トレンド&テクノロジー / WHY 3DCG? 〜3DCGが支えるコンテンツ制作の現場〜
アニメーション業界編
CASE02:グラフィニカ
- 3ds Max
- Maya
- MotionBuilder
- アニメ
- コラム
3DCGコンテンツの制作を手がけるプロダクションにインタビューを実施し、オートデスク製品の導入理由やその魅力を聞く本企画。「アニメーション業界編」では、グラフィニカにインタビューを行い、制作現場の声を聞いた。時代の変化が著しい昨今、アニメ制作の最前線で3DCGはどのように使われているのだろうか。
TEXT&EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)
Mayaと3ds Maxの「二刀流アニメーター」を育てる
この記事を読んでいる皆さんの中には、「特撮」が好きという方もたくさんいることだろう。かく言う筆者も大の特撮ファンである。現在、絶賛放送中のアニメ『SSSS.DYNAZENON』は、円谷プロの特撮ドラマ『電光超人グリッドマン』(1993)を基とするアニメ『SSSS.GRIDMAN』(2018)のながれを汲む作品だ。そんな本作の3DCGパートを担当しているのがグラフィニカ・3DCG部である。今年で11周年を迎えるという同社は、新宿・阿佐ヶ谷・札幌に拠点を構え、ワンストップでアニメ制作を手がける総合プロダクションだ。今回、『SSSS.DYNAZENON』で3DCGディレクターを務めた市川孝次氏と3DCGプロデューサー・池上由佳氏に、同作で挑んだ「3DCGで特撮を再現する」という試みについて、くわしく話を聞いてみようと思う。
池上由佳/Yuka Ikegami(右):グラフィニカ/3DCG部・3DCGプロデューサー
そもそも「3DCGで特撮を再現する」とは不思議な響きではなかろうか。「特撮」とは「特殊撮影」のことで、本来であれば実写映像に対して使用される用語なのだが、特撮の3DCGアニメとはこれいかに。「特撮風の3DCG表現」とは? 早速、両氏に聞いてみよう。
「僕たちも "特撮風の3DCG表現" をどうしようかと考えました。特撮風アニメの表現としては、アニメ『SSSS.GRIDMAN』が初の試みだったかと思うのですが、そのながれを汲みつつ『ウルトラマン』などを観て参考にした結果、"動きや撮影の仕方をマネる" という手法にたどり着きました」と市川氏は話す。例えば、カメラを足元に置いてパースを付けるといった、特撮ではお馴染みの撮影方法を3DCGで再現するというわけだ。 また、あえてスローモーションで撮影したかのような動きを3DCG上で再現する、という手法も随所に採り入れられているという。これら、特撮で使われる撮影技法を意識して、それらを組み合わせて3DCGで表現する。これが本作における「特撮風の3DCG表現」の基盤となっている。
また同社は、セル調に寄せたキレのあるリミテッドアニメーション表現を強みとしており、セル調とリミテッドの両方を採り入れつつ、「特撮風の3DCG表現」に挑んでいるという。いわゆる「ぬるっとしたモーション」が絶妙なさじ加減で配合されているというわけだ。「ここは特撮風に! というパートはわざとスローモーションっぽくしたり、そうでないパートはリミテッド風にしたり。各パートの担当者がそのバランスをチョイスして、各自の判断で自由にアニメーションをつけさせていただいています」と市川氏。オーダーをクリアした上でさらに「+α」を加えていく。監督から厚い信頼を寄せられている様子が窺える。
市川氏のこだわりはさらにユニークだった。「ロボットバトルかつ特撮っぽさを出すために、キレキレのアクションというよりも少しダサめというか......、ちょっとカワイイ感じになってしまっている表現を加えました」(市川氏)。例えば、パンチを受けた怪獣の動きがゴムっぽい着ぐるみのような動きだったり、ちょっと失敗している飛び蹴りだったり。完璧なアクションではなく、どこか「人間味」を感じる要素を3DCGで再現したという。特撮ドラマでは隠しておきたかったであろう「人間臭くてちょっと恥ずかしいところ」まで抜け目なく押さえているというのだ。特撮の醍醐味のひとつ、「人の手でせいいっぱい格好良いことをしようとしている」。きっとここに夢が詰まっているのだろう。
さて、同社3DCG部の制作スタイルで興味深かったのが、「Mayaと3ds Maxの二刀流アニメーター」を育成中という点だ。アニメCGの現場では3ds Maxがメインツールとなっているが、Mayaの案件も増えつつある昨今の変化に対応するための取り組みとのこと。池上氏は、「使えるソフトで対応できる案件が縛られないよう、アニメーターには極力Mayaと3ds Maxの両方で作業してもらえるよう、トレーニングとサポートを行なっています」と話す。「本当にここ最近はじめたばかりの取り組みですが、Mayaも3ds Maxも使える『Media & Entertainment Collection』(以下、M&E Collection)を活用することで、柔軟に対応できる体制を整えることができています」(池上氏)。また、市川氏も「MotionBuilderは動作がとても軽く、ポーズを付けやすいという利点があります。3ds Maxとの連携もしやすいので『SSSS.DYNAZENON』の制作でも、これら3ライセンスが揃った『M&E Collection』が活躍してくれました」と話している。
アニメは世界に誇る日本文化のひとつだ。内容とクオリティの両面において高い水準を保つ日本アニメ。その制作を万全の体制で支えるオートデスク。意のままにキャラクターに命を吹き込んでくれるMotionBuilderを含む『M&E Collection』は、今後のアニメCGの現場で強い味方となってくれそうだ。
©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会