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第28回:カラーマネジメントの基礎知識 RGBの値が同じでも、色は変わる

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こんにちは、パーチ長尾です。

前回は「モニタ調整の裏側」についてお話ししました。カラーマネジメントは正しい設定をすれば誰でも簡単に導入できます。さらに、その裏側や色に関する基礎知識があれば、いろいろな状況に対応できたり、より自分の制作環境にあった仕組みを作ることができます。
今日は「なんでだろう?」「えっ、そうだったの?」というふうに、カラーマネジメントを始めると必ず意外に感じる【RGBの値が同じなのに色が変わる】という理由について、わかりやすく解説していこうと思います。
本当に基礎的なことですが、それだけに不思議に感じるとすべてが疑わしく思えてしまうのがこの問題です。これを機に、色の不思議について解消してください。


RGB, CMYK は状況によって色が変わる

RGBもCMYKも【相対色】と言われています。相対色とは、状況が変わるとその状況に合わせて色が変わる、ということです。もっとわかりやすくいきましょう、RGBは表示デバイス(モニタなど)によって色が変わりますよね、隣の人のモニタを覗いてみてください、自分のモニタとは色が違っているでしょう。
長いこと仕事をしていると「R255, G150, B120」が何色か頭に浮かんでくるようになりますよね。私がデザインプロダクションに入ってすぐの頃のことです、長年グラフィックデザイナーをしている方が私のモニタを覗きながら「C50, M60, Y20にしてみようか」と指示を出されたときにはびっくりしました、このデザイナーさんの頭の中には、数値と色がきちんとリスト化されていたんでしょうね。
どうやら私たちは「R255, G150, B120」という数値が「ある特定の色」になると信じているようです。しかし、これは【相対色】ではなく【絶対色】という考え方です。だから、「色は状況によって変わる」と言われると「どうして?」と頭が混乱してしまうんですね。
しかし、カラーマネジメントとカラープロファイルについて理解するためには、この理解は厳密でなくてはいけません。
これまでたくさんの人にカラーマネジメントの教育をしてきて感じるのは、相対色と絶対色の混乱が一番始めに起こることでしたから、この混乱を解くことが基礎知識を楽に覚えるための第一歩になると思います。


図1「この値はこの色だ、と信じている」


RGB各色の発色特性が色を決める

モニタを拡大して見てみると、Red, Green, Blue の各色が発色しているのがわかります。


図2「モニタ表面の拡大」
モニタはRGBの3色を発色させることで色を作っている

モニタによって Red, Green, Blue の各色の発色特性は異なります。より鮮やかな赤だったり、暗い赤だったり、朱色(少し黄色がかった赤)だったりと、機種ごとにバラバラです。これはモニタに利用されている液晶の特性と、その発色を管理しているモニタ内部の組み込みコンピューターによって発色特性が異なるからです。
Red, Green, Blue の3色の発色特性が異なるわけですから、色も変わってきます。
RGB は8ビットで利用することが多いと思います(より階調がなめらかな16ビットも最近は多く利用されるようになりました)。8ビットは256パターンを管理できるので、 Red, Green, Blue の発色特性(最大出力)から黒(出力ゼロ)までを256段階で再現しています。そのため256の最大出力の色が異なるだけでなく、中間の値であっても色が異なります。


図3「RGBの発色特性を256段階で再現している」

モニタなどの出力デバイスによって色が変わる、ある値のRGBはあくまでも自分が見ているモニタの色でしかない【相対色】であることが理解いただけましたか。


CMYKも相対色です

CMYK は印刷で利用される形式ですが、そのデータは以下のような流れで処理されます。この各工程ごとにばらつきや会社や機器ごとの基準の違いから、できあがる印刷物ではばらつきが起こります。
・印刷原板への出力:デジタルデータをCTPという機器で金属板に出力します
・印刷機の設定:印刷機ごと、会社ごとに設けている基準が違い、また印刷物ごとに設定を変更します
・インキ:インキメーカー/製品/ロットによって色が変わり、標準的なCMYK方式以外の印刷方式 CMYK+OG/蛍光色添加などによって大きく発色が変わる
・紙:コート紙、マット紙など紙の表面加工によってインキの染み込み方などが変わり、紙の地色(黄色から青白いものまで)によって色が異なります

印刷ではこれらの各工程を厳密に管理するのと、全体を統一管理することでカラーマネジメントを実現しています。


絶対色

色を明確に示す【絶対色】もあります。Lab、XYZ という表色系がそれです。
これらの値には相対的な要素はなく、示された値は1つの色しか表しません。そのため測色や厳密な色管理などに利用されます。
見えないところでは、カラープロファイルを活用した色変換に利用されています。例えば sRGB のデータを AdobeRGB 1998 に変換するときなどは、いったん Lab に変換され、その後 AdobeRGB 1998 に変換されています。

色に関することを学ぶとカラーマネジメントの理解が深まりますが、すべて理解しようとすると目の構造から脳の認識まで、非常に幅広いから大変です。カラーマネジメント導入にはそれほど必要ではありませんが、科学的興味から勉強したい方には良い本があります。
印刷業界のカラーマネジメントを引っ張ってきた JAGAT の郡司さんが監修された本で、冗談を抜きにしてこれほど良い本は無いんじゃないでしょうか。

日本印刷技術協会(JAGAT)発刊 「眼・色・光」

眼の構造は生物学、色は光学、など多岐にわたりますが、それを「色を管理する」という視点から見て必要なことについて、順序よくまとめてくれた本です。


カラープロファイルはバラバラな発色特性を記録して、RGB値がどのような色になるかを定めるもの

モニタによって発色特性が異なっていては、【作業フロー全体の色を統一する】というカラーマネジメントは実現できません。
そこで便利に活用されているのが、カラープロファイルです。測色機を使ってモニタの発色特性を測定して、ICC によって定められた規格にそって記述したのが、私たちが良く見聞きするカラープロファイル(ICCカラープロファイルとも呼ばれます)です。

しかし、よく聞くのは、AdobeRGB 1998, sRGB, Rec. 709 といったものですよね。これは「どこかのモニタを測ったもの」ではなさそうです。
カラープロファイルは2つに分けることができます。自分のモニタなどを測定する【デバイス依存型】と、基準とすべく作られた理論的な【非デバイス依存型】の2つです。
AdobeRGB 1998, sRGB, Rec. 709 は後者の【非デバイス依存型】で、制作パイプライン、モニタなどの製造時の基準、などに利用されています。


図4「EIZO ColorNavigator の設定画面」
NANAO社の Color Edge 275W のモニタ調整を行う専用ソフト。ターゲットとなるカラープロファイル、明るさ、ガンマ、色温度などを決定して設定を保存。その後、モニタの現状を測色機で測定して、先の設定となるようにモニタ本体を調整する。

カラープロファイルについてはCG WORLD.jp で連載中の第2回〜第4回までにも詳しく解説したので、あわせて読んでもらうと理解が深まると思います。
http://cgworld.jp/regular/cg-cms/


RGB値+カラープロファイルで色は確定する

これまでの話をまとめると、RGB値だけでは色を確定することができないので、どのカラープロファイルで見るのかを決める必要があります。
RGB値+カラープロファイル=色が確定
と覚えましょう。

具体的には、自分が使っているモニタの特性を測定して、自分の制作パイプラインに適した基準プロファイルをシミュレーションしてください。
こうすれば制作時には常に同じカラープロファイルを見ていることになるので、この環境では色が確定できるわけですね。

具体的な例として、うちでは EIZO ColorEdge を使用しています。1ヶ月1回程度の測定を行ってモニタの経年劣化を補正しています。
3DCG制作時に AdobeRGB 1998 を使用、Web関連の作業時に sRGB を使用しています。一度モニタを測定しておくと1クリックで簡単に設定を切り替えることができるので、状況に応じて切り替えています。
私は抜けているところがあるので、間違えないようにするのがちょっと大変ですが、色が確実に合っているので作業効率は高くて、楽させてもらっています。

今回もカラーマネジメントに関する疑問に答えてみました。RGBの考え方に疑問を持っていた方には答えにつながれば嬉しいですし、これから導入する方には将来の不安をぬぐえたらいいなあと思います。
今後も疑問に答えていきますので、もし不思議に思っていることなどがあったらメールか、facebook で教えてください。
facebook  https://www.facebook.com/kensaku.nagao

では、次回もお楽しみに。


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