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第60回:エッジの種類 実践編

2015.09.25

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エッジの種類

前回はエッジの種類についてご説明しました。何気なくモデリングしているデータには、三種類のエッジに分類できます。それぞれ「必須エッジ」「クオリティエッジ」「ディテールエッジ」と呼ぶようにしています。

エッジの種類を理解することでどのような利点があるか、今回は具体的な話をしていきたいと思います。(…意外と真面目な内容になっております。)

リダクションへの応用

前回のコラムで紹介した画像では、順々にエッジを追加していました。逆に順々に減らしていくことでリダクションへ応用できます。

リダクションへの応用

はじめにディテールエッジを見つけて削除します。(図左の緑のエッジ)
ベベルの部分や「このエッジはなくても、ちょっとカクカクするだけで印象はそれほど変わらないかな?」といったエッジを削除します。

更に必要ならクオリティエッジを削除します。(図中の緑のエッジ)
「このエッジを削除しても、とりあえず最低限の形状は保てるかな?」といったエッジを削除します。
どこまで削除するかですが、「このエッジを削除すると、そもそもモデルが何者かわからなくなってしまう」という限界まで削除していけます。

残ったものが必須エッジで(図右)、このエッジがなければオブジェクトの特徴的な形(円錐である)を保てません。
必須エッジを削除しなければいけないほどポリゴンを減らす必要があるなら、いっそのこと真中のモデルをレンダリングしてビルボード(スプライト)に置き換えたほうが時間の節約になります。

エッジの見方に慣れるとリダクションしやすくなります。リダクションはなんとなく感覚的に行いがちですが、エッジの種類を見分けられるようになると「このエッジが必須エッジじゃないので、不要なので削除して」など、誰でも理解できる意味を持った言葉として理解、指示できるようになります。結果的にプロダクション全体の作業が効率的になります。

意味のある言葉で説明できるということは、新人や初めてモデリングする人でもすぐに理解できるということです。技術を伝える上でとても重要なことです。

高速なモデリング

高速にモデリングする上でもっとも重要なのは、必須エッジの時点で正確な位置取りができているかどうかです。

必須エッジが正しければ、出戻りを最低限にしてモデリングをどんどん進めていくことが出来ます。特に重要視すべきなのは、モデルの寸法とボリュームです。

モデリングの対象物によって違いはありますが、モデルの寸法とボリュームをバウンディングボックスで取るとします。「このモデルは縦が1の長さで、横幅が縦の2倍ある」といった感じで、縦横奥の相対的な比率を正しく取れればしめたものです。絵を描くとき、肩幅に対して腕が〇〇倍で…的なあれと同じです。
これが不正確だと、どう作りこんでもなにかおかしい見た目になり、いつまでモデリングしても形状がヘン、という自体に陥ります。

車のフロントバンパーを例にご紹介しましょう。

シルエットのあたり取り

フロントバンパー全体のボリュームを初めからモデリングできればよいのですが、写真だとどうしても歪みがあり、不正確です。代わりに、シルエットの目立つ、比較的小さなパーツに注目します。たとえばフロントグリルの部分です。

小さなパーツなら写真の歪みも比較的少なく、縦横の比率が正確です。今回は画像があるのでなぞってモデリングしていますが、キャラなどの絵が一枚用意してあるだけというときは、絵を参考にして縦横奥の比率に注意してバウンディングボックスを作ります。

絵を参考してバウンディングボックスを作る

エッジの種類を思い出してみると、フロントグリルの部分を形取るには、ちょっと丸みが足りません。最低限必要なエッジのみ追加します。

最低限必要なエッジを追加する

この形状が正しくないと、どうやっても形が本物に似てきません。逆にこの時点での形状が正確なら、この後の作業が単純作業になるぐらい簡単になります。

あとは、シルエットのわかりやすいパーツごとに輪郭を作り、パーツ同士の相対的な位置を正確に取ります。バウンディングボックスだと形が似づらいところは、直接四角形ポリゴンでシルエットを作ります。Quad Drawを使うと作業が速く、便利です。最低限必要な頂点のみで作っていきます。

シルエットのわかりやすいパーツごとに輪郭を作り、パーツ同士の相対的な位置を正確にとる

画像があるので簡単ですが、ここでもパーツごとの比率、位置関係に気をつけます。絵を描く時とおなじ感覚で「ヘッドライト底面のエッジは、フロントグリルの上部のエッジより下にある」といった相対位置を正しく取るようにします。

形状を比べるコツがあります。人は線で形状を比べるより、面で見て比べるほうが正確に形状をとらえられます。マテリアルで色面を分けて、輪郭、エッジの流れなどを確認します。これも高速に正確にモデリングするためのポイントです。

マテリアルで色面を分けて輪郭・エッジの流れなどを確認する

このぐらい低ポリゴンの段階でも、輪郭とボリュームがしっかりできていれば、オブジェクトの存在感が出てきます。
実はここまでが最も重要な作業で、必須エッジの位置がおかしいと、どれだけディテールを追加してもなにかチグハグなものになってしまいます。逆に必須エッジがビシッと決まっていると、ディテールが微妙でも全体としてのクオリティは高いままです。

必須エッジが完璧に出来上がるまで十分時間を割くと、結果的に全体的な作業の高速化につながります。また、効率的なスキルの向上も見込めます。

この程度のポリゴン数で、位置取りを仕上げます。

作りこみと分業

次にクオリティエッジを追加していきますが、この時点でのモデルがアニメーションで言う原画にあたります。モデルの完成度は、この時点で70%決まっています。

モデルを速く大量に高品質で作るなら、熟練したモデラーがここまでのモデル作成を担当し、あとを若手に任せることが出来ます。若手は若手で、熟練者のモデルに触れる機会を得られるため、成長が速くなります。

というわけで、エッジの種類を理解することで分業が可能になります。

このあとエッジを追加するのに、必須エッジが正しくできていれば、何も考えずどんどんエッジを追加するだけでモデリングが出来ていきます。短時間で作業が終わります。

丸いところは丸く、なるべく自然に見せるためにクオリティエッジを追加すると、次のような状態になります。

クオリティエッジを追加した状態

最後にディテールエッジを追加します。
ベベルを作るなど、機械的にどんどんエッジを追加していきます。Mayaではエッジループを追加するとき、曲面の流れに合わせてエッジをうまく配置してくれますので、簡単にディテールの追加ができます。最近ベベルの品質も上がりましたので、簡単にベベルを追加できます。

ディテールを追加すると、エッジ部分にハイライトが出るようになります。

ディテールエッジを追加した状態。 エッジ部分にハイライトが出る

自分の行っている作業の段階を理解していると、とても作業がしやすくなります。
クオリティが上がらない時、やり直しする時、まず必須エッジに問題があるのか見ます。問題がなければ、クオリティエッジに問題があります。このように、すぐに問題点を把握できるので、製作のスピードがあがります。

また、製作スピードが遅くなる段階があれば、ツールを作って補佐することを考えます。車のパーツなら曲面を作るためのエッジを追加しだすとモデリングが遅くなります。たとえばNURBSカーブやサーフェスを使用してエッジを編集するツールを作るなど、様々な最適化が検討されます。

作業の段階が明確に分かれていると、こういったツールも作成しやすくなります。

突貫工事で用意したのでちょっと適当ですし、結局最後にSoft Modでプロポーションをいじったりしていますが:-)、レンダリングするとこんな感じになります。

レンダリングしたイメージ

作業分担への応用

もう一度おさらいでこの話をしたいと思います。

ご紹介したモデリングの方法は、はるか昔で言えばルネサンス期、工房で巨匠が大まかな下絵を書き、もしくは彫刻を荒削りして作品の軸、方向性を決めたあと、弟子が仕上げを行っていく作業と同じです。現代で言えば、原画と動画、中割という感じです。

モデリングも実は分業が可能で、ベテランは最も重要な(でもポリゴン数の少ない)必須エッジでモデリングを行います。これは原画にあたります。

次にクオリティエッジ・ディテールエッジを他のモデラー、アウトソースが担当します。これは動画と中割ですね。
ベテランが一つのモデルに関わる時間を減らせるので低コストにできるうえ、高品質なモデルを量産できます。

ふつう、モデリングは一人で仕上げることが多く、そのせいで他の人の作ったモデルとクオリティにばらつきがでます。また、どうやって作っているか他の人の作業を見ることが難しいです。

分業すれば品質は安定、他のモデラーはベテランのデータに触れるチャンスができ、よいものを見ることで自ずとスキルも上がっていきます。

動画、中割というと、細かいところに行くほど作業が単純化しているのが想像しやすいのですが、モデリングは感覚として、細かいところに行くとむしろ作業が難しそうに見えます。しかし実際には単純化している、という点に注意を向けることが大切です。

客観的に見てみると、複雑そうなところが単純であったり、単純そうなところが重要であったりします。作業の棚卸しを定期的にして、効率化を図るようにすると競争力が上がります。

まとめ

工学的な面から評価しますと、エッジに種類があるとなればオートメーション化の可能性が出てきます。たとえばモデリング中にあらかじめエッジの種類を設定して、あとから機械的にリダクションできるかもしれません。

エッジに種類をつけるだけで、これだけいろいろな可能性が出てきます。欧米はこういった分析が得意ですので、日本でも負けないようにやっていく必要があります。

4回に渡りシルエットの説明、エッジクオリティについてご紹介してみました。他にもいろいろと方法論があるのですが、また追々ご紹介していきたいと思います。

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