トレンド&テクノロジー / WHY 3DCG? 〜3DCGが支えるコンテンツ制作の現場〜
教育機関編
CASE01:京都精華大学
- コラム
- 教育
4年制大学ならではの理論と実践を融合したカリキュラム
就職にしっかり軸足を据えた教育を実現
近年、伝統的なアナログの美術教育に加え、3DCGをカリキュラムに組み込む美術大学が増えている。日本で数少ない「マンガ学部」を擁する京都精華大学もその一つだ。第一線で活躍するプロから直接指導が受けられるリッチな教育環境や、全コース共通の「マンガ学部共通専門科目」と、各コース特有の「専門科目」を組み合わせた多彩なカリキュラムで、大学ならではの体系的な教育が行われている。中でも「アニメーションコース」では、「動き」の表現であるアニメーションの本質を理解し、表現するための理論と実技を、4年の在学期間で体系的に学ぶことができる。
2017年度より田中達之氏による「キャラクターアニメーション」を学ぶ授業がスタート
そんな同コースにて2015年より教鞭を取っているのは、アニメ制作会社STUDIO4℃でCGIディレクターとして『鉄コン筋クリート』、『ベルセルク黄金時代篇』など数々の名作を手がけてきた坂本拓馬氏だ。3DCGによる作画調の表現を目指す"セルシェーディング"が一般的になりつつある昨今、作画から3DCGまで、より横断的で複雑な知識が求められるようになった制作現場だが、これに対応した人員育成の必要から同氏に白羽の矢が立った。
坂本氏は本コースの特徴について「我々は美術大学の根幹である美術教育を押さえながら、アニメーションにかかわる幅広い知識の両立を目指しています。単に画力の向上をめざすだけでなく、アニメーションに必要なパースや動態描写を学び、動きを多角的に探求するためのカリキュラム開発に注力しています。キャラクターの年齢・性格・感情を"動き"で表現する技術について、演出・作画からCG・撮影・音響などあらゆる専門的な知識を横断的に習得できます」と語る。これまで制作現場から教育現場に求められてきた体系的かつ実践的なアニメーション教育の一つのあり方がここにあるといえるだろう。
Mayaで制作された学生課題作品(2015年度卒業生作品)。
坂本氏はまた、同コースの特徴として "社会との関わりあい" に主軸をおいた就職指導・教育カリキュラムも加える。「我々は特に卒業後の進路決定に重点をおいています。様々な就職や進学先などの進路を学生に周知するとともに、その実現に必要な環境と技術指導の場を用意する義務が大学にあると考えています。そのため、近年の3DCG需要の高まりに答えるために3DCGツールの基本から応用まで学べるカリキュラムを用意しています。業界における標準ツールである、Mayaを習得することは就職を目指す学生にとって必須としています」(坂本氏)。
こうした言葉を裏付けるように、卒業生の進路はアニメをはじめ、ゲーム、TV、Web業界と多彩で、職種も監督・演出から3DCGモデラー・3DCGアニメーター・ゲームプランナー・Webデザイナーなど多岐にわたる。日本の映像産業にさまざまな才能を送り込み、豊かな映像文化を育むための苗床として、長く活躍してきたといえるだろう。「今後はさらに3DCGを含めた幅広い映像演出を意識させることで、国内外のさまざまなコンペディションを意識した作品作りを指導し、ノミネートや入選を目指したい...」こうした抱負が語られた。
3年次授業「アニメーションCG実習」におけるMudboxによる課題制作作品。Mudboxは直感的なユーザインタフェースとステンシルやブラシ機能をもっているため、 粘土をこねることができる人なら比較的容易に操作することが可能。「Mayaとショートカットキーが類似で学生にとっても習熟しやすい点も大きなメリットになる」(坂本氏)とのことだ
- Q1貴校概要について教えてください(学科・カリキュラムや強み、特徴など)
- キャラクターの感情や性格、年齢までも「動き」によって表現する技術を理論と実技の両面から学びます。また演出、作画、CG、撮影、音響など、アニメーション制作に関わるすべての専門的な知識を習得します。
- Q2主に使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
- 主に使用している製品、Maya、Mudbox。最終の出口を考えた時に、学生には業界標準のソフトウェアを触らせるべき。全ては学生の為に。
- Q3今後の目標について教えてください。
- 4年制大学ならではの理論的なカリキュラムと、業界標準の高い専門教育の技術指導を目指し、アニメーション制作に関わるすべての専門的な人材を育成します。
基礎的なデッサンや動かす技術を獲得した後、各分野のより専門的なカリキュラムを学び、アニメーション作品を企画し、制作します。3年次にはオリジナルのキャラクターに命を吹き込み世界観を作り出す授業もあります。(3D、作画)また、次世代に対応する教育環境を用意し、ゼロから画力を学ぶことができるため3DCGで必要な造形技術が身につきます。最終的にはアニメーションの総合的かつ専門的な知識と技術を身につけ、「自分の特性を生かす」分野で仕事ができるようになります。