トレンド&テクノロジー / WHY 3DCG? 〜3DCGが支えるコンテンツ制作の現場〜
ゲーム業界編
CASE01:イリンクス

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リアルタイム物理レンダリングの活用で、新規性のある画づくりが可能に

シリコンスタジオグループの一員として、家庭用ゲームソフトの開発を手がけるイリンクス。中でもPS4を筆頭にハイエンドなハードウェアで、アクション性の高いタイトルの開発を得意としている。1990年代に他業界に先がけて2DCGから3DCGへの移行が進んだゲーム業界だけに、同社も発足当初から3DCGでのゲーム開発に注力してきた。同社で取締役、リードアーティストをつとめる濱田弘之氏も「ゲーム業界に入ってから今まで20年ほどの間、3DCGを扱う仕事しか参加したことがなく、他の選択肢はなかったと思います」と語るほどだ。

こうした中、早くから業界のスタンダードとなっていったのが、MayaをはじめとしたAutodeskのツール群だ。特に近年ではプロジェクトの規模が大型化しており、外部企業との協業が増えているため、外すことのできない存在になっているという。「Mayaは操作系が直感的なので、初心者でも短時間で基本的なオペレーションを習得できます。また、MELやPython等による様々なツールの作成や、作業の自動化といったことが可能です。このような特性により、大規模パイプラインにおいても生産性の高さを維持できます。背景モデルやキャラクターモデル、アニメーションなどのアセットを、MayaをはじめとするAutodeskのDCC(Digital Content Creation)ツールで制作するプロセスは、どこの開発現場でも共通かと思います」(濱田氏)。

そんな同社のクリエイティブを支える3DCGの利点について富岡氏に伺うと、「表現自体には制限がなく、お客さんに楽しんでもらうためにイメージしたものが自由に作ることができる」点を挙げる。「もちろん、コストや時間には制限はありますが、何を優先するのかを決め、プリプロダクションで全てを固め、ワークフローを工夫して制作をすれば、限られたリソースの中でもお客さんに楽しんでもらうことが出来ると思います」と補足する。

Mayaを用いて制作されたシーンの一部
Mayaを用いて制作されたシーンの一部

Mayaを用いて制作されたシーンの一部

もっとも、そこから先の描画や実装に関する部分は、各社で異なる。リアルタイム処理を伴う、物理ベースのシェーダーやIBL(イメージベースドライティング)、プロシージャルなアニメーション処理といった部分だ。濱田氏は、「アーティストが作成したアセットと、これらの処理を組み合わせることで、各社ならではの新規性のある画づくりが完成します」と説明した。自社で研究開発をすることもあれば、商用ミドルウェアやプラグインを使用する場合もある。各社がしのぎを削っているのが現状だ。

こうした中、同社は過去の実績の積み重ねで、少しずつ業界内での認知度を高めてきた。次の目標は一般のゲームユーザーに認知してもらうことだ。濱田氏はそのために必要なこととして、「日々の研鑽」をあげた。最新技術の研究や、新しいビジュアルを具現化するためのノウハウの蓄積、トレンドの把握、柔軟なマネジメント手法の確立といった、小さな努力の積み重ねだ。また日頃から「無価値なものを生み出さない」ということを心がけるようにしているという。

徹夜・残業といった過酷な就業イメージがついてまわるゲーム業界。そうした中でも同社は早くからマネージメントの重要性について認識し、さまざまな取り組みを進めてきた開発会社としても知られている。また各職種で経験豊富な人材が多く在籍しており、ゲームデザイナー・プログラマー・アーティスト全てが最大限のパフォーマンスを発揮できるような体制作りをモットーとしている。今後さらに規模の拡大が予想される家庭用ゲーム開発で、同社の先進性は今後も高く評価されていくだろう。

シリコンスタジオが開発しているリアルタイムレンダリングエンジンの Mizuchiを使って制作された列車
シリコンスタジオが開発しているリアルタイムレンダリングエンジンの Mizuchiを使って制作された列車

シリコンスタジオが開発しているリアルタイムレンダリングエンジンの Mizuchiを使って制作された列車。物理ベースレンリング(PBR)技術を採用しているため、シーンの光源設定を変えるだけで日中・夕方など時間帯に合わせた自然なライティングの画が生成される

イリンクス

イリンクス

http://www.ilinx.co.jp/
Q1会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
家庭用ゲームソフト開発を主軸としています。主にPS4などハイエンドなハードウェア向けの、特にアクション性の高いタイトルの開発が弊社の得意分野と言えます。マネージメントの重要性を認識しており、試行錯誤の回数が多くなりがちなアクションゲーム開発において、炎上を防ぐための様々な取り組みを行っています。また、各職種に経験豊富な人材が在籍しているのも強みと言えます。プランナー、プログラマー、デザイナー全てが最 大限のパフォーマンスを発揮できるような体制になってきていると思います。
Q2メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
Maya、MotionBuilderです。Autodesk製品は業界スタンダードなので、外部との連携を考えた場合、むしろ外すことの出来ない存在と言えます。背景モデルやキャラクターモデル、アニメーション等のアセットを、MayaをはじめとするDCCツールで制作するプロセスは、どこの開発現場も同様なのではないかと思います。
Q3今後の目標について教えてください。
今までコツコツと実績を積み重ねて来た甲斐があり、有り難いことに業界内では認知してくださっている企業様が増えてきた印象があります。次は、一般のゲームユーザーの方々に認知していただくことが目標だと思っています。目標達成のために必要なことは、日々の研鑽です。具体的には、最新技術の研究、具現化のためのノウハウの蓄積、トレンドの把握、柔軟なマネージメント手法の確立、といった小さな努力を積み重ねることです。また、日頃から「無価値なものを生み出さない」ということを心がけるようにしています。
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