チュートリアル / CG:コラムグーニーズ
第4回:SHOW BY ROCK!! THE ORIGIN -躍動-

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SHOW BY ROCK!!

前回は「SHOW BY ROCK!!」のCGアニメーションの制作現場を支えるツールをご紹介いたしました。今回は、楽器演奏や演技部分にリアリティを加えるためにアニメーター達が挑戦を重ねた参考動画撮影をご紹介させて頂こうと思います。「SHOW BY ROCK!!」のCG監督佐々木涼とCGチーフデザイナーの本岡宏紀も登場です!

~可愛らしいキャラクターだからこそ丁寧にリアリティを載せて命を吹き込みたい!二度見してもらえる演技を目指す~

白熱の参考動画撮り?! (左)本岡宏紀/(右)佐々木涼

↑白熱の参考動画撮り?! (左)本岡宏紀/(右)佐々木涼

得丸 今回の作品は、アニメーター自身が自分で動いてその様子を参考動画として撮影し、それを見ながらアニメーションをつけるという作業工程に重点を置きました。可愛いキャラであるがゆえに、よりリアリズムを追求することで、そのキャラクターの魅力というものがもっと出せるんではないかということと、あとは観ている人が可愛いキャラでもこんなによく動くんだっていうところを感じてもらえればいいかなぁ、と考え挑戦してみました。

佐々木 今回いろんなシーンで時間をかけて撮影したよね。

得丸 やっぱりやってもらったことによる効果がかなり出ていると思いますね。特に、重心移動とか体重がかかる重さの動きというのが実際にやるか否かではリアリズムが変わってくるっていうのと、参考動画を撮る上で一番大きいのは自分が感覚的にやっていない動きが客観的に見られるっていうところですよね。たとえば右手に力を入れている動きがあったとして、そこは自分でも意識してるから認識しているんですけど、じゃあ左手はどうなっているのかっていうのはあまり意識していない。そこで、参考動画を見てみると、「あ、左手って実はこうやって動いているんだ」っていうのが発見できます。それを取り入れることで、動き全体のリアリティが増して説得力のある動きになると思います。

本岡 これまでにもアニメーターとして簡単な参考動画は何度か撮ったのですが、今回、より本格的に撮影を行ったことで、もう一回アニメーションというものを原点から見直すいい機会になったなぁと思います。

佐々木 アニメーションが得意ではない人でも参考動画をしっかり撮影して、それを見ながらある程度時間をかければ一定基準のものは作れるんじゃないかなぁ(笑)

本岡 そこにプラスαで、キャラクターとしての魅力的なデフォルメとか、アレンジを加えることで更によくなると思います。

SHOW BY ROCK!!

佐々木 でも、1話のシュウ☆ゾーくんの振付とか1曲分全部作ったんだけど、ほとんど使えなかったよね(笑)

得丸 本当だよ!あのダンス、せっかくだからどこかで全尺作ってみたいよね(笑)

佐々木 振付だと僕は1回転しか回れなかったけど、シュウ☆ゾーくんは身軽で軽快なキャラクターだから、実際のアニメーションではクルクル2、3回転させてましたよね!

得丸 そうだね!自分の動きっていうのは自分の体重もあるので、そのキャラクターに合わせていくっていうことが必要だと思います。

本岡 涼さんは何やってもヘビー級なんで(笑)

佐々木 おい、それどういうことだよ!(怒)

得丸 体重の重い人のメリットって、体重移動がすごくよくわかるんです。移動するのが重たいから非常にバランスを取ろうとするんです。軽い人がやると、重心を大きくとらなくても動けちゃったりするので。佐々木さんはリファレンスに向いているなぁと。体重が必ず乗っているんで。

SHOW BY ROCK!!

佐々木 フォローありがとうございます!重たいキャラクターといえば、1話のダークリーパー登場シーンで、最初アニメーションをつけたときに、結構格好いい感じにアニメーターが動きをつけてくれたんですけど、監督が「こいつ、こんなかっこよくないんだよね」って仰ったんですよ。だから僕たちでダークリーパーのデザインから「ゾンビっぽい感じかな」って考えて、実際演じてキャラクター性を詰めていきました。気づけばアニメーションチェックや普段の会話の中でも自然とみんな演じるようになっていったよね。

得丸 参考動画を見てアニメーションをつける時に気をつけなきゃいけないのは、この動画っていうのはあくまでも人間の動きのタイミングになるのでそのまま使うのではなくて、そのキャラクターに合った動きに落とし込むことが大切です。

佐々木 あとは、撮影の時点で演技チェックもしましたよね。アニメーションが始まった1話の頃には、参考動画で得丸さんのOKをとらないとアニメーション作業に入れないということもありましたよね。

得丸 参考動画の段階で演技プランを固めることで、実際のアニメーション作業を短縮化できるんです。人間の演技をやり直すことは簡単にできるけど、アニメーションを実際につけ直すのは大変なので。特に今回、頭の大きいキャラクターじゃないですか。だからその頭の重さを意識した動きで演技してもらいましたよね。

本岡 重さっていうのは今回キーワードでしょっちゅう出てきましたよね。フィギュア質感のキャラクターにちゃんと重さと命があるようにみせるにはどうしたらいいか常に意識していました。

SHOW BY ROCK!!

本岡 1話のトライクロニカのとあるカットも3人分を自分1人で演技しました。長いカットを撮るときに、プロの俳優ではないので通しで完璧にいい演技ができないんですよね。一つの演技の中で失敗した場合は、複数のカットの中でいいとこ取りでつなげていって映像を作成しています。実際キャラクターにアニメーション付けしてみて、「この演技ではないなぁ」という場合は更にそこからアレンジしていきます。

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得丸 今回のキャラクターの場合、人間の足や手の長さと違っていたり、はまらないポーズもいろいろあったんですよ。その調整が結構苦労しましたよね。

本岡 例えば大きな音がした時、人間だと耳をふさぐリアクションをすると思うんです。でも、今回のキャラクターだと手が耳に届かないので、手の芝居に加えて耳もペタッとふせたりして表現しました。

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本岡 7話のクロウの演技は、頭が大きいせいで前かがみにすると身体が見えなくなってしまうという問題があったので、こういったアングルでは1回目コラムでも触れていたように実は他のカットよりも少し小顔にしていたりします。演技のタイミングを計るためセリフも自分で言って撮りました。

得丸 本当はプロの声優さんの声が先にほしいです。日本のアニメ業界では、基本的に声を後から撮るというやり方が一般的で、CGアニメーションもなんとなくその流れが移行してきているのですが、どこかのタイミングでその部分を変えていけたらいいなぁと思っています。声が先にあることで、よりタイミングや呼吸感、エモーションのばっちりあったアニメーションが作れるはずなんです。力量のあるアニメーターさんが日本にはたくさんいると思うので、本来のCGアニメーション制作プロセスをとることで、更にクオリティが上がり制作時間も短縮できると思います。

本岡 得丸さんのリファレンスは登場しないんですか?(笑)

得丸 それは非公開です(笑)。動きの流れで何が自然か、とか何パターンか撮ってみてる感じですね。実はロージアちゃんとかもやっているんですが・・・可愛い女の子の演技とかも、乙女心になってつけています。ロージアは自信のあるアイドルとか…なりきって演じました(笑)いろんなアイドルをみて参考にしています。

SHOW BY ROCK!!

得丸 あと、もう一つ、音楽に関しては佐々木さんのこだわりというのがかなり強くあって。というのも彼は実際にドラムを演奏できるので、彼本来の動きの思いというものが映像にも乗り移って、それをアニメーターがうまく汲み取れたので、最終的に説得力のある動きになっていると思います。

SHOW BY ROCK!!

佐々木 今回バンド系の作品をやる上で、自分自身がバンドをやっていたので、まず自分が観たいなと思うものを作りたいと考えました。もし僕がテレビを観たときにアニメのキャラがバンド演奏をしているシーンが流れて、それが適当に演奏をしている映像だったら、多分僕は何も気に留めないでチャンネルを変えてしまうかもしれません。でもそのキャラクターたちが本当に演奏をしているようなアニメーションで描かれていたら「ん?!」と二度見して見入っちゃうかもなと。それを今回のコンセプトにしようと思いました。コンセプトが決まったところで、昔のバンド仲間に声をかけて楽曲の耳コピをしてスタジオに入り、アニメーターのための演奏動画を撮影しました。そこでは、本編のライブ映像用にただ演奏しているだけでなく、ライブ中の仕草や芝居の演出を同時に行いました。実際にアニメーション作業がスタートしてギターの手元のより詳細な参考動画が必要になった時に、ちょうど社内に昔ギタリストとしてバンド活動をしていた制作の足立がいたので、彼にも参考動画に協力してもらいました。

得丸 楽器演奏の経験がないアニメーターにとっては、細かい手の動き等が本当に参考になりましたね。

佐々木 3話のプラズマジカの最終的な楽曲が届いたときに、ベースのレトリーがチョッパーで演奏している音が聴こえまして、スケジュール的にはギリギリでしたが撮り直して参考動画もブラッシュアップしていきました。その効果が映像にもいい演出として出せたと思います。

本岡 あれは本当にギリギリでしたよね。でもその甲斐あって格段に良くなったと思います。ライブモーション協力のメンバーの皆さんには本当に感謝です。

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佐々木 参考動画を撮ることによって、アニメーションの説得力が増して作品全体のクオリティが上がったと思います。「SHOW BY ROCK!!」の放送も後半戦に入り、物語もクライマックスに向けて、ますます盛り上がっていきますので、是非キャラクターのアニメーションに注目して、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです!!

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今回のコラムでは、「SHOW BY ROCK!!」の世界観にいかにリアリティをもたせるかという参考動画撮影をご紹介しました。次回は、「SHOW BY ROCK!!」CGパートのバトルシーンとライブシーンの演出についてご紹介いたします!

見逃してしまっている方、もう一度見たい方、WEB配信もいろいろありますので、コラムと合わせてぜひTVアニメ「SHOW BY ROCK!!」をお楽しみください!

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©2012,2015 SANRIO CO.,LTD. SHOWBYROCK!!製作委員会
TVアニメ「SHOW BY ROCK!!」
アニメ公式サイト :http://showbyrock-anime.com/
アニメ公式Twitter:https://twitter.com/SB69A

CG制作:
STUDIO GOONEYS

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