけるアニメーションを付けるまでのフロー

アニマティクス

モーションキャプチャ

レイアウト

カットモーション

「アニマティクス」の段階では極めて簡単な3Dモデルを使ってざっくりとした動きをMotionBuilderやMayaで付けていき、モーションキャプチャーの撮影をする際のたたき台を作っていく。「キャラクターやアセットが完成していない時期は絵コンテのみでモーションキャプチャーにのぞんでいましたが、キャラクターやアセットが完成してきた時期からは収録前にできるだけアニマティクスを制作していました。」(鈴木健夫氏/シネマティックマネージャー)。シーンに次々とオブジェクトを置いていき、大まかにカメラのアングルを決めていくといった作業になるのだが、処理速度の速さを誇るMotionBuilderはサクサクとストレスなく動いてくれるのだ。

シネマティックマネージャー 鈴木 健夫 氏
シネマティックマネージャー 鈴木 健夫 氏

またモーションキャプチャー撮影の現場では、MotionBuilderにレイアウトした背景にアクターの動きをリアルタイムで入れ込んで確認作業が行なわれる。カメラ位置やカット構成は撮影前にコンテやアニマティクスで決めておき、撮影現場で実際にアクターに演じてもらった際に発生する細かい演出やアクターのこだわり、演技と演技のつながりなどをその場で確認・調整することができる。リアルタイムでの確認は、より正確でクオリティの高い動きを実現するとともに、再撮影のリスクを回避することができるため予算管理の面でも外せない工程となるだろう。

その他、ボイスのタイミングを合わせる際もMotionBuilderが使われている。従来であればMotionBuilderでボイスを配置→監督チェック用にPremiere Proに起こす際にもボイスを再度配置→ゲームエンジンに移す際にも再々度ボイスを配置......と、なにかと手間がかかる。この「ボイスの配置」をシンプルかつ効率的にするべく坂本氏が開発した「Add Voice」という機能を実装することで、MotionBuilderで配置したボイスの配置データを書き出し、まず、Premiere Pro上でチェック動画の作成のために利用した。さらに、同じ配置データをゲームエンジンに持ち込むことができるようにして、3回行わなければいけない作業を1度だけ行えばいいようにした。

MotionBuilderにてボイス編集作業を行っている様子
MotionBuilderにてボイス編集作業を行っている様子

開発力が上がることで、彼らが重視するストーリーやドラマ表現等のクオリティに力を注ぐことができる。ツールに対する理解と試行錯誤を重ねた末に蓄積された独自技術が、優れたエンターテインメントの根底を支えているのである。

テクノロジー × Autodesk
Autodeskは今後いかにテクノロジーを味方につけるのか

正直、筆者は「ChatGPT」「画像生成AI」「Web 3」「NFT」「ブロックチェーン」といった昨今のバズワードの数々をこの文脈で使いたくない。これらの用語を使った瞬間に、知ったふりした私のドヤ顔が思い浮かぶであろうから。しかし、AIについてはAutodeskが今後実装し得るテクノロジーのひとつとして、読者の皆様におかれましても気になる単語なのではないだろうか。「先端技術としてあらゆるシーンでAIが使われ始めましたよね。実際、レンダラなどの技術も、次々と新しいテクノロジーに置き換わっている状況ではないでしょうか。Autodesk製品もそういった先端技術を積極的に採り入れていただけると嬉しいですね」(岩渕氏)。

我々はイノベーションによって、これまで想像だにしなかった価値と体験を享受してきた。映像の世界において3DCGが広く使われるようになって以来、表現の幅とクオリティが爆発的に広がり、また様々な先端技術との親和性の高さもあいまっていまだ未知数の可能性を秘めていると考えられる。スクウェア・エニックスもまた、Autodeskが提供する3DCGテクノロジーを味方に付け、独自開発した機能を実装し使い倒すことでさらなる映像表現を追求していくことだろう。

TEXT:三村ゆにこ (@UNIKO_LITTLE
EDIT:スクウェア・エニックス、オートデスク

FINAL FANTASY XVI

FINAL FANTASY XVI

対応機種:PlayStation®5
ジャンル:アクションRPG
プレイ人数:1人
CERO:D

© SQUARE ENIX

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